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211:【STRADA】連絡も取れずでほっつき歩くのはNG

前回までの「DYRA」----------

見るものはもう見た。マイヨがRAAZたちのもとへ戻ると、DYRAも来ていた。これからどうするか話そうとするが、状況を呑み切れていないDYRAは当たり前のように「タヌの父親を捜しに行く」と言い出した。


「まぁ、それで『動くな』と言っても、聞けないよね」

「はい」

 タヌは口調こそ柔らかいが、明確に答えた。

「動くにあたっての条件はふたつ。まずは連絡手段。そう、俺やRAAZと確実に連絡、いや、最悪でも動向把握できる状態を作る」

 この条件は至極真っ当だ。DYRAもタヌも頷いた。RAAZもだ。

「でも、どうやって? 鳩とか?」

 伝書鳩なら確かに人間が走るより速い。だが、ずっと移動する自分たちの居場所を鳩が常にわかるのだろうか。あとどうやって連れて行けば良いのか。タヌはそんな気持ちで問うた。

「え? 鳩?」

 マイヨが表情を曇らせた。タヌは違うのかと言いたげに見る。対照的にDYRAは何かあるのだろうと思ったからか、特にこれと言った反応を示さない。

「何でそんな面倒なものを使うんだ。ったくこれだから」

 RAAZが少し呆れた表情でタヌを見たが、マイヨが手で制し、最後まで言わせなかった。

「タヌ君。俺たちだってバカじゃないよ? だから、そんな目立つようなことをやらないし、人だの動物だの介するなんて時間が掛かることもしない」

 やはり。DYRAはそう言いたげにRAAZとマイヨを見た。

「で、動くにあたってのもうひとつの条件だけど。RAAZ、アンタもあるんだろ?」

「ああ、ここから先、ふたりで動くなら、やってもらうことがある」

 タヌはマイヨの言葉を聞いて、改めてDYRAと共にRAAZに注目する。

 RAAZが小さく頷いてからタヌをじっと見る。

「ガキ。私たちの目が届かない状況でお前が色々持つのは何かと危険、いや危険すぎる」

 タヌはすぐに、RAAZが『鍵』のペンダントと『安物の耳飾り』のことを言っているのだと気づいた。

「タヌ君」

 RAAZの言葉をマイヨが引き継ぐ。

「『耳飾り』は俺が預かって良いかな?」

 DYRAとタヌだけで最悪の事態になった場合を想定すれば、リスクヘッジの意味でもふたつを同じ場所に置いてはいけない。

「わかりました」

 タヌは同意した。自分ひとりでは身を守ることすらままならないのだ。万が一、自分を守ろうとしている間に奪われるようなことになれば、DYRAにも過剰な負担になってしまう。

「耳飾りはふたつある。ひとつはISLA。ひとつは私へ」

 RAAZがすぐさま告げた。タヌは彼なりの安心を担保する方法だろうなどと思いながら、鞄から耳飾りを取り出した。ひとつずつ持って両手を拳にして差し出し、RAAZとマイヨへ手渡した。

「タヌ君。確かに受け取った」

 マイヨがタヌへ安堵の表情で言った。言い終わったところで、RAAZがDYRAを見た。

「ガキの親父の行き先、現状を考えれば思い当たる場所はある。むしろ、私があの男でもそこへ行くだろうよ。ハーランが」

 RAAZの切り出しに、タヌはハッとして視線をRAAZへ移した。

「どこですか!?」

「お前の親父の日記にもあっただろう」

 その言葉を聞くや、タヌは鞄から日記を取り出すと、パラパラとめくり、それっぽい(・・・・・)記述のページを探す。


『村の東側から回り込んだところに、こんなものがあったのか!

昔の人間は地震すらも起こせたなんて!

嗚呼、遺産を独占できれば世界を支配できる!』


「村の、東側」

 タヌはDYRAを見る。DYRAも頷いた。

「ガキ。行ったことあるか?」

「小さい頃一度だけ。でも、迷子になって、父さんや母さん、村の人からすごい怒られました」

「あんな場所だもん。子どもが行ったら怒られるのも無理ないか」

 聞いていたマイヨは至極当然だと言いたげな顔をする。

「そうだな。あそこは荒れ地の上、奥にあるのは真っ黒な森」

「真っ暗、ではないのか?」

 DYRAは問う。すぐさまRAAZが首を横に振った。

「本当に真っ黒だ」

「時間が惜しいから、理由はここで説明しないけど、進めば進むほど、真っ黒で、当然、視界も悪くなるから」

 マイヨが補足し、さらに話す。

「とはいえ、『そこへ行けば良いよ』って言ったからには、ちゃんとこっちで動向確認手段は用意するし、迷わず行かれるよう、必要な情報も渡す」

「ありがとうございます!」

 タヌはぺこりと頭を下げた。

「あそこで迷ったら、生きて出るのは難しいからね」

 そう言ってから、マイヨがDYRAへ自分の右手を差し出した。DYRAは不思議そうな、訝るような、どちらとも取れるような顔をする。

「DYRA。地図を渡すから、ちょっと手を出してくれるかな?」

「そんな子どもみたいなコトをするのか?」

「すぐだから」

「タヌに渡せば良いだろう?」

「そうしたいんだけど、君でないと渡せないんだよ」

 マイヨの言葉で、DYRAは渋々自身の右手を出した。マイヨがすぐに両手で彼女の手のひらを軽く握りしめたときだった。

「あ……!」

 マイヨの両手の周囲に黒い花びらが顕現する。数枚ずつ舞い上がっては、金色の粒子にも似た光となって消えていく。それが何度か繰り返される間、マイヨの金色と銀色の瞳も、僅かながら光を放った。

「じゃ、これで」

「良くわからないが、これで迷わないんだな」

 DYRAが確認するように質問すると、マイヨは頷いた。

「ああ。大丈夫。毎日歩いて丸暗記した街並みのように、すいすい行ける」

 タヌは、マイヨがDYRAへ何をしたのか良くわからなかった。それでも、マイヨのことだから、彼女に『文明の遺産』を使って何かしたのだろうくらいに思った。

「ところで、お前たちはこれからどうするんだ?」

 DYRAがRAAZとマイヨへ問うた。

「大公をどうにかするとか、段取りとか色々だ。最後の保険(・・・・・)も含めてな」

「俺も情報漁りだ」

「もうひとつ。何かあったときの連絡はどうすれば良い?」

「今、この瞬間以降、まずいことになったときは、俺がすぐに把握できるから大丈夫」

 マイヨがあっさりと答えると、DYRAは小さく頷いた。

「タヌ。お前の父親に、さっさと追いつこう。今日のうちに、一気に村の東まで行くぞ?」

「うん!」

 RAAZとマイヨに見送られ、DYRAとタヌは移動を始めた。


改訂の上、再掲

211:【MORTE】土竜? 蝙蝠? 2021/10/25 20:00

211:【STRADA】連絡も取れずでほっつき歩くのはNG 2023/02/08 14:04






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 寒暖の差が激しくて、気がついたらいきなりヒーター(エアコン)同伴な日々ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。


 今回もお読み下さり、心から感謝いたします。ありがとうございます。

 ブックマークしてもらえたり、感想とかいただけると作者はとても喜びます。多分踊り出します!


 211話になりました。

 ディミトリが泣きつきました。しかし、こんなふざけた泣きつきでどうにかしてくれると思っているなら甘過ぎだろって感じですね。これで、主要キャラの立ち位置が明確になりつつありますな。


 次回の更新ですが──。


 11月1日(月)、20時予定です!

 日程、詳しくはtwitterでお伝えします。よろしくお願いいたします。


 次回も是非、お楽しみに!


 愛と感謝を込めて


 ☆最新話更新は、「pixiv」の方が12時間ばかり、早くなっております☆


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