339:【TRI-PLETTE】DYRA、電源タワーへ突入! そしてタヌも最後の舞台へ
前回までの「DYRA」----------
ついに西の果てのあの塔までたどり着いたDYRA。入口を探していると、そこにはルカレッリがいた。DYRAといたアントネッラの飼い犬が二人を戦わせまいと身体をはる。
DYRAの周囲に無数の青い花びらが舞い上がる。
銃に覆い被さる形で立っていた白い子犬がとっさに走り出すと、ルカレッリの前に駆け寄った。そしてDYRAの方を見ると、甲高い声で吠え続ける。
「あれ……!」
ルカレッリが呟いたときだった。DYRAに向かって吠えていた子犬がここで一転、ルカレッリの足下の裾に噛みつくと、強く引っ張る。
「なっ!? えっ!?」
子犬に噛みつかれ、引っ張られるまま、ルカレッリはDYRAから離れようにゆっくりと後ろへ下がった。しかし、数歩動いたところで、背中が塔の外壁に当たった。
「当時者でないなら、ここにいる資格はない。目障りだ」
DYRAは言い切った。だが、ルカレッリは引き下がらない。
「そういう話なら、僕だって当時者ってことになります!」
まくし立てるように彼は続ける。
「アントネッラはハディットさんの元から逃げ出しています。でも、犬はここにいる。妹は今、どこにいるんですか? そのマイヨって人もどこに?」
ルカレッリの言い分に、DYRAは呆れたと言わんばかりに冷たい視線を注ぐ。
「お前は本当に、状況を察せないバカなんだな。その犬ですら、犬なりに答えにたどり着こうとしているのに」
そう告げると、DYRAは踵を返した。数歩歩いたときだった。
「あの、ここの中に入りたいんですよね? 仕組みはわからないけれど、ここは中から開けてもらうか、鍵がないと」
「……!」
ルカレッリの言葉が背中にぶつけられた途端、DYRAはハッとした。そうだ。塔へ入った人間──子ども──がいたではないか。
ひょっとしたら、自分やRAAZが出入りしていた場所と同じように、条件があえばどこからともなく入れるようなそれではないのか。自分が知る限り、RAAZはこの塔に自由に出入りできていたはずだ。
「もしかして」
塔へ入るための鍵と錠は、真鍮でできたあれのようなものではなく、目に見えるものではないのではないか。
DYRAは一つの可能性を思い浮かべるとダメでもともとだとばかりに手を壁に置いた。そのままの体勢でいると、子犬がルカレッリから離れ、外周沿いを少しだけ走った。ほどなくして止まると、その場でキャンキャンと吠えた。
「何だろう?」
ルカレッリはもちろん、DYRAも子犬がいる方へと走った。子犬が立っているその場所の壁の一角だけ、液状であるかと思わせる光を放っている。
「あっ」
ルカレッリが反射的に壁へ腕を伸ばす。すると、水に浸すがごとく、壁の向こうへと入っていく。
「これっ」
声を上げるや、ルカレッリは身体を壁の中へと入れた。そのまま彼は壁の向こうへと消えた。反射的に子犬も飛び込んだ。
DYRAは自分を差し置いて入っていったルカレッリに呆れつつ、中へ入ろうとしたが、一足遅かったのか、壁はもう、通常のそれに戻っていた。自分だけ入りそびれたDYRAが苦い表情で天を仰ぎ見たときだった。
「こっちだ」
突然、先ほどの場所からそこにはいないはずのRAAZの声が聞こえた。DYRAは反射的に振り返ると、剣を霧散させながら駆け戻る。
「いつの間に来ていたのか。それにお前──」
「言いたいことはだいたいわかっているから、落ち着け」
言うだけ言うと、RAAZはDYRAの手首を掴み、抱き寄せる。そのまま抱きしめると「行くぞ」とだけ告げた。二人の周囲に赤い花びらが舞い上がり、その姿は消えた。
「あ、あれ? ここどこ……?」
タヌはあたりをキョロキョロと見回した。見渡す限り鈍色の床と銀色の壁や天井。自分が一体どこにいるのか皆目見当もつかない。両手首と両足首、それに両膝がそれぞれ茶色の紙だか布地でグルグルに巻かれており、身体を思うように動かせない。紙か布なのに、まるで蝋か糊で固定されているみたいだ。
巻き付けられたものをどうにかするべく、タヌは縛られたままの両手を両膝へと近づけ、破ることはできないか試みる。
その最中だった。
「──タヌ君をどうするつもり!?」
どこからか、アントネッラの大声が響いた。しかし、姿はない。近くの違う場所にいるのだろうか。奇しくも自分のことを話しているとは一体どんな話なのか。タヌは耳をそばだてる。
「──」
誰の声かはわからないが、男性が彼女と何か話しているのだけは辛うじて聞こえる。
「──どういうことよっ!?」
再びアントネッラの声。話の流れが見えない。
「──」
「──何ですって!?」
「──」
そのまま、声は遠くなっていき、やがて何も聞こえなくなった。
タヌは周囲に誰もいなくなったのではと判断すると、身体の自由を取り戻すことに集中した。
布地の裏側の糊が強く、ベタベタするが、気にしていられない。
「あ……」
ピリッという音と共にタヌは気づく。小さな亀裂が入ったが、グルグルと重なっているところは強度が増していると。ここで、タヌは力任せに切れ目のところを両手で摘まんで剥がそうと試みた。
どれくらいの時間が掛かっているのだろうか。タヌの中で焦りの色が浮かび始める。
そこへ、コツコツと小さな音が規則的に聞こえてくる。
「あれ?」
音は少しずつ、ハッキリと聞こえるようになる。聞いているうち、タヌはそれが足音だと気づいた。誰か助けに来たのだろうか。少しだけ期待する。
「タヌさん」
意外な人物の声に、タヌは顔を上げた。顔を上げたタイミングで、声の主が銀色の壁の一角から現れた。
339:【TRI-PLETTE】DYRA、電源タワーへ突入! そしてタヌも最後の舞台へ2026/01/12 05:40
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三連休はこの冬一番の大寒波到来とのこと、ひときわ寒い日々ですが、皆様如何お過ごしでしょうか。
改めまして、ここまで読んで下さってありがとうございます。
また、今回初めて読んだよ、という皆様も、せっかくのご縁です。是非ブックマークなどで応援よろしくお願いします。
唯一無二のゴシックSF小説、最後まで一気に走りますので、一層の応援をどうぞよろしくお願いいたします!
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