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幕間01.武器の話

作中の16話と17話の間の期間が長そうだったので考えたつなぎ部分ですが、本編には弱かったので幕間として。

「ふと思ったのだが…皆どういった経緯で現在の武器を選んだんだ?」



 ある日の夕食時。皆との会話中、かねてより気になっていたことを尋ねてみた。

 冒険者たちはそれぞれ異なる表情を浮かべていたが、やがて私が武器など持ったこともないと理解できたのだろう、それぞれ考えていた。


「俺は…やっぱり憧れかな。子どもの頃に見た冒険者たちの中で剣が一番かっこよかったから」


 トールは幼い頃から街にやって来る冒険者たちを見てきた。だから憧れが第一なのだろう。


「ずいぶんと昔だから覚えてねえな。まあぶん回した時に当たりやすいからだろうよ」


 ウルフが扱うのは大剣だ。私の背丈より少し短いくらいの……そう、ノイの背丈くらいか。それほどの長さもある剣を振り下ろすのだという。その破壊力はすさまじいものだろう。


「僕はいろいろ試したんですけど、最終的には槍に落ち着きました」

「え、じゃあ弓とかも使えるの?」

「使えないことはないですけど、どうしても中途半端ですよ。距離とか威力とか。実を言うと槍もしっくり来たわけじゃないんです」


 ふむ、セスの武器は槍だったな。手に持っているのを見かけたことはある。

 しかし槍もそう満足に使えているわけではないのか。その辺りも彼が自分の能力に自信が持てない理由なのだろうか?

 様々な武器が一通り扱えるのならばそれは充分な才能だと思ったのだが……どうやら使ったことがあるのと使いこなせるのとは別物らしい。まあ、セスは謙遜する性格だからどこまで信じていいのかわからないな。


「それでもそん中で槍を使ってんのは、距離が取れるからか?」

「ええ、そうです。どうせどれもうまく使えないなら、近中距離どちらでも戦える槍がいいかなって」


 やがてウルフはセスにアドバイスを始めた。長く冒険者をしているだけあって彼は複数の武器に心得があるようだ。

 さて、私は槍の心得など聞いてもわからないし、あと一人残っているのが気になるのでそちらを尋ねてみよう。


「んー、わたしは気付いたらこれ使ってたよ。あ、これおいしいね」


 ノイの興味は半分以上食事に移っているが、先日見たあの剣だ。数日前に修理が終わって返されたのを見たが、ボロボロだったのが信じられないくらい見事に修復されていた。

 しかし気付けば、とは。そんなにも自然に武器が決まるものなのだろうか?


「普通は複数試したりはしないのか?」

「んー、多少はするかもしれないけど、そんなにはね」


 ふむ、ノイは最初に使った武器との相性が良かったので悩まなかったということだろうか。トールとて憧れだけではなく使いやすいから今の武器を使っているのだろうし。

 それにしても……ノイは常にこんな調子だ。好奇心旺盛で興味のあることにはあれやこれやと質問してはくるのだが、自分のことに関してはあまり語る様子がない。今は会話内容そのものにも興味がないらしく、食事に夢中だ。まあその気持ちはわかるが。


「ウルフさんは槍にもお詳しかったんですね」

「身内に槍使ってる奴がいてな。そいつと手合わせするうちに自然によ」

「そうなんですか。うーん…また何かあったら相談させていただいてもいいですか?」

「おう、俺でよけりゃいつでも聞くぜ」


 気付けばセスたちの槍談義が終わっていた。

 セスは当初よりは私たちと話せるようになってはいるが、それでも硬さは抜けていない。態度も言葉遣いも目上に対するそれだ。私はそういったふるまいができないので、彼の丁寧さはすごいと思っているがやはりセスは謙遜する。


「……ふむ」


 人が人と違うのは当然と言えば当然なのだが。

 性格も違う、得意なことも違う彼らが一堂に会しているこの状況……もしかしなくとも珍しいものなのではないだろうか?

 普通の冒険者は街から街へ移動するものだ。それがひとところに集まっているだけでなく、それぞれ違うところから違う目的を持ってやってきている。

 私たちが作ろうとしているのはそういう場所なのだな、と改めて思えた。


「どうしたの、エレノア?」


 トールが首をかしげている。こいつはそこまで考えてギルドを作ろうと思ったのだろうか?

 ……いや、それはないか。

 ただなんとなく楽しそうだから作ったんだろう。そして本人も言っていたように、この街にいながら冒険者として活動できる場が欲しかったのもあるはず。


「いや……明日の仕事のことを考えていた」

「今くらいは考えるのやめなよ…。ほんとエレノアは仕事好きだよね」


 トールは私のことを仕事人間のように言う。私としてはそんなつもりは毛頭ないのだが、しかしそう言われるということは、この仕事が向いているのだろうか?

 少なくとも体力勝負などできない私だ、机に向かう仕事のほうが助かるのは確かだ。


「頑張んのもいいが、ほどほどにしとけよ?」

「あの、手伝えることあったら仰ってくださいね?」

「ちゃんと寝てる?」


 すると口々にこんなことを言われた。いや私もそこまで仕事漬けではないのだが…。

 何と返して良いのかわからず、かすれた声だけが漏れた。



12/01 一部修正。

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