17話 仕事終わり
どうも、皆さん
こんにちは、私です。
10月に投稿する予定だったのに、遅れてしまい申し訳ありません。
スランプとかではなく、ただの疲労です。
うん、10月に入ってから身体が異様に怠かったんですよね。
もう、体調も回復したので、11月中にもう一本投稿できるよう頑張ろうと思います。
では、皆さん
次話で会いましょう ノシ
2021/2/3現在:変更 『ゲーディオ』と言う町 → 『ゲーディオ』と言う街
旦那達が此方の世界にお昼を過ぎに戻ると、すぐに嬢ちゃんと分かれて自室へと戻った。その後、すぐに儂は現在の情報をまとめた資料を旦那に提出し、今日開かれる会議等の報告を行なった。旦那は報告を聞いた後、すぐにギルド長や集落の長たちとの会議に向かう。本来ならば儂も付き添うべきなのだが、予想外の事が起こり急遽対応しなければならず別行動をしている。
「はぁ、儂が創ったとはいえ、まさか作製してから一度もメンテナンスせずに稼働していたのか。全員シャトゥルートゥ集落に送り終えたが、流石に疲れた」
集落の中央広場に設置した『一回限りの転送陣』の上に、ミッシェル集落を護衛していたゴーレムたち全てを乗せ、シャトゥルートゥ集落に転送させ終えたところである。αジェノムから長期間もの間、メンテナンスを行なっていない状態だと聞き、ホムホムへ急いで連絡を取り、シャトゥルートゥ集落にいるゴーレム技師にメンテナンスを任せることにしたのだ。大体、長期間メンテナンスをしてないなど、どこか回路に不調が出てしまい熱暴走を起こして暴走する恐れがある。無事に全員が到着した事をホムホムから聞いた後、情報共有を行ない通信を切った。
その後、商業ギルドから買った新聞を手に持ち、仮拠点近くにある茶屋に向かう。戦が終わった後に、移動型の喫茶店がやって来た。戦が終わって怪我人の救護で忙しかったのだが、喫茶店が来たことでテイクアウトが可能となり小休憩が取りやすくなった。その喫茶店で、席に座って一杯の紅茶を飲みながら、新聞の一面記事を何とも言えない表情をしながら読んでいた。
「ふむ、まさか筋肉教団が大陸を完全制覇したとは、彼奴ら何がしたいんだ? いや、そもそも彼奴らが関わると、問題が即解決している気がするのだが。帝国に進出したと思えば、アストリア家を完全に潰したと言う情報が入って来る。他にも体が弱かった帝国の王子が健康になった姿を民に見せたとか。アストリア家の件は、儂らの裏工作がすべて無駄になってしまった。アストリア家に協力関係だった貴族も縛り首とは、何とも言えん」
まさか儂らの知らない水面下で、筋肉教団はアストリア家に関する問題を終わらせていた。まさかとは思うが、儂らの手を煩わせない為に動いたと言う事だろうか。もしくは、ただ単に布教しているだけで解決した可能性もある。筋肉教団の司祭である『マルス・シュティラータ』が関わっているのか不明だが、彼奴が何かしら関与している可能性は高いのかもしれない。いや、間違いなく関与している気がするのは何故だろうか。ガーランドの精神を引き継いだマルスが、儂らの手助けと称してやった可能性が高い。
「ガーランドの置き土産が、まさか筋肉教団となってアストリア家すらも潰したのか。ただ、それが正しいのかは不明だ。どちらにしても、彼らのおかげなのは事実だ。はてさて、どうしたものか。ガーランドを此方側に呼ぶべきか」
「ワゥ?」
何故か儂の傍で首をかしげるブラッドウルフの椛が、お座りをした状態で鳴いた。赤黒い毛並みは今日もサラサラとしており、尻尾を左右に揺らしながら構って欲しいのか真紅の瞳はジッと儂を見つめている。まさか茶屋にやって来るとは思いもしなかったが、最近はかまってやれなかったこと思い出した。寂しがり屋なところもある為、儂の元に来るのも必然だったのだろう。
「何だかんだで、忙しかったからな。かまってやれなくて済まない」
椛の頭を撫でながら、目的地である『バルダ』までの道のりについて、最新の情報と共に脳内で整理する。バルダに向かうために『中央都市ディアラ』に向かう必要がある。その途中に『ゲーディオ』と言う街があり、本来ならゲーディオからそのまま街道を進んでバルダに向かうのが最初の計画だったと聞いている。現状、ミッシェル集落に来た商人たちの最新情報から、未だに大量のゴーレムたちが暴走しているらしく街道は閉鎖中らしい。儂らなら余裕なのだが、狂いの欠片を所持する者が逃げる可能性もある。その為、当初の予定通りディアラからのバルダへと向かう道のりで行くことになる。
「これからの事を考えても、椛には負荷をかけることになるか。すまないな」
気持ちよさそうな声を漏らしながら目を細める椛に、儂は『まぁ、いざとなればシャトゥルートゥ集落に転送するか』と思いながら無言で撫で続けた。明日はゲーディオへ向けて旅立つのだが、アルトの件について旦那と相談をする予定だ。今後の事を踏まえても、アルトは重要な戦力になるのは間違いない。なので、出来れば連れて行きたい。
「ただ、五人旅は流石に怖いところではある。特にアルトは人間社会をまだちゃんと理解していない。そうなると、やはりシャトゥルートゥ集落に送って社会勉強をした方が良いか」
満足したのか椛は立ち上がり、そのままゆっくりと仮拠点の方へと歩き出した。その姿を見送りながら、ゆっくりとお茶を飲む。すると、何処からともなくやって来た子どもたちに捕まり、椛をペタペタと触ると、ボールを取り出して遊びを始めた。椛も楽しそうに投げられたボールを口に咥えて持ってくるなど、子ども達と楽しそうに遊んでいる。
「何と言うか、楽しそうだな。魔物の脅威を理解しているとは言え、ブラッドウルフに対して警戒せずに触れ合える度胸には驚かされる。まぁ、子ども故の好奇心に驚かされるのはいつもの事か」
「確かに、その通りですね。あのAランク級モンスターであるブラッドウルフが、人に懐くなんて初めて見ました。警戒心が強く、どんなテイマーでもテイムする事が出来ないのですが、リューセン様たちに懐いてますし、楽しそうに遊ぶ子どもの姿を観たらテイム出来ないと言うのが嘘なのではと思います」
のどかな光景を見守っていると、隣から気配を感じ取り振り向いた。そこにはマーシェン殿が、私服姿で立っていた。私服と言っても白いワイシャツと藍色の長ズボン、藍色のカーディガンを羽織っていると言う、とてもラフな姿ではある。手には雑誌を持っており、表紙には『最新の武器防具情報』と言うのが見えた。
「お隣に座っても宜しいですか」
「あぁ、別に構わない。折角だ、話し相手になってもらえるか。仕事が一段落ついてな、旦那が戻るまで暇なのでな」
「えぇ、私でよろしければ」
マーシェン殿が儂の隣に座ると、店の店員がメニュー表を持ってやって来た。儂は先ほどと同じ紅茶を頼むとマーシェン殿も同じ紅茶を頼んだ。どうやらこの「トゥロア」と言う紅茶が好きらしく、よくこの紅茶を飲むらしい。儂はその紅茶が届くまでの間、子ども達の方を見つめる。
「平和ですね。なんだか、あの戦いがあった後だとは思えませんね」
「そうだな。あの戦は、狂いの力が引き起こした物だった。冒険者が数名亡くなったのは痛手だった。出来れば、全員生存するのが良かったんだがな」
「そうですね。あの時は皆必死に戦いましたが、誰一人として欠けずに生き残ってほしかったです。ですが、それは希望論にすぎません」
亡くなった者たちの事を守れなかったが、互いにあの戦を生き残ったからこそ言える。彼らは冒険者であり、一流の戦士だった。だからこそ、誇りをもって言える。
「あぁ、その通りだな。だが、彼らは戦士として、この集落を護りきった。その真実は決して否定する事の出来ない真実だ。故に、彼らに相応しい慰霊碑と武勇を広める必要がある」
「その通りです。冒険者ランクは違えど、彼らはあの時、あの場所で、一流の冒険者であり戦士でした。そう言えば、先ほど吟遊詩人の方がこの集落に来て、彼らの武勇を聞いていました。其方の手配は、リューセン様が行なったのですか」
「いや、それについては商業ギルドの連中が手配したらしい。あの戦を実際に観た冒険者からの証言を元に、宿屋で作曲しているらしいぞ。儂としても、どんな曲が出来るのか楽しみだ」
店員が紅茶を持って来たので、儂らは紅茶を受け取りテーブルの上に置く。子ども達の気配を追えるため、手に持っている新聞を読み始めた。内容は『バルト王国とサルトディエ王国の戦争』についてだ。この件は、儂もシャトゥルートゥ集落で確認しており、特に注目している内容の一つだった。その一面を読むと、戦争の件はなくなったらしい。その理由は、竜王国の国王が両国を交えた会議で、あの資料を見せたことらしい。どうやら、資料に書かれていた内容に、魔族領の官僚が関わっていたらしい。
「此処まで、よく情報を得る事が出来たな。最近の情報屋は、此処まで出来るようになった訳か。しかしながら、戦争が起こらないのは良い事だ。まさか、あの資料が役に立つとはな。うむ、やはり情報屋の件は少し多めに雇った方が良いな」
「なるほど、戦争の件もリシュー様が関わっていたのですね。此方としても、アストリア家の横暴が無くなり冒険者としての仕事がやり易くなりました。アストリア家を失墜させた方に感謝してる人は、私を知る限り数百名はいますね」
マーシェン殿から感謝の言葉を貰ったと同時に、アストリア家に悩まされた者たちが百名以上もいたことに納得はする。あの資料にはシャトゥルートゥ集落以外にも襲う予定だった者たちの名前が書かれていた事を思えば、己が利益のためだけに苦しめた者たちが百名以上いるのも納得であり、己の首を己で絞めた訳で自業自得だろうと言える。裏家業が表沙汰になり、こうして裁かれたのだ。そう言った意味では、マーシェン殿たち冒険者も自由になって良かったとも言える。
「なるほどな――ん、あそこにいるのは旦那か? 此方に向かって来ているな」
「その様ですね。あれ、ミーアさんは居られないようですが? いつも、イスズ様の隣にいる認識だったのですが」
確かに、此方に向かって来ている旦那の隣には嬢ちゃんの姿はなかった。さらに言えば、儂の後ろにいつの間にかついて来るアルトの姿もない。アルトについては、お昼にお腹がいっぱいご飯を食べたからかお昼寝をしている。
「あぁ、嬢ちゃんならディアラさんと他の魔法使いの冒険者を集めて勉強会を開いているぞ。シャトゥルートゥ集落の魔法学の参考書を持って、仮拠点の会議室に入ったのを見たからな」
「なるほど。魔法使いの冒険者の皆さんの姿が見当たらなかったのは、そう言う理由だったわけですね」
そんな話をしていると、旦那が此方に着くと開いてる席に座った。儂はすぐに店員を呼び、紅茶とお茶菓子をいくつか注文した。旦那の好みを理解するのも部下の務めと言うが、儂の場合は旦那との付き合いが長いので大体分かっている。もう数万年の付き合いなのだから、解からない方がおかしいのかもしれん。
席に座ると同時に「はぁ、疲れたぁ」と一言を呟くと、テーブルの上で頬杖を突きながら再度溜息を洩らした。
「お疲れ様です、イスズ様」
「旦那、お疲れ様です。会議の方は無事に終わったようだが、何かあったのか」
「あぁ、会議については、現状マンティス族とギルド側で連携してラディアの森を管理することに決まった。問題は、アルトの件でな」
アルトと言う言葉が出た瞬間、旦那の空気が変わった。真剣な表情で儂らを見つめると、いつものように額に手を当てながら何を伝えるべきか悩みながら、ゆっくりと思い口を開いた。
「アルトの件だが、シータの部下であるクロノスが引き取ることになった。刻竜の件で大陸を分断していたのだが、解放されてしまっただろう。その件で、俺たちが認めた者たちを一度だが仮世界に送って鍛えることになった。来るべき戦いに備えて、な」
「そうか。しかし、何故アルトをクロノスに預けることになったんだ。どちらかと言えば、ボルト当たりの方が良いと思うのだが」
「確かに、その通りなのだがな。魔法も少し鍛えたいと思っている。竜仙、お前から聞いた限り魔法耐性などの知恵をつけ、今後の戦いに同行させるのが目的だ。特に、クロノスは戦闘に関して言えばボルトには劣るが、それでもボルトの次に強いのは間違いない」
旦那がクロノスに預ける理由を聞き、アルトを預けて問題ないのか不安になった。クロノスは女性でありながら、男装と可愛いモノを集める事を趣味にしている。つまり何が言いたいかと言うと、アルトがクロノスの趣味の餌食にならないか不安なのである。
「旦那、妥協案として儂の部下である蓮華を付き添いさせてくれ。アルトがクロノスに染まるのは困るからな。うん、彼奴色に染まるのは、儂が困る」
「あぁ、確かに危険だな。その妥協案を飲もう。明日にはミッシェル集落を出るから、アルトをシャトゥルートゥ集落に転送して、そのままクロノスたちの元で修業だ。そう言えば、マーシェンさんは今後どうする予定なんですか。白狼団の方たちも続々と集まって来ているようですが」
「私ですか? 部下たちの到着を待つ予定です。その後に、シャトゥルートゥ集落に向かう予定です。シャトゥルートゥ集落のギルド長から『ダンジョンに挑戦してみないか』とお誘いがありましたので」
マーシェン殿は旦那と話しつつも、シャトゥルートゥ集落からの誘いがあったことを告げた。少しずつ戦力を整えたいらしく、ジェイク・ローグバードが率いるギルド『赤翼の騎士』が今は常駐している。ホムホムから聞いた限りでは、中々に苦戦しているらしい。実際に挑んだ冒険者でも、最低でも二階層までしか突破できなかったようだ。
「それに、赤翼の騎士より早く踏破したいですし」
「「な、なるほど」」
目に闘志と言うべきか、必ず勝つと言うヤル気に満ちた表情をしている。やる気があるのは良いのだが、流石に目から炎が出ているような雰囲気から我々は頬を引きつった。ギルド間の衝突だけは避けてもらいたいが、やる気がある分だけ良い事だ。
「さてと、私はそろそろ帰りますね。私の部隊もそろそろ来ますので」
「そうか、ならこれを持って行け。これは、儂が考案した回復薬と交換できる券だ。シャトゥルートゥ集落にいるホムホムと言う者に渡せば、貰えるぞ」
右袖の亜空間から何枚か引換券を取り出し、マーシェン殿に手渡した。最初は驚いた表情をして「流石に、受け取れませんよ」と断ったのだが、旦那からの「あの戦での褒美だと思って受け取ってくれ」と言う一言で、仕方がないと言う表情で受け取った。そして、マーシェン殿が去ったとほぼ同時に、儂が注文していた物が届いた。
「で、旦那としてはマーシェン殿はどう判断する」
「そうだな。最終決戦時には是非とも参戦してもらいたいかな。赤翼の騎士と白狼団と言う二つのギルドが、シャトゥルートゥ集落に集結する。そして、アルトさんは百鬼夜行の一員となる。少しずつ盤面が整い始めている」
「嬢ちゃん――いや、ミーアも本来の名前と旅人としての力が戻った。後は、更なる戦闘員の強化。そして、狂いの神との最終決戦ってところか。儂――いや、俺としては筋肉教団の連中の行動力も評価したいところだ。彼らも最終決戦時に戦場に立っていそうな気がするが」
「それについては、俺もそうなると思っている。俺らの抱える問題の中で、この世界の住人だけで解決できる問題のみを解決している気がする。彼奴らには何か報酬を用意した方が良いか。多分、ガーランドだろうな」
紅茶を飲みながら遠い目を向ける旦那に、儂は同意も否定もせず紅茶を飲む。儂らが言うのもなんだが、彼らの向上心と言うべきか闘争心と言うべきか。何だかんだで、彼らのおかげでこうして少し余裕ができたのだ。彼らには感謝すると同時に、そこまで鍛え上げたガーランドの功績はデカい。
「はぁ、取りあえずこの話はこの辺で終わりにしよう。それよりもだ、本当に明日にこの集落を出るのか? 俺が言うのもなんだが、旦那は休みを取らずに働き過ぎだ。もう二日は休みを取るべきではないか」
「いや、次の目的地であるゲーディオで二日ほど休暇をする予定だ。ミッシェル集落での作業も一段落はついたのもあるが、ゲーディオまでディアラさんを送り届ける。その後でも、休みを取るのも良いだろう」
旦那はそう告げると、お茶菓子のクッキーを手に取り一口齧る。サクッと言う音と共に、何処からか鐘の音が聞こえた。美味しそうに食べる旦那を見た後、紅茶を一口飲み子どもらの方へと顔を向けた。
「明日の出発については、椛にアルトをシャトゥルートゥ集落に連れて行くように命令を出す。理由については、一回限りの転送をもう使用してしまった。故に、ゲーディオには歩きで行くことになる。アルトを背に載せて椛を走らせるが、半日で到着するだろうな」
「そうか。ただ、アルトだけシャトゥルートゥ集落に送るのはどうかと思う。やはり、人間に戻ったボルトとガーランドを護衛につけるか。彼奴らも俺と同様に働きすぎだし、休暇と言う名目で仕事をしてもらおう」
「それは良い。人間の姿のガーランドを見た事が無いだろうから、筋肉教団の連中は発狂するだろうな。うむ、ではその方向で話をつけよう」
旦那の提案に儂は肯定し、すぐにボルトとガーランドにメールを作成するために、右袖に左腕を突っ込み銀色の腕輪を取り出した。これは旅人間の『緊急連絡用の通信用端末』である。これを使用すれば、即連絡を取ることができるのでとても重宝している。目の前の虚空から緑色の電子パネル状の画面とキーボードが現れる。
「あぁ、それで頼む。それと、この世界を供給していたエネルギーラインの事だが、修復作業に携わった部下について給料の他に臨時ボーナスが出るってさ。彼奴ら、飲みすぎないか心配なんだが」
「それは、部下たちには伝えたのか」
「いや、まだその話はしていない。取りあえず、部下たちの連絡に入れて置いてくれ。流石に、旅人会議と此方の会議が続いたのもあって流石に疲れている。メール内容は竜仙に任せる」
「分かった。旦那の仕事量を考えても儂がやっておく。取りあえず、旦那は今日は休んでくれ」
旦那にそう伝えると、旦那は無言で頷いた。流石に、本当に疲れているからだろう。気を抜いた瞬間、欠伸をすると同時に「寝みぃ」と言う言葉を呟いたのを聞こえた。儂としても、そろそろアルトも目が覚めて儂を探し始めると思う。
「さて、そろそろ帰るか。竜仙、残りの茶菓子は持ち帰ろう。その前に、持ち帰りは大丈夫だったか」
「あぁ、持ち帰りは大丈夫だ。では、旦那は先に戻っていてくれ。此方の作業が終わり次第、すぐに戻る」
「分かった。お金は払っておくから、気にしなくて良いぞ。んじゃ、また後で」
旦那はそのまま店員の元へと向かいお金を払うと、そのまま仮拠点に向かって行った。仮拠点に戻った旦那を見届けてから、メールの作成を行ない送信する。送信を終え他のと同時に席を立ち、お茶菓子を持ち帰り仮拠点へと向かった。儂が仮拠点に向かう姿を見てか、椛が此方へと駆け足で向かってきた。儂の近くに来るとそのまま後ろをついて行き、仮拠点の従魔専用部屋へと戻って行った。
仮拠点の玄関の扉を開けると、いつものようにアルトが出迎えをしてくれたのだが、頬を膨らませながら儂に抱き着いて来た。どうやら寂しかったらしく、抱き着いたまま離れる気配がなかった。そんなアルトを抱きかかえながら、儂は仮拠点の中に入るといつものように頭を撫でながら部屋へと戻った。
そして、翌日――




