表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
212/330

212:【STRADA】やることは多いようでシンプル

前回までの「DYRA」----------

いまや安全な箱庭は敵陣になった。そこをDYRAとタヌがふたりだけで動くなら、連絡手段の確保は必須。そこでマイヨは自らが持つ能力を利用して、DYRAのナノマシン情報を自分が追跡できるようにした。形のないGPS発信器みたいなものだ。


 その場に残ったRAAZとマイヨも今後の行動をまとめる。

「まずはリマと取引だ。彼女をハーランに取り込まれたら面倒になるからな」

「そこは会長サンなアンタに任せるよ。もう一度マロッタへ行くんだろ?」

「そうなる」

「ああ。取り敢えず、アニェッリの大公、リマと取引するしかない」

「彼女への条件は何? メリットがなければ彼女だって組まないだろ? ハーランが条件を出してくる可能性もあるんだ。特に『文明の遺産』まわりのカードで。だいたいさ、タヌ君のお父さん、錬金協会、皆そうだけど行き着くところはそこだ。俺たちは何を出すって?」

 RAAZの様子を見つつ、マイヨは続ける。

「元々、アンタの方がハーランよりカードは多かったはずだ。けど、今はもう違う。『文明の遺産』の発掘場所を錬金協会にまるっと管理させていたなら、完全に立場が逆転している」

「その通りだ」

本来の(・・・)アンタらしい、良い答えだ。起こってしまったことを割り切って引きずらない、そして失策を素直に認めるトコね」

 どこか上から目線を感じさせるマイヨの言い方に、RAAZはカチンと来た。それでも、今気にするべきはそこではない。軽く息をつくだけに留めた。

「ハーランとの結託を阻止しつつ、流れを変える仕込みがいる。ニセモノを使われたなら、彼女だってお怒りのはずだ」

「ハーラン排除。俺とアンタでさえ、これが利害を擦り合わせるとっかかりになった。恐らく彼女ともそこが唯一の妥結ポイントだ。で、見返りは?」

「医療技術や紡績、測量まわりだ」

「念のため。もし、『トリプレッテ』の存在が錬金協会や大公サンの手のモンにバレていた場合は? 寄越せと言われたら? そのときはどうする?」

「そうだな。そのときはすべて破談だ。話し合うだの、そんな面倒くさいことはもうしない」

 マイヨが知る限り、RAAZの本当の恐ろしさは、言葉にもできぬおぞましいことを迷わずやってのけるその落差だ。



『殺戮する哲学者』は物憂げな表情で施設を爆破し、主要ターゲットを仕留めた瞬間、芸術家が大作を完成させた瞬間の如く恍惚とした表情を見せる。



 はるかな昔に目を通したRAAZにまつわる報告書の一節を思い出しながら、マイヨは苦い表情を浮かべる。悪いがそんな顔は見たくない、と思いつつ。

「状況次第では『脅す』デモンストレーションもやって良い」

「それはお勧めしない。逆効果になって、ハーランに人心を集めることに繋がりかねない」

 バッサリ切り捨てるようにマイヨは言い切った。

「RAAZ。決まるのが良いに決まっているが、最悪、話し合いが一度で終わらなくても、次に繋がれば良い。けど、リマ大公とはハーラン排除の一点でなら、すぐに組めるはずだ」

「時間がない。話し合いは一度だけだ。それと、こちらも個人的に使える隠し球を投入する。こちらは人数こそないが、その少なさ故に秘匿性が高い。その上で……終わりにする(・・・・・・)

 最後の言葉に、マイヨは顔を引き攣らせ、呟く。

「因縁を終わりにするのは、良いと思うけどね」

 RAAZが静かに頷いた。

「それで、他にアンタから俺にやっておいてほしいこと、ある?」

「そうだな。錬金協会の様子を見てきてくれ。それで、危機管理担当が動いているかを確認してくれ」

「さすが。そこは抜かりなし、か」

 RAAZが頷いた。

「あの協会は緊急事態が起こった場合、当日を含め三日間は、医療施設以外、追い返す役回りの受付と危機管理担当以外、敷地への出入りは禁止だ。だから出入りするヤツがいればすぐにわかる。この状況の受付と危機管理担当は私の手の者しかいない」

「敵味方判別方法はないの?」

「お前と同業だ。お前なら匂いで(・・・)見つけ出せるはずだ」

 確かに、同業者ならではの嗅覚が働く、というのは言葉で説明するものではない。マイヨは納得した。

「じゃ、俺はちょっと、錬金協会の様子を見てくる。っていうか、今のアンタじゃいつものように動けないし、サルヴァトーレになっても、身長(たっぱ)がありすぎるから悪目立ちする」

「頼む。わかった」

「夜、あの食堂で合流しよう。万が一、食堂へ行ったら都合悪いとかあれば、食堂の入口にわかるように目印出すか、わかるようにしておいてくれ」

 言い終えると、マイヨは自身の周囲に黒い花びらを舞わせながらその場から姿を消した。

 ひとり残ったRAAZは、迷彩テントなどを手早く処分し、その場に人がいた痕跡を消した後、赤い花びらを舞わせながら姿を消した。


改訂の上、再掲

212:【MORTE】ディミトリの選択 2021/11/01 20:00

212:【STRADA】やることは多いようでシンプル 2023/02/08 14:07






-----

 気がついたら1年の5/6が終わってしまいました。残りは16.667%。皆様いかがお過ごしでしょうか。


 今回もお読み下さり、心から感謝いたします。ありがとうございます。

 ブックマークしてもらえたり、感想とかいただけると作者はとても喜びます。多分踊り出します!


 212話になりました。

 情報に対する意識って、現代の方がナーバスで、昔の方がすっごいテキトーだったと思います。特に機密も個人情報もクソも無い、って言いますかね。人の口に戸は立てられぬ、を地で行くような感じと言いますか。

 ネットより、田舎の情報網の方が……って説もあるくらいですからね。


 次回の更新ですが──。


 11月8日(月)、20時予定です!

 日程、詳しくはtwitterでお伝えします。よろしくお願いいたします。


 次回も是非、お楽しみに!


 愛と感謝を込めて


 ☆最新話更新は、「pixiv」の方が12時間ばかり、早くなっております☆


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ