プロローグ
「目覚めるが良い」
それは、光の国の女王、リュテス・ディア・ルミエール改めライトが予言した最後の天地の勇者とされるデグラストル第四十八代目であるレイグランゼ・ダグラス・デグラストルが十五歳になる日の暁闇の時に、彼の眠りを妨げるような呼び掛けだった。いや、ひょっとすると夢なのかもしれない。三十八代目レイグランザ・ダグラス・デグラストルがかつて行った夢の世界のような場所なのだろうか。現か夢か定かではないそれに対し、彼は寝言を言った。
「う、う〜ん、誰……」
そうするとさも当然のように返事が返ってくる。現実なのだろうか。答えを先に言うと、現実であるが、彼の精神にいる存在が呼び掛けているのだ。精神にいる存在、これまで通りなら天地の勇者の精神に存在するのは神。だが、この神は特殊だ。何故ならばこの神は。
「私は、神龍」
そう、二十八代目レイグラン・ダグラス・デグラストルの時に阿修羅によって操られた神龍が彼の精神にいる。何故いるのか、それの説明を含め、神は語り掛ける。
「神龍……?」
「そう、私は神龍。偉大なる創造神にこの世界に秩序を齎すために創られた存在。だが、私は肆大邪神の一柱、阿修羅に体を乗っ取られ、世界を混沌に変える存在となってしまった。そこでデグラストル二十八代目が私を殺すことによって私は解放されたのだ。再び私は創造神によって再構成された。今度は天地の勇者に眠る神として。昔は神龍だったが、その名は変わった。改めて、私の名前を言おう。我が名は蒼龍神。拾大神が一柱である。拾大神とは、創造神を頂点とし、伝説、鳳凰、暗黒、放浪、絶対、夢幻、蒼龍、紅龍、破壊のことである。今世代の勇者は創造、紅龍、破壊を除いた神が取り憑いた。では、汝が最後の天地の勇者であるというわけであるにも関わらず、創造、破壊、紅龍が取り憑かなかったのか。それは創造神は天地の勇者に取り憑かない、そして破壊神は創造神の半身であり、前者と同様の理由だ。そして紅龍神は、我が半身である。汝もまた半分の力しかなく、本当の力を得るには紅龍神を宿したもう一人の汝を見つけ出し、融合しなければならない。この融合のためには、世界に散らばってしまった全ての種族を制覇し、一つに戻さなければならない」
「待て、待ってくれ……話が全然掴めない」
長々と話続けられ、段々と覚醒してきたレイゼは、話を中断させ、整理をしようとする。
「いずれわかるときが来るだろう。全ては汝の持っているカードが導く。神へ捧げる儀式、リチュアルによって汝は戦い続けなければならない。そのためには国を捨て、世界をあるべき姿に戻す。最後の天地の勇者の役目を果たし、神へと返還せよ」
「わかった……よくわからないけど……今は、寝かせて……」
ㅤだが彼は再び深い闇へと沈んでいく。神龍、もとい蒼龍神はやれやれと思いながら身を潜めて行った。
ㅤリチュアル、それは今や全世界に広がったカードバトル。互いの命を掛け、敗者はカードにされる。世は戦国。勝ち残るのはただ一人ーー。