294:【AGNELLI】大義のためなら、考え得る限り最も卑劣な手も厭わない
前回までの「DYRA」----------
マロッタへ、ピルロから脱出したキエーザとキリアンが戻ってきた。二人は、ピルロで助けたジャンニと、アントネッラの愛犬ビアンコを伴っていた。そして、ジャンニはタヌたちへピルロで何が起こったか口を開いた。
自分がだけが助かり、志を同じくしてくれる街の人々がアオオオカミにことごとく喰い殺された。それを話したところでジャンニは押しつぶされそうだった。
「ジャンニ。打ちひしがれるのは今じゃない」
彼を気遣う役目はキエーザやキリアンが担ってくれる。必要ならアントネッラも。だからこそ、冷たいと言われようと構わないとばかりに、マイヨは徹底的に聞き取りに徹する。
「君が反対派の会合に行ったときのことだ。どこで、何人くらい参加していた?」
聞いていたタヌはここでちらりとRAAZを見る。さっさと話せと言いたげな雰囲気だ。
「場所は広場から東南側、以前焼き討ちされた繁華街の一角にあった飲み屋を仮復旧させた。人数は、あのとき……ざっと、三〇人はいたか」
「繁華街か。ところで、今、焼き討ちも山崩れも乗り越えて無事な人たちは、時計台の集会場みたいなところに集まる以外は、どこらへんに?」
「東側、つまり川の方から見れば、市庁舎や大公邸のもっと向こうだ」
ピルロは構造的に逆C字型に作られている街だ。西側には南北に流れる川、そして北側から北北東にかけてネスタ山がある。マイヨは聞きながら、今までの勝手知ったる場所も含め、位置関係を頭の中で整理した。繁華街は南側から東南側、住宅街は東南からさらに東にある。以前ピルロ入りしたときに見つけた、貧民窟や胡散臭い人捜し屋のアジトは繁華街でもやや南西よりだ。
「そのあたりって、今は人通りとかは?」
「あまりない」
話を聞きながら、マイヨは一掃厳しい表情を見せた。
「アオオオカミが来て怖かっただろうけど、見たなら敢えて聞く。その吠えなかった六頭は、大きかったか? 小さかったか?」
「一瞬しか見ていないが、意外に小さかった気がする」
「そうか。それとアンタはいつ、どうやって隠れていた天井裏から出たんだ?」
「深夜すぎ、いや、夜明け前か。そっと抜け出した。ランタンもないから記憶と感覚だけが頼りだった。アオオオカミに見つかったら終わりだ。幸い、川に面した街の門が空け放しだったからそこから出て、川向こうに渡って夜明けを待った。無事だったのが奇跡だ」
ジャンニの顛末を聞いて、タヌとアントネッラは心底から彼の苦労を察する。対照的に、RAAZは訝るような視線で見つめる。
「次に朝になってからの話を聞きたい」
「お、俺は川岸を挟んだところから様子を見た」
「それで」
「男だけじゃない。体力がありそうな女もどんどん南へ行き始めた」
「南へいった人たちはどんな感じだった?」
ジャンニが見聞した事実だけに興味を示すマイヨの姿勢や態度に、タヌは少し冷たいのではと思う。
「手に斧とか持っているのが見えた。何人かいなくなったって話をする声も少しだけ聞こえたが、『本当に参加しない気か』みたいな、後ろ向きな」
マイヨは難しい顔をした。三〇人が六頭のアオオオカミに一気に喰い殺される。普通に考えれば壮烈な状況だ。それにしても、獣もだが、それ以上に人が誰一人悲鳴も上げないなどあり得るのか。まして、一人も逃げるために外に出ようとすらしない、など。そしてほぼ誰もいなくなったことを心配する素振りが見えないこともだ。
「次の質問だけど、君たちはどうやって会ったの?」
「あー、それ、俺から」
キリアンが手を挙げた。しかし、マイヨはやんわりと、だがしっかりした口振りで告げる。
「今はジャンニへの聞き取りだよ」
「でも、そこってどっちが答えても変わらんやろ。それに、このお兄さんもさすがにちょっと疲れ始めているみたいだし」
「キリアンさん。お気持ち、ありがとうございます。でも、マイヨはジャンニの視点で聞きたいのだと思う」
アントネッラが間に入った。
「ケガで痛むところはすまないと思っている。けど、印象が残っているうちに聞かないといけない」
マイヨはそう言うと、ジャンニが再開する。
「……南へ移動する人の流れが途切れたのを見た俺は、もう一度跳ね橋を渡ってピルロ側へいって、南へ下ろうとした」
「それで?」
「そうしたら、走って来る奴がいた。遠目にだが、その後ろからもう一人」
「つまり、走ってきたのは二人だった、で良いのかな?」
マイヨの問いにジャンニは頷いた。
「後ろの奴の顔形が何となく見えたとき、俺はとっさに、先に走ってきた奴を跳ね橋のところで引っ張り込んだ」
ジャンニ曰く、跳ね橋があがったときに外側に面する部分には、修理保全用の足場代わり兼跳ね橋が下りないなどの緊急時に鎖を通せるよう、U字型突起物がつけられているという。
「君が引っ張り込んだ人間は、この中に、いる?」
「ああ。彼だ」
質問の意図を理解したジャンニが迷わずキリアンを示した。
「彼はとっさに上着を脱いで、首の巻物も川へ捨てた。川に映った影からしかわからなかったが、人影がしばらくたたずんで、その場からいなくなった」
全員が視線でジャンニへさらに続きをと促す。
「彼は見かけない顔で、街の人間じゃないと思ったから声を掛けた。そうしたら、『大変そうな街だって評判だから見に来た』って」
ピルロで何が起こったのかを説明しながら二人で川沿いに南へ歩いた。
「……そ、それで、そのとき、また見つかって」
「誰に?」
「街の奴だった。でも、全然雰囲気が違って。殺気立った感じで」
「そいつは何て言ったんだ?」
「『失せろ』だった」
「その後は?」
「銃声がして、そいつがこっちに向かって倒れた。転がって……それで川へ」
話の流れ的に、失せろと言った直後、背後から何らかの飛び道具で撃ち殺されたのだと考えるのが妥当だ。マイヨは首を二度小さく縦に振る。
「そのときに、彼が俺を助けようと、川へ投げ込んだ」
「こんな風に」
キリアンがすぐにそのときの動きを簡単に再現した。ジャンニの肩を抱き勢いをつけて一気に飛び込む仕草だ。
「それで、難を逃れた、か?」
それまでほとんど睨むばかりだったRAAZが呟く。
「反対側の岸についたところで、俺はまた一人になった」
「彼と別れて、それから」
「山へ向かった。そのときはもう、ずぶ濡れだとかそんなの、気にしていられなかった」
「タヌ君」
厳しい表情を変えることなく、マイヨは呼んだ。
「は、はい」
「皆の分、コーヒーを用意してきてもらえないかな」
「散々な目に遭ったんだ。熱めのコーヒーがいるだろう。ついでに、その犬だって飯にありついていないんだろ? ついでに食わせてもらってこい」
付け加えるように告げたRAAZを見て、タヌはマイヨの言葉が意味することを察した。アントネッラへ声を掛けて犬を預かると、そのまま部屋を出て、階段を下りた。
タヌの足音が消えると、キエーザがそっと扉を閉め、その脇に立った。
「ジャンニ。取り繕うのはもうなしだ。何故、そんなひどいことをした?」
マイヨが問いかけると、ジャンニがハッと顔を上げた。その顔は今にも泣きそうなそれだった。アントネッラも一体どういうことなのかと言いたげにマイヨとジャンニを交互に見る。
「ちょっ……!」
キリアンが間に入ろうとするが、RAAZが鋭い視線で圧を掛け、それを許さない。
「これから見せるのは深夜遅く、ネスタ山で爆発騒ぎがあった直後だ」
そう言うと、懐からゴーグルを取り出した。
「マイヨ! いたのか!?」
「いたというより、たまたま知って駆けつけた、だ」
「ISLA。これで壁に映せるだろ?」
RAAZが厚手のカーテンを閉め切って部屋を暗くする。
「ああ、助かる」
これから一体何が起こるのか。キエーザとキリアン、アントネッラはドキドキしながら待った。
マイヨは自身が利用したゴーグルをテーブルに置くと、投影機能を使って再生し、壁を画面代わりにした。ほどなくして壁に、燃えている山の中腹の様子が映し出された。
「深夜の出来事だから、映像が皆にわかるように、露出補正をした上で、明度を上げている。『文明の遺産』だからとか、ちょっと言っていられない」
マイヨの説明の意味はわからなくても、三人は食い入るように映像を見る。ジャンニも全身をぶるぶる震わせつつ、目を逸らさない。彼らは写真を初めて見たとき、一体何が起こったのかと驚いた。しかし、今はそのときほどには驚かなかった。
映像は、真っ暗な山間を東側へと歩き続ける画面からだった。
「これは、マイヨが見たもの?」
「この眼鏡をかけたときの俺の視点、つまり、そのとき俺が見たもの、だね」
マイヨがネスタ山の中腹、現場を歩き、やがてその一角、死角のような場所にある洞窟の入口を見つける場面が流れた。画面はそのまま洞窟へ足を踏み入れ、煙が漏れてくる鉄扉の前に立ち止まる場面となる。
そのときだった。
「この子!」
アントネッラは、犬の面倒を見てくれている見知った子どもが映ると、声を上げた。
息も絶え絶えの子どもを連れ出す場面をマイヨとRAAZ以外が食い入るように見つめる。
『何があった?』
『たす……け……マイ……ヨ……』
『俺だ。マイヨだ』
ここで少しの間、画面が真っ黒になる。
「ここで俺はこいつを外して、子どもの目元に置いた。外は真っ暗だから、俺がいるってわかるように」
画面が戻ると、ここからは子どもの視点となり、マイヨが映る。
『マイ、ヨ……? たすけ……て……パルミー……さん……来て』
『何が起こったんだ? パルミーロが来たんだな?』
『う……ん……。……髭づ……ざいさ……掘る……い、さ……』
『髭面が「財産」を掘る? 「文明の遺産」?』
『あ……あれ……アントネ……ラさ……じゃ……な……ルカ……』
『アントネッラじゃない、ルカレッリなのか?』
『パル……ミ……言ったら……ドカン……て……』
『大丈夫か? パルミーロが言ったら爆発したのか? …………おい! しっかりしろ!? 目を開けて!?』
ここで映像は真っ暗になり、終了した。
「何よっ! これ……!」
アントネッラは悲痛な叫びにも似た声でそう言うのが精一杯だった。
「この子の話でいけば、深夜にパルミーロが古い避難場所に逃げている人たちの前に現れた。そして、何が起きたか話したんだろう。この子には難しい話はわからなかったかも知れない。それでも、はからずも肝心な部分を聞いていたんだ」
「できるか、マイヨに会えるか、そんなことは全然考えなくて、ただただ知らせなきゃって一心で危険も顧みず……こんな子どもが!」
キリアンが沈痛な表情を浮かべる。
「恐らく、頼れる大人が目の前で……そうなったとき、子どもの頭にはもうマイヨしか頼れないって。それで命懸けだったってことだろ?」
キエーザも心苦しい思いを隠さなかった。
マイヨはゴーグルを戻すと、それまでとは違う鋭い視線でジャンニを見る。
「アンタ、ハーランに何か脅されたんじゃないか?」
それは何の前触れもない、唐突な言葉だった。ジャンニはもちろん、キリアンもキエーザも、そしてそれ以上にアントネッラも驚く。彼らは一斉にマイヨを見る。
「なっ……!」
「どういうことだ!?」
「どうしてそういう流れになるのよ、マイヨ!!」
だが、RAAZだけはうんうんと何度か頷いた。
「ISLA。恨みを買う役は私が引き受ける」
そう言って、RAAZが話を引き継ぐ。
「ISLAは優しいからな。だから脅されてと言った。だが私は優しくないぞ? お前、ハーランとどういう取引をした?」
マイヨの言葉以上に破壊力ある一言だった。その衝撃がジャンニや、聞き役の三人を襲った。
RAAZがジャンニの真正面に経つと、彼の瞳を覗き込むように見た。
「か、会長、どうしてそのような」
困惑と動揺を露わにキエーザが質問すると、RAAZは片方の口角を上げて歪んだ笑みを浮かべてから開陳する。
「簡単だ。アオオオカミのくだりでわかった。まったく吠えずに喰い殺したという。それは私たちの文明では純血種。言い方を変えれば、『飼い慣らされた』兵器だ。確実に仕留める命令で動いているなら、アイツらはテーブルの一つでもありゃ、部屋の天井をブチ破るくらい何でもない」
飼い慣らされた兵器。この一言にキエーザとキリアン、アントネッラは耳を疑った。
「兵器だと!?」
「ああ。お前たちが見かけるでかいヤツはたくましく生き残った雑種だ」
そう言うと、RAAZはジャンニの胸ぐらを掴んで少しの間持ち上げてから、何事もなかったように手を離した。ジャンニが椅子に尻餅をつき、椅子ごと倒れそうになる。キリアンが慌てて倒れないように支えると同時に、何かが落ちる音がした。
「ちょっ! 怪我しとる人に、ひどすぎるだろ!」
キリアンがジャンニを支えている間、床に落ちたものが足下に転がったことに気づいたアントネッラはすぐに拾う。
「何? これ?」
拾ったものは小さな巾着袋だった。中を開けると、小指の爪を半分にしたくらいの金色の板が一枚、出た。
「見せて」
マイヨはすぐにアントネッラの元へ寄る。彼女はすぐに渡した。
「何? 見たこともない、綺麗な金色。真鍮よりも全然軽い」
「決まりだ」
言いながら、マイヨは金色の板をじっと見つめてからRAAZに呈示する。
「RAAZ。アンタが渡していないなら、決まりだ」
「そう、だな」
RAAZはもう一度、ジャンニを見た。
「ハーランにこれをもらったとき、どんな取引をした?」
「ジャンニ。マイヨも錬金協会の会長も、私たちが思っているより、何もかも知っていると思った方が良いわ! 全部洗いざらい、正直に話して!」
「ア、アントネッラ様……」
「……わ、わかりました」
ジャンニは項垂れた。
「夕方、集まる直前にちょうど誰もいなかったとき、呼び止められた」
皆、固唾を呑み、話を聞く。
「例の黒い外套姿で、錬金協会の人間だと思った。そいつはそれを渡してこう言った。『気をつけて。誰の目や耳があるか』と。それで俺はまさかとは思ったが、集まっているとき、万が一があってはいけないからと、見回り役を買った。で、天井裏まで見回っていたときのことだ……」
ジャンニはそのときのことを思い出したからか、少し過呼吸気味になる。
「天井裏の隙間から下の様子が少し見えた。突然、扉が開いて何かが投げ込まれ、そこから煙がばーっと出た。本当に少しの間だ。その間にアオオオカミが雪崩れ込んだんだ」
「ガス弾投擲か」
アオオオカミ襲撃時、誰も声を出さなかった理由にRAAZもマイヨも合点がいった。もちろん、ジャンニだけが襲われなかった理由にも。
「それで」
RAAZがさらに促す。
「次の日、彼を助けて、その後別れて。……ずぶ濡れになったまま山の方へ歩き出したら、パルミーロに呼び止められた」
パルミーロの名前が出たとき、アントネッラの顔が硬くなった。
「話し掛けようとしたら、もう一人、金髪の男が一緒にいたんだ」
金髪の男、のくだりでマイヨとアントネッラは思い当たる顔を脳裏に浮かべた。すぐに何かを言おうとしたが、マイヨが首を横に振って止めた。
「そうしたら、『昨日もらったもののおかげで無事でよかったね。彼も今夜、遅くなるが皆の元へ帰す。彼女も帰したんだ。もう少し自分たちを信用してほしいものだ』とだけ言って、一緒にいなくなった」
ジャンニは顔色を真っ青にしてそう言った。
「そのときの、その何とかってヤツの様子は?」
「怯えた目で何かを訴えていた。でも、俺にはそれが何かわからなかった」
「その後は?」
「もう、何が何だかわからなくて……。気がついたらもう夕方だ。皆に報告しようと思った。先に、時間的に南から戻ってくるだろう連中に言おうって」
「それで?」
「街に戻った。着替えだけ済ませて、時計台の端で待った。でも、誰も戻ってこなかったんだ」
誰も戻ってこないのくだりで、アントネッラ、キエーザとキリアンはマイヨを見る。一方、RAAZは気にする素振りも見せない。
「それで、夜になっても戻らないから、心配になって街の南側を見にいった。そうしたら騒がしくて、彼が走ってきた。街の連中に追われていた……」
そこでジャンニはがっくりと項垂れ、膝から床に崩れた。
「最後、居合わせた俺に言わせてくれ。彼の口からは、酷や」
キリアンが言葉を引き継ぐ。
「俺、わざと捕まって、やりとりをずっと盗み聞きしていた。話題になった、あの髭面がおった。デシリオでちらっと見ただけのあの変な板きれつけたヤツだ」
ハーランだ。マイヨとアントネッラが気持ち、身を乗り出した。
「『街の反対派は分断した。あとは今夜で綺麗さっぱり一掃できる。そうしたら、色々捗る』って」
「そこまでで、もう良い」
面倒くさそうな口調でRAAZが言った。手をひらひらと動かして、止めた。
「街の人のためとか何とか言っている男がただの保身を図る嘘つきだった」
嘘つきは言い過ぎだろ。キリアンはすぐさま言い返しそうになるが、キエーザが彼の正面に立って、宥めるように何度か軽く彼の両肩を叩いた。
「そして小娘が安否を気にしてた男は避難場所を爆破するための言わば人間爆弾として使われた。裏で糸を引いていたのはハーラン。私としては正直、そこまでわかればもう良い」
RAAZは空いている椅子にどっかりと腰を下ろすと、天井を仰ぎ見、深い息を漏らした。
「小娘。お前が街の為政者なんだろ? ならば選択しろ。結果的にとは言え、我が身可愛さで、街を混乱させる原因となった『髭面』と取引をした男への処遇を。どうする?」
アントネッラは、突然迫られる選択を前に表情を硬くした。
「コイツは街の人間を売ったんだ。アオオオカミに喰わせた上、お前やISLAを信じて逃げた連中も全部綺麗さっぱり殺すことに手を貸したんだ。コイツがのうのうと生きている理由も簡単だ。私やISLA、そして小娘、お前に伝えるため、生かされたんだ」
「で、ですが会長、彼は追われて……」
「いつ、コイツが追われたって?」
RAAZの一言に、マイヨ以外の全員が目を見開いた。
「最悪だ」
マイヨは吐き捨てるように呟いた。
「これが秘密警察でゴザイマスってヤツか」
「つまり……」
アントネッラは蚊の鳴くような声で発したが、そこから先は続かなかった。
「こっちが使える可能性があった人手を、そいつの裏切りで全部潰されたってことだ」
怒りだの憤りの感情が閾値をすっかり超えてしまったからか、RAAZは乾いた笑いをこぼす。
「あはははは……。なぁ、世界は本当に、『全員』どころか、『全部、敵』になりそうだ。ISLA。どう出る?」
「それ、俺に聞く?」
マイヨもまた、声にこそ出さなかったものの、笑みが漏れた。
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294:【AGNELLI】大義のためなら、考え得る限り最も卑劣な手も厭わない2024/05/01 20:30