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220:【STRADA】5人組と話してみたけど

前回までの「DYRA」----------

マイヨは潜入した錬金協会の建物で情報を集めた。「危機管理担当」の名前はどうやらキエーザだ。次は先ほどの5人組に接触をしようと彼らの行き先を追った。


「あっちゃー!」

「兄さん、冷たかっただろ」

 ここでマイヨは5人組の顔を初めてちゃんと見る。全員、若いとは言えない。30代から40代くらいだろうか。黒髪だったり茶髪だったり髪の色こそそれぞれだが、皆さっぱりした短髪ツーブロック。良くも悪くも全員、特徴があまりなく、存在感が薄い。芝居などで言えばそれこそ「市民A」、「その他大勢」だ。気づいたことはもう一つ、ある。

(無言の兄さんが今しがた来た彼か。でも、彼らはキエーザの話題を出していた……)

 5人組の中に、キエーザがいるのではないのか。あのペンダントがロッカーにあったのだ。本人がいるはずだ。あれが身分証代わりなら、他人が持っているはずがない。

 マイヨは、5人組が心配そうにする中、困ったと言いたげに苦笑した。

「も、申し訳ございません! リネンを持ってまいります」

 給仕も平身低頭だった。麦酒(ビール)零したジョッキをいったんカウンターテーブルに置き、厨房へと走る。ほどなくリネンを数枚手に戻ると、1枚をマイヨへ渡し、残りでテーブルを拭いていった。

「兄さん。災難だったな」

「ああ、いやぁ」

 同情の目で見る周囲の客たち。マイヨは肩をすくめた。

「何か、大事なお話中だったみたいだけど、ぶち壊しちゃったかな?」

「いや、俺らはいいんだ」

「むしろ心配なのは兄さんの方だよ」

 ここで、マイヨは5人のうちの一人が自分をじっと見ていることに気づいた。

「どうして、『大事なお話中』って?」

 マイヨをじっと見ていたのは無言だった男で、その彼からの問いだった。それはまさに、マイヨがチェックしていたあの声だった。

「だって、俺が近づいたときに、だんだん声が小さくなっていたからね」

 5人組は顔を見合わせた。その間、やらかした(・・・・・)給仕が床まで拭き終えると、リネンをすべて回収し、奧へと去った。

「別に怪しい者じゃないよ? ちょっと遠くから山へ植物を調べに来ただけだし」

 マイヨは何喰わぬ顔で言うと、5人組のうち4人が興味を示す。

「こんなアレで出会ったのも何かの縁だ。せっかくだ。一緒に飲まないか?」

 そう言ったのは、キエーザではないかとアタリをつけた無言男だった。

 そのまま流れでマイヨは彼らのテーブルに加わることになった。


 マイヨはすっかり5人組の席で彼らに溶け込んだ。

「おれはジャカ」

 四人が良い感じに酔いが回り始めたところで、無言男を始め、順番に自己紹介をした。ジャカと名乗った人物以外、覚える必要はないなと思う。それにしても、キエーザではと睨んだ人物が違う名前を名乗ったことで、マイヨはどうしたものかと思案する。

「そういえば、お前さんの名前は?」

 いつの間にか、5人組の中で言葉こそ少ないが、ジャカが話を引っ張っている。マイヨの中で彼がキエーザではとの確信が強くなる。

「え? 俺? ああ、俺はサルヴァトーレ」

 息を吐くように適当な名前を言った。マイヨにとって「サルヴァトーレ」なる名前は「名無しの権兵衛」、「ジョン・ドゥ」など、偽名の代名詞程度の価値しかない。

「サルヴァトーレか」

「ここで会ったのも何かの縁だ。飲み代は俺が出すよ」

「良いのか?」

 タダ酒とわかったからか、5人組のうち、ジャカ以外は遠慮なんてまるでないのか、大いに飲み食いした。話はもっぱら錬金協会幹部への愚痴で、マイヨはあまり良くわからないけど楽しいから、と言った感じで聞いては相づちを打つ。

「ねぇねぇ」

 4人が良い感じにできあがり掛けたところで、マイヨはにこやかに質問する。

「さっきちらっと聞こえちゃったけど、話に出ていたキエーザ様? ってどんな人なの?」

「キエーザ様はもう、すっごい人なんだよ!」

 酔っ払った1人が口を開いた。すっかりなめらかだ。だが、マイヨはジャカが一瞬だけ鋭い視線になったことを見逃さなかった。


改訂の上、再掲

220:【MORTE】街の、無言の選択 2022/01/24 20:00

220:【STRADA】5人組と話してみたけど 2023/02/08 14:32






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 またマンボウこと、蔓延防止なんちゃらの発令があり、世間の通常運転は束の間でしたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。


 今回もお読み下さり、心から感謝いたします。ありがとうございます。

 ブックマークしてもらえたり、感想とかいただけると作者はとても喜びます。多分踊り出します!


 是非、ブックマークなどよろしくお願いします!


 ええと、皆様へ重要なお知らせでございます。

 2016年12月8日以来、ずっと更新をし続けてきた「ゴシックSF小説『DYRA』」ですが、更新サイトを剣月、もしくは来月を以て、pixivへの完全一本化で考えております。

 これまで「なろう」にてご縁いただけている皆様、今後、是非ともpixiv側にて読んでいただければ本当に嬉しいです。

 正式な告知は追ってTwitterなどでも出させていただきます。



 次回の更新ですが──。


 1月31日(月)、20時予定です!

 日程、詳しくはtwitterでお伝えします。よろしくお願いいたします。


 次回も是非、お楽しみに!


 愛と感謝を込めて


 ☆最新話更新は、「pixiv」の方が12時間ばかり、早くなっております☆


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