知らない世界2
私が先陣をきって、その後ろをアリスさんが付いてきてくれるという勇者パーティかな?と思わせる陣形でいざお屋敷探検へと出発した。
まず無駄に広い。これだけ部屋があって何に使うんだ、って感想。掃除が大変になるから私は部屋の数が多かったり無駄に広い部屋とかが嫌いだった。此処で掃除を任されている人はきっと毎日地獄を見ているんだろうなーと思わず視線が遠くなる。
真っ直ぐ長い廊下をのんびり歩く。目的地もないしどこへ行けばいいとかのアドバイスもない。何?このお屋敷の部屋を片っ端から見ていけというの?何て鬼畜な
「おねええちゃーん!」
前からすごい勢いで走ってくる白よりの金髪少女が見えた。あーそんな可愛い格好しているのに足上げて走るとはしたないですよお嬢さん。それにしてお姉ちゃん?後ろを振り返るとアリスさん。私の視線に気づいていないのか前からくる女の子を見つめている。アリスさーん。あの子は誰なのかの説明を
「う゛っ」
「おきたんだー!おはよー!」
と思っていると全身に重い一撃を喰らった。多分私と同じぐらいの身長があった女の子だ。体重もそう変わらないはず。そこにさっきの勢いがのれば今の私には大ダメージを与えられる。内蔵が出そうだった。寸前で飲み込んだ自分に拍手。その女の子は空を連想させる目とぷにぷにのほっぺが可愛らしい女の子だった。
「モエ様。ニナ様は病みやがりですので」
「えーだいじょうぶだよ!ね?」
「う゛、ん」
やんわりアリスさんが止めてくれたけれどもっと早くに、贅沢を言うならば私にダメージが来る前に止めていただければ嬉しかったです。
モエ、と呼ばれたこの子は何の悪意もなくぶつかってきて悪意なく大丈夫だと決めつけた。いや、うん。いいんだけどね。所詮小さい子がやった事だし、怪我した訳ではないから。ただダメージが残ってすごい声が出たのは許して欲しい
「おねえちゃん何してるの?」
「さんぽだよ」
「へーあ!そうだ!もうすぐおやつのじかんだよ!だからモエおねえちゃんをよびにきたの!」
「そうなんだ、ありがとう」
「…えへへ」
お礼を言うと照れたようにはにかむこの子はとっても可愛らしい。まるで天使のようだ。と思っているうちに来た道を走って戻っていった。うーんちょっと落ちつきが足りないかな?いや、このぐらいのお年頃はこんなものかな?
「あの子いもうとですか?」
「はい。モエ様はニナ様の妹様です。後は弟様のレンドール様。兄君様にはルシフェル様、ノワール様がおります」
「そうなんですね。ありがとうございます」
五人兄妹なんだ、元々私は兄妹がいない1人っ子だったから少しだけ楽しみ。さっきのモエも可愛かった。お転婆さんな感じはしたけれど子供は元気過ぎる方がいいだろう。ただ一つ心配になったのはあれが標準ではないか、という部分。やばいよ…私あんな無邪気に走り回れない。だってついさっきまで華の女子高生だったんだもん
妹ちゃんのモエちゃんが走っていった方向へと足を進める。おやつかー。何がでてくるんだろう。と思考を巡らせていると一つの扉へと辿り着いた
「此方が食堂となります」
説明のあとに扉をアリスが開けてくれる。ありがとう、と声をかけるとアリスさんはキョトンとした。なんだ。そのお顔は。言ってなかったけれどアリスさんお顔が控えめに言ってイケメンだから、そんな表情しないで。ギャップ萌えってやつだから。
と阿呆みたいな思考をしながら中に入っていく。長いテーブルがありその中ほどにモエの姿と見たことない男の子が椅子に座っていた。あの子がレンドールかな。レンドールは私を一瞬見たかと思うと勢いよく視線を逸らした。その顔は少し青い気がする。何だろう。風邪でもひいているのかな……
レンドールはモエと同じ綺麗なホワイトブロンドの男の子だ。瞳もモエと同じ透き通った青色をしているんだろうけど下を向いているために影がかかって深い藍色のようにみえる。モエとレンドールは双子なんだろう。その容姿はとってもにている。つまりは天使。
ずっと立っている訳にもいかないから座ろう。どこにしようか悩む前にモエとレンドールのあいだの席が空いていた。……私の席なのかな。可能性は高い。じゃあないとわざわざ一つ開けて座る意味はないよね。テーブルが広いからと言って遠くの席に座るわけにはいかないし…
「ここすわってもいいの?」
「っ……」
「いっつもここにすわってるでしょー?へんなのー」
一声かけると反応したのはモエだけだった。正確に言えばレンドールも反応したけれど体を小さく震わせるだけだった。近づいてみて分かった。これ、完全に怯えられている。その理由がわからない今は、あまり話しかけない方がいいかな。怯え方が尋常じゃあないし。
なんとも言えない微妙な空気の中、おやつが到着した。運ばれてきたカートの上には苺のショートケーキ、チョコをたくさん使ったチョコ尽くしのチョコケーキ、沢山のフルーツを贅沢に使った色鮮やかなフルーツタルトがのっていた。どれもとても美味しそうだ。
「モエいちごー!」
そう言ってモエは素早く苺のショートケーキを確保した。カートを持ってきたお姉さんは何も言わずにお皿へとショートケーキをうつしモエの目の前に置いた。まさかの早い者勝ちか!私たちは歳もあんまり離れてないし姉とか妹とかそういった概念が薄いのかな
そんな中でレンドールはアワアワと残った2つのケーキを交互に見ていた。まだ決めかねているんだろう。これだけ美味しそうだったらそうなるよねー。お姉さんはいつまでも待ってあげるからゆっくり決めるといいよ
「えっと……ぼくタルト…」
悩んだ末にフルーツタルトに決めたようだ。お姉さんがさっきと同じようにお皿へケーキを盛り付けフルーツタルトはレンドールへ、残ったチョコケーキを私の前に置いてくれた。隣ではモエがもう食べ始めている。ちょっとぐらい待てばいいのにとは思ったけれど所詮子供。怒ることでもないか
さあ食べようとフォークを持った時
「やっぱりモエ、チョコがいい」
という声が広い広い食堂に響いた