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迷い込んで二日目

「…………」


どうしてこうなったんだろう。日付が変わってカーテンの隙間から太陽の光が差し込んでいる。朝がきたようだ。おはようございます。と心の中で挨拶をする。声には出さない。どうしてか?理由は簡単。ふかふかベッドの上にはファンファーレ家全員集合しているからですよ。もう一度言わせて。どうしてこうなった。


……と言っても勿論当事者の私には理由が充分過ぎるくらい分かっている。それは昨日の夜、家族団欒をした後部屋に戻ろうとする私達を母様が呼び止めた。何かと思うとこのままここで寝ればいいというお誘いだった。流石のおにいちゃん達も遠慮していたけれどこの団欒の時間、1度もおきなかったモエとレンドールとお話したいと。でも明日もお仕事で朝から出かけなければならない。なら朝起きてから少しの時間だけでも可愛い子達とお話をさせて?と困った顔でいう母様のお願いにおにいちゃんズは簡単におちた。


今日だけ。というおにいちゃんと大歓迎。と言った父様と私は失礼致します。といって出ていったアリスさんに流されるように私もお泊まりすることになった。どこに寝るかという話し合いにも正直どこでもいいかな、と思っていた私は話を聞くに徹した。父様、母様は両サイドの端で間に子供たちを。順番はどうしようか?となぜにそんな悩んでいるのか分からない私はそのうち眠くなってきて船を漕ぎ始めた。……という所で私の記憶がない。寝落ちしました。


起きてみると誰かの腕に抱きしめられている。確認するとそれはノワールおにいちゃんだった。私を抱き枕のようにして眠っている。5歳児の柔らかい体はさぞ寝心地がいいだろう。しょうがない。今日だけだよおにいちゃん。おにいちゃんを起こさないように腕から抜け出そうとすると、腕に力が入り締まる。うわーーー。起きれないよおにいちゃん。起こさないようにと声を出さなかったけれど起きてくれないと身動きひとつ取れないなあ


「……おはよニナ」


「あ、ノワールおにいちゃんおはよう」


もぞもぞ動きすぎたのかノワールおにいちゃんが目を覚ました。ひらいたと思った目は昨日みた鋭さはなくぼんやりと私を見つめている。まだ眠そうだなと見つめ返していると少しずつ瞼が落ちてきて完全に目が閉じてしまう。あー寝ちゃった。と思ったらまた重い瞼を持ち上げた。やはり目は眠そうだ。……確かに起きてほしいなって思ったけれどそんなに頑張らなくてもいいよ。ちょっと罪悪感わくから


「おはようございますニナさん」


「とうさま!おはようございます」


ノワールおにいちゃんの対応に困っていると既に髪型、服装をバッチリ整えた父様がベッドの脇に立っていた。その声に反応したのかノワールおにいちゃんの瞼がまた重くあがり、目を何度か擦る。そうして目が覚めたようで上半身を起こした。勿論抱きしめられていた私も一緒に起きる形になった。


「……おはようございます、とうさま」


「おはようございますノワールさん」


「もうおしごとのじかんですか?」


「ええ。名残惜しいのですがこればかりはどうしようもありません」


「あら、おはようございます。ニナちゃんノワールくん」


「おはようございますかあさま」


「おはようございます」


準備な為に外へ出ていたのか母様が部屋に入ってくきた。母様も今すぐにでも出掛けられる、といった状態だ。


「出掛ける前に挨拶と思いましたがまだ夢の中のようです」


「そうでしたのね。まあ子供が起きるには少し早い時間ですから」


二人は少し残念そうな顔をして寝ている三人をみつめる。ルシフェルおにいちゃんは良いとしてレンドールとモエは昨日お話をする事も出来ていない。目が覚めた時、もう出掛けてしまった後だと知ればモエは確実に大暴れする。レンドールだって会いに行きたいと言っていたのだから暴れなくても悲しむに決まっている。このまま二人を行かせてしまってもいいのかな?家族何だから何時でも会える、というのは幼いレンドールとモエにはきかない。なんと言っても会いに行こうと焚きつけたのは私だ。このまま「父様と母様はお仕事に行っちゃいました。ちゃんちゃん」では終われない。……可哀想かもしれないけれど

私は心を鬼にしてレンドールとモエを左右に揺さぶる。ゆっくりゆっくり。段々早く。


「うーん…」


「レンドールおはよう。モエもおはようして」


「っう、ふぇ……」


レンドールは唸りながら揺さぶっていた手を掴む。大きな欠伸を一つして目を開けた。目覚め凄くいいな。羨ましい。モエは目が覚めたようだけれどそのまま愚図り始めてしまった。


「に、ニナちゃん」


「モエ、パパとママおしごといっちゃうよ」


「、ぱぱ、ままぁ…」


「モエちゃんお仕事行ってきますわね」


「やだぁままいかないでぇ…もえもつれてって……」


パパとママという単語に反応して目が覚めたらしいモエ。今にも流れてしまいそうなぐらい目に涙がをためてそれでもベッドを這い母様の方へと這い寄る。母様はベッドへ腰掛けてモエを自分の膝の上へとのせる。グズグズしているモエと目を合わせ諭すように話しかけるけれども逆効果。会いたくて仕方がなかった母様が目の前にいるのに仕事へ行くという宣言をされた。それを聞いた瞬間かろうじて耐えていたものが溢れてしまったらしく涙をぽろぽろと流し泣いている。母様の胸元に顔を押し付けいやだいやだとしがみついている。


「まま、おしごと…?」


モエの泣き声に不安が掻き立てられたのかレンドールまでもが泣きそうな顔をしながら母様の側へとやってきた。母様の服の1部をきゅっと握りしめて小首を傾げている


「レンくん…」


「まま、、ぱぱ、またいっちゃうの……?れんのこときらい?」


「……嫌いではありませんよ。こんなに可愛いレンドールさんを嫌う訳がないでしょう」


「でもぱぱ、いつもいない、から、れ、れんのこと……うぅっ……」


「ままぁうわぁぁぁん……」


父様にレンドールが泣きつき母様にモエがしがみつく。二人とも大声をあげて泣くのではなく縋り付くように甘えるように泣くものだから完全覚醒したノワールおにいちゃんには止めることが出来ないようで、下二人を心配そうに見つめている。


「とても寂しい思いをさせてしまっていたようですね」


「ごめんなさいモエちゃんレンくん。もう泣かないでくださいな。二人が泣いていると私も悲しくなってしまいますわ」


「…………分かりました」


離れない意思を体全部で示す子供たちをみて父様が何かを小さく呟く。レンドールを抱えたまま扉へと進む父様に母様が声を掛ける。


「ニコル様何方へ…」


「休みを貰ってきます」


「え」


「心配せずともティアさんの分も貰ってきますよ」


「え、え」


「とうさまそんなことできるのですか?」


「そうですよ。父様は凄いですから」


「ぱぱ、お、しごといかない……?」


「はい。今日はレンドールさん達といます。なのでもう泣かないでくれますか?」


「う、うん」


「ま、待ってくださいまし!!」


母様の鋭い一声が父様とレンドールのほんわか空気を一閃する。二人は勿論のこと、恐らく一番驚いたのであろうモエは涙をとめて口をぽかんと開けたまま母様を見つめている。


「ニコル様本気で言っていらっしゃるのですか…?」


「嘘は絶対に言わない主義ですので」


「ええそうですわね。何処までも誠実な貴方様に惹かれた……ってそんな話ではないですの!いいですか!ニコル様は今や国にとってぜっっったいに欠かせない重役です!今日は休みたい、でまかり通るとは思いませんわ!」


「そこを通せられるか。私の技量の見せ所ですね」


「そんなワイルド貴方様も素敵な……って違いますの!ニコル様!」


「父様…流石にそれは無茶ではありませんか…?」


「可能性が低いからと諦めるのは感心しませんよノワールさん。出来るかどうかを足踏みしながら考えるのではなく、今出来ることを行動しながら頭で次の手を考える。これが父様のやり方で賢い貴方に伝えたい一つ手段です。ああこれはいい機会ですね。父様が実践している所を見て盗める所があれば盗みなさい」


「は、はい父様」


「言いくるめられてはいけませんよノワールくん!まともな事を言っているような顔をしていますが言っている内容の正体は只の横暴ですの!真似をしてはいけませんよ!」


「酷いですねティアさん。僕は家族が一番大事です。仕事や国なんて比較対象にもならない。この世で唯一無二の存在で僕の心の支えとも言えます。そんな愛おしい家族がこんなに心を炒めて泣いているのを放っておけません。どの出来事よりも最優先すべき事項だと私は思います。この悲しみを拭うためにどんな事でもしたいと思うこの気持ちはいけませんか?こんなに愛しているのにこの気持ち…ティアさんには伝わりませんか?」


「伝わるとか伝わらないとかではありません!あ、ちょニコル様、近いですわ!」


…父様が思っていたよりも、いや父様といた時間は数時間に満たないのだから得られる情報の大部分を占めるのは容姿なんだけれど。それにしてのギャップが凄い。父様は少し威圧的というか子供の私でも分かる風格のようなものがある。よくいる何考えてるのか分からないポーカーフェイスなミステリアスキャラだと思っていたのに。まさか家族愛を語り、家族のために周りが聞けばコイツやべーぞと思われるようなことをぽんぽん口にするような人だとは思わなかった。これは私が思っているよりも一癖も二癖も強そう。

そんな父様は母様の頬に軽くキスをした。母様は顔を真っ赤にしている。それに反して父様は涼しい顔をしながら熱の篭った瞳で母様に魅入っている。この人子供の前でちゅーしたよ。きゃー。そんな馬鹿げた思考をしている所視界が塞がれる。何事かと思っていると「ニナにはまだ早いから」というノワールおにいちゃんの声が聞こえた。平静を装っているんだろうけれど声が若干上擦っているおにいちゃんが愛おしい。

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