知らない世界
ようやく今の状況を把握できた。……できた?まあいいか。とりあえず一歩前進。
それにしても目を開けるとそこは豪華なお部屋でした、何てどういうことなんだろうか。今までの経緯を理解していないけれど思い出せたので次に周りを確認してみる。
目を覚まして真っ先に見えたの落ちれば大惨事間違いなしなシャンデリア。これがまず有り得ない状況1つ目。私の家にこんなものはないし、保健室にシャンデリアがあったらビビる。もしかして里穂のお家とか?里穂お金持ちだったんだー…でもシャンデリアはないわー…現実逃避をして今に至る、あれ?
「何にも解決してない!」
結局ここは何処か分からずにおわった…
……んー悩んでも仕方が無いし他に何か手がかりがないか周りをみてみようかな。私は今ふかふか天蓋付きの大きなベットの上にいる。私が寝てもスペースに余裕がある、というかありすぎる。視線を前に向ければ何処かに通じる扉がある。誰かが開ける気配はしない。他にはいかにもと言った感じの豪華絢爛な家具。
そんな中、目に付いたのは壁に飾ってある絵だ。
赤ん坊の頃から始まり5歳ぐらいまでかな?私の絵がズラリと飾られている。勿論私はこんな絵を書いた覚えがないし書かれた覚えもない。
更に違和感があるのはその服装。どれを見ても違う服だけれど一貫して煌びやかなドレスだ。コスプレみたい。いや、でも容姿が異常なぐらい整っているママとパパから産まれた私だ。さらさら艶がある黒髪のロングヘアに高級な宝石のようだと比喩される赤色の目。微笑む姿はまるで天使だとご近所さんに評判だった。そしてパパママは誇らしげに私を自慢した。私もパパとママを自慢した。……話が脱線した!今はパパママの自慢じゃあなくてこの写真だ。
どれだけ見渡しても(推定)5歳以降の絵は飾られていない。不思議に思って自分へと視線を落とすと小さな手が目に入った。
「…………?」
指を動かそうとすると連動したように動く目の前の手の指。……連動したように、というか連動してる……服装もいつものもこもこパジャマではなく肌触りの良い薄い桃色のネグリジェだ……ん?私今いくつだろう
「失礼致します」
疑問を解決するため周りを見回していたはずなのに疑問が増えた現実。先程よりも頭にはてなを増やしていると扉の向こうから女性の声が聞こえてきた
此方の返事を待たずに開く扉の先にいたのは、これぞ正統派執事!といった服を身にまとっている男の人。歳は……20代ってところかな?それにしてもオーラがすごい。威圧的というかなんというか
「お目覚めでしたかニナ様」
「あ、うん、さっき…」
「何処か体に不具合のあるところは?」
「とくには……」
「…………」
「…………あの」
「本日はどうかされましたか?」
ここ何処ですか、と質問する前に質問された
「本日はどうかされましたか?」ってどういう意味なんだろう。質問に対しての答えに悩んでいるとまた男の人は口を開いた
「やはり何かありましたか?」
「う、うん?」
「ニナ様はクロード様の後を付きまと…いえ、ついて回られていた時に不慮の事故で転倒し、近くにあったもので頭を強打されたのです。それに伴い何か頭に障害がでてもおかしくないと医者からも言われております故に」
…あえて付き纏っていたには触れないからね。
頭を強く打ったかー私と一緒だ……でもあの時の私は高校3年生でこんな小さな子供じゃあなかった、はずなんだけれどなあ…というかサラッと頭に障害でるかもとか怖いこと言ったよねこの人。事実であっても子供に言わないでよ!
……あ、でもこれいいかも
「いえ、今のところはアタマがいたいとかはないです…でも、あの、ちょっと……」
「……どうされましたか」
「えっと……あの、あなたのおなまえとか、わかんなくて…」
頭を打って障害とか言われてるんだから記憶喪失も勿論あるでしょう!この機を逃す訳にわいかないよね
「…………」
「あ、えごめん、なさい……」
「……ゃ」
「な、なんて」
「ニナ様は此処でお待ちください。医者を呼んで参ります」
そう言うと男の人はサッサと部屋から出ていってしまった。雰囲気からクール系の人だろうとは思っていたけど思った以上だ。普通記憶喪失(仮)の幼女を1人部屋に置いて出ていく?私が普通の幼女だったらギャン泣きだよ!分かってるのかあの人!
とりあえずする事がない私はベットの上で男の人の帰りを待つしかなかった。
「うーん…記憶喪失、ですかねぇ」
「他に異常は?」
「なさそうですよぅ、といっても今はお嬢様の言葉だけが判断材料なんで何とも言えませんがぁ」
「そうか、有難うアリーナ」
「いえーアリスも大変ですねぇ」
数分もし無いうちに女の人が部屋に帰ってきて医者だと言うことで隣にはこれまた栗色のウェーブがかった髪をポニーテールしている女の人。この人はゆるふわ系っぽい。
「ニナ様それでは私はこれでぇ」
「はい、ありがとうございました」
「…なぁんか変な感じですねぇ」
最後にボソッと不吉なことを呟いてアリーナと呼ばれた女の人は去っていった。まさか記憶喪失が嘘だってこと勘づいてるのかも…本業の人騙そうなんて、そう上手くはいかないか。でも深くまで突っ込まないでくれて良かった
「それではニナ様今から屋敷を回りましょう」
「はい、よろしくおねがいします」
アリーナさん(仮)から記憶喪失には記憶をつついてやるのが一番だと言われた。ので今からアリスさん(仮)と屋敷の中を散歩しよう、ということになった。あー空気の重いこと!なんだ!私のこと嫌いか!
「あの、おなまえきいてもいいですか?」
「私の事はアリスとお呼びくださいお嬢様。主に身の回りのお世話を担当しておりますので、何か御用がありましたら私にお申し付けください」
「わかりました。アリスさんよろしくおねがいします」
「使用人に敬語は不要です」
「としうえのかたにはけいごがひつようです」
「貴方は私の主人です。歳が上などは関係ございません」
「そうですか。でもこのままにします」
「何故でしょう」
「うーん。なんとなく、です」
本当に理由なんてない。強いて言うならば気分。だからそのうち最初からさもそうでしたーみたいな顔をして敬語を外す私が容易に想像できた。