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断罪の旅人  作者: 玖月 瑠羽
三章 鬼の角にも福来る?
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14話 竜仙の角

どうも、皆さまお元気でしょうか。

私は、元気です。

最近、コロナの影響もあり在宅ワークが主流になっております。


コロナ、怖いですね。

皆さまもしっかりと感染予防を取ってくださいね?

私としては、コロナに負けないように、手洗い、うがい、マスク、アルコール除菌

コロナ対策をしっかり頑張っております。


では、そろそろこの辺で

次話で会いましょう ノシ


 アルトを連れてラディアの森を歩いている中、コリッシュたちは何やら楽しそうに会話をしながら先頭を歩いている。冒険者である彼らに任せて、儂とアルトは後方でゆっくりと彼らの後を歩いている。つかず離れずと言った、一定の距離を保っている。森の中には冒険者たちに仕留められ、解体されたのだろう魔物の残骸らしきモノが散らばっていた。それ以外にも、一度に全部持って帰るのは無理だと判断したのか、回収できなかった魔物を炎の魔法で炭になるまで燃やされた後がある。


(なるほど、必要最低限のみを解体しているのか。燃やして粉々にするとは、よく考えられているな。ただ、魔石はちゃんと持って帰るべきだが、その暇もなかったのだろう)


「ふむ、人間も。ちゃんと火葬はするのだな」


「その様だな。解体した魔物もちゃんと処理されているようだ」


 足元などには魔物の脚のようなものが散乱してはいるが、それを避けながら互いに魔物の残骸を見ながら歩いていると、急にドテンと誰かのコケる音が聞こえた。それも右隣にいるアルトの方向からである。その場で立ち止まりアルトの方を振り向くと、何やら右足首を抑えながら体育座りをしていた。どうやら、魔物の脚に躓いて転倒したようだ。その際に、足を捻ったのか挫いたのか分からないが、ジッと右足を摩っている。


「大丈夫か? 脚首をひねったのか」


「多分そう。痛い」


「そうか。立てるか」


 儂の問いかけに、アルトは首を横に振るう。痛そうな表情はしていないが、ジッと右足首を摩りながら見ている。ただ、黒い鉄製のグリーブのせいで腫れているのかが全く分からん。ただ、ジッとその場から動かないので、痛いのだろうと想像するしかない。このまま無理に立ち上がらせて歩かせ、足首が炎症して悪化する恐れがある。儂は背中を向けたまま、アルトの目の前でしゃがむ。


「ほれ、背に乗れ」


「いいのか? 私が言うのもなんだが、重いぞ」


「構わん、アルト一人くらいなら軽い。それに、無理に歩かせる訳にはいかないからな。ほれ、背に乗れ」


 そう告げると、アルトは「そうか。分かった」と一言を告げ、儂の背におぶさる。十歳の少女と同じ重さくらいだが、甲冑のせいで若干だが確かに重い。だが、若干なだけでそこまで重くはない。首元にアルトの腕を回すのを確認してから立ち上がり、そのままゆっくりと歩き出す。アルトは何やら感動したのか「おぉ」と声を漏らし周りを見渡し始めた。


「なるほど、これがリューセンの高さからの景色なのか。それに、この運び方。確か、人間を観察した時に観た。確か、そう『おんぶ』と言うものだな。なるほど、楽だな」


「だろうな。まぁ、歩かずに済む意味では楽だな。ほれ、しっかりと掴んでおらんぬと落ちるぞ」


「そうか。では、ちゃんと掴もう」


 チラリとではあるが、アルトの右足首を見る。しっかりと背負っているが、少しの衝撃で足が痛むかもしれない為、慎重に歩くべきだろう。甲冑を着ているせいもあり、ごつごつはしているが、何とかアルトは儂の肩に手を乗せている。時折、儂の首に手を回してしっかりと抱きついたりもしている。甲冑が腕に食い込む恐れがあったのだが、それのような事は起こることなかった。まさに、傍から見れば親が子をおんぶしている構図である。


「おぉ、リューセンの背中からだと、コリッシュたちはこう見えるのだな。ほうほう、なるほど。人の子なら、誰もが通る最初の体験だとコリッシュから聞いた。こういう体験は中々に面白いな」


「いや、何を言っているのか分からんが、最初の体験が『おんぶ』と言うのも謎だぞ。どちらかと言えば、最初は抱っこな気がするのだが」


「そうなのか? ふむ、人間とは面白いな。抱っこが一番最初か。うん、中々に興味深い。今度は抱っこをお願いしたいが、今は足が痛いのでやめる」


 儂の右肩に顎を乗せて、何やら嬉しそうな声色で言う。楽しい事でもあるのか鼻歌を歌いながら、儂の背に全体重を乗せている。今思えば、誰かを背負ったのは三年ぶりだ。確か、あの時は足を怪我した少女を病院へ連れて行った時だった気がする。その時もアルトと同じような行動をとり、病院に着くころには眠ってしまっていたな。


「それにしても、人間は不思議だ。虫を通して人間を観察していたが、どうして人間は子を守るのだろうか」


「それは、親だから。子を身籠り、生まれた瞬間から、親は子に愛情を捧げる。自身が愛した子を守るのは、子を愛し、幸せな未来を掴んでほしいと願いなのだ。まぁ、全ての者がずっと愛していられるわけではない。愛ゆえに過剰になる者もいれば、生まれてくることを望まない者もいる。我が子を虐待し、殺す者もいる。人間とは、本当に分からん生き物だ」


「そうなのか。人間とは、良く分からない生き物だな」


 アルトはそう呟くと、全体重を儂の背にのせて来た。それに対して儂は「確かにな」と言いながら、アルトを背負いながら先頭の三人を見ながら歩いている。今のところ魔物の気配はないのだが、ワープなどの転移で出現する可能性もある為、警戒をしながら歩いている。本来なら走って集落へ帰る予定だったが、アルトが足を痛めている中で走って帰るわけにはいかない。怪我をしたものを無理やり走れなど、儂はそこまで鬼ではない。


「リューセン、気になったことがある」


「なんだ」


「リューセンの角は、何故一本だけなのだ」


 いきなり額の角について質問してきた。角が一本なのがそんなに珍しい事なのだろうか。先ほどから儂の角が気になっているのか、アルトの視線がずっと額の角を向いていることは気づいていた。儂の角が気になっているらしく、しきりに額の角へと手を伸ばそうとしている。だが、その手が届くことなく、手を伸ばした手をまた首の方へと回す。


「そこまで気になる様なモノか? まぁ、鬼にとって角は誇りでもある。鬼同士の戦いで角が折れることもあるのだが、角は鬼としての象徴でもあるからな」


「そうなのか? 角が誇りで、象徴なのか。リューセン、鬼とは何なのだ? 我ら魔物とは違うのか?」


 何やら儂を魔物と勘違いしているようだ。まぁ、人間の言う定義としては同じ存在だと言われてはいる。その定義が『人間に害をもたらす』か、である。確かに魔物と妖怪は、人間に害をもたらすことはある。まずは、その定義から話すべきだと語ることにした。


「魔物、か。残念ながら定義状では同じだが、儂としては分類が違うと考えている。鬼とは『妖怪』に属するモノだ。主ら魔物は『人間に対して害意をもたらす存在』だ。例えば、人間と遭遇した場合、すぐに戦闘になり殺し合いになる。それは、分かるな」


「うん、ゴブリンのような奴ら。あれは団体で来ることが多い。弱者には強気で、強者には媚びへつらう。アレは、見ていてもうざいから、餌として喰らうだけ。ゴブリンメイジも、ゴブリンキングも、虫たちの餌だったから。もう、全部食い尽くしちゃったけど、魔石は私の餌として持って来てくれた。他の女王虫も同様、魔石が餌」


 何故かさも当然のように告げるアルトに、儂はこの森を調査した時のことを思い出した。虫以外の動物たちの気配が全くなかった。元々はこの森に棲みついていた昆虫型の魔物たちが食い殺したのだと考えていたが、魔石以外は虫たちの餌だったわけか。そもそも、冒険者ギルドなどがある書物を借りて調査したが、女王虫にとって魔石は餌だったと言う情報に驚きだった。


「なるほど、だからこの森からゴブリンなどの『昆虫型以外魔物』や『魔石』の気配を感じなかったのか。さて、話は戻るが妖怪は『人の理を超えた不思議な現象を起こす存在』だ。まぁ、実際は同類とされているが、妖怪は『人間に対して害を与える』モノもいるが、逆に『人間に幸福を与える』モノもいる」


「そうなのか。リューセンは、妖怪と言う種族なのだな。リューセンはどちらに該当するのだ」


「儂か? そうだな。害を与える側だろうな。そもそも、鬼は人間に害を与えるモノと言われているが、それだけではない。あの世と言う死後の世界で、死んだ人間の魂が落ちる場所とも言える。その場所で、鬼である獄卒が働いている。まぁ、儂はその獄卒で働いていた鬼なのだがな」


 獄卒時代の事をあまり語ることはしない。何だかんだで、旦那との出会いもそこから始まる。しかし、今思えばあの世で旦那と出会ったあの時から、儂は旦那に惹かれていたのだろう。罪を認めぬ者が多い中、旦那だけは自身の罪を認めていた。たった一人の少女を守る為に、ウィルス研究所の職員の全てを殺した者の顛末。あの日から、儂は旦那と共に旅人となる運命が確定していたのだろう。


「リューセン。何を楽しそうに笑っているのだ」


「いや、なに。昔のことを思い出していただけだ。ところで、話は変わるのだが」


「ん、なんだ」


 不思議そうな表情で儂を見つめている。ただ、アルトの左手が何故か儂の角を掴んでいた。それも、何故かしっかりと掴んでいるのだ。放す気配が全くないのだが、これは一体どう言う事なのだろうか。そして、当然と言えばよいのか前方の三人は全く気が付いていないようだった。


「何故、儂の角を掴んでいる」


「ん、角が光って見えた。だから、気になって掴んだ」


「角が光る? あぁ、なるほど。例のあれか」


 久しぶりに『あの現象』が起きたのかと納得した。ただ、角が光って見えるのは高純度の魔力を持った者だけのため、前方の三人には気が付かなかったようだ。魔物でもそう簡単には気が付くことはないと思ったが、アルトにはちゃんと見えていたようだ。ちなみにだが、旦那や嬢ちゃんも角が光っている事は知っており、実際に見えてもいる。

 自身の手にも光が付いているのか気になったのだろう。角を掴んでいたアルトは、掴んでいる手を放しすと、そのまま腕を首に回し左手を見つめる。自身の手にも光が付いているのか確認しているようだ。ただ、手にはついていない事にガックリしているのか、不満そうな溜息を吐くと、角について質問をして来た。


「リューセン。何故、角が光っているのだ」


「此奴は、儂の持つ能力の一つだ。簡単に言えば、幸運を呼ぶ力のようなものだ」


「幸運を呼ぶ力? なんだそれは」


 当然の質問が返って来た。儂も同じ立場なら質問してしまう。この話をするのは流石に気が引けるのだが、アルトに説明することにした。


「儂は、座敷童と言う幸運を呼武と言われる妖怪と鬼神の間に生まれた子でな。鬼としての力と座敷童としての幸運を呼ぶ力を持っている。この角の光は、座敷童の力が発動したからだ」


「なるほど、そうなのか。だが、光っているだけのように見えるのだが、それだけでなのか」


「いや、それだけではない。鬼神としての力で『負の力』が働き、周辺に悪影響を及ぼすのだが、それを座敷童の力で幸運の力を周辺へと放ってしまう。それも不定期で、いつ起こるのかすら分からない。ほれ、そこの樹々を見てみろ」


 儂が右側の樹へと顔を向けると、いつの間にか一羽の灰色の鷹が木の枝にとまっていた。銀色の瞳は、此方を不思議そうに見つめながら首をかしげていた。あの鷹の名は「パラライズホーク」と言う鳥系の魔物である。


「鳥の魔物、だな」


 アルトもまた其方へと顔を向け、パラライズホークを見て驚いていた。確かに、この森の生態系を考えても、この森に昆虫以外の魔物が戻って来たことに驚いているようだ。儂としては、今の状況を見て「始まったか」と思ってしまった。広範囲に幸運の力が発動してしまったのだと諦め、コリッシュたちの後を追う。

 先頭にいたはずのコリッシュが儂の元へとやって来ると、アルトと同じようにパラライズホークを見ていた。どうやら、パラライズホークが気になっているらしく、何やら舌打ちをすると同時に儂の方へと顔を向けた。


「師匠、パラライズホークですね」


「その様だな。あそこまで大きいのは、久しぶりに見た感じがするな。何か思い入れでもあるのか」


「うん、ありますよ。それはもう、両手では数えきれないくらいに。久しぶりに見たけど、やっぱり大きいなぁ。初めて魔物と戦った時、パラライズホークに獲物を奪われてね。うん、あの時の恨みは今でも忘れない」


 相当の恨みがあるのだろう。ニヤニヤと口元は笑っているが、目は全然笑っていない。獲物を奪われたと言っていたが、冒険者としてギルドに報告するアイテムらへんだろうと想定する。そして、他にも森の方から鳥の鳴き声が聞こえてくる。徐々にではあるが森に魔物や動物が戻って来たようだ。アルトも周囲を見て、魔物たちが戻って来たことに驚いているようだ。


「凄いな。まさか、これ程の力だとわ。一瞬で昔の状態に戻ったようだ」


「鬼神の力と座敷童の力が、こうして交わるとこうなるわけだ。制御できないのが悔やまれるのだが、こうしてタイミングを見計らった感じで発動するとは、な。制御方法の不明な点が多くて困ったものだ」


 小声でぼそりと呟いた。今思えば、この力のせいで苦しめられた日の事を思い出す。何だかんだで、この力を制御しようとしたのだが上手くできなかった。うん、何だかんだで暴走は起こしていないので問題はないのだが、もしものことを考えて制御できるようにはしたい。


「師匠、何の話ですか? ブツブツと独り言なんて、珍しいですね」


「儂とて、独り言の一つや二つはする。ところで、先頭のジュライたちに追いつかなくてよいのか」


「へ?」


 先頭の方へと顔を向けるコリッシュに、儂は少し早歩きでジュライたちの元へと向かう。何せ、ジュライたちとの距離が二キロメートル程離れているようだ。アルトの脚を気にしていた為に走ることはできなかったのだが、早歩きくらいは出来たはずである。そして、どうやら此方に気が付いたのか、ジュライたちは立ち止まって待っていた。流石にパラライズホークに気を取られてしまい、だいぶ離れてしまったようだ。


「あちゃ、早く追いかけないとダメですね。じゃ、急ぎましょう」


「そうだな。さっさと追いつくぞ」


 ジュライたちの元へと歩いて行くに連れて、森の中にいる生き物の気配が増えていくことを感じ取れた。どうやら、アルトも同じようで周りをキョロキョロと見回しながら「おぉ、増えてる」と言いながら笑っていた。後は、この森が今回のような問題を二度と起こさないようにするだけである。


「沢山、戻って来る。獣も、虫も、魚も。凄い速さで、戻って来る。私が目覚めた時よりも多い気がする。これが、幸運の力なのだな。リューセンの力は凄いな。私にはない、凄い力」


「凄い力、か。儂にっては、このような力は不要だったのだがな。生まれた時から持っていた力であり、もう慣れてはいるがな。幸運を運ぶなど、不幸でしかない」


 儂は溜息を吐きつつ、アルトにそう告げた。そこまで凄い力ではないと思うのだが、他人から見れば凄い力なのだろう。この力のせいで、苦労してきた俺にとっては不幸でしかない。他人が羨む力とは、嫉妬されやすく、同時に所持者にとっては『厄災』のようにとらえる場合がある。さて、そんなことを考えていると、アルトが不思議そうな声で「何故だ? こんなに素晴らしい力があるのに、何故リューセンにとっては不幸なのだ」と質問して来たのでそれに答えた。


「幸運と言うのは、誰かに与えられるものではなく、自身が掴むべきものだ。日頃行いで、幸運をつかむ場合もあるが、だからと言って幸運の力で、幸せになるのはどうかと思うがな。特に、座敷童は『幸運を呼ぶ妖怪』と言われているが、実際は違う。幸運を呼ぶと言う事は、その場所が『幸運を呼ばないと危険な状況』だから来ると言うわけだ。つまり、重傷患者への救命装置だ」


「ジューショーカンジャへのキューメーソウチとは何だ?」


「簡単に言えば、死にかけの者への延命――つまり、死なせないようにする機械だ。そんなものを抱えて生活し、その力が去った後は一瞬にして今までの生活が崩壊する。そんな、爆弾のような力に支えられ続けるなど、危険だろ。だからこそ、この力にすがるような事が起きてはならないのだ。まぁ、考えは人それぞれだがな」


 救命装置の説明をすると、アルトは「なるほど、そう言うものがあるのか」と楽しそうな声で答えた。知らない事を知ると言う事が、嬉しいのかもしれない。他にも知りたいことがあるのか、いろいろと質問をしてきている。

 例えば旅人は何者なのか、この世界に来た目的など、知りたい事を聞いていた。答える範囲ではあるが答えているが、何故かその殆んどが儂の事である。好きな食べ物や、苦手なものなどである。


「なるほど、そうなのだな。世界とは広いな」


「あぁ、広いさ。だからこそ、人は旅をする。旅をすることで、その土地ごとの文化を学び、その知恵を生かし暮らしを豊かにする。そうやって人は、成長して行くのだ。もちろん、アルトもそうだ。失敗から学び、そこから共存するために必要な『知識』を学ぶのだ」


 旦那と共に旅をしたあの日から、儂は多くの事を学び続けた。だからこそ、儂はアルトに向けて言葉にする。アルトは「そうか。なるほど」と、言いながら儂の肩に顎を乗せると何やら嬉しそうに微笑みながら言う。


「次は、失敗しないぞ。共存する世界、作ってみたいから」


「あぁ、楽しみだな。人と共存する世界の最初がミッシェル集落だが、ゆっくりでいい。一歩ずつ歩く様に、しっかりと人との絆を結べるように頑張ればよい」


 アルトにそう告げると、先頭を歩く三人が此方を見て手を振って来た。それに気が付いたのか、アルトも手を振り返す。よく見ると、遠くではあるが見覚えのある集落が見えて来た。どうやら目的地に到着するようだ。到着次第、旦那に報告とアルトの怪我を治療する。


「到着するのか?」


「あぁ、そうだな。到着次第、足の治療をするぞ」


「分かった。その、ありがとう」


 小さい声ではあるが、感謝の言葉を告げるアルトに、苦笑しながらもしっかりとアルトを背負う。手を振るアルトを落とさないように、太ももをしっかりと腕ではさみ背負う。何となくではあるが、娘を持った父親の気分になった。子を持つ親の気持ちを感じながら、背中から聞こえる嬉しそうに笑うアルトの声に微笑んでいた。これからアルトに多くの事を教えるのが、何となくではあるが楽しみになっていた。そんな気持ちになりながらも、儂はアルトと共にミッシェル集落へと向けて歩き続けるのだった。

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