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知らない世界8

晩ご飯までの時間は全てルシフェルおにいちゃんとお話をした。ルシフェルおにいちゃんはお話上手だった。小さな私が退屈してしまわないように興味のそそる話をたくさんしてくれた。後、話し方が上手い。何となくで察するのか疑問が出た時には聞いてくれる。自分ばかりがはなすのではなく話の主導をこちらに渡してくれる。と挙げればキリがない。話すテンポとか流れとか、ずっと話していて疲れない心地のいいものだった。


「まえにね、いもうととおとうとにはやさしくするだけじゃあなくてダメなことはダメだよってしかってあげるのがだいじってほんにかいてたの」


「そう、ちゃんと駄目なことは教えてあげないと分からないまま大人になっちゃった時、辛い思いをするのはレンとモエだからね。だからね、おやつの時もとめてあげてほしかったな」


「?」


「モエにケーキ頂戴っていわれてあげちゃったんでしょ?」


「はんぶんだよ!ばんごはんたべられなくなっちゃったらこまるもん」


「うーんそれは偉い、のかな?」


「…ニナいいこじゃあない?おねえちゃんはやさしくないの?」


「お姉ちゃんが優しいのはとても良いことなんだけど。…ニナはモエとケーキを交換したの?」


「えっと、ないよ」


「じゃあモエは1人で自分のケーキを食べてニナのケーキも食べちゃったの?」


「う、ん」


「ケーキをあげてモエにありがとうって言われた?」


「……ない、の」


「…ニナ。それは優しいじゃないよ」


「……わかんない」


「んーどう説明すればいいのかな…」


「ルシフェル様ニナ様。夕食のお時間です」


気がつけばもう晩ご飯の時間になっていたらしい。そばにいたアリスさんが話の切れ目にそっと伝えてくれる。…優しいとは違う。うーーーん?難しい……


「もうそんな時間か。まあそんな深刻に考えないで。可愛いお顔が台無しだよ。ニナはまだ5歳なんだからここから色々体験して感じて考えていけばいいよ」


そう言いながら頬を両手で包まれてもにもにと揉まれる。おにいちゃんの手大きいなー私の顔包めちゃうんだね。でもねおにいちゃん。私一応10何年と過ごしてきた身でして…その中でこの壁にぶつかったことなかったんですよ。果たして私が理解できるかどうか今から凄く不安です。あ、でも有力情報ゲット。私は5歳。


「さて食堂に行こうか」





「ぼくもあそびたかった……」


食堂へ着いてから第一声に聞こえたのは悲しみに満ち溢れたそんな声だった。私達が来るのを待っていたようでレンドールは扉を開けた瞬間その言葉を発した。


「ごめんねレン。でもレン気持ちよさそうに寝てたから起こせなくて」


「でもぼくもルーおにいちゃんとおねえちゃんといたかった…」


「じゃあ今度はレンドールも一緒にお茶会しよう」


「さっきがよかった。なんでさっきよんでくれなかったの?」


あまりにも悲しそうに言うものだからレンドールが気がついたら寝ちゃってたんでしょーっと茶化すことはできなくなった。流石のおにいちゃんも言葉に詰まっているようだ。このままいけばイタチごっこになってしまう。ふとレンドールの後に控えているユリヤさんを見るとこちらも困った顔をしている。多分おにいちゃんと同じような事を言って同じようなセリフを返されたんだろう。それはそうでしょう。おにいちゃんやユリヤさんの気持ちは大いに分かるけれど子供のレンドールからすればそんな事関係ないもんね。そうだなー…このままではご飯にありつけない。どんなご飯が出てくるのか実は楽しみにしていたんだからそれは勘弁してほしい


「わたしレンドールがいなくてさみしかったよ。なんでレンドールおきてくれなったの?」


「ねむくて、きがついたらねちゃってたの…」


「えーニナはすっごくたのしみにしてたのに!」


「え、えっと」


「しょうがないからこんどはぜったいにおきておはなたべようね。ぜったいだよ」


「わかった!こんどはぜったいおきてる」


「じゃあごはんたべよう?」


「うん!」


泣きそうな顔は何処へいったのかレンドールはニコニコと私の手を取り席へと歩き出した。チラッと盗み見たおにいちゃんとユリヤさんがぽかんとしていて面白かった。どうしてレンドールが納得したのか分からないんだろう。子供って言うのは複雑。大人にとって同じことだとしても全然違う。今のはぼくはわるくないのに、をぼくもわるい、に変えてあげればいい。けれど上から言われてしまっては反抗したくなるし、下手に出過ぎても反抗したくなる。から今の弟と姉という立場は凄くいい。ほぼほぼ対等に話せて尚且つ少しだけ姉という分、立場が上だ。まあ単純にレンドールが聞き分けのいい子だって言うのもあるんだけれど。座った席はおやつの時と同じ場所。隣にはモエもいる。違うところといえばテーブルセッティングが行われている所。配置を見る限り洋食だ。これならテーブルマナーもわかるぞ……!ってこれでマナーは全然違うものって言われた場合詰みますので記憶喪失を片手に好き勝手やってやる。立ったままだったおにいちゃんは黙って私の斜め前の席に座った。レンドールの前の席だ。「おにいちゃんは僕の前の席に座って!」と言うレンドールが容易に想像出来て微笑ましい。


私達が席につくと料理が運ばれてきた。目の前に置かれたのは一皿。そのお皿の中には白、緑、赤と綺麗な三断層になっているテリーヌ。おーフランス料理のフルコース?見たこともない料理が出てくればそれはそれで嬉しいけれど見知った料理もいいね。ご機嫌に料理を眺めていると隣のモエが大きな声で言った


「ねえパパとママは?!」


「本日も御多忙故にお食事に間に合わないそうです」


「えー!やだーきのうもおんなじこといったー!!パパとママがこないとモエたべない!」


「モエ我儘言っちゃダメだよ。父上と母上は忙しいんだから」


「やだやだやだーーーー!」


バタバタと暴れるモエ。わーわーと喚き散らして正直に五月蝿いと思ってしまった。いつもなら気にならないけれどイライラするのはお腹が空いているからなんだろう。おにいちゃんと軽くお菓子を食べたけれどこんなに美味しそうなものを前にお預けはあんまりだ。従者の人達がごちゃごちゃしているけれどもう無視して食べてしまおうかと思った時、食堂の扉が開いた


「遅れた」


その人を見て私は驚いた。黒いロングコート。黒いシャツ。黒いクラバット。黒いズボンと黒ファッション。そして暗闇よりも純粋な黒と人目を引く鋭い赤色の目。私と同じ髪と目の色だ!初めて見た!


「どうかしたの?」


「少し長引いただけだ。……モエ、また暴れてるのか。ファンファーニ家の次女が聞いて呆れるな」


「ノワール」


「お前が甘やかすからこうなったんだろ」


「それにしても言い方がある。まだ4歳だよ」


「もう4歳、だ。そうやって何時まで甘やかすつもりだ」


ルシフェルおにいちゃんがその人に声をかける。コートを脱ぎクラバットを外し、としている間にルシフェルおにいちゃんとちょっとした言い合いをしている。ノワール、ってことはこの人がもう1人のおにいちゃんか。よかったー!モエもレンドールもルシフェルおにいちゃんもみーんなブロンド髪だから少し心配だったんだよね。これで心置き無くご飯が食べられる。


「……うっうわあああん」


と思っていたら隣から泣き声がした。モエだ。そういえば五月蝿くなくなったと思ったら今度は泣いてるのか!忙しい子だなっ


「どうしたのモエ。ごはんさめちゃうよ」


「っパ、パパとママにあいたいよぉックおにいちゃんきらい!ノワールおにぢゃんなんでええぇきらいぃぃ」


「おにいちゃんにきらいっていっちゃだめだよ」


「うああぁぁぁああ!」


一向に泣き止む気配がない。どうしよう。


「もう!ないたってママもパパもかえってこないでしょ!……アリスさん!」


「はい此処に」


「ふたりはいつごろかえってきます?」


「正確な時間は存じ上げませんが…日付を回った頃にはお帰りになられるかと」


「そのころあいにいったらおこられますか?」


「……そうですね。前例は御座いませんが問題はないと思います」


「そうなんですね、ありがとうございます。モエ。今日の夜、パパとママに会いに行こう」


「っぱ、ぱとままに……?」


「そう!よるおそくなるからちゃんとごはんたべてげんきにならないとあいにいけないよ」


「!ごはん、たべる……」


パパとママに会えるかも知れないという希望ができたからかモエは意外にもすんなり泣き止んだ。昨日も会えなかったらしいからモエも寂しいのだろう。お父さんお母さん大好きなんて可愛いなあ


「おねえちゃん、ぼくもパパとママにあいたい」


「じゃあレンドールもちゃんとごはんたべようね」


「うん!」


やっとゆっくりご飯が食べられる。無言でいただきますと挨拶し、マナーに乗っ取りフォーク、ナイフを持つ。ナイフを入れた瞬間染み出た旨味エキスにもう我慢出来なかった。夢中になってご飯を楽しんだ

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