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204:【?????】紙に鏡に映った自分がいる!?

前回までの「DYRA」----------

地獄絵図から一夜明けたマロッタの街。食堂は今日もいつも通り開店準備だ。だが、店長とロゼッタは密かにRAAZのためになさねばならぬことを確認しあっていた。


「昨日のことですかね」

「私、馬車で戻ってからはずっと家を出ていなくて」

 言いながらふたりは受け取った瓦版の見出しを見た。

「これっ」

「えっ」

 異口同音に、驚きの声が漏れた。

「内容は、って、いや、これ。……」

 店長がロゼッタの背中を押しながら店内へ戻り、扉を閉めた。

「お姐さん。まずいです。ちょっとお店の準備、お願いできます? 自分、大公さんへ事態を説明してきます。あと、これが出た以上、事態が見えるまでお姐さんも今少し、動かないで下さい。焦って下手に動いて、あの御方(・・・・)を窮地に陥れちゃまずいですからね」

「え、ええ。わ、わかりました」

 ロゼッタは頷いてから会計台の裏へ回り込む。奧の棚から使われていないエプロンを見つけるとサッと掛け、さらに髪をアップにして店員になりすました。

 店長は急いで階段を下りた。そして、地下にあるワインセラーの一番奥へ走ると、小部屋の扉をノックし、開いた。

「おはようございます! 大公さん、大変です」

 開いた扉の前で店長は最敬礼する。アニェッリ大公アンジェリカが不機嫌そうな表情でその様子を見つめている。だが、そんなこと気にしている場合ではないとばかりに店長は中へ入ると、テーブルの前まで近づいて話を始めた。

「大公さん。これ見て下さい!」

 言いながら、店長はアンジェリカへ先ほどもらった瓦版を見せた。

「な、何よこれ」

 アンジェリカは瓦版の見出しが飛び込むなり、奪うように受け取ると、目を皿にした。

「えっ! これ何っ!? 絵にしてはできすぎているし、細かいし」

 そこに写っている(・・・・・)ものに、アンジェリカが悲鳴にも似た声を上げた。

「そ、それに私、こんな男知らないわよっ!! 誰よこいつ!?」

 店長やロゼッタと同様、アンジェリカも激しく困惑した。瓦版には見出しと、その下に文字がびっしりと埋まっているが、右下四分の一部分は違った。若い男と小柄な少年、そして、アンジェリカらしき女性と警護だろう男の姿があった。こんな瓦版に絵画など比較にならないほど綺麗に描き出された(・・・・・・)ものを彼らは誰ひとりとして見たことがなかった。そこに描かれていたのは、人生で初めて見る、まるで鏡に映った自分ではないか。──彼らの驚きはまさに、写真(フォトグラフ)を知らないからこその反応そのものだ。

「会長は生死不明ですって?」

 アンジェリカが読み上げたところで、店長は自分の口元に人差し指をやり、静粛を呼びかける。アンジェリカは店長を見た。

「それなんですけど、明け方、信頼の置けるサルヴァトーレさんの遣いの人が来ましてね。会長さんはご無事です、と。伝言で、『大公の身をお守りするように』と」

「ま、あの男がそう簡単にくたばる(・・・・)わけないわね」

 他人事のように素っ気なく呟いたアンジェリカに、店長は続ける。

「本物の大公さんが錬金協会の新体制を認めていないなら、どうとでもなるって読みでは? 何より、会長さんがご無事なのです。そして、あっちはあなたのニセモノでしょ? だって本物がここにいます」

 アンジェリカもつられてまなじりを下げ、クスッと笑う。

「昨日、あのマイヨってのに助けられて、ここでサルヴァトーレと会えたのも、何かの縁ね」

「サルヴァトーレさんなら必ず助け船を出してくれますよ」

「そう言えば、一緒にいたあの男の子は? あの子の父親、仕事で知ってるのよ」

「皆無事です。取り敢えず、出入りの酒屋が来たら、サルヴァトーレさんのお屋敷を確認してもらいます。あとでまた遣いが来たときに、大公さんのことも聞いてみます」

「アンタ、あの会長と繋がっているの?」

「いーえー。サルヴァトーレさんがお店の常連です。それで色々教えてくれるだけです」

「サルヴァトーレも、つかみどころがない男よね。ま、上流階級だの上層連中と繋がりまくっているから、面倒ごとをいつの間にか何とかする不思議なヤツ」

 店長はアンジェリカが落ち着いて対応してくれたことに安堵し、笑顔で頷いた。

「不自由をお掛けしますが、落ち着いてお待ち下さい。地下がちょっと、でしたら、3階のお部屋もございますから」


改訂の上、再掲

204:【MORTE】新しい主は「  」 2021/08/30 20:00

204:【?????】紙に鏡に映った自分がいる!? 2023/02/08 13:47






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 残暑厳しい日々ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。


 今回もお読み下さり、心から感謝いたします。ありがとうございます。

 ブックマークしてもらえたり、感想とかいただけると作者はとても喜びます。多分踊り出します!


 204話、新た恣意世界(?)での1日目が始まりました。

 最初に動きが出るのはピルロ。またしても、ですね。


 次回の更新ですが──。


 9月6日(月)、20時予定です! あとは「DYRA 9」進行次第で。

 日程、詳しくはtwitterでお伝えします。よろしくお願いいたします。


 次回も是非、お楽しみに!


 愛と感謝を込めて


 ☆最新話更新は、「pixiv」の方が12時間ばかり、早くなっております☆


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