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232:【VERITA】それでも信じる道を進む

前回までの「DYRA」----------

アントネッラとルカレッリ。ふたりは離れていた時間を埋めつつ、理解しようと互いの話を聞く。が、聞けば聞くほどアントネッラは埋めがたい溝を実感する。

「やっぱり、お兄様がマイヨを敵呼ばわりする理由とか、わからないわ」

「賢い君でも、さすがにいきなり全部は、そうだょ……」

 ルカレッリが無理もないと言いたげに呟く。だが、アントネッラは言い終わるのを待たなかった。

「そうじゃないわ! 全然話が繋がっていないのよ! まず、髭面がどうしてお兄様を『助けた』の? いえ、どうして助けた相手が『お兄様』なの?」

 畳みかけるようにアントネッラは言葉を続ける。

「お兄様の言い分だと、マイヨが街を助けてくれたのはどうして? ってなるの。それだけじゃない! 私の言葉もちゃんと聞いてくれるって言うから言うけれど……」

 アントネッラは怒りで感極まったのか、目に涙を浮かべた。

「髭面は、アレッポとグルになって街を乗っ取ろうとしたとき、それだけじゃない! 私を、私を襲おうとしたわ! 最っ低よっ!」

 ルカレッリは表情を硬くした。

「あのときは幸い、助けようと来てくれたパルミーロに気づいて気が逸れたのか、それ以上はなかったけど、怖かったっ!」

「ハディットさんが君を!?」

 アントネッラはここでルカレッリの反応を注意深く見る。

「そ、そんな……! アントネッラ。ほ、本当に!?」

「嘘だと思うなら、パルミーロに聞いてくれてもいいわ! 一緒に……」

「い、いや」

 アントネッラの言葉はルカレッリに遮られた。

「彼は、多分もう……」

「何を言っているのよ!?」

 このとき、アントネッラはルカレッリが口ごもった理由を何となく察する。

(まさか! 私とお兄様が会っている間に髭面がパルミーロを!?)

 このまま自分がここに閉じ込められている間にハーランが街へ乗り込み、ジャンニなど、マイヨが味方であることの証人にあたる人間へ危害を加えるのではないか。そして、街の人を上手いこと言いくるめようとしているのではないか、と。

 目の前にいるルカレッリは言葉にできない空気感のようなものから本物だろう。それでも、もう、信を置く対象が違うことは別問題だ。

(もう、ここから逃げることを考えないと!)

 今の状態では、話をするのは時間の無駄だ。

「お兄様にとっては髭面が恩人で、信に値するなら、私にとってはマイヨがそうです」

 アントネッラは続ける。

「彼は、『文明の遺産』を決して取引材料になんてしない。街を助けてくれたときだって、何も見返りを求めなかった。仮に彼が、あの錬金協会の会長とか髭面と同類だとしても、前のめった人間たちすべてに触れさせない(・・・・・・)ことで皆を守ろうとする人よ?」

 信じた道がもはや違う。たとえ兄でも戦わなければならないかも知れない。この瞬間、アントネッラは腹をくくった。

(100年先の未来とかのために、今、暮らしている人を巻き込んだり、命の対価みたいに言われるなんて、冗談じゃないわ!)


改訂の上、再掲

232:【LAFINE】どうして 2022/05/30 20:00

232:【VERITA】それでも信じる道を進む 2023/02/08 15:04



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