表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
223/330

223:【STRADA】反撃の足がかり作り

前回までの「DYRA」----------

マイヨが居酒屋で聞き取りをしていた頃、サルヴァトーレはマロッタの食堂へ。店に入ろうとしたとき、デシリオで名前が通っている何でも屋キリアンと遭遇する。

 ノック音の後、扉が開く。姿を見せたのは店長とロゼッタ、それにアンジェリカだった。ロゼッタは給仕の格好をしており、この店に朝から身を隠すのと警護を兼ねてずっといたのだろうとサルヴァトーレは察した。

「……まぁ。キリアン」

 金髪混じりの長い黒髪を持った美女が一瞬、目を見開いて驚く。が、すぐに安堵の笑みを浮かべると、キリアンのもとへ数歩、駆け寄る。それを見たキリアンも部屋に入って彼女の前に駆け寄った。

「大公。いやいやぁ、ご無事で良かった」

「ちょっと色々あったけど、そこにいるサルヴァトーレのトモダチって男に助けてもらったのよ。その後、彼の紹介でここに匿ってもらっていたわ」

「良かった。ホント無事で何よりです」

 キリアンはサルヴァトーレを見る。

「洋服屋。……正直、アンタちょっといけ好かないヤツかと思ったけど、撤回や。大公守ってくれたんやな。感謝しかない」

 そう言って、キリアンは深々と頭を下げた。

「ことの顛末を教えてくれんか?」

「うーん。もうちょっとここで待っていれば、助けた本人が来るよ。直接聞くのが良いんじゃない?」

「わかった。問題ない」

「じゃ、続きはそれで」

 ここでちょうど、階下から給仕の声が聞こえると、店長が「失礼しますね」と一礼すると、階段を下りる。それからほどなく、下りたときより多めの足音が聞こえてくる。

「サルヴァトーレさん」

 戻ってきた店長が一緒に連れてきた人物を扉の前に立たせた。マイヨだった。

「ああ、良いよ」

「それから申し訳ございません。もう1人、この部屋を使わせてほしいっていう、不思議なお客さんが来ちゃったんですよ。何でも『錬金協会のエルネストさん』って名乗っておられまして。お待たせしている形ですが、サルヴァトーレさん、如何しますかね?」

 サルヴァトーレは頷いた。

「店長。少し待ってもらって。その間、軽食と飲み物は好きなものを出してあげて」

「かしこまりました」

 いつものことだ。そう言いたげに笑顔で店長は一礼すると、階下へと姿を消した。

「じゃ、話を始めよう」

 サルヴァトーレの言葉を合図に、ロゼッタが扉を閉めて近くに立った。テーブルまわりに集まるキリアン、アンジェリカ、マイヨ。テーブルには珍しく何も置かれていない。水すらも、だ。

「本題の前に、一瞬だけ」

 キリアンだった。

「大公。ご無事で良かった。もしかして……」

 マイヨが頷いてから、アンジェリカが口を開く。

「副会長から手紙で呼ばれてフランチェスコへ出向いたら、いきなり殴られるだかでこの騒ぎよ。どこだか湿っぽい部屋に拉致されていたっぽいところを、マイヨが見つけて助けてくれた」

 ここまで聞いて、キリアンはマイヨをマジマジと見る。

「お兄さん、もしかして、この間、デシリオで、タヌ君やあのオネエチャンと知り合いっぽかったよな?」

「うん。そうだね」

 マイヨが微笑むと、キリアンは彼が何者かわかったのか、深々と頭を下げた。

「ありがとうなっ! 恩に着る!」

「こっちも色々思うところや、考えがあってのことだ。気にしないで。それに、状況は本当のところ良くないんだ。本題へ入ろう」

 キリアンとマイヨのやりとりが終わると、改めて全員がサルヴァトーレを見た。

「まずは会長さんからの伝言」

 全員が固唾を呑む。

「錬金協会を乗っ取ったヤツの排除に協力を求めてきた。もちろん、アンジェリカさんご期待の見返りのご用意がちゃんとある。あと、話し合い自体は、自分がだいたい判断して進めて良い、って言われているんで」

「当然よね」

 アンジェリカは政治家らしく、頷く。

「見返りの中身だけど、『文明の遺産』をいくつか出すって。ああ、具体的にはマイヨさんから」

 サルヴァトーレが言うと、マイヨが引き継ぐ。

「出すのは、測量技術。それから医療技術。これは治療法から薬の作り方まで結構広範囲だ。次に印刷技術。わかりやすく言えば、朝ちょっとした騒ぎになったあの号外。短時間で大量の印刷していた、ああいうの。それから、銀塩カメラまわりの基礎技術」

「銀塩カメラ?」

「こういうのね」

 マイヨはポケットから、ピルロで手に入れた、号外チラシのような瓦版を出すと、見せた。

「ゆう、幽霊っ!?」

 紙に写っている写真(フォトグラフ)を見たキリアンは椅子から飛び上がらんばかりに驚いた。

「絵じゃなくて、この瞬間を紙に残す技術だよ」

 マイヨが言うと、アンジェリカは難しい表情でぽつりと呟く。

「欲しいのはあの不老不死と、火薬関連、あと武器防具まわりなのよね。戦争が文明を発展させる最短の道だし」

 アンジェリカの物々しい独り言をサルヴァトーレは聞き逃さなかった。すぐさまキリアンが小声で、彼女へ耳打ちする形で口を挟む。

「大公。今はそれ言っている場合じゃないです。朝から騒ぎになっている、錬金協会を乗っ取った連中の出方次第では、大公だって無事じゃいられない」

「……なのよね」

 アンジェリカの不本意丸出しの声に、マイヨが続ける。


改訂の上、再掲

223:【MORTE】切り崩し 2022/02/14 20:00

223:【STRADA】反撃の足がかり作り 2023/02/08 14:37

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ