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222:【STRADA】何でも屋もマロッタに現れた!?

前回までの「DYRA」----------

居酒屋で5人組に遭遇したマイヨは、「キエーザ」の評判を聞いてみる。すると出てくる出てくる彼を褒め称える言葉とディミトリをdisる言葉が! だが、5人のうち1人だけ、すべてを冷静に見ている者がいた。彼はジャカと名乗った。

 チャコール色の綿が混じったカーネリアン色の空に、アメジスト色のカーテンが下り始めた頃だった。

 マロッタの中心街にある《アセンシオ》前、赤と黒の布でできた旗が立ったA型の看板前を、長い幾何学模様のストールを靡かせた若い男が行ったり来たりと、うろうろしていた。褐色気味な肌色と躑躅(つつじ)色の瞳、ところどころ紫紺色が混じった青磁色の短髪。都会の洗練された雰囲気というより、南の方から来た感じで、マロッタの地元民でないことは一目瞭然だ。

「何をしている?」

 うろつく男へ、店の前を通り掛かったサルヴァトーレが声を掛けた。

「もしかして、このお店に御用?」

「え? あっ、いや、そうじゃねぇんだけど、その、ちょっとな」

「あれ?」

 サルヴァトーレは男をマジマジと見たことがあるとばかりに見つめる。

「な、何だよオニイチャン。何か顔についてっか?」

「ううん」

「じゃ、何だよ」

「この店に用があるなら、自分、言ってあげようか?」

「え?」

 男が空を仰ぎ見て少し考えてから、サルヴァトーレを改めて見る。

「だって、お兄さんって、確かデシリオとかペッレで商売している何でも屋さん、だよねぇ?」

「え!」

 サルヴァトーレは、この男が何でも屋キリアンと見破っていた。

「俺、有名人?」

 キリアンだと見破られた男は、サルヴァトーレを軽く睨んだ。

「もしかして、誰かを探している?」

「あー。まぁな。店長とか、給仕とかじゃないんだよ」

「もしかして、このお店に出入りしているお客さんかな? もしかして物騒な話?」

 おどけた口調で尋ねると、キリアンがブンブンと首を横に振った。

「違う、違うって。ちょっと、お金のやりとりがあったお客さんの息子を探しているんだ。人さらいとかじゃないよ? お父さんの件で伝えることがあってなぁ」

 RAAZとしてこの男と遭遇した顛末と組み合わせて考えれば、自ずからわかる。タヌを探すフリをして入りたいのではないか、と。

「わかった。良いよ。聞いてあげるよ」

 そう言って、店の扉を指差してから、サルヴァトーレはキリアンと共に店に入った。

 店内はすでにテーブルの半分が埋まっていた。

「いらっしゃいませー!」

 店長がテンション高い声で出迎えた。

「ああ。サルヴァトーレさん。って、そちらの方は、お知り合いで?」

「んー。そんな感じかな。それで、悪いけど、賓客様も呼んでくれるかな?」

 小声でサルヴァトーレが告げると、店長が理解したと二度、頷いた。

「わかりました。じゃ、いつものお部屋へお連れしますね」

 店長が店の奥へ走ると、その間にサルヴァトーレはキリアンと共に、いつも利用する2階の個室へと移動した。

「すまんなぁ」

 個室に入ると、開口一番、キリアンが謝意を告げた。

「いえいえ。実のところ、会長さんから事情はだいたい聞いていたんですよ。そうそう。自分はサルヴァトーレ。アニェッリで洋服仕立師ファッションデザイナーをやっております」

「会長って、アイツか!」

 キリアンがすぐに思い出す。レアリ村の井戸の下にあった地下通路で、そしてデシリオで出会ったあの男だ、と。



「一応、錬金協会の会長とかいう怪しげな仕事をしている者だ」



「そうだ。名前言ってなかった。オレはキリアンね。しっかし、よぅ名前を聞く洋服屋サンだったとはなぁ。それに、あの会長サンのお知り合いで都のヒトなら話が早そうだ。実はオレがこの街に来た本当の理由は別にあってな」

 キリアンは小声で説明する。

「オレらにも、錬金協会とかとは全然違う、同業のツテとか、まぁ色々人の繋がりがある。実は大公が予定にないフランチェスコ入りって知らされて、嫌な予感がしたから急行した」

「それで?」

「何だかんだで攫われた現場をようやく見つけたら、黒い花びら(・・・・・)の落とし物だ。ま、あとは仕事上のヒミツってことで。に、してもさ……」

 キリアンがジロジロとサルヴァトーレを見回す。背が高いキリアンが、さらに高いサルヴァトーレをじっと見る。

「ふぅ~~~ん」

 キリアンが何か感じることがあったのか、ニヤニヤしてサルヴァトーレから離れた。

「まー何だ。洋服屋。そういうコト(・・・・・・)にしておく。お互い、『口にしない方が良い』こともあるからなぁ」

 サルヴァトーレはキリアンの言葉を聞いても表情を変えなかった。

「お互いに詮索はナシってコトだ。『大公のいそうな場所ってヤマ張ってたらアンタが現れた』。んま、それがすべての答え(・・・・・・)だろうからな」

「……賢明な判断だね」

 やはり。サルヴァトーレは何事もなかったように頷く。ちょうどそこで、何人かが階段を利用する足音がふたりの耳に聞こえた。


改訂の上、再掲

222:【MORTE】徒労 2022/02/07 20:00

222:【STRADA】何でも屋もマロッタに現れた!? 2023/02/08 14:35


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