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断罪の旅人  作者: 玖月 瑠羽
四章 情報収集と犯人逮捕
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18話 トーチャ君の判決

寒くなり始めましたね。

どうも、私です。

10月分の東湖が出来なくて申し訳ありません。

見事にスランプにハマりました。

今も、まだ完全にとは言えませんが、戻って来てはいます。

この物語りを完結まで書けるように頑張ります。

自分が納得する完結を書けれると良いのですが。


では、次話で会いましょう。ノシ

 オルディアさんのいる離れへの屋敷へと向かっている。竜仙たちは死体の司法解剖で病院に向かっているのだが、その場所がオルディアさんの離れの屋敷である。シーボルト家は近衛兵の隊長として、ゲーディオを守って来た。その中で、毒殺などの街の住人に危害が及ぶ物について、研究と対策を考える対策する為の病院がある。それこそが、オルディアさんの離れとして利用している屋敷兼病院なのだ。シーボルト家とゲーディオ家の会議用に建てられたと聞いている。


(実際に散歩のときに観に行ったが、かなり立派な病院だったな。一目見て、アレがオルディアさんの離れ屋敷なんて思わないだろう。木の葉を隠すなら森の中と言うべきか、流石に予想外としか言いようがないな)


 離れの情報はシーボルト家とゲーディオ家の当主のみにしか知らされておらず、傍から観れば健康診断や通院のようにしか見えない。それ故に、竜仙たちは堂々と離れに向かって行けるわけだ。その為、竜仙たちの元へ向かう間に火災で得た情報を送った。竜仙からはまだ返答が返ってきていない為、そのままカルディオさんと会話をしながら向かっている。


「なるほど、他種族の国にも同じ機材が備わっているんですね。消火装置などを拝見しましたが、どれも整備が行き届いている様に見えました。それに、設備に関して竜人族の消火設備を拝見したが、それよりも細心に見える。やはり種族地域ごとに使用する装置に違いがあるんですか」


「えぇ、その通りです。イスズ様にお見せしたあの装置も、我々人間側専用の物になります。エルフ族や竜人族であれば、微細な魔力でも感知が出来るので、あの装置は不要になります。逆に人間の我々は、消火設備は最新設備が備わっております。この世界に来ていただいたのが日本人の方のみだった事もあり、安全基準についての教育が行き届いているおかげです。安全が確認できてから、他の国々の消火班に配置する予定になっているんです」


「なるほど、確かに安全性の確認は必要ですね。細心の注意は必要ですからね」


「まぁ、我々が製作した設備なので、安全である事の確証が取れないと二次災害を引き起こしかねませんからね。此奴は、俺が頼んで製作してもらったモノなんですよ。愛着がわくと言いますか、大事に使用しているんですよ」


 装置開発などに携わっている者たちを尊敬しているのか、大事そうに腰につけている装置に手を乗せて微笑んでいた。愛着がわくのは良い事だが、度が過ぎると捨てられなくなる事が多い。基盤劣化などで仕事にならないこともあり得るのだが、それでも大切に扱っている事は良い事でもある。何事も限度が大切なのだと思いながら、トーチャ君の事を思い出す。彼もまた、人造人間とでも言うべきか。死者を改造して、今の状態で復活させられた。そこに人権もなく、無理やり『暴走』と『使命』をインプットされた。ある意味で、彼もまた装置と同じなのかもしれない。


「確かにその通りだな。そう言う意味では、トーチャ君に仕掛けられたモノも、しっかりと起動したようだからな。今になって『過去に仕掛けられた爆弾』が、良きタイミングで爆発した。彼自身もまた、身勝手な人間によって『人造人間』として蘇ってしまった。可哀想な存在だな」


「そうですね。今回の件については、流石に私の立場では正しい答えを提示できないでしょう。その意味でも、オルディア様に正当な判決を与えてもらいたいと思っています。ただ、今までその爆弾が爆発することなく、ずっと不発のままで済んだのも気にはなりますが。トーチャさん自身の記憶から得られる情報も、どこまで信ぴょう性があるのか」


「それについては、判断し辛いところではあります。ただ、実際に会ってもらってから判断してもらうしかないですね。彼と話した限りでは、しっかりと受け答えは出来ていました。記憶についての裏付けは必要ですけど、そこは警備団たちの努力で何とかしてもらうしかないですね」


 我々が対応すれば簡単に終わってしまうだろうが、そこは我々が対応するべきではないと判断した。今は別の事に手を回さなくてはならない。アストリア家が今回の件に関わっている事もそうだが、もしミョルニルが関与しているのならば、何かしらの罠を仕掛けられている可能性がある。その為、部隊の全てを其方に回したいのが本音である。


「なるほど、確かに全てをイスズ様に任せるべきではないですね。神様だよりし過ぎる事は、人類の堕落に繋がると、筋肉教団の司祭様が仰っておりましたし」


「えぇ、旅人は世界の監視と驚異の排除が仕事ですから。長い間、人間などの存在に関わることはありません。故に、我々がこうして関われるのは稀なケースなので、出来ればこの世界の住人の手で答えを導き出して欲しいのですよ」


「そうなんですね。旅人様の仕事を邪魔してはならないと、遥か昔から言い伝えられてきましたが、その様な理由があったのですね。イスズ様、私は常に思うのです。何故、神々が転生者たちをこの世界に呼ぶのか。我々に異世界の技術を学び、大いなる厄災から身を守るすべを得よと、仰っているのではないかと」


 真実を知っている為に、何と返せばよいのか分からず、笑いながら「そうだと良いですね」と答えた。このユーテリアの世界の女神であるアリアの事を思うと、本当のことを言う事が出来ない。同僚たちからの虐めを受け、運よく嬢ちゃんと出会い、俺が断罪したなど口が裂けても言えない。

 そんな事を思いながら、オルディアさん達がいる病院の前に到着した。塀で囲まれている大きな病院なのだが、何故か塀の中は怒声のような声が聴こえる。何かあったのだろうかと思い、病院の敷地に入る門をくぐった。病院の敷地には、規則正しくベットが置かれており、その上に傷だらけの患者が寝かされていた。白衣を着た術者は、患者に対して回復の魔法をかけ続け、藍制服を着ている錬金術師たちは、所有している錬金窯から回復薬などを作っている。


「これは、一体何が起こったんだ? 何者かに襲われたのか分からんが、重傷者が多いようだな。それにしても、医療スタッフが足りないようだな。冒険者や教会関係者らしき者たちが忙しなく動いている。カルディオさん、何か知っているか」


「いえ、私も分からないです。火災があったと言う事で、シーボルト家の屋敷に急いで向かっていたので。もしかしたら、火災対応している間に何かがあったのではないかと」


 目の前の光景を見つめながら何が起きたのか考えていると、病院内から竜仙が出て来て指示を出していた。何故、竜仙が指示を出しているのか気にはなるが、取りあえずカルディオさんと共に竜仙のいる方へと向かった。慌ただしく動く者たちにぶつからないように避け、竜仙のもとに辿り着いた。何かあったのか気にはなるが、竜仙の邪魔をするわけにはいかないので、そのまま待合室の椅子に座った。

 竜仙の案内を待つことにしたらしく、カルディオさんも同じく席に座って状況を見守っている。その間、院内の奥から医療スタッフがストレッチャーを引いて向かって来るのが見え、それに気が付いた竜泉はすぐに彼らに指示を出した。


「術者たちはそのまま軽症の者たちの手当を続けろ!! 医療班は、重傷者またはすぐに手術が必要な患者をメインに館内へ入れろ!! 教会職員たちは、軽症者を協会側で保護してくれ!! 他に手が開いているものは、簡易的な処置で構わん。誰一人死なせるな」


「「「はい」」」


 竜仙は指揮を他の者に任せて、俺の元へと向かい頭を下げ「遅くなりました」と告げる。彼としては、早急に行動に移したかったのだろう。だが、人手が足りない以上、指揮官を任せられてしまうのは仕方がないことだ。現に、皆が竜仙の指示に従い行動しているのだ。他にも手当などをしている医療スタッフ達の手伝いなど、皆が皆、己の出来る事を必死に対応している。


「この状況は――竜仙、一体何があったんだ。被害を見る限り、強敵との戦闘で深手を負った様な感じに見えるが。特に奥の方にいる奴らは、確か門番だったはずだろう。なんでボロボロなんだ? まさか、魔物の中でも上位種であるドラゴン系列が襲いに来たのか」


「流石に、ドラゴン系列が襲いに来てはいないが、ダイヤモンドウルフのような皮膚が鉱物で出来ている魔物が襲って来たんだ。街の外にいる魔物にしては、上位種が多かったようだ。旦那と儂がゲーディオ邸で片づけた魔物たちと同様に、何者かの手によって引き起こされた可能性はたかいだろうな」


「そうか、討伐は出来たのか。何者かの手によって引き起こされた可能性が高いとは言うが、まだ確証はない以上は調査する必要はあるだろうな」


 外の方へと目を向け、傷だらけの者たちを見る。皆が皆、誰かの為に戦い続けたのだろう。瀕死の重傷まではいなさそうだが、それでもこのまま放置すれば死んでしまうような者はいる。この状況を見て、まだ戦闘中なら竜仙が戦闘に参加しているはずである。それが、現在この場所にいるのだ。つまり、戦闘は終わっていると判断した。


「あぁ、旦那の言う通り戦闘は終わっている。死者は今のところ出てはいないが、かなりの激戦だったらしい。騎士団たちの頑張りで、街へ侵入される事無く片づけられたらしい。魔物の気配は感じ取れなかったが、騎士団たちが街の中を巡回して侵入していないか調査中だ」


「そうか、騎士団たちが巡回しているのか。竜仙の気配で察知できなかったのなら、問題はないだろうがな。それにしても、欠片の力によって誘き出された可能性は無いと思いたいが、屋敷の件もあるから違うとは言い切れんな。ちなみにだが、上位種の魔物はダイヤモンドウルフ以外に何が攻めて来たんだ」


「あぁ、アーマドエレファントや、クリスタル・アルマージなどの魔物が来ていたらしい。ちなみにだが、ゴーレム種は一切出現してこなかったらしいぞ。儂らの方には大量のゴーレムがやって来たわけだが」


 まさかのゴーレム種が一切出現しない戦闘だったようだ。どうやら、本当に俺はゴーレム種の呪いにかかっているようだ。ゴーレムに愛されているのではないだろうかと思いながらも、竜仙の後を追って院内の奥へと向かう。

 慌ただしく多くの者が動いている中で、案内掲示板を通り過ぎるのを目で確認した。どうやら、俺たちは院長室へと向かっているようだ。なるべく人にぶつからない様に歩いて向かうと、トーチャ君の声が聴こえて来た。まだ目的地に着いていないのだが、トーチャ君の「何故ですか」と言う声に何やら緊急性を感じ取った。


「トーチャ君の声の様だが、一体何をしているんだ」


「あぁ、丁度トーチャの処遇の話が決まったようだな。旦那たちが来る前に、説明はある程度終わらせている。勿論、連絡にあった火災の件も伝えてはいるが、実際の調査をしたカルディオさんだったか。オルディアさんが、アンタの話を聞きたいと言っている。部屋の中には、筋肉教団のロイア司祭、冒険者ギルドのシュナイゼさん、九条とオルディアさん、トーチャの五名だ。ディアラさんは、無月隊長と共に嬢ちゃんに会いに行っている」


「なるほど、ミーアへ会いに行ったのか。ミーアも喜ぶだろうな。さて、仕事の話に戻るとして、実際に現場を見た者の情報は必要だろうな。情報は鮮度が命だから、説明はカルディオさんに任せる。さて、院長室に到着のようだな」


 院長室に到着すると、竜仙は扉をノックする。扉越しから「どうぞ」とオルディアさんの声が聞こえ、竜仙は扉を開け中へと入った。その後に続く様に入ると、そこには一つのテーブルを囲う様にC型のソファーに座る五名の姿があった。真ん中はオルディアさんが座り、右側はシュナイゼさん、左側はロイア司祭が座っている。トーチャはオルディアさんの正面側にあるパイプ椅子に座り、その隣に九条が立っている。


「イスズ様、そしてカルディオ消防員。お待ちしておりました」


 オルディアさんはその場で立ち上がりお辞儀をする。その他の者たちも立ち上がりお辞儀をするのを見て、カルディオさんと同様に俺もお辞儀した。やはりと言うべきか、三トップを前にカルディオさんの表情はとても固く、少しだけ手が震えているようだった。此処は俺が彼の代わりにと、オルディアさん達の元へ歩き始めると「此方にお座りください」と指示を受けた。ソファーの前に立つと、三人はソファーに座るのを確認してからカルディオさんと共に指示された席に座った。


「イスズ様、私ども家族を救って頂きありがとうございます。箱庭世界はとても素晴らしいところでした。魔術訓練や剣術指導など防音室など、とても参考になるものが多く勉強になりました」


「それは良かった。ディアラさんの一件も含めて、オルディアさん達の保護は最優先事項なので。しかし、動作確認をする前に防衛装置が起動したことには驚きましたが、箱庭世界に部下を何名か待機させといて本当に良かった」


「えぇ、箱庭世界でミーア様と再会できた事に娘は喜んでおりました。身体に不調があったのか、元の世界に戻っている事は娘から聞いておりました。ムツキ様に剣術指導を受けておりましたので、身体の方も問題なく回復したようですよ。連絡はもう入れてると言っておりました」


 オルディアさんの話を聞くと同時に、胸ポケットに入れていた通信端末が振動がした。すぐに取り出して画面を確認すると隊長からのメールだった。皆に「すまない、上司から連絡が来た」と一言告げてから、すぐに内容を確認すると、オルディアさんが言っていた内容が書かれていた。すぐにポケットにしまった。


「ムツキ様からの連絡でしたのでしょうか」


「えぇ、実は世界間で情報の伝達するスピードが違うのです。なので、先ほどのオルディアさんが仰られた内容の情報が今来たところです。さて、話を変えるとしましょう。今回、火災があった現場からこのようなモノを発見しました。これについて、説明をさせていただきます」


 俺とカルディオさんは、手に入れた情報を共有した。最初はトーチャ君自身も驚いていたが、しっかりと情報を整理しようと聞き入っていた。カルディオさんは、此処に来る前に持って来たオルゴールとセットとなった暴走を誘う起爆装置をテーブルの上に置き、この装置について分かる範囲で説明をした。実際に装置を手に取り、中を確認する三人を見つつ、テーブルの上に置かれたレントゲン写真に目がいった。竜仙がそれを手に取り、何も言わずに俺に渡した。


「これは、何か装置のようなものが所々にあるな。これは、トーチャ君のレントゲン写真か」


「その通りだ。トーチャを連れてこの医院に着いた際に、そのまま精密検査を行なった。その結果がコレになる。心臓部と脊髄、脳に何やら装置が接続されているようだ」


「此奴が、暴走を引き起こす装置だったと。トーチャ君には悪いが、かなりの改造を施されている様だな。元の人間の姿に戻せるかどうか、かなり難しい手術になるだろうな」


 正直に言えば、かなり難しい手術になることは確かであった。心臓については、この世界では創造は不可能だ。脳と脊髄に取り付けられた装置については、大きな手術にはなるが外せない事も無いだろう。装置と心臓が連動している可能性もあるため、手術を行なうにも心臓を用意しなくてはならない。それ故に、やるならば暴走機能のみを取り除く方法しか、現状での解決方法は見つからない。

 彼の身体に施されている改造された個所について、数枚のレントゲンを見ながらどうしたものかと考えている中で、カルディオさんは三名に装置の説明を終えた。証拠品を数個取り出して、テーブルの上に置いた。そして、オルゴール型の装置を最後に置くと、オルディアさんはそれを手に取った。見覚えがあるのか分からないが、中身を確認し始めた。


「――と、言うわけです。火災の件については、以上となります。次に、火災現場で燃える事の無かった木箱から発見した物について報告いたします。此方については、屋敷の発火原因とは違いますが、トーチャさんが暴走した原因となる証拠品が入っておりました。此方は、箱の中に入っていた物となります。見た目はオルゴールに見えますが、オルゴール型の装置であることは間違いないかと」


「つまり、発火装置とこの装置には関連性が無かったわけですね。それにしても、このオルゴールがトーチャさんを暴走させる装置だとは、誰も予想できませんでしょうね。報告にあった情報では、火災があったのに燃えなかった木箱ですか。その木箱には『アストリア家の家紋』の焼き印。此処まで証拠があるのならば、確実に失墜させることも可能でしょうね」


「それについては、我々筋肉教団にお任せください。王国内部に協力者が居りまして、アストリア家の情報は得ております。アストリア家には穏健派と過激派の二つに分かれているらしく、過激派内の六割は排除されたようですよ」


 ロイア司祭が真剣な表情をしている中、テーブルの上に落ちいてある『トーチャ君のレントゲン』を見るのを止めて話を聞いた。何やらアストリア家の情報を話しており、アストリア家の御家事情について話していた。どうやら穏健派が、過激派の行動を抑えているらしい。だが、それでも一部の者が行動に移しているらしい。その結果、シャトゥルートゥ集落での大量殺人や、この街ゲーディオに被害をもたらしたわけだ。その情報が王国にも渡り、裁判にかけられて首を跳ねられているらしい。今までの俺たちが対応した集落の件について、殆んどが彼ら過激派によるものだったらしい。


「そう言うわけで、我々は今回の件を鑑みてトーチャさんの身体を調べた。その結果ですが、魔術部隊の方々からの報告を含め、三人一致で今回のトーチャさんの件は無罪とする事にしました。魔術部隊の見解と、イスズ様方の情報を精査し、今回の判決になったわけです」


「なるほど。そして、その結果をトーチャ君は受け入れていないと」


「えぇ、彼としては『記憶が無かろうが私や娘を襲った』と言うこと事態が問題であり、裁かれるべきであると言っているのです。確かに、本来であれば裁かれるべきなのかもしれませんが、彼自身が死んで改造されていると言う記憶が無くなっている。その時点で、彼の意思とは関係なく引き起こされたことになります。その時点で、彼を裁く事は難しい事です」


 オルディアさん達が出した答えを聞き、彼は異議を唱えたそうな表情をする。確かに、今回の事件は彼の意志とは関係なく引き起こされたものだ。それでも、領主を拉致しようとしたことや、殺害をする可能性も考えると無罪は妥当ではないとも言える。しかし、その行動に本人の意思があったのかと言えば、それは無いと言える。だが、竜仙は彼の気持ちを理解したうえで、彼女たちの出した答えについて異議を唱えた。


「あくまで儂の考えだが、無罪とするよりも『有罪』として裁くべきではないだろうか。確かに彼の意志で行なったわけではないとはいえ、やはり体裁は整えて置いた方がいい。まぁ、今回の件は仕組まれたものであり、自我を失った状態だった事からを考えて、軽い罰でよいだろう」


「確かに竜仙様の仰られる事も正しいでしょう。ですが、自我を奪われた状態の犯罪を裁くのは難しいと思われます。今回は多くの情報から判断した結果、特例となりますが無罪が妥当と判断したのです。このままでは平行線を辿るだけとなりますので、最後はイスズ様の判決に従いたいと思います。イスズ様、宜しでしょうか」


 オルディアさん達の考えを聞いたうえで、答えを出したことは分かった。ただ、彼にとっては無意識化で犯罪を犯していた事に対して、正しく裁かれるべきだと思っているのだろう。こういう場合は、再犯が起こる事もあり得る。それ故に、オルディアさんの意志を尊重して「分かりました」と告げて、彼の判決について語ることにした。


「オルディアさんたちの言う様に、今までの情報を確認した結果なら無罪が妥当だろう。だが、何かしらの罰は与えるべきだ。それが彼にとっての救いにもなる。それと、トーチャ君。自身が犯した罪を自覚し、認める事は良いことだ。そして、判決結果を受入れる事も、誤っていると思う気持ちも大切な事だ。だがな、今回の件は君自身の意志で行なったわけではない。情報を精査して出された判決だ。そう言った理由で無罪と判断されたのならば、それに従うことも重要な事だ」


 トーチャ君は俯きながら指示か「はい」と返事を返した。竜仙は彼の事を想って何かしらの罰を与えるべきだと告げた。この人たちの意志を理解したうえで、彼へ最後の判決を行なう。


「トーチャ君、今回の件はオルディアさん達の判決を尊重して無罪とする。ただし、無意識化での罪を犯した事を含め、暴走を引き起こす装置を摘出は義務とする。トーチャ君が犯した罪は、今後の行動で清算しなさい。ゲーディオの為にその力を生かすかは君次第だ。強い力は、救いにも滅びにもどちらにもなるのだ。その力をどう生かすかは君が決めるんだ」


 トーチャ君は判決を聞いて落胆する事もなく黙って頷いた。罪の償い方など人それぞれだ。重大な犯罪を犯したのならば、死刑や終身刑が妥当だろう。だが、トーチャ君については言わば殺され、改造されて復活させた。人造兵器として創られたのならば、それを行かして別の形で償えばよいだけだ。


「では、今回の件はここまでにしましょう。さぁ、皆さん次の議題に入りましょう。アストリア家の現状について、説明させていただきます。此方をどうぞ」


 シュナイゼさんはそう告げると、資料を俺に渡した。そこには、現在のアストリア家の状況について書かれていた。穏健派と過激派の二派閥による戦闘が現在行われている。その様な内容が記載されていた。それに、トーチャ君の殺害と改造、オルディアさんの暗殺計画を立てた者のその後の情報が書かれていた。


「現在は穏健派が、過激派を抑え込んでいる状態です。我々筋肉教団側も手伝ってはいますが、過激派の行動は予想出来ない事が多い。シャトゥルートゥ集落の一件で、バルド王国の領土が竜人族の王国であるギーリア皇山国に取られて焦っていましたので。そもそも、奪われたと言うよりは、援助して気が付けば彼方側についた様な感じですが」


「確かにジェイクの野郎が、シャトゥルートゥ集落のギルド長として連携していたな。今でも情報はこっちに入ってきているが、なんでも初心者の冒険者を集めて授業を開いていると聞いている。これも、イスズ様が手を回したんだろう。おかげで、冒険者の死者数が減少した。ギルド運営側から礼を言わせてくれ。ありがとう」


「私が聴いた話では、あそこでしか手に入らない物があると聞いております。付与効果を調整してくれるなど、冒険者の方々が話していたと門番の方たちが言っておりましたね。イスズ様の恩恵で、此方も死傷者数が減っているます。本当にありがとうございます」


 シャトゥルートゥ集落のおかげで、色々と問題が解決しているようで良かった。ミーアが聴いたら喜ぶに違いないと思いながら、アストリア家の事については情報が少ない。部下たちには別件の調査を頼んでいたこともあり、アストリア家に関する情報を探る事をさせていなかった。これは丁度良いと判断し、俺たちは三人からアストリア家について聞くことにした。

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