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215:【STRADA】サルヴァトーレの忠告

前回までの「DYRA」----------

ディミトリは自分がカタに嵌められたことを知るがもう遅い。このまま進むしかないのか、他に打開策はないのか。サルヴァトーレに思い切って相談する。

「昨日の夜だ。誰があんなことになるって予想したもんか!」

 食事に目もくれず、ディミトリがまくし立てるように話す。

「一昨日、俺はフランチェスコでリマ大公から『マロッタに来るように』って言われた! それで、昨日の夜、マロッタの協会へ行った。そしたら、イスラ様の部屋に先に来客があって、それで中に入ったんだ。そうしたら、リマ大公がイスラ様を取り押さえていて、傍らに……か、傍らに……」

「傍らに?」

 躊躇するディミトリに、サルヴァトーレは続きを促す。

(オッサンからって、言っちまって良いのか……?)

 ディミトリは視線を泳がせ、言葉を探す。

(いや、ダメだ。でも、あのオッサン以外で誰って言えば……)

 サルヴァトーレは静かにディミトリを見た。

「か、傍らにいた、警護のオッサンが、いきなり爆竹みたいなモンを窓から投げて……」

 ここまで聞いたサルヴァトーレは、核心を突く問いを投げる。

「で、キミは結局、自分に何をしてほしいの?」

「あっ……! な、何をって、えっと」

 ディミトリはまごつきながら、言葉を探し、答える。

「な、朝になって気がついたら俺がいきなり会長だ。しかも建物の爆発騒ぎだの、アオオオカミが街に乱入したりだの、正直、頭が追いつかないんだ。イスラ様はケガをして、いつの間にか会長は生死不明で行方知れず、って広まっていやがる」

「キミが望んだからでしょ?」

 サルヴァトーレがバッサリ切り捨てるように言い切った。ディミトリがすかさず反論する。

「俺はイスラ様が会長になることを望んだ覚えはある。そりゃ俺だって遠い先の話で『いつか会長に』くらいなら思ったこともあるよ。けどっ! しきたり破りなんかして勝ち取った会長なんて明日になったらあっという間に古株から突き上げられて一巻の終わりだ!」

「けど、こういう流れになったのは、キミの運命なんじゃないの?」

 サルヴァトーレは一片の邪気も感じさせぬ笑顔で話す。

「キミはあたふたしているようだけど、爆発騒ぎでケガをした副会長さんは今どこにいるの?」

 サルヴァトーレの問いに、ディミトリが何も答えず、首を横に振った。

「それは『知らない』、『教えられない』、どっちかな?」

「……どっちもだ」

「ん?」

「大公の護衛みたいなヤツらに連れていかれちまったんだ」

「何人いたの?」

「オッサンがひとりと、目立たないガキみたいなのがひとり」

 ディミトリの答えを、サルヴァトーレは聞き流すだけ、といった感じだ。

「で、結局、その『どっか』がどこかわからないから、副会長さんがどこにいるかは『知らない』し、『教えられない』ってことね」

「ああ」

「でもね」

 サルヴァトーレはゆっくりと切り出す。

「自分、ちょっと噂話を耳にしたんだけどなあ」

「え?」

「『リマ大公がフランチェスコで拉致された』って」

「えっ!!」

 ディミトリが悲鳴にも似た声を上げる。サルヴァトーレはその反応を楽しむ。

「『現場を見た』って人もいるみたいだし」

「待った。待った待った待った!」

 リマ大公が拉致された、この話だけでもディミトリは驚いた。だが、現場を見た、まで出てくると穏やかではない。

「その話、教えてくれ! 何の話だ!」

 だが、サルヴァトーレはその問いをスルーした。

「キミが何を信じたいのか、どちらを信じたいのか。それはキミの信念(・・・・・)で決めれば良いと思うけど、負け馬(・・・)に乗っちゃったら大変だよ?」

 他人事のようにサルヴァトーレは告げると、ゆっくりと席を立った。

「待ってくれ!」

 ディミトリが呼び止める。サルヴァトーレはニッコリと笑った。

「……もう一度だけ言うよ? キミは自分に何をしてほしい? 前振りも言い訳もいらない」

 ディミトリは意を決した。何をしてほしい、と聞かれた以上、今すぐ思い浮かび、動いてほしいことがあるからだ。

「……イスラ様を助けてくれ。アンタにとっては権力闘争の相手でしかないかも知れないけど」

「助ける必要ないよ」

 サルヴァトーレの即答に、ディミトリは口をあんぐりと開けた。

「だって、キミを会長にしたい(・・・・・・・・・)人たちにとって、副会長が邪魔だったんだろう?」

 その言葉で顔から血の気が引いていくディミトリ。その様子を見ながら、サルヴァトーレは続ける。

「けど、殺さなかった。裏を返せばそこ(・・)を『運に任せていた』とは思えない。言い方を変えれば、最初から副会長とキミを脅して黙らせる(・・・・)のが目的だったんだろうね」

 自分を脅すとはどういうことなのか。ディミトリの頭の中が一瞬、真っ白になった。

「キミはどうやら、『イチ抜けた』ができないところに足を踏み入れたってことだね。この状況、自分に相談するのはまずいんじゃない?」

「ど、どうすれば良いんだ!? 俺は」

 ディミトリが動揺をそのまま言葉に出した。

「キミ、副会長を助けたいって言ったけど」

 サルヴァトーレはディミトリに目もくれず問う。

「助けるのは目的? 手段?」

「えっ……」

 完全に虚を突かれたディミトリは、質問の意図を呑めなかった。

「助けたいだけ? それとも、助けて、どうするの?」

 質問に、ディミトリは即答できなかった。

(いや、そうなんだけど! そうだけど!)

「何か困っているキミだけど、今、ふたつ選択肢があるんだよ。正確にはみっつかな」

「言ってくれ」

「土竜になるか、蝙蝠になるか、犬になるか」

 モグラ、コウモリ、イヌ。一体どういうことなのか。ディミトリは困惑した。


改訂の上、再掲

215:【MORTE】デキる男、昼行灯 2021/11/22 20:00

215:【STRADA】サルヴァトーレの忠告 2023/02/08 14:17






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 急に寒くなってきましたね。皆様いかがお過ごしでしょうか。


 今回もお読み下さり、心から感謝いたします。ありがとうございます。

 ブックマークしてもらえたり、感想とかいただけると作者はとても喜びます。多分踊り出します!


 お知らせです。

 次回更新は、書籍版再構成作業に入りますので、12月になります。


★11月23日(火) 文フリ東京 サークル参加します★

東京流通センター第一展示場 キ-19 「11PK」


★コミックマーケット99 #C99A 当選しました★

2日目(12月31日) 西2ホール く-10a 「11PK」

※当日は「DYRA 9」が新刊で登場! さらに特大B1キラッキラポスターも登場します!※



 次回の更新ですが──。


 12月6日(月)、20時予定です!

 日程、詳しくはtwitterでお伝えします。よろしくお願いいたします。


 次回も是非、お楽しみに!


 愛と感謝を込めて


 ☆最新話更新は、「pixiv」の方が12時間ばかり、早くなっております☆


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