1話 冒険者ギルドゲーディオ支部
どうも、皆さま。
お久しぶりで御座います。
4月までに投稿が間に合いませんでした orz
最近、執筆しようとすると、手が重くて重くて。
「これが、ストレスか!?」って、思ったりしてます。
取りあえず、この後も引き続き書こうと思います。
うん、頑張るぞ!!
では、次話で会いましょう ノシ
冒険者ギルドゲーディオ支部に到着後、俺たちは受付嬢に手紙を渡した。シャトゥルートゥ集落とミッシェル集落の現状が書かれた手紙で、今後の方針について各集落のギルド長から預かったモノである。その後、受付嬢から支部長室に案内してもらい、そのまま竜仙が戻るのを待ちながら、支部長である『シュナイゼ・コライド』と言う赤髪のイケメンの男性と向かい合う様に置かれたソファーに座り、テーブルに置かれているお茶を飲みながら情報共有をしている。ミーアやディアラさんについては、受付嬢から『応接室でディアラさんの屋敷で働いている執事やメイド達が待っている』と聞き、そのまま彼らのいる応接室へと向かった。今頃、ディアラさん達は執事たちと再会しているのだろう。
「なるほど、そんな事が現在進行形で起きていると。やはり、神話の物語りはまだ終わりを迎えていなかったのですね」
「神話の物語り? あぁ、隊長がこの世界に来た時の事か。まぁ、その続きが起きている事は確かだ。我々がこの世界に介入したのは、この世界の神々が問題を起こしたのが原因でな。当初の目的は『神々への説教』と、転生者や召喚者たちが此方の世界に来た事による『魂保有量の調整』を行なう予定だった。此方についてはもう終わっているのだが、狂いの神――いや、貴方たち目線から言ええ邪神になるか。この世界にいる邪神と狂いの神については、別の存在と思って欲しい。
この世界に元々いた邪神が活性化を始まった事を我ら旅人を率いる隊長から聞いて、急遽対応しなければならなくなった」
「なるほど、その様な事が。ふむ、この世界にそのような事が起きていたのですね。いや、そもそも世界の魂保有量と言うモノが存在する事に驚きです。その保有できる量を超えるとどうなるのか気にはなりますが、それについては後程お聞きするとしましょう。それよりも、邪神の活性化ですか。おとぎ話で『遥か昔、勇者と魔王が力を合わせ、星を砕く力を持った邪神を倒した』と言う、絵本ではありますが読んだことがあります。でも、アレはおとぎ話であり、実在する者ではないと思っていました。まさか本当に実在していたとは、それも活性化を始めていると。魔族や獣人族、竜人族、エルフ族など、各種族から情報を得る必要がありますね」
この世界に置かれている状況を説明し終え、シュナイゼさんが用意した紅茶を飲む。いろいろと不明な点の質問を受けて、それに対して答えられる範囲で説明をした。例えば、狂いの神や、魂保有量についてなどである。魂の保有量については、当然だが転生者や召喚者たちの事も説明する必要があり、送還した事や残ることを決めた者たちのアフターケアについても話した。その代わりと言っては何だが、現在の大陸の情勢やゲーディオの現状などの情報を教えてもらった。話を聞く限りでは、戦争も終結して現在は和解に向けての協議が開かれているらしい。二国の間には筋肉教団の者が立会人がいるらしい。筋肉教団には感謝しているとか何とか。
「なるほど、現状では戦争が起こることはなさそうだと。流石は筋肉教団と言うべきか。いや、そもそも筋トレ施設だったはずなのだが、いつの間に教団に変わったのか。本当に謎だな」
「まぁ、私が言うのもなんですが、筋肉教団は謎だらけです。筋トレだけなのに、あそこまで人を引き付ける。国王の肥満体系が、今では若かりし頃の姿を思い出させるほどです。やはり、そう言ったのが人を引き付けるのでしょうか――おっと、話がそれました。筋肉教団のおかげで、今のところ問題は起こらないとも言えます。ただ内部、または外部からの妨害がない限りと言う条件付きではありますが」
「なるほど、内外での妨害があれば確かに再度戦争が起こり得るか。そこらへんは筋肉教団に所属してる者たちが、きっと何かしら対応してくれるだろう。彼奴らの行動力は凄いからなぁ」
戦争を起こし、利益を得ようとする者は必ずいる。そう考えると、筋肉教団が立会人としているのなら問題は起きないだろう。俺らが育てた事もあり、逆に彼奴らを怒らせれば、人生がある意味で終わる。アストリア家が良い例であり、そう考えると妨害したい奴らは下手に手が出せず、指を咥えて見ている事しかできない。つまり、筋肉教団がそういった者たちの抑止力になっている実績があるからこそ、重要な協議の場に呼ばれるのだろう。
その後も互いに情報共有をしていると、背後から竜仙の気配を感じ取る。どうやら何事もなく到着したようで、シュナイゼさんの補佐をしているイデェアさんと共に近づいて来る。情報共有もある程度終わったので、ここらでミーアたちと合流しようと思っていた。カップを置いたと同時に扉が開く音が聞こえた。
「旦那、待たせたな。情報共有は終わったみたいだな」
いつもの着物姿の竜仙が、イデェアさんと共に部屋の中へと入ってきた。いつもなら金棒を肩に担いで来るのだが、今回は金棒を右袖に収納しているようで、武装をせずに来たようだ。警戒心がない訳ではなく、竜仙は金棒が無くとも拳で語る方が多い。どちらかと言えば、拳での戦闘の方が得意であり、俺のスパーリング相手としてよく模擬戦をしている。
「遅かったな、竜仙。あらかた必要な情報は得られた。これから連絡方法をどうするか話し合う所だが――あぁ、自己紹介がまだだったな。彼がこのゲーディオ支部の支部長であるシュナイゼ・コライドさんだ。彼からこの世界に起きている問題や、この街――ゲーディオについての情報を提供してくれた方だ。シュナイゼさん、彼は部下の竜仙と言う。俺の右腕として働いている」
「初めまして、竜仙様。冒険者ギルドゲーディオ支部支部長シュナイゼ・コライドです。ゲーディオにいる間、問題が起こりましたら何時でもお越しください。私共に出来る事がございましたら、いつでもお声をかけてください」
「これはご丁寧にどうも。旦那から紹介はあったが、改めて名乗らせてもらう。儂は竜仙と言う。鬼神族と言う種族で、儂は嘘を見抜く力を持っている。大事な会議の場面などは基本的に旦那と共にいるのでな、旦那の右腕として働いている。此方にいる間は世話になるが、冒険者では手に負えない問題があれば儂らも手助けする。連絡方法について、確認するとしよう」
竜仙とシュナイゼさんが互いに自己紹介を終えるとソファーに座り、そのまま今後の連絡方法などについて話し合いが始まった。この世界での連絡方法は、通信用の魔道具を利用している。実物を観させてもらったのだが、イメージとしては占い師が仕事で使う水晶球みたいなものだ。テレビ電話みたいに水晶の中に風景が映るらしいのだが、歪曲する為に風景が観え難いらしく、緊急の連絡以外は使用しないらしい。各ギルド以外にも王宮や各関所、商人や貴族の面々にも利用している。まぁ、値段が値段らしく庶民では手に入れられないらしく、ギルドや王宮の者たちが買占め、各関所やギルドに配給している。連絡が取れるだけ便利なので、こうして使われているのだ。
そこで俺らが個人的に作製していた通信用の魔道具の出番である。形は青色の薄い板状で手のひらサイズの大きさ、通信時は虚空にスクリーン状映像が写し出され、連絡を取り合うことができる。魔導金属で作られた板の真ん中に魔法陣が施されている。通話する際に魔力を流すことで、此方とテレビ会議のように通話ができる品物である。これは、現在シャトゥルートゥ集落で生産が行われており、竜族の王国やギルド本部に販売する予定となっている。特に、ミッシェル集落にはテスターとして試作品を渡しており、この魔道具でのシャトゥルートゥ集落への通信確認は出来ている。この魔道具の情報は、まだ上層部のみが握っており、幾らで売るかを商人ギルド本部の者と話し合いを行なっている状態だ。
「これは試作品でな、これに魔力を流すと――」
竜仙はその薄板状の魔道具をシュナイゼさんに渡し、不敵な笑みを浮かべながら使い方を説明していた。彼奴、テスターとして利用するつもりだろう。確かにテスターが増えるのは良い事なのだが、ゲーディオ支部だけに置かれたとしても、他ギルドが所有している通信用魔道具との連携が取れるのかどうかが不明だ。その為、通信の有無など細かなチェックが必要で、時間がある時にでもシュナイゼさんに頼んで確認すると言う話の流れになった。
「なるほど、こう言う使い方なのですね。では、リューセン様方との連絡は此方で取りましょう。他ギルドとの通信確認ですが、取りあえずシャトゥルートゥ集落やミッシェル集落以外のギルドで確認しましょう。出来ればこの情報を知っている竜族の王国に連絡を入れるとしましょう」
「そうだな。長距離での通信確認は、確かに確認試験を行なってなかったな。それなら、行なう日程は随時相談としよう。さて、そろそろお暇するとしよう。旦那、宿の手配をしていないのだが、どうする」
「あぁ、そう言えばそうだったな。シュナイゼさん、どこかお勧めの宿を教えてもらえないだろうか。長期滞在することになるから、安いと助かるのだが」
シュナイゼさんは「そうですね」と言うと、何やら困った表情を浮かべる。どうしたのか気になり首をかしげると、シュナイゼさんの代わりにイデェアさんが話し始めた。
「実は、シーボルト家の執事の方が、ディアラお嬢様を救って頂いた恩を返したいと仰っておりまして。私共としても、ゲーディアと言う街を護っている貴族様のお願いに逆らう事が出来ませんので」
「あぁ、なるほど。しかし、ディアラさんの件で命を狙われているのに、屋敷に戻るのは危険だと思っているのですが、其方についての対応は出来ていると言う認識で良いのですか」
「えぇ、此方もいろいろと対策を講じており、我々ギルド職員も屋敷に滞在しております。それに、旅人であるイスズ様達がいるだけで百人力と言うものです」
シュナイゼさんとしても、俺らが居ることで警備の穴を埋める事が出来ると考えているようだ。そうなると、やはりディアラさんの実家にお世話になる方が良いのかもしれない。それに情報整理をするにしても、広い部屋でやった方が良い。
「なるほど、そう言う事ですか。なら、宿の件はすでに解決している事にしましょう。さて、そろそろミーアたちを迎えに行かないとな。シュナイゼさんから得られた情報を整理もしたいので、ここらで失礼いたします。」
「承知いたしました。此方も何か新しい情報が入りしだい、ご連絡いたします。では、またお会いしましょう」
話し合いが終わり立ち上がると、シュナイゼさん達も立ち上がり互いに一礼をする。そのまま部屋から出ようとしたが、イディアさんはすぐにドア付近まで歩き、俺たちが開けるよりも早くドアを開ける。此処まで徹底しているのかと驚きながらも、流石はシュナイゼさんの補佐だと思った。竜仙もそうだが、優秀な部下を持つと上司はいろいろと苦労する事もある。現に、俺がいろいろと容認しているからか、竜仙は「こうすれば、今後役に立つだろう」と言って、想像していた斜め上の事をしてくる。今後、彼女が竜仙みたいにならないかが心配である。
そんな事を思いつつも、俺たちは部屋を出ると彼女も部屋を出た。どうやらミーアたちのいる部屋まで案内してくれるらしい。ただ、彼女は緊張からか「では、ご案内いたします」と言おうとしたのか、口に出たのは「でにゃ、ごあんにゃいます」と言って顔を真っ赤に染めていた。まだ、そんなに焦る必要もないので、軽く深呼吸するように伝え落ち着かせてから目的地へと向かう。
「やはり、緊張するものなのか。基本、俺たちは君らと殆んど変わらないのだが」
「そ、そうですね。歴史上の偉人とでも言えばよろしいのでしょうか。小さい頃から、物語りとして語られた方が目の前にいるのは、やはり緊張してしまいます」
「確かに、歴史上の偉人や国王と言った位の高い者に会えば緊張はするな。旦那もそう言った経験はあるだろう」
なるほど、確かにそうだ。国王相手に挨拶する時は、喋り方や立ち振る舞いなどを気にしないといけない為、粗相がない様に思い出しながら対応するため緊張してしまう。そう考えると、緊張してしまうのは仕方がないのかもしれない。しばらく歩いていると、イデェアさんは立ち止まり、此方へ振り向いた。
「此処から先は、王族や貴族の方が利用する会議室となります。この先を進んで三つ目の部屋に、シーボルト家の方々――今は、ディアラ様に仕える執事とメイドが居られます。ミーア様につきましては、ディアラ様の御傍におられます。ミーア様曰く「護衛のため」とのことです」
「なるほど、ミーアはディアラさんの護衛をしているわけか。確かに、ミーアなら向いているか――」
ディアラさんのいる会議室へと再び歩き出したのだが、内ポケットに入れていた通信端末からモーツァルトの『ピアノソナタK.545ハ長調』が行き成り鳴りだし、その場で立ち止まった。滅多な事が無い限り鳴らないのだが、取りあえず左ポケットに入れている通信端末を取り出した。その間、行き成り音が鳴ったことに何事かと思いイデェアさんが立ち止まり此方へ振り返るのだが、竜仙が「済まない、旦那の上司からの連絡だ」と代わりに言った。この情報端末は、旅人同士の情報共有をメインに考えられた通信端末で、名前は『オーディオス』と言う。ネーミングセンスについては、気にしないでもらいつつ、これにはメール機能しか搭載されていない。だが、数多の世界で働いている旅人同士で連絡が出来るうえに、電波がないところでも必ずメールが届くのだ。そして、メールについては旅人以外は決して見る事が出来ない。防犯設備はしっかりしているので、こう言った仕事ではとても便利である。
「あぁ、嬢ちゃんからメールか。いや、なんでこっちの端末で連絡してくるんだ? まさか、あっちの端末を壊したか失くしたのか」
そんな事を呟きながら、メールの内容を確認する。どうやら狂いの欠片から読み取れた中で、封印している狂いの神の名前だけは分かったらしい。なんでも『レーヴァ』と言い、北欧神話で有名な『レーヴァテイン』が擬人化した者らしいのだ。時間軸としては、北欧神話時代の終わり近くだと判明しているようだ。それが狂いになる理由が不明である。
現在、竜仙から受け取った狂いの欠片について、嬢ちゃんに渡している。狂いの欠片を読み取れるのは、現状では嬢ちゃんしかいないのだ。その為、欠片を嬢ちゃんのラボへ転送させ、届き次第すぐに調査を頼んでいた。その調査についての途中報告メールだった。そもそも神話で語られる武器が擬人化するのは、一応置いておくとしよう。来日の神ですらないのに、どうやって狂いの神になる事が出来るのだろうか。それについては、欠片からの調査報告を待つだけだ。
(俺の知る北欧神話とは違う流れだな。確かに多くの可能性を見定める為に、そう言った世界線がある事は隊長たちから聞いている。だが、武器が擬人化するなんて聞いた事が無いのだが)
内容を確認後にそっとメールを閉じ、通信端末を左内ポケットにしまった。その姿を見た竜仙は「では、嬢ちゃんの待つ部屋へ向かうか」と告げ、竜仙はイデェアさんと共にミーアたちの元へと向かった。目的地に近づくにつれて、ミーア達の笑い声が聞えてくる。
「何やら楽しそうだな。やはり同年代同士だと話にも花が咲くんだな。まぁ、儂らも何だかんだで二人でいる時の方が酒が進む」
「いや、話じゃないのかよ。まぁ、確かに竜仙と二人だと、気が付くと酒樽が数個――で済めば良い方だが。その話は置いておくとして、そろそろ着くぞ」
そんな事を言いつつ、扉を軽くノックする。部屋の中から「どうぞ」と言うミーアの声が聞こえ、そのまま部屋の中に入る。部屋の中では、ミーアとディアラがソファーに座り、反対側では燕尾服を着た初老の男性がソファーに座り、メイド服を着た女性達はその後ろで立っている。彼らはディアラさんの家で働いている使用人たちなのだろう。ディアラさんの無事を喜んでいるのか、初老の男性はハンカチで目元を拭いながら「ディアラ様が無事で、本当に良かった」と言っており、他のメイドたちも同様にハンカチで目元を拭っている。ただ、何故かディアラさんまでも泣いており、ミーア以外が全員泣いている状況である。
「ミーア、待たせて済まない。此方の方々は、ディアラさんの使用人か」
「はい、その通りです。ディアラさんの家に仕えてる使用人さんです」
「なるほどね。で、何故に皆号泣されているんだ」
ディアラさんが無事な事への安堵からにしては、大号泣レベルで泣いている使用人たちを見てドン引きしていしまう。当然だが、イディアさんもこの光景を観て固まっている。ただ、すぐに正気に戻った。ただ、何かを思い出したかのように真剣な表情に戻り、その場で俺達に言う。
「イスズ様、リューセン様。私はこれで失礼いたします。御用が御座いましたら、部屋のベルを鳴らしてくだされば、すぐに伺います」
「あぁ、ありがとう」
そして、そのまま帰っていく彼女を見ながら『逃げたな』と思いながら、目の前の状況についてどうしたものかと考える。しかし、どう考えてもこの状況になるとは思えず、仕方がなく、この状況になった理由を知るためにミーアの近くへと行き、何があったのか聞くことにした。
「ミーア、この状況は一体どう言う事だ」
「えっと、最初は普通の会話だったのですが、気が付けば私の生い立ちの話になり、最終的にシャトゥルートゥ集落の復興が終わった辺りで、この様な状態になってしまいました」
「なるほど。確かに、悲惨な状況から立ち直り、復興すると言う話は、感動を呼ぶこともある。そう言う経緯なら、こうなるのも仕方がないだろうな。まぁ、旦那と嬢ちゃんで頑張ってくれ。儂が前に出ても、儂の姿を見て怯えられてしまっては、収拾がつかなくなるからな」
竜仙はそう言うと、そのまま部屋の奥に行き椅子を取り出して座った。まさかの俺とミーアに丸投げと言う形になり、どうすれば良いのか解決策を考えることにした。しかし、解決策を考えても思い浮かばないので、仕方がなく諦めて執事の男性に話しかけることにた。
「その、そこの執事の方。感動の再会などで涙が止まらないのは分かる。だが、これからの事について話をしたいのだが、そろそろ泣き止んでもらえないだろうか」
声をかけると初老の男性は、ハンカチで涙を拭くと「これは、済まない」と言ってソファーから立ち上がる。綺麗な青い瞳に銀色の短髪のアラフィフとでも言えば良いのか。渋みのある、ダンディーな男性である。黒い燕尾服には皺一つないが、どこか疲れ果てたような表情をしていた。ディアラさんを探すために、寝ずに探し続けたのか分からないが、その苦労がこうして報われたのだ。そう考えれば、号泣も仕方がないのかもしれない。
「ぁ、あぁ。これは、申し訳ない。私、シーボルト家に長年仕えております『カーディス・フォン・アルバディール』と申します。今は亡き『サーマル・ディア・シーボルト』様の娘で御座います『ディアラ・シーボルト』お嬢様を救って頂き、誠にありがとうございました」
「此方も、ディアラさんを無事に送り届けられて良かったです。本来なら、直接送り届けるべきなのですが、命が狙われているような情報を得たので。この様な形での面会になってしまい、申し訳ございません」
頭を下げる俺に、カーディスさんは「そんな、どうか頭を御上げください」と慌てた声で言う。そこまで慌てる必要があるのかと疑問に思いながら頭を上げると、驚いているメイドたちと額から流れる汗を拭くカーディスさんがいる。ずっと立ったままで話し合うのは悪いので、ソファーに座ってもらい、話を続けることにした。
「ギルド長からお聞きしたのですが、ディアラさんを我々にお礼がしたと」
「えぇ、シーボルト家の長女で御座いますディアラ様を助けて頂いたのです、恩を返すのは当たり前で御座います。ミーア様から、今夜お泊りになる宿をお探しとお聞きしました。もしよろしければ、私めが仕えております御屋敷にお泊まり頂くのはどうでしょうか」
「よろしいのですか? 長期滞在予定ですので、其方にご迷惑をおかけしてしまうと思うのですが」
此方としては願ってもないのだが、長期滞在予定のため流石に迷惑をかけてしまうと思い、念の為にカーディスさんに尋ねた。そんな中、カーディスさんは「構いませんとも」と言った。
「シーボルト家の奥方も、是非にと仰られておりますので。それに、ディアラ様は命を狙われております故、皆様が居ればディアラ様も安心できますので」
「そうですか。確かに、その件については解決しておりませんでしたね。何の事件を目撃したのかについて、詳しい話は其方の屋敷で御聞きした方がよろしいでしょう。では、お言葉に甘えて、よろしくお願いいたします」
「では、我が主の屋敷までご案内いたします」
こうしてシーボルト家のご厚意に甘え、俺たちはディアラさんの自宅へと向かう事になった。




