表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪の旅人  作者: 玖月 瑠羽
四章 情報収集と犯人逮捕
74/90

13話 ゲーディオ邸の防衛戦

どうも、5月までに投稿が間に合い、少しほっとしている私です。

コロナの第三回目接種の後に来る高熱。

本当に勘弁してもらいたいと思うけど、体の抵抗力を高めるためには必要なんだよね。

そう信じて、頑張ってやる気を出して5月分の書き上げれた。


来月のも構想まとめなきゃなぁ( ̄▽ ̄;)

では、次話で会いましょう ノシ

 無数の敵の気配を感じ取りながら、大鎌を構えながらジッと敵が来る方向を見つめる。今まで気配すらなかった魔物たちが、急に出現した事に違和感を憶えながら、地面に仰向けで眠っているトーチャを見る。悪夢を観ているのか、心臓の近くに手をのせて苦しんでいるように見える。


(まさか、狂いの欠片が発する力の影響で、魔物が再出現――いや、生まれたのか? 欠片同士の波長による影響も考えられるが)


 トーチャを見守りながら、本来なら愛刀である『刻竜刀 幻竜』を用いて戦うべきなのだが、気配で察知できる限りではあるが、動物型の魔物が数百は超えている事は間違いない。そうなると、愛刀で戦うよりも大鎌の方が楽なので、今回は大鎌で戦うことにした。今思えば、大鎌を使う機会はそんなになかった。昔から隊長との戦闘訓練では、剣や刀での戦闘がメインだった。そして、サブとしての戦闘も考慮して他の武器を学ぶ事も多かった。

 何故、隊長との訓練に刀が多いのかと言うと、近接での戦闘時に刀が有利だからと言う理由ではなく、ただ単に太刀や打ち刀などの武器を好んで使う奴が多いからである。その為、無月隊長の部隊である第零部隊は、殆んどの奴が刀をメインにしている。


(そう言えば、無月隊長が刀を抜いたところ一度も見たことないな。基本、木刀がメインだったよな。こっちは刀を抜いているのに一向に勝てる気配がしなかったんだよな。結果、サバイバルナイフやククリナイフで戦っても、傷一つ付けられずに敗ける事が多いからな)


 腰に差しているサバイバルナイフに手を触れながら、旅人になる前の忘れているはずの過去を思い出す。殺人鬼、殺し屋と呼ばれ、指名手配されてもなお、このナイフだけは決して手放すことはできない。あの『人の皮を被った怪物』を、このナイフで首を斬り裂き、心臓に突き刺して殺した。殺した後、俺はこのナイフをとある場所に捨てた。だが、あの馬鹿野郎が入院中の俺の部屋に『忘れ物だ』と言って、持って来たわけだが。その後、旅人になってから昔の感を取り戻すために、サバイバルナイフやククリナイフでの戦闘訓練をし、それを見越して様々な武器での間合いの取り方を学んだのだ。


「まったく、白兎が戻って来たことであの日の事を思い出してきた。あの化物を殺すのに、拳銃やショットガンでも効かないせいで、結論ナイフでの殺し合いになるとか――。まぁ、良いか。それにしても、竜仙たちと合流するまでに、魔物たちと激突しなければ良いんだが」


 ゆっくりと此方へと向かって来る存在を感じ取ると溜め息を吐き、駆け足で戻って来いと思いながら、トーチャをどこに避難させるか考える。屋敷の中に避難させるべきなのだが、狂いの欠片を抜き取った後に『代理のコア』を入れたばかりの状態だ。それも、まだ狂いの力を纏っている状態で、狂いの欠片の気配があった屋敷に入れてしまえば、何かしらの副作用が起きる可能性がある。故に部下たちが戻って来るまでは、俺の手の届くこの場所しかない。


「そもそも、どうして魔物が急に出現したんだ。森には行った時に気配を探ったが、魔物の気配なんてなかったぞ。まるで、誰かが意図的に召喚したような感じだな。狂いの神が邪魔をする為に行なったのか。いや、違うな。魔物たちを召喚するなんて行為が幼稚すぎる。俺の知る彼奴は、もっと徹底的に人類を、世界を滅ぼす行動をする。魔物召喚をするならば、街一つ滅ぼすレベルの厄災級の魔物を召喚するはずが、気配探る限り動物系の魔物ばかりだ」


 狂いの神との戦いの事を思い出す。彼奴は世界を滅ぼす事しか考えておらず、その世界に住む者たちなど興味がない。その為、文明を滅ぼすレベルの厄災を振りまき、世界そのものを破壊させる。そんな彼奴がこの程度の数しか出せないはずがないのだ。例え、あの大戦で俺の攻撃を受けて弱体化したとしても、もっと多くの魔物を召喚できるだろ。


「若旦那、ただいま戻りました」


 目の前の門の外から飛び越えて九条が帰って来た。魔物たちの気配は有れど、此方に向ってくる気配はない。その間にも続々と魔物たちが一か所に集まっている気配を察知し、九条はジッとその方向へと顔を向けながら「此奴は、やべぇ、か」と呟く。確かに一か所に集合する行動はヤバい状態とも言える。それは、知恵を持つ魔物がリーダーとなり、魔物の軍勢で責めてくる可能性があるからだ。竜仙の気配が此方へと向かって来ているのを察知し、すぐに九条に指示をだす。


「九条、ようやく戻って来たか。これから戦闘になるが、お前にはトーチャを連れて安全な場所へと保護、及び護衛をしてくれ。それと、後ろの屋敷から微かにだが狂いの欠片の気配を感じ取った。よって、トーチャを屋敷の中に居れるのは危険と考え、屋敷以外で安全が取れる場所まで護衛する必要がある。済まないが、安全圏まで頼めるか」


「若旦那、了解しました。トーチャの保護については俺に任せてくれ。しかし、屋敷の中に狂いの欠片があるってマジっすか。屋敷の調査は、俺と竜仙の旦那たちのグループで念入りに調査した。それで見落とすなんて、俺ならまだしも、竜仙の旦那がするはずがねぇ」


 信じられないと言う表情を向ける九条を見て、当然の反応だなと納得する。竜仙との付き合いは長いのだが、この様なミスをする様な奴ではないことは、誰よりも長い付き合いの俺が一番理解している。つまり、竜仙ですら気付くことの出来ない細工がされていた可能性がある。それを考えて、頭を掻きながら竜仙の弁明をする。


「今回の件は、欠片同士の反応があったから気が付けたようなものだ。竜仙でも気が付かない程、分かり辛い方法で隠されていたんだろう。それだけ、欠片が巧妙に隠されていた。なんせ、トーチャのような人造人間に改造されてたほどだ。そいつらが屋敷に細工をして居たとすれば、何が起こるか分からない状態でトーチャを屋敷に居れるのは危険すぎる」


「なるほど、発見されないような細工が施されていた可能性があると言うことですか。竜仙の旦那でも気付けないレベルの細工――確かに、我々はトーチャの状態に気が付けなかった。そう考えれば、欠片に何かしらのコーティングをして埋めている可能性も考えられる――か。若旦那、了解しました。トーチャについては、責任をもって私が保護します。魔物狩りは、お任せします」


「あぁ、分かっている。取りあえず、竜仙と共に残党を狩り終えた後、もう一度屋敷の調査を行なう。その際は、トーチャを屋敷の中に入れる。申し訳ないが、トーチャと屋敷の中にある欠片が共鳴する可能性を考慮して、欠片探しに協力してもらう事にする。まぁ、三人で対処すれば問題ないだろうからな」


 大鎌を構えながら、竜仙が戻って来るのを待つ。その間、九条はトーチャの額に何やら札のような物を張りつけると、ゲーディオ邸の物置小屋へと運んでいった。小屋と言っても、ドアが半壊しているためか、小屋の中には容易に入る事が出来るようだ。その中にトーチャを入れると、小屋の中にあったのか椅子を扉の前に置き、そのまま何事もなかったかのように九条が座って読書を始めた。やはり、彼奴の給料を減らしてやるべきだろうか。そんな事を考えていると、かなりの速さで此方へと向かって来る竜仙の気配を感じ取り、其方へと身体を向けると、塀を飛び越え此方へと戻って来た竜仙の姿があった。


「旦那、遅れてしまい申し訳ない。九条が先に合流したようだが、九条はどこに――あぁ、あそこか。なんで、読書しているんだ」


 真っ赤な液体が付いた金棒を持った竜仙が、九条を見て『アレは何だ』と言いたいような表情をしていたいた。そんな事とは置いておくとして、どうやら先に何体か魔物を仕留め終えて来たのだろう。魔物が突如出現したことへの対応をしてから合流したようだ。


「九条にはトーチャを保護させている。本来なら、あの小屋ではなく屋敷内に入れたいのだが、最悪な事に屋敷の中に『狂いの欠片』がある事が判明した。詳しい説明は省略するが、欠片同士の反応でしか気付けなかった。さらに言えば、巧妙に隠されているせいで、竜仙でも発見が困難だったようだ。済まないが後で俺の立会いの下で確認したい」


「巧妙に隠されていた、だと。屋敷の隅々を調べたはずなんだが、それでも見つからないなどあり得るのだろうか。慢心などしていないはずだが――いや、現にこうして起こっているのなら仕方がないことか。トーチャの件もある、承知した」


 魔物の気配がする方へと身体を向けると、金棒を地面に突き刺しながら肩を軽く回す。その間にも魔物たちは、一か所にぞろぞろと集まり続けている気配だけはある。集まりきったところで魔法で消し去ることも可能だろう。だが、周辺は森で、更に近くには街がある。更に最悪な事に風は追い風のせいで、火炎系の魔法や雷系の魔法での森林火災が起こる可能性がある。さらに、土魔法や氷結魔法による土煙や、急激な温度変化による一時的ではあるが街に被害が及ぶ可能性もある。風魔法を放つのもありなのだが、それも流石に無理そうだ。


(此方に向かって来ている人間の気配がある。冒険者ギルドからの派遣された者だろうか分からないが、正直に言えば魔が悪いとしか言えないな。ただ、まだ遭遇するまでかなり距離があることが救いだな)


 どうやって魔物を討伐するべきか悩みながらも、どこか懐かしい気持ちに駆られた。竜仙と共に戦場をかけた日の事を思い出し、籠城戦の時にまとめて敵を屠ったあの日の事が脳裏に過り、何となく今後の展開をどうするべきか決まった。


「さて、どうしたものか。範囲魔法はダメ、確実に籠城戦となってしまったわけだが。このまま魔物が進行してくるのを待たなければならないが、はてさてどうしたものか。物資はなく、ただ此方へと向かって来る魔物を屋敷の中に入れさせない様に倒していく。なんだか、懐かしいな。昔に、籠城戦とか言って真っ先に城を出て、幾万の兵士を叩き潰したよな。お前」


「何を言っているんだ。旦那こそ、面倒だからと範囲魔法のメテオで、そこら辺に居た敵を叩き潰したじゃないか。生存者ゼロにするとか、旦那の鬼畜の所業を思い出しただけでも震えちまうな。あの時は、近隣住民はどころか、他の集落に住んでいる住人全てを守る為に時を止めて結界を張る嵌めになったわけだが。まさかと思うが旦那、またやるつもりじゃないよな」


「ハッハッハ、そんなわけないだろう。今回ばかりは、そんな面倒事をさせるわけにはいかないからな。取りあえず、こっちから出向く訳にはいかないからな。まぁ、此方へと誘導させる必要はあるが」


 互いに目は笑っていない状態でニヤリと口角を上げ、各々の武器を強く握りながら言う。久しぶりに竜仙と籠城戦と言う事で、何故か心が踊っている。俺はそのまま大鎌を握っていない左手を空高くあげ、波動を左手に込めて『青い波動の槍』を創り出した。その光景を観た竜仙が溜め息を吐くと、そのまま一歩後ろに下がり俺の攻撃が放たれる瞬間を待つ。


「取りあえず、開幕の狼煙を上げると言うわけでだ。竜仙、一発頼む」


「旦那じゃなくて、儂が狼煙を上げるのか。こりゃ、また珍しいが――まぁ、良いが」


 波動の槍を竜仙が打ちやすい位置に固定し、そのまま右に移動しながら指示する。竜仙が金棒を握りそのまま野球の要領で打ち上げた。綺麗な放物線場を描き、魔物の大軍がいる中央に落下する気配を確認し、そこで槍を球体上に戻して圧縮を解除したと同時に爆発させる。凄まじい爆発音とともに約半分ほのどの魔物の気配が消えた。


「ナイスショットだな。見事に魔物の気配が半分ほど消え去ったな。だが、また出現して一か所に集まろうとしているな。こりゃ、もう少し威力を上げるべきだったかもしれないな。少し慎重になりすぎて、波動の威力を調整ミスったかもしれんな」


「いやいや、旦那。これでも、空爆レベルだぞ。波動の槍を打ち上げた儂が言うのもなんだが、もう少し弱めでも良かったと思うのだが。そもそも、これだけの威力で半分も仕留めれれば上出来だろう。まぁ。流石に綺麗に吹き飛び過ぎな気がするが」


「そうか? また魔物どもが出現して、半分補充されてる状態だぞ。だがまぁ、そのおかげで魔物どもが此方に気が付いたようだ。かなりのスピードで此方へと向かってきたわけだし、結果オーライだろうさ」


 地響きが聞え、此方に向かって来ている事が容易に分かる。そんな中で、竜仙は次の槍を待ってバットを振る構えをとっていた。それを見て苦笑すると同時に、更に数十本の波動の槍を創り出し、打ちやすい位置に一本ずつ配置していく。マシンガンのように槍を自動配置されるように波動を設定する。


「んじゃ、第一回波動槍による、魔物討伐大会を開始しようじゃないか」


「旦那も、ノリノリだな。まぁ、旦那の命令なら従うさ!! んじゃ、行くぞ」


 竜仙は波動の槍を次々と打ち上げ、此方へと向かって来る魔物へと降り注ぐ。メテオよりは安全ではあるが、土煙もそこまで発生しないレベルで魔物たちを討伐していく。徐々に魔物の数が減るのを気配で感じ取りながらも『わんこそば形式』で波動の槍を生産し、竜仙に撃たせ続けて行く。飛行系の魔物は槍で胴体を貫かれ、そのまま地面へと落下すると同時に落下した場所を通る魔物ごと、波動を爆破させて仕留める。この繰り返しで、三分二程度の魔物は討伐できたと思われる。補充されるかと思ったが、魔物たちは先ほどの此方へと向かって来ている人間の気配と戦闘中のようで、合流される気配はなかった。


「オラオラオラ、どんどん行くぞ!! 旦那、槍の補充を頼む」


「竜仙、楽しそうだな。真面目にやっているとは思うが、何本か別方向に飛んで行っている。済まないが、敵だけを狙ってくれ」


「いやいや、真面目に敵めがけて打ってるのだが、なぁ!! っち、一匹逃したか!! 次行くぞ」


 そんな他愛のない話をしながら、竜仙は波動の槍を金棒で撃ち続ける。綺麗な放物線を描きながら魔物を殲滅する槍を掻い潜り、魔物の気配が此方へと接敵される距離まで近づかれている。最後の一本の槍を撃ち終えると同時に、左手を下げ大鎌を構え直した。壊れている門の隙間から微かに魔物の姿が見える。


「さて、このまま魔物たちを屋敷の中に入れてしまうのは、現場保存としている手前避けたいところ。竜仙、お前は地上の敵を頼んで良いか? 上空の魔物は俺がやる」


「上空の魔物の方が少ないように思えるのだが」


「そうだな。ただ、空中戦の得意な俺が相手をした方が効率が良いだろう。飛行型の魔物は俺が速攻で討伐して、そのまま地上の魔物を狩る。竜仙なら、地上は任せられるからな」


 そう告げるとそのまま上空へと飛ぶ。空を飛ぶ魔物たちの姿を見て大鎌の刃先に魔力を込め、そのまま空中を駆けて大鎌を振るう。鷲の姿をした魔物の首を切り落とし、更にハトの姿をした魔物を突き刺し、そのまま此方へと高速で突っ込んでくる燕型の魔物へと投げ飛ばしぶつける。地上では、竜仙が門の外へと出て、そのまま魔物たちを金棒で頭蓋骨を破壊したりなど、仕留めている姿が見えた。屋敷内に一匹も侵入させないで、魔物を仕留めていく。

 止めどなくやって来る魔物を対応するも、屋敷の左右だけではなく後方からも魔物がやってくる気配を感じ取り、そろそろ本格的にヤバいのではないかと思い始める。どこから湧いて出たのか分からない魔物を対処している中、飛行系の魔物の一体を斬り裂いた時にふと思ってしまった。


「あれ、籠城戦ではなく、これは防衛戦じゃないか? 籠城って、やって来る相手に対して城に籠って死守する感じだよな。今の俺たち屋敷の塀の外で、魔物たちを討伐しているし――まぁ、良いか」


 追加でやって来る飛行型の魔物に対して、さっさと終わらせる為に此方へと突っ込んでくる魔物を斬り裂き、俺を避けて屋敷へと向かおうとする奴を波動の矢で突き刺して地面へ叩き落す。何も言わず、竜仙と共に魔物を斬り裂き、矢で穿ち、金棒で潰し、打ち上げ、それを斬り裂く。此方へと向かって来る魔物たちを討伐していると、森の方から数十名の冒険者らしき姿が見えた。彼方も此方の姿に気が付いたのだが、すぐに俺たちが何者か分かると此方へと合流した。その後、すぐに魔物の討伐を手伝い始めた。


「シェリー、右翼から来る魔物を頼む!! バズーラは、前方から来るゴーレムをシールドで防御!! リービィルは補助魔法で援護、その後は状況に応じて回復、攻撃を頼む!! シルフィードは、左翼から来る魔物を頼む!! 俺は前夫から来るゴーレムを相手する。全員、生きて帰るぞ」


 五名の冒険者たちの他にも沢山の冒険者が合流して対応していく。シェリーと言う筋肉隆々の人間の女性拳闘士は、右側から来る『バレッドウルフ』と呼ばれる狼型の魔物を殴り飛ばした。殴った際に衝撃波のようなものが出ていた。首には筋肉教団のマークが刺繍されたスカーフを身に付けており、すぐに筋肉教団関係者だと理解できた。


「中々に良い拳を持っているな、嬢ちゃん」


「あ、ありがとうございます!! リューセン様に褒められるとは、彼奴らに自慢できそうだ」


 シルフィードと呼ばれるホワイトタイガーのような綺麗な毛並みの獣人の男性騎士は、左翼から突進してくる『ジャイアントボア』をシールドバッシュで受け止め、よろめいたところを手に握る剣で斬り裂いた。あの突進を盾で防ぐのではなく、シールドバッシュで防いだことに驚いてしまった。更には、リービィルと呼ばれる銀髪エルフの男性は『ダブルスペル』による二重付加魔法を発動させ仲間たちの援護をしている。

 そして、バズーラと呼ばれる黒髪の人間の男性は、鎧に巨大な盾を二つ装備しており、目の前から来る『トパーズゴーレム』の攻撃を盾で防いでいた。屈強な男でも音を上げそうな攻撃のラッシュを、膝を地面につけることなくジッと攻撃を受け止めている。そして、このグループのリーダーであろう先ほどまで指示を出していた金髪エルフの男性は弓を引き絞り、トパーズゴーレムのコアを『魔法矢』による攻撃で貫いた。互いに信頼し合っているからか、リーダーと思われる男性は、仲間の援護を行ないながらも敵の矢で仕留めていく。


「旦那、ここは彼らに任せよう。儂は屋敷の後方から来る魔物を討伐する!! 旦那は屋敷の左側から来る魔物を討伐してくれ!! 左側は――」


「其方は、もう一部隊が対応する手はずになってます!! リービィル、シーボルト騎士団に連絡!!屋敷の左側から来る魔物の群れの討伐依頼を」


「了解した!! イスズ様、リューセン様!! 此方は我々に任せて下さい」


 冒険者たちや竜仙の提案に黙って頷き、この場にいる仲間全員に届く様に届く様に大声で伝える。


「どんなことがあろうと、ゲーディオ邸を死守するぞ!! どんなことがあろうと、死ぬな!! 我々にとっての勝利は、屋敷を死守と誰一人として死なないことだ!! この戦、絶対に勝つぞ」


「「「おう!! 」」」


 この場にいるすべての者たちの雄たけびと共に、各々の防衛ラインへと移動した。竜仙と俺は空中を飛び、防衛担当する場所へと移動した。俺の担当した箇所に到着すると、目視で確認できる程の距離まで魔物が近づいていた。ゴーレム種が数十体程おり、風魔法でその巨体を空中へと吹き飛ばすと、波動の槍を創り出し投げ飛ばし集団のコアを破壊する。竜仙の方は、気配で分かる範囲でだが、何やら動物系の魔物の胴体を金棒で敵を叩きのめしている。

 そして、屋敷の左側から魔物の気配が近づくのを察知すると同時に、集団を組む人型の気配を感じ取った。魔物と人型が衝突すると同時に「我々、騎士団の意地を見せるぞ」と言う叫び声が聞こえ、騎士団が到着したのだとすぐに分かった。リーダーらしき先ほどの叫びと共に、騎士団の咆哮が大地を揺らし、魔物と戦闘が開始されたのだとすぐに分かった。


(流石、ゲーディオと言う街を護る騎士団だな。咆哮だけで、動物系の魔物が動きが鈍った。だが、ゴーレム種は例外だったがな)


 ゴーレム種ばっかり戦わされている様な気もするが、取りあえず群れで来るゴーレムを相手に大鎌で切断しながら討伐する。コアを斬り裂きながら周囲の気配を確認するが、激しい戦闘になりながらも時間が経つにつれて、魔物たちの数が減っていくのを感じ取れた。見事な連携で魔物を倒していく冒険者と騎士団。ゲーディオを護る騎士団と冒険者たちの信頼があってこそ、大軍を率いる魔物たちに臆することなく戦えているのだろう。そんな事を思いながら勝ち筋が見えて来た事に安堵し、目の前のゴーレムを大鎌でコアを突き刺して抜き取った。


「このまま、後は持久戦になるか。ゴーレム種狩りに飽きて来たんだが――いや、そもそも何故、俺の所だけゴーレム種しか現れないんだ!? おい、動物種の魔物はどこ行きやがった」


 そんな不満を叫びながら、ゴーレムたちを倒していく。最近、俺ばっかりゴーレム種の相手をさせられている気がするのだが、やはりゴーレムに愛されているのだろうか。此方のゴーレムたちを完全に仕留め終えたので、溜め息を吐きながら倒したゴーレムを収納指輪に入れて行く。今更だが、ゴーレム種の素材って武具の他にも城壁等の素材として優秀である。その為、なるべく粉々にしない様にコアを斬り裂くか、抜き取る方法で討伐したわけだ。


「全部、回収し終えたが――やはり、ゴーレム種を相手にするのは疲れた。動物系の方が楽なんだが、何故かゴーレム種ばっかりなんだよなぁ。二番目が竜種なんだよなぁ」


「旦那の魔物運が悪すぎるのは、もう呪いじゃねぇだろうか。儂の場合は、熊か猪の二種類が多いが、それでも数多くの種族の魔物と戦闘している。旦那、無月隊長に頼んでお祓いしてもらった方が良いんじゃないか」


「お、竜仙の方も終わったか。確かに、呪われている可能性があるな。やはりお祓いしてもらうかぁ。いささか飽きて来たのだが、そろそろゴーレム種以外の魔物と戦いたい。さっき戦った飛行型の動物とかの方が良かったんだがなぁ」


 合流した竜仙に『呪われている』と言われ、確かにその通りかもしれないと思った。何せ、この世界に来てから、何故かゴーレム種と竜種との遭遇率が高すぎる。手ごたえがあるから良いのだが、如何せん飽きて来たのだ。ただ固いだけとか、もうちょっとロマンを寄越せと言いたい。ロケットパンチとかキャタピラーで高速旋回するタイプとか、この世界に来て一度として見ていない。そんな事を思いながら、屋敷の方へと歩きだす。


「旦那、どうやら騎士団と冒険者も終わりそうだな。それより、これからどうする。冒険者たちや騎士団もこのままついて来ると思うが、やはり街の警備に戻ってもらうべきか」


「そうだな。冒険者と騎士団には、屋敷の周りの警護を頼もう。俺たちは、屋敷の中を再調査する間、魔物が再出現する可能性がある。その度に戦闘に出るのは面倒だ。彼らに頼んで屋敷の周りの警護を頼み、俺たちは安全かつ早急に調査をする。その間、トーチャも中に入ってもらい、暴走形態になるかどうかの確認もしたい」


「なるほど、新しい心臓へと変更したことでの確認をするわけか。了解した、先方には儂が伝えてくる。その間に、旦那は九条たちと共に屋敷の中で待っていてくれ」


 そう告げると、竜仙は上空へと飛ぶと、そのまま冒険者たちの方向へと飛んで行った。竜仙の給料を少し上げるかと思いながら、俺も空を飛び屋敷の中にいる九条の元へと向かう。上空から見て分かるが、屋敷の周りの樹々、そして屋敷まで続く舗装された道も砕けた跡が残されていた。まぁ、この破壊の大半が波動の槍が原因なのだが、あえてそこは無視をするしよう。後で、部下に――いや、ここはゲーディオの土木建築担当に任せよう。資金については、先ほど倒した大量のゴーレムの素材で事足りるだろう。数百を超えた辺りで数えるのを止めた、ゴーレムの残骸なら御釣りが出るだろう。


「さてと、九条の元に向かうとするか――ん? トーチャと九条が物置小屋から出て、お茶をしているようだ。あのテーブル、物置小屋にあったのか。いやいや、俺たちが魔物討伐している時に、優雅にお茶飲んでるんだ彼奴」


 そんなことを呟きながら、目の前の光景を黙ってみている。何故か、物置小屋のすぐ近くにテーブルと椅子があり、向かい合う形に九条とトーチャが座っている。目が覚めたトーチャを外に出すのはどうしてか分からないが、何故か九条はティーカップの中に入っているモノを飲みながら話し合いをしている。優雅にお茶を楽しんでいるように見えたのだが、よくよく見るとそうでもないことが分かる。ジッと真剣な表情で何かを語る九条に対し、トーチャの方は顔を青ざめながらもジッと聞いている。どうやら、俺の代わりに今までの事を説明してくれているらしい。本来なら俺が対応するはずなのだが、代わりに対応してくれたようだ。そして、一通り喋り終えたのか、席を立った九条はそのままトーチャ背後に立ち、何故か慰めるかのように頭に手を乗せると、困惑した表情をしながら頭を撫でている。


(相変わらず、人を慰める時に困った表情をするんだよなぁ。まぁ、トーチャの対応も含めて、給料を少しだけあげておくか。それに、これなら屋敷の中の調査も竜仙が戻り次第すぐに行なえそうだ)


 九条のトーチャに対する対応を評価し、給料を少し上げる事を心の中で思いながら、九条たちの元へと降りるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ