表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
314/330

314:【?????】運命を揺るがす話し合い。タヌは重い選択を迫られる

前回までの「DYRA」----------

 DYRAとRAAZはマイヨにハーランとフィリッポの件を報告する。ハーランのやりたいことも含め、概要はわかった。しかし、DYRAにとってこの件の対応をどうするかは即ち、「タヌとの約束、ハーラン阻止」このどちらを優先するか厳しい選択を迫られるのだと理解する。


 マイヨと別れ、メレトへ移動したDYRAとRAAZは、丘の上へと向かった。目指すは何度か利用した別荘代わりの屋敷だ。

「さすがのハーランもここにはまだ手を伸ばしていなかったか。地下移動などで痕跡を消したから捜索が追いついていない、か」

 RAAZの言葉に、DYRAは西の果てからトロッコなどを使ったからか、などと想像しながら聞いた。

「とはいえ。キミとガキはハーランも必死になって捜しているだろうからな。人工衛星で見つけられるのは時間の問題か」

 DYRAはRAAZの言葉に被せるように尋ねる。

「それよりお前。タヌに『鍵』の件、どう言うつもりだ?」

「私個人の意見だけなら、話すより殺処分して取り返した方が早いと思っている」

 RAAZにとっては一番手っ取り早くてマトモな折り合い点だと思う一方、タヌが応じるだろうかと考える。生きるか死ぬかの瀬戸際になればタヌだってなりふり構わないだろう。では、折衷案として自分が預かるならどうだろうか。それも有り得ない。自分がタヌなら間違いなく大切なものを他人に委ねない。RAAZだって、死んだ女の大切なものを他者に預けるはずがない。それと同じだ。

「私が正攻法で話をしても、応じないのは目に見えているしな」

「では殺す。それで、良いか?」

 歩み寄れる、寄れないのラインがあまりにも明確な話故、断られてしまえばもはやそれまで。力ずくで奪い返すしか方法がない。

「それだけしかないのかRAAZ。とはいえ、私がハーランでもこんな美味しい(・・・・)状況なら……」

「ん?」

その瞬間(・・・・)か、それより前に勝負に出るだろう」

「ああ。キミが考えることくらいはわかるさ。それに、私でもそこは同じことを考える」

「それでも言わせてくれ。私は自分で納得して、タヌの父親捜しに最後までつきあうと決めた。けれども」

 話がややこしくなって面倒になる前にさっさとどうにかしなければならない。RAAZにしてみれば、現時点でタヌから『鍵』を取り返すにあたり、それ(・・)が考えられる最適解。DYRAは納得できない。それでも、今置かれている自分たちの状況を考えれば、事態がこの先、どう転ぶか想像できない。となると、普通の人間とは意味するところこそ異なるものの、DYRAと、それこそRAAZやマイヨであっても身の安全を考える必要がある。

「本物と替え玉のことを知ってしまった以上、タヌに……」

「『黙っとく』という手もあるぞ?」

 RAAZから飛び出した、思わぬ一言に、DYRAはハッとし、続いて怪訝な表情を浮かべる。RAAZは何かを見透かしたような顔で、続ける。

「ものは考えようだ。少なくとも、あの島に飛ばされるまでは替え玉を本物と信じて追っていたわけだしな?」

「お前……!」

 沈黙を保つだけならいざ知らず、よもや真実を知りながら嘘をつけと言うのか。DYRAはそう反論しようとするものの、言葉が出てこない。RAAZが畳み掛ける。

「ハーランがあの親父本人を連れてガキに、『こっちが本物だ』と言ったらその瞬間、我々はどの道『詰む』んだ」

 DYRAはRAAZの表情や言葉の裏側に、含むもの(・・・・)があると感じるものの、それが何かまではわからない。

「ガキの件は難しく考えるな。そんなことより私やキミが今最初にやることは、『鍵』の確保だ」

 頭でわかることと、腹に落ちることがかくも乖離している現状に、DYRAは下唇を噛む。RAAZは一転、厳しい表情で続ける。

「『トリプレッテ』を取られてしまえば、我々の生殺与奪権がハーランに奪われる。そうなれば我々もガキがどうの、なんて言う余裕などなくなる」

 話しながら歩いているうち、二人は別荘の敷地内へと足を踏み入れた。

「キミはここで少し待ってろ」

「何故だ?」

「ガキをテラスに呼んでおく。ここには何でも屋も一緒に来ているからな、私が人払い役を引き受ける。呼び鈴の音が聞こえてきたら、建物には入らず、テラスへ行け。ガキと二人だけで会えるはずだ」

「わかった。すまない」

「だが、この件でのガキとの話し合いはこの一度限りだ。むしろ、話がまとまらなかったら『そこまで』くらいの覚悟を決めておけ」

「そんなっ……」

「それとあと一つ。ガキと話すときは、ハーランにすべて(・・・)を見られ、聞かれているくらいの気持ちでやれよ?」

 RAAZに反論しそうになるが、DYRAは最後の言葉で何か(・・)に気づくと、喉のところでぐっと抑え込んだ。

 DYRAは、RAAZが建物へと歩き出す後ろ姿を黙って見届けた。このとき、独り言のような呟きを聞き逃さなかった。

(『人は一番ほしいものが手に入る瞬間、ガードが下がる』……?)

 それからしばらくして、微かではあったものの、DYRAは何度か呼び鈴の音を聞いた。

 タヌがいるはずのテラスへと、DYRAはゆっくりと歩き出した。




 RAAZにテラスで朝食を採るよう告げられたタヌは、屋敷にある蔵書部屋から出てくると、昨晩、屋敷の小間使いから借りていた部屋の鍵らしきものを手に、四人用とは思えぬ大きめなテーブル席で待った。

「あれ?」

 タヌはテーブルに置かれた食器類を見てあることに気づいた。自分の分しかない。向かい側にはコーヒーカップとソーサーが置いてあるだけ。キリアンはもう済ませてしまったのだろうか。それとも、別の用事でどこかへ出掛けてしまったのだろうか。あれこれ考えていたときだった。

 建物の方から呼び鈴の音が聞こえた。来客かな、などと思いながらやり過ごすと、そのうちガサガサと、芝生を踏む音が聞こえる。その音がだんだん大きくなり、何かが近づいてくることがわかる。

「キリアンさんかな?」

 タヌは席を立ち、音がする方へ目を懲らす。少し離れたところに位置する蔓の植物で作られた緑の壁の向こうに人影が見えた。

「あっ……えっ……!」

 壁の向こうの人影が誰かわかったとき、タヌは表情をパッと明るくして駆け寄った。

「DYRA!」

「……タヌ」

 DYRAの表情が少し硬い。それでも、彼女が戻ってきたことが嬉しい。タヌは目に涙を溜めて、喜びを露わにした。

「無事で、良かった! 本当に、良かったっ!!」

「ああ。泣くほどのことでもないだろう?」

「あっ……」

 DYRAから指摘されたタヌはハッとすると、すぐに手の甲で溜まった涙を拭った。

「そうだ。DYRA、あのっ」

「何だ?」

「ボクたちが無事にRAAZさんたちと再会できるようにするためだったとしても、その、一人にして、ごめんなさい」

「別に。気にしてない」

 DYRAは気にしていなくても、タヌは彼なりに気にしていた。

「アントネッラさんがあんなこと言ったの、その、マロッタでRAAZさんすごい怒っていた。マイヨさんも嘆いていた」

「些末なことだ。彼女の言葉は、お前たちから見れば『さもありなん』だ。一々気にしていない」

「えっ」

 DYRAの言葉を聞いたタヌは表情を硬くした。言葉がというより、口調が、というべきか。まるで、出会ってそんなに経っていなかった頃に戻ったような素っ気なさだ。

「お前に色々伝えたいことがある。そして考えてもらいたいことも」

 タヌは、気の利いた言葉が出てこず、小さく頷くだけだった。

 二人はいったん、テーブル席に着いた。いつの間にか、タヌの席には朝食が用意されていた。ワンプレートにリコッタパンケーキと、|ふんわりとろとろに炒られた半熟卵スクランブルエッグ。それから具が多めに入ったトマトベースの野菜スープ。DYRAが座っている席にもコーヒーセットが置かれている。

「伝えたいことって、何?」

 タヌは朝食に手をつけることなく、DYRAへ問う。

「時間が惜しい。お前たちと別れてから私に何があったのかとか、そんなことを何から何まで全部話せばキリがない。だから端的に言う」

「う、うん」

 タヌは、DYRAが経緯を話すのを嫌がったこともだが、彼女の鋭い眼差しと真剣な口調とに嫌な予感を抱く。だが、その空気に呑まれまいと振り払うように深呼吸をした。

「言って」

 DYRAは小さく頷くと、そのまま話す。

「お前の父親と会った」

「えっ!」

 いきなり核心を突いた直球に、タヌは思わず仰け反った。DYRAはコーヒーをカップに注ぎつつ、話を続ける。

「少しの間だけだったが、誰にも邪魔されることなく、二人だけで話をすることができた」

「ほ、本当……? 本当なの!?」

「ああ」

「父さん、ひどいこととかしなかった?」

「そんな素振りはこれっぽっちもなかった。お前の父親自身の口から、本当にやろうとしていることや、お前への気持ち、そんなのを色々聞けた」

 DYRAの言葉に、タヌは安堵した。ひどいことをされなくて良かったと。それ以上に、自分の父親が根っからの人間のクズなどではなかったとわかったことに。同時にタヌは表情を曇らせる。

「どうして……連れてきてくれなかったの?」

「お前の父親は、ハーランと一緒にいたからだ」

「えっ……」

 二人だけで話せたと言いながら、ハーランと一緒にいたから連れ出せなかったとはどういうことなのか。二人だけだったなら──。タヌはそれをぶつけようとするが、堪えた。DYRAの話はまだ終わっていないのだ。それに、仮にマイヨがこの場で一緒にいれば、事実確認が先だと自分を止めるに違いない。タヌは納得できない思いを表に出さないように努めて、DYRAに続きを話してもらおうと、質問を投げる。

「DYRAは、父さんと、どこで会ったの?」

「トレゼゲだ」

 思いも寄らぬ場所の名に、タヌは目を見開いて驚くと共に、耳を疑った。とても遠い島ではないのか。そんなところへほんの数日でどうやって行って帰ったのか。DYRAはともかく、父親はあの後どうやって、それも二、三日のうちに行くことができたのか。タヌは頭の中にわき上がってくるものすべてをDYRAへぶつけたい衝動をグッと呑み込む。

「まって、えっと、えっと」

 一体DYRAはどこにいたのか。どこで父親と会ったのか。どうして父親はハーランといるのか。頭の中で次々あれこれ浮かび上がる。考えなしにぶつけるように言って、DYRAを傷つけてはいけない。自分でも整理しきれないのだから、自分の頭の中を整理するのを兼ね、核心に近い部分の質問からぶつける。

「と、父さんは、いや、父さんとDYRAは、具体的に何を話したの?」

「今までのことを考えれば、信じられないだろうが」

 DYRAは一呼吸置いてから、告げる。

「お前の父親は言った。……自分の子や孫たちが『文明の遺産』が『財産』として戻って使えるようになって、文明が進歩して、便利になって、幸せに生きられるならば……そう思えば、頑張れる。と」

 予想だにしなかった言葉に、タヌは返す言葉が浮かばず、それを探し求めるかのように視線を泳がせた。

「えっ……」

「お前や、まだ見ぬ子孫たちのためにハーランと組んで、あの男と共に文明を再興させる。そしてそのための『鍵』となるのが、お前が持ち歩いているあの『鍵』だ」

 あの『鍵』が大事なものであることはわかっていた。一緒にあった紙には「Verita」と書いてあったが一体どういうことなのかと、心の片隅で気にはしていた。まさかそういう意味だったのか。今この瞬間生きている世界より、昔はずっとずっと、それこそRAAZやハーランがいた世界は進んでいた。それを「真実(Verita)」と言い表していたのか。

「父さん……」

「こんなことを聞いたお前も、今、これから自分が何をすれば良いのか思いめぐらせているのだろう?」

「うん」

「では、私はお前に、敢えてもう一度聞く」

 DYRAは睨むような鋭い視線をタヌへぶつけた。初めて出会って間もなかった頃のような眼差しに、タヌは自分の心臓がぎくりと嫌な音を鳴らしたような気がした。

「お前は、何をしたい? 何をするために、私と行動を共にした?」

「えっ……と、父さんを捜すため。今は『止める』ためも、ある」

 タヌはDYRAの瞳を真正面から自分の瞳で受け止め、答えた。

「その、お前の父親が、お前や、まだ見ぬお前の子や孫のために振る舞っていると知ってなお、『止める』と、言い切れるか?」

「うん。だって、ハーランさんと一緒に何かをするってことは、DYRAやRAAZさん、マイヨさんに危害を加えるかも知れないってことでしょ?」

「そういう風に答えるのは簡単だ。だが現実問題、お前、どうやって止めるつもりだ?」

「……!」

 DYRAの質問に、タヌは詰まった。

 確かに、「()めて」と言って()めてくれるのなら、そもそもこんな形で問題が起きるはずない。よしんば起きてもここまでこじれるはずがない。

「それでも、ボクは一対一(・・・)ででも会って、父さんを止める!」

 DYRAは微塵も表情を変えなかった。

「ハーランが立ちはだかっても、それを言えるか? できるか?」

「できなくても、やる」

 ここまで来たら「できるかどうか」ではなくて「やる」選択肢しかないとタヌは腹を固めていた。

「だいたい、お前の父親は文明を進歩させるためにハーランと組んだんだ。この際だから言っておく。『進歩のための邪魔者』として、RAAZやマイヨ、いや、恐らく私もその中に、そう、排除の対象に入るだろう」

「ボクを助けてくれたDYRAやRAAZさん、マイヨさんをそんなっ」

 タヌの言葉を聞いた途端、DYRAは呆れ顔で告げる。

「甘いぞタヌ」

「だって、ボクを助けてくれた人がひどい目に遭うかも知れないなんて、イヤだよ」

「お前の優しさには感謝する。だがな、今まで出会った街や村の人たちはどうだ? 私やRAAZに何の義理もない。便利になるのを邪魔するだけなら、鬱陶しいだけだ」

 何の義理もない人たちにとってはどうなのか。DYRAがそこまで冷静に、残酷な現実を突きつけてくる。タヌは返す言葉が何一つ浮かばない。確かに、自分は助けられたからこそ言える。一方、ペッレでアオオオカミを撃退した際、DYRAへ冷たい視線を向けた人々や、街を焼かれたピルロの人たちの目線で見ればどうだろうか。ピルロについては、マイヨは別かも知れない。RAAZも生き埋めになった人たちを助けたからそこまでは言われないかも知れない。でも、DYRAは──?

「お前、そんな甘いことを言っていると、『究極の選択』を迫られたとき、どうするつもりだ? 父親か私、どちらか選べと言われたら?」

「あ……」

 DYRAからの思いも寄らぬ質問に、タヌはハッとして、視線を泳がせた。どうして、そんな選択の話になってしまったのか。いきなり聞かれて、今すぐ答えろと言われても。タヌは言葉に窮し、口を小さくパクパクさせる。

「答えられないのはわかりきっているから、安心しろ。そして、お前がどちらを選ぶかも私はわかっている」

 そう言って、DYRAは少しだけ口角を上げた。

「お前は元々、両親を捜すために私と行動を共にしたのに過ぎないのだろう? 命ある限り、私と一緒にいるわけでもないだろう」

「うっ……」

 それを正面から言われることが、タヌには辛かった。そういう関係だと正面切って言われてしまえば身も蓋もないからだ。

「そして私も、お前に最初に言ったはずだ。『最終目的地へは一緒に来るな』と」

 タヌは虚を突かれたような表情でDYRAを見る。

「そ、それってつまり……」

 DYRAの最後の目的地って? タヌはそれが気になった。詮索禁止の約束がある。これを聞くことはできないが。

「タヌ。これについてだけは、私も夢にも思わなかった」

 ここでDYRAはコーヒーを一口、飲んだ。そして、頭の中で言葉をまとめるような沈黙が流れた後、ふうっと息を吐く。

「私が行くべき最終目的地は、奇しくもお前の父親が求めてやまぬものがある、その場所(・・・・)で、そしてさらにその先だった、ということだ」

「え……な……」

 DYRAの言葉がタヌの中に入ってこない。音の塊が意味ある言葉として認識されるようになるまで、時間が必要だった。

「ハーランがお前の父親をも抱き込んでこの地に築こうとする世界が、お前たちには、いや、私にすらも想像が及ばぬ世界。たまに耳に入ったRAAZやマイヨの会話の端々から、それが明るい未来をもたらすとは思えない。けれど。そんな漠然とした、根拠になる何か(・・)すら示せぬお前が『会って話せばわかる』とか言って、ノコノコ父親に会いに行く? ハーランの思う壺だ。『鍵』を奪われて、それこそ、父親に会う前に殺されて終わりだ」

「でも、それでも……」

 タヌの中で、答えは出ていた。

「じゃあ、どうすれば父さんに会える!?」

 ハッキリした声に強い意思をのせ、DYRAへ言った。

「どうすればボクの言葉は届く!?」

「お前が今言っている言葉は……アオオオカミに道理を説くのと同じくらい、無理な話だ」

「そんなっ」

 DYRAが小さく肩をすくめ、小さく息を吐いた。

「とはいえ、こうは言ってみたものの……それでもきっと、お前は父親に会うために走るんだろう。だから、今、私から言えることは三つ」

 タヌはDYRAが何を言い出すのかと、じっと彼女を見る。

「一つは、『真実は思いも寄らぬところにある。目に見えるものだけに惑わされるな』」

「真実は、思いも寄らぬところに……?」

 DYRAは頷いてから続ける。

「二つ目は『ハーランは決して嘘をつかない(・・・・・・)。でも、それと同じように、決して本当のことも言わない(・・・・・・・・・・)』」

 遠回しに、ハーランを信じてはいけないと言ったのと同義だ。何故、「信じるな」ではないのか。タヌは納得できない一方で、この言葉の裏に何かが潜んでいるのではと考え、心に留める。

「最後に。『お前が縋ると決めた、残った半分の希望に縋れ。信念を持って、絶対に手を離すな。そうすれば、お前が思っているのとは違う形ではあっても、道は開ける』」

 DYRAが言い終わったとき、時間が止まったかのような静けさが訪れた。

 しばらくした後。

「DYRA」

「何だ」

「『詮索するな』って言ってたけど、ボクは、これだけは聞きたい。どうしても。……父さんとDYRAが行くところは、同じ場所。でも、DYRAは、さらにその先、って」

「ああ」

「DYRAの言う『その先』って、RAAZさんはそこにいる?」

 ハーランと行動を共にする父親とRAAZの利害が衝突する。そうなれば結果は火を見るよりも明らかだ。それだけは回避したい。ハーランの手先として処分(・・)されることだけは避けたい。タヌは心のどこかで、DYRAが突っぱねることを期待しながら、問う。

「……私も、色んな情報のカケラを集めて、それをパズルのように並べて、浮かび上がっただいたいの感じでしかわからないところがある。それを踏まえて聞け。お前の父親とハーランの目的はそこ(・・)にあるもの(・・)。宝探しで言えば、宝の在処(ありか)に記された場所にある宝箱の中身。文明を再興するための宝物を手にし、私たちを殺した上で……だろうな」

「それから」

「逆に、RAAZやマイヨが手にすれば、どうなるかわからない。ただ、私たちが身の安全に怯えることはなくなる。それだけだ」


 1か月ぶりになります。お待たせして申し訳ございません。

 転職などが重なってしまい、なかなか更新がままなりませんでした。


 スタートした「最終章」、初っぱなからDYRAとタヌの空気がヤバくなっています。


 3月23日(日)はTAMAコミ10(東京・八王子市 東京たま未来メッセ 12:00-16:00)

 こちらに参加いたします。是非、遊びに来て下さいませ! 「ビッグサイトまでいく体力はちょっと」という方、「バタバタして立ち寄れなくて」という方、今回参加のイベントはこじんまりしたイベントですので、読み切りの「DYRA SOLO」含めてゆっくりご覧いただくことができますよ。


 5月12日(日)は文学フリマ東京40参加予定です(東京ビッグサイト南ホール 12:00-17:00)

 サークルスペース確定次第、追ってまたご報告させていただきます。併せてどうぞよろしくお願いいたします。


 また、今回が初めてWeb「DYRA」読んだよ、というご縁な方、今後ともよろしくお願いします! 併せてこの機会に是非ブックマークよろしくお願いいたします。

(最速で読めるのはpixivになります。こちらは月曜の朝には読めます。何ならフライングも有り得ます)


 それではまた次回!


-----

即売会参加予定は以下の通り。


3月23日(日) TAMAコミ10

東京たま未来メッセ D27-28

サークル「11PK」

-----


更新履歴

314:【?????】運命を揺るがす話し合い。タヌは重い選択を迫られる2025/03/10 20:00

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ