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断罪の旅人  作者: 玖月 瑠羽
四章 情報収集と犯人逮捕
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5話 作戦会議

どうも、最近健康のために散歩をするようになった私です。

仕事の関係もあり、中々外出も出来ず、ストレスが溜まり始めました。

その為、早朝と昼休みに散歩をするようになりました。

おかげで、少し体力も戻りました。


次話も、頑張って書けるように健康でいようと思います。

では、ノシ

 シーボルト家に戻り、全ての準備を終えた次の日の朝。朝食を取り終えた後、竜仙とミーア、そして部下たちを招集して作業の進捗状況を確認した。竜仙の指示もあり、無事に配線作業も終わったらしい。動作確認も完了し、最後のオルディアさんの立会いについても、最終確認は終えたらしく、現在は撤去作業を開始しているらしい。それを聞いてから指を鳴らし、外部に情報が流れないよう結界を張り、念の為に時ではなく世界そのものを止める。旅人特権と言えばよいのか、旅人にはあらゆる能力による干渉を無効化し、世界と言う存在を止める事が出来る。世界の監視時の仲間と交代する時によく用いられている。世界を止めると同時にこの部屋の空気が一瞬で変わり、この場にいる者たちの表情が変わった。


「これより、緊急会議を始める。申し訳ないが、この世界の時間ではなく、この世界そのものを停止した。今回は盗聴されることを防ぐためにやったことだが、会議が終わった後について情報が漏洩される事もあり得る。会議終了後の情報漏洩は当然の如く無しだ。今回提供された情報を元に、お前たちにも手伝ってもらう。これから配る資料については、昨日、筋肉教団のロイア司祭と会い、提供されたものだ。この場にいる全員が受け取り次第、説明を開始する」


 昨夜、竜仙と共に作製した資料を取り出し、竜仙たちに頼み部下たちへ資料を配る。皆へ配り終えたのを確認後、収納指輪からホワイトボードを取り出す。そこに今回の事件概要と分かっている情報を記載し、書き終え皆の方へと体の向きを戻すと、竜仙から「旦那、配り終えたので、説明をお願いします」と報告を受け、皆へと説明を始める。


「さて、では今回の会議について説明を始める。まず、この資料は筋肉教団ロイア司祭から貰った物だ。まず今回の事件の概要について説明をする。皆も知っていると思うが、このシーボルト家の現当主『オルディア・チェイル・ゲーディオ』さんの祖父である『アーガス・ソフォル・ゲーディオ』当時七十九歳が、何者かに殺害された。此方については、話を聞いた限りでは鋭利な刃物での首を斬られての死亡した」


 ホワイトボードに張り付けた部屋の見取り図をステンレス製の指示棒で指しながら、殺人が起きた部屋の状況を説明する。部屋には、当時部屋に居た者の名前が書かれた紙を磁石で止めており、廊下に居た者たちも含めて同様に磁石で止めている。


「これは、犯行を目の前で目撃した『ディアラ・シーボルト』さん、現在十六歳の証言を基に部屋の配置などを再現したもので、これを軸に説明を始める。犯行が起こる前夜、部屋には鍵はかけておらず、被害者は部屋の窓際にあるリクライニングチェアに座っていた。ディアラさんは、被害者の隣に座っており、そこでプレゼントである『クマのぬいぐるみ』を貰ったと証言をしている。この当時、被害者とディアラさん以外誰も居なかったと証言している」


「此方については、オルディアさんの案内の元、犯行現場であるゲーディオ家の屋敷まで向かい確認をしてある。旦那、此方が現状判明している証拠品だ。此処からは、儂が説明を行なう」


 指紋、血痕の後から解かる犯人と被害者の距離まで、今回の事件で調べた情報が書かれた資料を受け取る。それを元に、竜仙は説明を始めた。


「被害者のご遺体を確認したかったのだが、すでにご遺体は火葬されてしまっている。その為、どの様な状態で殺されたのか確認が出来なかった。だが、血痕の飛び散り方や、死体を確認した医師達からの証言などの情報を基に、犯行の流れを推測した。どうやら、被害者はディアラさんにプレゼントを渡した後、部屋を出るために立ち上がったらしい。その瞬間、天井から暗殺者が出現し、そのまま被害者の首を刃物で切断した。その証拠に、天井裏から犯人と思わしき指紋を採取した。更にディアラさんの証言から、犯人の人相書きを行なった。この被疑者を捕まえる為に、情報を集める必要がある」


 人相書きを観た部下たちは、獲物を見つけたハンターのような目つきに変わる。我が部下ながら、やる気に満ち溢れているのはありがたいが、勢いあまって殺さない事を祈りたい。


「また、犯行を目の前で目撃した『ディアラ・シーボルト』さんについて、現在進行形で命を狙われている。更に、ゲーディオ家最後の一人であるオルディアさんも同様に狙われている可能性がある。その為、我々はオルディアさんとディアラさんの両名を守らなければならない状態だ。此処までが、今手に入っている情報だ。では、次に旦那からの報告だ」


「竜仙、ありがとう。では、説明に戻る。手元にある資料の一ページ目の内容を見てくれ。この一から二ページまで、このゲーディオに現在まで住んでいた貴族の名が書かれている。オルディアさんから提供された内容も含まれているが、貴族以外にも貴族の屋敷で働いているメイドや執事、庭師なども現在判明している範囲ではあるが記載してある」


 説明をしながらも、手元にある資料を見ながら説明をする。当然だが、この屋敷にいる者たちの名前も書かれている。実際にシーボルト家の仕様人のフルネームも載っている。ただ、予想外にもトーチャの家名まで乗っていた。意外にもトーチャは貴族の次男坊だった。


「なるほど、屋敷の護衛兵『トーチャ』の家名も載っているな。ほぉ、トーチャの家名は『アグニラ』なのか。確か、アグニラ家と言えば、この街でも有名な一族だったな。他にも、シーボルト家に仕えているメイドのフルネームまでもか。旦那、筋肉教団の情報網は一体どうなっているんだ」


「知らん。そもそも、ガーランドが鍛え上げた奴らだぞ。ガーランドと言えば、元諜報部で事故が原因でゴブリンになった奴だ。実は『忍び集団でも鍛えたのではないか』と、疑いたくなるレベルだからな。そう言った情報戦に長けている部隊を、秘密裏に作っている可能性だってあるだろう。さて、そろそろ話を続けよう。今回の事件の背景だが、この資料に書かれている幾つかのコミュニティが関係していると思われる。」


 そう告げ、手元にある資料を観る。そこには、複数の貴族によるコミュニティ情報が書かれている。それこそ『茶会』や『貴族会議』などのイベントまで書かれている。それも月単位で行われる内容が、詳しく記載されている。その月に開かれた会議の内容までも事細かく書かれており、正直に言って情報統制はどうなっているのか問い詰めたい気持ちである。


「貴族間のコミュニティでは、毎月のイベントとして茶会などが開かれていると書かれている。この町に住む貴族の中で、ゲーディオ家、シーボルト家を除いて八つの貴族が存在している事が分かる。その中で、月に一度開かれる貴族会議の中で、少し気になる議題で開催されている事が分かった。資料の四ページ目を開き、十三行目以降に書かれている内容を見て欲しい」


 十三行目に書かれている『地下施設拡張工事について』である。そこには、現在この街の地下通路の見取り図が描かれており、新たに地下通路を作ろうと言う内容だった。地下通路が何の目的で造られたのかも書かれており、拡張工事に対する賛否を取ったことまで書かれている。


「元々、この街にある地下通路は、市民の避難の為に造られた避難通路だ。だが、現在は貴族のみが運用している。特に、表には出せないような事に使用されている。人身売買と言えば、分かるだろう? この街――いや、この大陸では『奴隷と言った人身売買』は禁止されている。だが、貴族の大半は奴隷を購入したり、奴隷同士で殺し合いをさせたりなど、密かに楽しんでいたそうだ」


「人身売買と来たか。何処の世界でも、そう言った問題はあるのだな。だが、それとディアラさんのお爺さんが殺される理由になる。有り得るとすれば、ディアラさんのお爺さんが人身売買の現場を目撃したか、その人身売買をしている者たちを捕まえて裁いたか。まぁ、どちらにしても、逆恨みによる犯行だとは思うが、旦那はどう考えている」


「それについては、次のページに記載されている。ディアラさんのお爺さんによって現場を目撃、その後その者たちを逮捕と同時に国王の下で裁かれ、公開処刑となった四つの貴族の名が書かれている。あくまで可能性だが、この中の生き残りがいると考えている。または、その人身売買に関わった貴族がまだこの街に居座っている可能性もある」


 いくつか可能性はあるのだが、それも全ては憶測でしかない。だからこそ、部下たちに手伝ってもらう予定なのだ。旅人の中で『断罪』の異名を持つ俺が、敵を断罪する為の情報を得る為に部下たちが動いてくれる。俺では不可能な場合でも、隠密行動が得意な部下たちは必ず情報を取って来てくれる。だからこそ、この場にいる部下たちを信頼し、仕事を任せられる。


「そこで、今回は人間、エルフや獣人の者たち、そして動物に変身できる者のみを対象とした三班編成で対応する。まず、動物に変化できる者たちについてだが、お前たちには潜入捜査を行なってもらいたい。これから指定する貴族に動物となって潜入してもらい、証拠となる情報を回収して欲しい。調査してもらいたい貴族の名は、アグニラ家とシュレイド家だ。この貴族は、人身売買の現場に居た可能性がある。理由については、その処刑された四貴族のコミュニティにその二貴族の名があったこと。そして、四貴族が逮捕される前日に、このコミュニティを脱退していた情報が残っていた。更に、今回の事件に関係するか分からないが、この二貴族に関しては『兵士人形』と言う内容があった。あくまで可能性があると言うだけだが、取りあえず調べてもらいたい。物的証拠は無くとも、犯行計画書を保持している可能性があるからな」


 ホワイトボードをもう一つ取り出し、そこに屋敷の見取り図を貼り付ける。そこには、潜入可能場所や、証拠がありそうな部屋の場所にに赤丸の磁石を付けていく。最後に調査する貴族の屋敷がある場所について書かれた資料のあるページを伝え、この箇所から潜入をしてもらい証拠を集めるよう指示を出した。次に、残りの二班の指示について、ホワイトボードに調査する内容を指揮棒で指しながら説明する。


「次に人間、エルフや獣人の者についてだが、此方については二班に分かれてもらう。まず、一班については筋肉教団ロイア司祭と共に隠し通路の調査を行なってもらいたい。指紋、血痕、足跡痕などの証拠がまだ残っている可能性がある。今回の調査は、特に念入りに行なってくれ。また、他の貴族ですら知らない隠し通路がある可能性もある。お前たちにはその調査をしてもらいたい。そして、二班についてはオルディアさんの警護を頼む。犯人は間違いなくゲーディオ家に恨みを持っている人間だ。ゲーディオ家最後の一人であるオルディアさんが狙われる可能性があるからな、状況に応じて対応を頼む。何かあれば、直通で俺に通信を飛ばして構わん。三班ともに、必要ならば時止めの使用を許可する。反の編成については、A班、B班、C班と分けさせてもらう。まず、A班には――」


 部下の編成を指揮し、何名か撤退の準備の指示を出す。竜仙とミーアには九条と共に別作業の対応の指示を出し、俺は商人の業者馬車を襲撃する鳥型ゴーレムの対応を行なう事を告げた。最初は、部下の数名が「我々も御供したい」と言っていたが、今回の作戦には俺がソロで対応する必要があることを伝え、渋々ではあったが何とか納得してもらえた。行動を移すために結界を解除した。


「さぁ、お前たち。これより仕事を開始する。どんな事があろうとも油断はするな。常に、最悪の事象が起こる事を想定し行動に移せ。俺たちは、世直しの為にいるのではない、この世界に起きる厄災を止める為に居る。だからこそ、常に本気で対応しろ。罪人を追い詰め、正しき罰を与えるぞ」


「「「御意」」」


 部下たちが行動に移す。ある者はすぐに竜仙とミーアの元に向い、今後の対応について話し合いを行ない、ある者はすぐに動物に変身すると目的地へと向かって羽ばたいた。またある者たちは、すぐに撤退の準備に取り掛かり屋敷の外に置いてある木材を回収しに向かった。皆が皆、行動に移したのを確認してから、次の行動に移る為にオルディアさんのいる仕事部屋に向かった。しばらく歩いていると、進行方向と同じ方向に向かうメイド三の後ろ姿が見えた。どうやらオルディアさんに紅茶を届けに向っているのか、ワゴンを引いている後姿が見えた。仕事中ではあるが声をかけると、此方を振り向きお辞儀をした。


「五十鈴様、何か御用でしょうか」


「えぇ、オルディアさんに用事がありまして。仕事部屋にオルディアさんは居られるのでしょうか」


「はい、居られますよ。これから紅茶をお届けしようと思いましたので、もし宜しければご案内いたしましょうか」


「ありがとうございます。お願いします」


 メイドさんの後を着いて行く間、まだ目的地は遠いので軽い談笑をした。メイドさんの名前を聞くと『レレーナ・トイ・フォーライ』と言うらしく、古くからシーボルト家のメイドとして仕え、現在はメイド長として仕事をしているらしい。その為、屋敷で起こった事を日記などに纏めているらしい。当然のことだが、俺たちがやって来たことも書いているらしく、後でサインをして貰いたいとか言われた。なんでも家宝にしたいらしく、流石に今は無理なので『仕事が片付いたら』と言う事で納得してもらった。


「此方が、オルディア様の仕事部屋になります。オルディア様の仕事は、この街の警備隊や王国から派遣される傭兵たちの宿舎新設、備品補充の許可申請などの書類対応を行なております。ただ、オルディア様の祖父が亡くなってからは、ゲーディオ家の仕事も対応せねばならず、とても多忙となっております。出来れば、手短にしていただければ」


「えぇ、その点は考慮いたします。私も同じ経験をした事がありますので、時間は駆ける予定はありません」


「そうでございましたか。出過ぎた発言、申し訳ございません」


 彼女はその場で足を止め、此方へ振り替えると頭を下げた。そんな彼女を見て、昔の竜仙とどこか似ていると思いながら「別に出過ぎた発言ではないですよ。どうか、頭を上げてください」と伝えると、彼女は頭を上げ少し微笑むとワゴンの方へと向きを変え、ワゴンを引きながら前へと歩き出した。その間、何も話すことなくしばらく歩いていると、彼女は一つの部屋の前で止まりドアを軽くノックした。どうやら、目的地に到着したらしく、ドアの向こうからオルディアさんの返事が聞こえた。


「オルディア様、お仕事中失礼します。イスズ様からお話があるとの事でご案内いたしました。後、お疲れだと思いまして、紅茶をお持ちいたしました」


「あら、イスズ様がですか。どうぞ、部屋にお入りください」


 メイド長は扉を開け、ただ一言「イスズ様、どうぞ中へ」と告げる。その言葉を聞いて、俺は部屋の中へ入り、オルディアさんへ一礼をする。部屋の奥へと入ると、ワゴンを引いて部屋の中に入り、彼女は紅茶の準備を始めた。


「オルディアさん、作業中申し訳ございません。今回の犯人捜しの件で、ご協力頂きたい事があり、お伺い致しました」


「何でしょうか。イスズ様の為でしたら、私が出来る範囲でご協力いたしますが」


「ありがとうございます。まずは、此方の封書をお渡しいたします。此方については私の部下二名が、後程ディアラさんを連れて此方に伺いに来ると思いますので、その時にその封書を開封し、内容を確認してもらいたい」


 オルディアさんの作業机の方へと向かい、収納指輪から一通の封書を取り出し机の上に置く。この封書には、今回の犯人を捕まえるために必要な情報が書かれている。この内容の通りに行なえば、確実に犯人を捕まえる事が出来る。


「承知いたしました。部下の方と言うのは、竜仙様とミーア様が来られるのでしょうか?」


「いえ、ミーアは私の部下ではなく、妻健同僚なのです。同じ旅人であり、あれでも私の上司の技を身に付けた優秀な同僚です。ちなみに此方に来る部下ですが、剣術の師匠であり、何故か私の部下として働いてくれる『九条』と言う者です。護衛のプロであり、信頼における者です。後、もう一つお願いしたい事があります」


 そう告げて、もう一度収納指輪から一枚の用紙を取り出す。そこには、討伐依頼書と記載されている。これは討伐後に提出する予定の書類で、これから始める作戦に必要不可欠なモノである。


「なるほど、ミーア様は旅人様で御座いましたか。ところで此方は、討伐依頼書のようですが――これは、ギルド長からの緊急用の討伐依頼書ですね」


「えぇ、これから鳥型ゴーレムを討伐する為に必要なモノなので」


「ギルド長からの緊急時に発行される討伐依頼書とは、それ程危機迫っている状況と言う事でしょうか。イスズ様、理由を御聞きしても宜しいでしょうか」


 当然の疑問だ。犯人捜しの前に何故ゴーレム退治をする必要があるのか。今回の殺人事件とどの様な関係性があるのか。それについて、説明する必要があると思い、今回の鳥型のゴーレムについての自身の考えを伝えた。


「今回、ゲーディオ氏が殺され、その後に鳥型ゴーレムによる業者の襲撃。正直に言えば、この街を貶める為に、何者かが行なっているように感じられるのです。その為、その確証を得る為にも、鳥型のゴーレムをなるべく外傷の少ない状態で仕留める必要があります。ゴーレム種は核を壊さない限り活動し続けるのですが、なるべく核を傷つけずに仕留める必要があるのです。一般の冒険者では、ほぼ不可能であるので私が対応する必要があるのです」


「なるほど、ギルド長からの緊急依頼に私がサインすれば、ギルドに依頼書を提出する前に討伐できると言う事ですね。分かりました、依頼書については記載した上で、信頼できる従者に冒険者ギルドまで送らせておきます」


「ありがとうございます。現在、我が部下たちの他に、この街の協力者たちから有力な情報を得ております。後は、犯人を追い詰める為に複数の罠を張るのみであり、すでに準備を開始している状態です。ただ、犯人の狙いがディアラさんだけじゃなく、オルディアさんも含まれる可能性がある為、隠密部隊も数名配置させていただきました。何か在ればすぐに貴方を守る様に伝えております」


 指を鳴らすと、音もなく一瞬にしてその場に数名の忍び服を着た人間が現れた。いきなり出現したことに驚く二人に対し、部下たちはその場で一礼するとまた一瞬で消えた。竜仙が鍛え上げた忍び軍団であり、気配だけではなく存在すらも感じ取ることの出来ない。そんな優秀な部下を現在この屋敷に常駐させている。


「何とも、イスズ様の部下には驚かされてばかりです。屋敷の警備システム以外にも、屋敷の修理まで一日で対応してしまう。本当に、優秀な部下をお持ちですね」


「えぇ、自慢の部下たちです。さて、私もそろそろ行動に移そうと思います。お忙しい中、失礼しましました」


「いえ、私やディアラの為にありがとうございます。私もそろそろ重い腰を上げる時が来たのだと思いますので」


 にこやかに微笑む彼女を見て、何かを始めるのだろうと思いながらその場でお辞儀をし、そのまま部屋を出る。そのまま屋敷の外へと向けて歩きながら、部下からの調査報告が情報端末に届く。その場で立ち止まってから通信端末を見ると、やはりと言うべきか多くの証拠や証言が出て来る。


「さて、俺もそろそろ始めるか」


 誰にも聞えない様に小声で呟く。最近、ゴーレムばかり相手をしている気がするのだが、それについて考えるのを辞めた。この世界では、そう言う運命だったのだろうと諦めることにして屋敷を出る。以前、ギルド長から貰った街の地図を確認した限り、目的の森には名がない。だが、標的はそこに居ると部下から報告を受けた。その場所へと向かい、俺は歩き出した。

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