表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

158/330

158:【Speciale】災いのあと、ハーランはDYRAとマイヨを煽る、煽る

前回までの「DYRA」----------

ピルロの行政官アレッポは、ハーランと手を組んでピルロを乗っ取ろうとしたが、そんな浅はかな動きはマイヨの登場で市民たちの前で白日の下にさらされる

 DYRAがRAAZと別れる直前──。

 ピルロの大半が砂色に変わり果てていた。廃墟と瓦礫の山になることを免れた建物も例外ではない。学術機関の建物が土砂に流された。広場や市庁舎、時計台にも土砂が及び、一階のガラスが壊れて建物内へも流れ込んだ。それでも、学術機関の建物が事実上の「楯」となったことで、辛うじて他の建築群が崩壊することはなかった。


 ──どこかから、けたたましい吠え声が聞こえてくる。


「……って」

 マイヨはアントネッラを庇うように抱きしめ、倒れていた。土砂も若干ではあるものの、被っている。

「……痛、痛いって」

 白い子犬がすっかり灰色になりながらも、必死になって足を使って砂をどかしていた。その足の先が、マイヨの耳たぶのあたりを擦っている。

 マイヨの視界に白い子犬が捉えられる。

「けほっ、けほっ」

 続いて聞こえてくる女の咳き込む声。マイヨは、それがアントネッラのものだと気づくと、彼女に砂を被せないよう、ゆっくりと身体を起こした。

「な、何だったの……けほっこほっ」

 アントネッラが咳き込みながらもゆっくりと上半身を起こそうとしたので、マイヨはすかさず手を貸した。

「アントネッラ、大丈夫?」

「助けてくれてありがとう。マイヨ。でも、これって」

 マイヨが見る限り、アントネッラの声や、立ち上がったときの身体の動きに異常は見られない。土や砂が口の中に入った心配はなさそうだ。恐怖のせいか声がうわずっているが、そのくらいだ。

「げふっげふっ」

 続いて、これまたマイヨに聞き覚えのある声が聞こえてくる。流れ込んだ土砂の一角がもごもごと揺れ、人影が現れる。白い子犬が走って行き、土をどかすのを手伝おうと、足で蹴った。

「……ア、アントネッラ様はご無事、か?」

「もちろん」

 マイヨは人影が立ち上がるのを手伝う。パルミーロだった。

「あー。……ひっでぇ目に遭った。俺はこれで済んだが……」

 パルミーロの言葉を聞きながら、マイヨは変装用に来ていたメイド服を脱ぎ捨てた。立ち襟と刺繍が印象的な白の上下姿が露わになる。続いて、埋もれかけていた鉄扇を拾った。

「アントネッラ様を助けてくれて、ありがとうよ。サルヴァトーレ、いや、マイヨ、か」

 聞いた途端、マイヨは怪訝な顔をする。

「俺、名前言ったっけ?」

 パルミーロが笑い出す。

「今さっき、アントネッラ様が言ったじゃないか。何で偽名なんか使ったんだ」

 パルミーロが問うと、マイヨは苦笑交じりにいかにも『それっぽい』答えを告げる。

「君たちの言う『髭面』が、俺の悪口を吹聴して回っているんじゃないかって怖かったんだ」

 理由がわかればもういい、とばかりにパルミーロが親指を立てた。

「にしてもお前、本当にすごいな。アントネッラ様が用心棒にこっそり女装させていたのは正しかったってことか。アレッポの野郎、ルカ様を殺して、あんなひでぇことをしていたとは」

 ピルロとアントネッラを救うため、マイヨは意図的に色々隠した。けれど、今は無事だった人たちが皆団結できるならそれでいいと割り切っていた。アントネッラがピルロ再建を自分の野心ではなく、街の人たちのためにやり遂げると誓っているからこそ。

「それよりパルミーロ。怒り狂った皆が市庁舎へ雪崩れたところにこの土砂崩れだか山崩れだ。今すぐ助ければ間に合う市民がまだいるはずだ」

「お、おうよ!」

「アントネッラ。君と、君の犬も、手伝ってあげて。皆は、君を守るために」

「ええ。もちろんよ」

 アントネッラが大きく頷くとすぐにパルミーロを見る。

「皆を助けましょう!」

「ええ。ええ! アントネッラさ……! って、ああっ!!」

 パルミーロは目を丸くして、飛び上がった。

「この数日、パンと水を広場の外れで配っていた、あのっ!!」

「そっ、それは! それはいいから、早く助けないと!」

 パルミーロの言葉で、マイヨは何があったか概ね把握した。彼女は街に出て、行動して、誠実さを以て味方をちゃんと得ていたのだ、と。

「俺は『髭面』、いや、ハーランを捜す。万が一、アンタたちが遭遇しても絶対に構うな。アンタたちが勝てる相手じゃない」

「わ、わかった!!」

 パルミーロが返事をすると、アントネッラと共に土砂まみれとなった部屋を出て、一番大きな階段への廊下を歩き出した。

「さて、と」

 マイヨは二人の姿が見えなくなったところで、自分の周りの土砂を足で払うように蹴ってどかすと、倒れている一人の男を見つけた。

「た……た、助けて……くれ……」

 艶のない金髪の男の頭が現れた。マイヨはボールのように掴んで持ち上げる。男の頭に続き、長身の身体も土砂の中から現れる。

「行政官サン。わかっていると思うが、アンタには死んでもらう。『ピルロ再建のため』に。ま、これはタテマエだ」

「ぐっ……」

「アンタはハーランと手を組んだんだからな」

「な、何の話だ……」

 苦しい息の下からアレッポが問うが、マイヨは事務処理でもするように話を始めた。

「アンタはヤツと組んで、山の中腹のあの場所で、何重にも袋詰めされたものを受け取ると、次々街灯を設置した。紡績工場あたりを作る計画とかも立てたんじゃないの? 袋詰めされたものを『安定して受け取るため』、そこはとても寒く、冷たい場所だった。察するに、氷が大量にあった。その余剰の氷を持って帰り、冷蔵施設として歓楽街の飲食店へ提供したり、氷菓子を作ったりで市民感情を宥めていた。違う?」

 マイヨは言い逃れをさせまいと、ハーランと繋がっていた証拠と言うべき、ピルロを急激に繁栄させた原動力のからくりを突き付けた。話が進んで行くにつれ、ただでさえ動揺の色を隠せぬアレッポの顔が白鼠色のように変わっていく。

「まだある。錬金協会と戦おうなんて啖呵切るなら、こんな文明であってもそれなりのカネがいる。そのためハーランと組んだのを良いことに、『百発百中の人捜し屋』とやらを用意し、ボッタクリでカネ集めしたんじゃないの?」

 アレッポから返す言葉が出ることはなかった。顔色だけではない、唇すらも枯れた薔薇のような色になっている。

「もうちょっと話そうか? アンタ、最低のモグラか、そうでないならとんでもないコウモリだ。雑魚の錬金協会員は市民をあおるために処刑するが、上級幹部とは最初から繋がっていたんじゃないの? アンタのことだ。ついでにRAAZにもいい顔しようとか考えていたんだろうよ? あ?」

 もはやこの男に用はない。マイヨはアレッポの頭をバルコニーの手すりあたりにたまった土砂へ顔を押しつけるように埋めた。抵抗がぴたりとやむまで、顔色一つ変えることなく。

「ただ私腹を肥やすだけのおバカさんだったら、ここまでしなかったのに」

 吐き捨てるように呟くと、マイヨは、動かなくなった男をバルコニーから地上へ放った。まるで、粗大ゴミを投げ捨てるかのように。

(この山崩れだか土砂崩れ……)

 マイヨはバルコニーから山の方に目をやる。

(土? いや、砂?)

 マイヨは北側のネスタ山を見ながら、半月ばかり前に山の秘密を確かめようと中腹へ行ったときのことを思い出す。

(あの山は、こんなに土が乾いていたか?)

 山の木々は冬が近いこともあり、見に行ったとき確かに枯れていた。しかし、倒木などは数える程度しかなかった。つまり、木は枯れていたが土そのものはそうでない。マイヨは思い出したことから導き出される、ただ一つの合理的な結論にたどり着く。

(……おい! 正気か!)

 この山崩れはこれまでの積み重なりで起きたのではない。人災、それも明確な悪意に基づいて引き起こされたものだ。そうでないなら何だと言うのか。マイヨは表情を引きつらせる。

(ここまでやるのか! わざわざ連れてきていたのかっ!!)

 明け方、何故突如RAAZが姿を見せたのか、疑問には思っていたというのに。完全に読み誤った。RAAZがDYRAを名実共に、環境や生態系を破壊する道具、いや、『兵器』として使ったのだ。マイヨは地団駄を踏みそうになったが、悔しがるのは今ではないと、グッと堪える。今はまだやることが残っているからだ。

 マイヨはあたりを見回す。真っ黒なシャツとパンツに身を包んだ人物の後ろ姿が街の出入口にあたる跳ね橋のある方へと歩いて行くのが見えた。見覚えあるどころではない。たとえ後ろ姿でも、絶対に間違えるはずがない人物だ。

「ハーラン!」

 マイヨはバルコニーから飛び降りて後を追う。土砂の上に先ほど放った死体の上に着地し、もう一度飛んで地面に降りた。ピルロから出してはいけない。確かめたいことがある。理想は仕留めることだ。それができないならせめて打撃だけでも与えておきたい。そんなことを思いながら、その両手の周囲に黒い花びらを舞い上がらせ、双剣を握りしめていた。



     


 跳ね橋の少し手前のところでマイヨはハーランに追い付き、前に出た。

「アレーシ坊やか」

「俺を『坊や』呼ばわりね。じゃ、アンタのことも『クソジジイ』とか言った方が良いか? って、俺はそういうの好きじゃない」

 黒いシャツにパンツ姿、一眼型の色付き眼鏡を掛けたハーランは、両手には何も持っていなかった。パッと見、丸腰に見える。だが、防刃手袋を填めているなど抜かりない。恐らくシャツの下は防刃防弾対応の素材に身を包んでいるだろう。そんな人物の装備だ。どこに何を隠していることか。マイヨは少しも警戒を緩めることなく、双剣を構え直した。周囲に黒い花びらがはらりはらりと舞い上がり続けている。

「今日はもう、仕事は終わりでね。徹夜明けなんだ。帰って麦酒を飲みたい」

 はぐらかすように話すハーランを前に、マイヨは一歩も引かない。徹夜と聞いたとき、アントネッラが受けた仕打ちの話がマイヨの脳裏を掠めた。

「何が徹夜だ? まだ麦酒には早いだろ? アンタにはいくつか聞きたいことがある」

 言いながら、右手に持つ剣の切っ先をハーランへ向けた。

「……あの日、アンタは何で」

 金と銀の瞳に余裕のほどを隠しもしないハーランの姿が、一方、眼鏡越しながら赤いガラス玉のような瞳に怒りを滲ませながら剣を向けるマイヨの姿が、それぞれ映る。

「あの日?」

 ハーランが話の腰を折りにいくが如く聞き返し、不思議そうな表情でマイヨを見つめる。やがて、思い当たることがどのことかわかったのか、穏やかな表情で、優しげな笑みさえ浮かべてみせる。

「それが、受けた命令だから」

「命令だけで、アンタはあそこまでできるのか!?」

「大事な業務の一環だ。若いキミにはピンとこないかも知れないだろう。俺であれキミであれ、我々の仕事を見ているのが上司だと思ったらとんだ間違いだ」

「質問に答えろ!」

「アレーシ坊や。我々の仕事を見ているのは納税者、そう、貴重な血税を納めている国民だ」

 裏も他意も、慇懃無礼な感じすらもない。それどころか、役所の親切な窓口職員が心から丁寧に答えているような口調だ。しかし、それがかえってマイヨの気持ちを逆撫でする。

「アレが何年、いや、何十年分の国家予算に相当すると思っている? 国家に還元する意思を見せなかった時点で、税金の不正利用なんてもんじゃない」

「俺が聞いているのはそこじゃない!!」

 マイヨはハーランの言葉をぶった切った。

「アンタ、人としてよくもあんな仕打ちを!」

「やれやれ。フラれた者同士、もう少し仲良くできると思うんだけどね?」

「俺の腕と脚を潰したヤツの言葉を誰が信じる?」

「聞きたいことは、それで終わりかな? 徹夜明けで、もう帰りたい」

 ハーランは、それまでの丁寧な言い方から一転、仕事明けの下っ端役人のような口調で面倒くさそうに言い放った。マイヨは取り付く島もないなと内心苛立つが、苦笑で感情を隠す。

「いや。税金の不正利用なんて言葉が出たついでだ。アンタまさか、ここにそれがお宝よろしく、埋まっているとでも思っていたのか?」

「仮にここの下にあるとしても、キミがいないと掘り出すことができないんだよ」

「言ったよな? 俺は『アンタとだけはどんなディールも成立させる気がない』って」

「キミは絶対、取引に応じてくれる。でないとあのクソガキに殺されることになる」

 マイヨの中で、何かが切れるか、砕ける音が聞こえた。気がついたときには構えた双剣をハーランへ振り下ろしていた。アンタにだけは言われたくない。違う。アンタだけはそれを言う資格がない。しかし、その言葉は喉のところで止まり、代わりに身体が本能的に動いた。この男を殺さずにおくものか、と。

「今、キミがあのクソガキに殺されちゃ困るんだよ?」

 マイヨの刃を躱しながらも、ハーランの口調から余裕が消えることはなかった。

「お前が言うなっ!」

 双剣を一気にハーランの大腿部の高さで左右に横振りするものの、小指の長さ程度の僅差で避けられてしまう。マイヨはすぐに第二打を入れるべく、右手に持つ剣を振り上げた。しかし、これもハーランが着ているシャツの腹部を斬っただけだった。

「ちっ」

 手傷を負わせることすらもできない。双剣を手にする両手の周囲に、ふわりふわりと黒い花びらを舞い上がらせたまま、マイヨは苦虫を噛み潰したような表情を作る。

(しまった! 俺としたことが貴重なナノマシンを! 悔しいがタイムアウトか!)

 DYRAやRAAZのように、自分の体内で直接生成できない上、三日前にRAAZの助けで補充された分は最低限の活動分だけだ。ハーランと戦闘続行して形勢不利になろうものなら、この場から退散することもままならなくなる。我に返ったマイヨは、不本意ながらも引くのはやむを得ないと判断した。と、そのとき。

「マイヨッ」

 聞き覚えある女の声が響き、青い花びらが風に乗って舞ってくる。続いて、ハーランの左肘下にサファイアのような青い刃が幾重にも絡む。

 マイヨの視界の先に、川の対岸から、跳ね橋の向こう側の様子に気づいて駆けつけたDYRAの姿が飛び込んだ。青い花びらを周囲に舞わせるその手には、蛇腹剣が握られていた。


「おやおやお嬢さん」

 DYRAを一瞥したハーラン。肘下に蛇腹剣が巻き付いたことなど意にも介していないとばかりに笑みを浮かべ、丸腰をアピールするように両手を胸の高さで広げてみせる。

「まさか今日お会いできるなんて夢にも思わなくてね。本当に嬉しいよ。それに……脚が完治したご様子で、何より」

 よもやそんなことを言われるとは。DYRAは一瞬、目を丸くする。

「いい加減にしろっ」

 マイヨが話に割って入ると、ハーランへ剣を向け、胸元目掛けて斬りつける。しかしこの剣もハーランが右腕を楯にして受け止めると、何事もなかったように押し返した。

「アレーシ坊や。キミと話す分はもう終わった。お嬢さんと話をしているんだ」

 この直後、ハーランが手袋を填めた手でマイヨの剣の黒光りする刀身を掴むと自身の方へ一瞬引き寄せて反動を付け、押し出した。マイヨがバランスを崩すと、すぐさま左腕も回して蛇腹剣を解いてしまう。ハーランの動きは、瞬く間にとしか表現できぬ速さだった。DYRAの目には、青い花びらと黒い花びらがハーランの周囲に舞ったようにしか見えず、何が起こったのかわからなかった。普通の人間の動きではない。むしろ、RAAZとほぼ変わらない。DYRAは内心、驚いていた。

「お嬢さんは本当に、あのクソガキには勿体ない。今からでもこちらへ来る気はないかな? タヌ君のお父さんの件もあるしね」

 この言葉を聞くと、DYRAは一転して、腸が煮えくりかえりそうになった。タヌを攫った奴が好き放題言ってきたことが我慢ならなかった。

「別に、今すぐ決めろとは言わないよ?」

 ハーランの言葉を聞くつもりはない。その気持ちをぶつけるように、DYRAが再度、蛇腹剣を諸刃の剣状に変形させて構え直す。剣を振ろうとしたときだった。

「そうだお嬢さん。今日は急ぎの別件があるんだ。お名残惜しいけど、これで」

 思い出したような口振りでハーランが告げると、空気に溶け込むように姿を消した。

「逃げたか」

 DYRAは忌々しげな表情でハーランが最後に立っていた場所を見つめる。マイヨはハーランが最後に視線をやった先を確かめようと、剣を霧散させながら後ろを振り向く。このとき、DYRAはハーランの視線が何を捉えていたのか気づいていなかった。

「俺には『徹夜明けだから帰る』とか言ったのにな。ったく……そういうことか」

 マイヨが後ろを向いたことに気づいたDYRAは、同じ方向へ視線をやった。

 馬車留めの陰に一人の人物が立っていた。金髪で、若干埃を被っている黒いジャケットを着ている男だった。DYRAはその男を何者か知らないからか、訝るような目で見る。一方、マイヨは男がディミトリとわかるや、苦々しい表情で歩いた。

「ぐはっ」

 マイヨが手が届く距離まで行くと、いきなり、男のシャツの胸ぐらを掴み上げた。

「俺はアンタに警告したはずだよ?」

「『片方の言い分だけで判断するな』って、アンタ子どもの頃、親から言われたことないのかよ?」

「『徳ある者は危うきに近寄らず』なら、習ったよ」

 DYRAは睨むように見つめるだけだった。二人の男の間で何が起こっているのかわからないからだ。マイヨが鉄扇を手にすると、広げることなく先端をディミトリへ向けた。

「悪いことは言わない。この街から早く脱出するんだな。それと……この先は、敢えて言わないが、願わくば、アンタとはマトモな再会ができることを祈るとだけ言っておく」



     


 タヌはピルロでの異変に気づくとすぐに街を飛び出した。そして早朝、サルヴァトーレやマイヨと話をした場所へと全速力で走った。タヌは目の前にRAAZが現れたのを見ると、真っ先に一番気にしていることを口にした。

「ガキ。生きていたか」

「RAAZさん。DYRAは……」

「何が起こったかはもうわかっていると思うが、安心しろ。DYRAは街の入口にある橋のところだ。ISLAが脱出したか、確認している。お前を回収したら橋で合流だ」

 DYRAが来ている。タヌにとって何よりも良い知らせだった。彼女がマイヨの無事を確認しにピルロへ入ったならもう心配ないとも思う。しかし、気がかりなこともある。

「あ、脚は、DYRAの脚は大丈夫なんですか!? あと七日くらいは……」

「結論から言うと概ね大丈夫だ。完治までもう少し掛かるが、そろそろ自然回復で問題ない」

 RAAZがしれっと告げると、タヌは安堵の息を漏らした。RAAZが事実を告げていないなどと夢にも思っていなかった。そう。山を崩し、ピルロに大打撃を与えたのがDYRAであることなどRAAZにしてみればわざわざ知らせなくて良いことだ。

「行くぞ。私がお前を見捨てるんじゃないかとちょっと神経質気味でな」

「えっ……あ、はい!」

 DYRAがいると言われて一緒に行かない理由があるものか。一瞬でも早く会いたい。タヌは満面の笑顔で返事をすると、RAAZの後をついていくように歩き出した。

 跳ね橋の側までたどり着くのに時間は掛からなかった。

 だが、そこでタヌとRAAZが目にしたのは、思わぬ光景だった。


 今にも倒れそうなマイヨがDYRAに抱きかかえられながら、青と黒の花びらの嵐に包まれて、その場から姿を消した──。


158:【Speciale】災いのあと、ハーランはDYRAとマイヨを煽る、煽る2025/07/01 10:23

158:【Speciale】災いのあと2020/08/03 20:00



-----

 8月になりました。7月のジメジメから一転、またしても懲りずに「ドバイもビックリ」の猛暑が襲来しそうな気配になっておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。


 今回もお読み下さり、心から感謝いたします。ありがとうございます。

 ブックマークしてもらえたり感想とかいただけるととっても嬉しいです。


 現時点で、9月開催の


 ・東京コミティア133

 ・関西コミティア59


 共に当選というか、参加できることに相成りました。こんな神経質なご時世ということもあり、体調と相談し情勢を見極めての参加となりますが、無事に参加となった折りにはどうぞよろしくお願い致します。


 今回がピルロ再訪編から新章へのつなぎ目。そのENDですかいって感じで、まだまだ続きます。


 次回の更新ですが──。


 8月10日(月)予定です! 新章突入!

 日程は詳しくはtwitterでお伝えします。よろしくお願いいたします。


 次回も是非、お楽しみに!


 愛と感謝を込めて


 ☆最新話更新は、「pixiv」の方が12時間ばかり、早くなっております☆


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ