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断罪の旅人  作者: 玖月 瑠羽
二章 試練のダンジョン
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2話 思い出される記憶

お久しぶりです。

いろいろと合って、書くスピードが遅くなった私です。


うん、頭が回らないってダメだね。

頭が回らないせいで、なかなか物語りが書けませんでした。

よし、次話はもう少し早く書けるように頑張らないと


では、次話で会いましょう ノシ


「ぅ、うん?」


 目が覚めると、不思議な風景の広がる草原の上で横になっていた。何故、この場所で寝ていたのか分からなかった。先ほどまでイスズ様のそばで寝ていたはずなのだが、何故か私はこの場所に眠っていたのだ。何が起きているのか分からなかったが、取りあえず起き上がることにした。


「イスズ様? イスズさまぁぁぁぁあああああ!! ぅ、うぅんっと、本当に此処はどこなの」


 周りを見渡しても広大な高原しかなく、空を見上げれば雲一つない晴天と黒い亀裂が走っていた。そして、何故か分からないが『六つの満月』が昇っている。それも不思議なことに、朝だと言うのに太陽がないのだ。その状況を冷静に考えて『これは夢なのではないか』と思い、右頬を抓ってみたのだが痛みがあった。つまり、ここは夢の中ではないのだ。それに、今さら気が付いたことなのだが、先ほどまで寝間着だったはずなのに、今は『イスズ様と同じコート』を羽織っていた。コートの下には緑色のシャツと黒いズボンを着ている。そして、背中にはロストメモリーを背負っていた。


「あれ、葬刃がない? ど、どうしよう!? あれ、私のお気に入りなのに」


 寝る前に私は枕元に置いている双鉄扇なのだが、私が眠っていた場所に置かれてなかった。装備している可能性もあるため腰回りなどを確認したのだが、やはり装備していなかった。葬刃とは、私の村を襲ったドラゴンから作られた双鉄扇で、毒などを仕込める私専用の武器である。私の村を襲ったドラゴンの素材が使われているとはいえ、この四年間一緒に特訓した相棒である。その相棒である葬刃ではなく、私が最近になって使い始めたロストメモリーだけしか武器がないことが不安だった。


「はぁ、葬刃がないと不安だなぁ。それに、此処は本当にどこなのかな?」


 不安になる声で呟くと、背後から何か視線を感じ取り振り返った。そこには、彼女の姿があった。服装は私と同じなのだが、背中には私と同じガンブレードを背負っている。優しそうな目で私を見つめるのだが、その立ち姿には凛として美しかった。見た目からして二十代くらいの人間で、腰まである長い白髪に左右の手には黒河のグローブを身に着けている。まさしく、私の事を見守っていた彼女である。


「ようやく、此方側へと昇って来たのね。ようこそ、この素晴らしき旅人の世界へ」


 彼女は嬉しそうに微笑みながら告げると、その場でクルリと一回転すると彼女の服装や姿が一瞬にして変わった。灰色のコートは黒く染まり、下に着ている服はスーツへと変化した。一瞬の出来事に驚いてしまったが、彼女は嬉しそうに微笑むと背中に背負っているガンブレードのグリップを握った。初めて彼女の声を聴いたのだが、それ以上にその場でクルリと回っただけで服装が変わったことに驚いてしまった。どうすればあのような事が出来るのか、彼女に聞いてみたいと思った。だが、彼女は私を見て苦笑した。


「まだ、思い出せないようね。私と貴方の関係を思い出せないのも、お嬢様との契約が関係しているのかしら。確か、あの時までは記憶が残っていたはずなのだけど。何かの影響で、すべてを忘れてしまったのかしら。彼女はずっと貴方の中で眠っていたのだから、私のことくらいは覚えていても良いはずなのだけど。ねぇ? 私の事や、お嬢様と交わした契約を覚えているかしら」


 彼女の問いかけに、私はなんの事か分からなかった。ただ、いつも彼女を見ていると何故か『何かを忘れている』ような不安な気持ちに駆られていた。何を忘れたのかすら思い出せないのに、彼女は私へ向けて彼女自身やお嬢様と言う人の事を覚えているかと問いかけてきた。正直に言えば、覚えていない。第一、彼女の名前すらも思い出せない――と、言うよりも知らないのだ。それに、彼女が見え始めてからと言うもの、なんでこんなにも心がチクチクするのか分からない。でも、彼女の問いに私は答えなくてはならないような気がした。


「お嬢様と、交わした、契約? 何を言っているの」


「なるほど、そう言うことね。それまでも忘れているなんて、これは簡単に思い出すことはできなさそうね。本当なら自然に思い出してほしいのけど、このままだと一刀やお嬢様に迷惑をかけてしまうわね。うん、仕方がないわ。記憶を取り戻すためにも、ここはアレしかないわね。本当は嫌なのだけど、貴方の為でもあるし、仕方がないわね」


 そう言うと、背負っていたガンブレードを引き抜き、私へと剣先を向け真剣な表情で私を見つめる。私へと向けているガンブレードは、私の背負っているロストメモリーと瓜二つだった。そのガンブレードを向けた状態で私をジッと見つめている彼女に、私は戸惑いながら立ち尽くすしかなかった。何故なら、彼女と戦う理由がまったくないからだ。何の理由で、私へ剣を向けるのか理解できない。そんな私に対して彼女は微笑みながら告げた。


「さぁ、武器を取りなさい。その武器を扱えるように、私が稽古してあげるわ」


「ぁ、あの。どうして、ですか」


「一刀のためであり、貴方の為でもあるわ。そのガンブレードは、元々貴方が使っていたものよ。それをボルトたちが修復し、改良したのが貴方が背負っているガンブレード。そして、それは貴方が自ら記憶を封印した楔でもある。何の因果なのか知らないけど、貴方の元へと戻ったのだ。これは運命なのかもしれないわね。さて、話がそれたわ。貴方は、記憶を取り戻さなければならい。それ故に、その楔を断ち切るためにも、貴方は私と戦う必要があるの」


 至極当然のように語る彼女に、私は理解することができなかった。このガンブレードが元々は私が使っていたモノだとか、記憶を封印した楔だとか。正直に言って、彼女の言っていることをすぐに理解することができなかった。でも、彼女の真剣な眼差しを見れば、それが嘘ではないことなどすぐに分かる。だからか、私は自然と背負っていたロストメモリーを抜き、彼女へと向けてゆっくりと構える。空っぽのシリンダーに魔力を込め、魔弾を生成し装填する。それを見て、嬉しそうに微笑む彼女は、ハンマーを引き私へと言う。


「そう。それで良いわ。でも、まだ脇が甘いわね。緊張しているのか、力が入りすぎているわ。もう少しリラックスして良いわよ。最初は手加減してあげるから、まずは私の構え方を真似しなさい。後は、そうね。今まで竜仙に何を教わってきたのか、もう一度思い出しなさい」


 彼女は私に向けていたガンブレードを地面に突き刺した。ただ地面に突き刺したというだけなのに、突き刺した所を中心に約五十センチほどの大きさの凹みができた。まるで、その箇所だけを抉ったような綺麗な凹みができていた。だが、私はその凹みよりも先ほどの一言に心が揺れた。脇が甘いや、リューちゃんから何を教わってきたのか。その一言で、私はロストメモリーへと魔力を流し込んだ。


(私が今まで教わって来たことを思い出す。貴方に何が解かるの?)


「そうね。貴方にしてみれば、私に何が解かるのかと思うのは確かね」


「ぇ!?」


 声には出していない心の声が読まれたことに驚き、ロストメモリーに流していた魔力を止めてしまった。弾丸は装填しているので問題はないが、驚きのあまり私は構えを解いてしまった。それに、私の驚いた表情が面白かったのか、彼女は左手で口元を覆いながらクスクスと笑っている。私はすぐに構えを直し、魔力を流すと彼女は微笑みながら語り始めた。


「言っていなかったかしら。私は貴方と繋がっているのよ。多分、貴方も気が付いていると思うけど、貴方がロストメモリーを手に取ってから私が見えるようになるずっと前から、私は貴方の事を見守っていたわ。貴方の考えや想いもすべて、私は貴方を通じて理解しているわ。なんせ、私と貴方はずっと前から繋がっている。だから、繋がっている限り、貴方の考えは分かるわ。それに、さっきも言った通り貴方の頑張る姿をずっと観て来たわ。だからこそ言うわ。今まで習ってきたことを思い出し、それを実践すれば良いだけ。ミーア、私を超えて見せなさい。それが、記憶を取り戻す近道でもあるのだから」


 そう言うと、地面に突き刺したガンブレードを引き抜き、グリップを逆手持ちで持つと左手を此方へと向け人差し指で『かかってこい』と言うように挑発する。その姿に見覚えなどないはずなのだが、何故か脳裏に『一人の背中だけを向けている男性』の姿が映った。灰色のコートを羽織り、両手には二本のガンブレードを持つ黒髪の青年。ニヤリと笑っている青年と、日本人特有の醤油顔と言うか――あれ、日本人とは何だろう。日本人と言う言葉に、何故か懐かしさを感じた。知らないはずなのに、何故か『日本人』と言う言葉が引っかかる。


「あら、師匠のことも思い出し始めているのね。そうよ、今の映像――もとい貴方が思い出した人は私たちの師匠よ。それも、私たちの上官に当たる人よ」


「師匠――ッ!?」


 急に片頭痛が起きたのだが、彼女は微笑みながら私の元へと駆け出した。その速さは、リューちゃんと互角とでも言うべきか。走っただけで衝撃波で地面が抉れ、土が後方へと吹き飛んでいく。確か、この技はどこかで観たことがあった。でも、この技は今まで観たことが無いのだが、何故か観たことがあるような気がするのだ。だからだろうか、その光景を見ながらも自然と体は動き、ロストメモリーを構え直した。まるで、此方へと向かってくる彼女の攻撃に備えるかのように、ロストメモリーを盾に地面へと足を踏ん張っている。


「さぁ、思い出しなさい!! 貴方と私の繋がりを!! そして、貴方の忘れてしまった記憶を」


 私へと振り上げられるガンブレードをロストメモリーで防いだ。たった一撃を防いだだけだというのにその衝撃は凄まじく、気が付けば後方へと吹き飛ばされてしまい、私が立っていた場所には隕石が落ちたかのようなクレータが出来ていた。この技は、間違いなく観たことがある。そして、記憶に残っている。この技は『ブラッド・インパクト』だ。魔弾を全弾使用することで発生する魔力暴走を引き起こし、その衝撃を相手へと放つ一撃必殺の技である。そんな技をもろに受けたのだが、何とか耐えながらも後方へ飛ばされる。その間、何故か脳内に攻撃してきた彼女とは別の声が聞こえた。


(お帰りなさい、私。ようやく、私たちは戻れるのね)


 地面へと落下しそうになったが、すぐに体勢を立て直し地面に着地する。すると、先ほどの声の主が彼女の持つ武器の名前を告げた。その名前に私は一瞬ではあるが、目を見開くほど驚いてしまった。何故なら、彼女の持つガンブレードの名が私の名前だったからだ。それに、この声の主が『私たちは戻れる』と言った意味が解からない。一度に多くの情報が入って頭が痛くなってきた。でも、そんなことを気にするはずもなく、目の前の彼女が嬉しそうに微笑みながら話した。


「どうやら、この武器の名前を思い出したようね。そうよ。このガンブレードの名は、貴方と同じ『ミーア』よ。さぁ、貴方が忘れてしまった全ての記憶を思い出しなさい!! 貴方は思い出さないといけないの。私と貴方、そして一刀の事も、すべて思い出さないといけない。それが、貴方にとって重要なことなのだから」


 彼女から放たれる斬撃とトリガーを引き放たれる魔弾による連続攻撃を、私は必死に防ぎながら攻撃をする。彼女の攻撃を防ぐ度に、フラッシュバックするかのように見覚えのない光景を思い出す。それが真実なのか分からないが、ただ『懐かしい』と言う気持ちになる。何度もフラッシュバックしている中で、何度も攻め込みやすい隙が生まれた。それなのにも関わらず、彼女は何か嬉しそうに笑いながら後方へと下がってはトリガーを引き絞る。


「だいぶ、動きがよくなったのじゃないかしら? 記憶が戻り始めたことで、昔の貴方に戻り始めたようね。剣筋もなかなか良くなったみたい。でも、まだ完全に思い出せていない。私と貴方の繋がりを思い出せていない。貴方にとってはどうでも良いことかもしれないけどね」


 彼女は嬉しそうに笑いながらも、その手に握るガンブレードを放すことなく構えていた。何故、私は彼女と戦わなければならないのか。その意味が徐々にではあるが、分かって来たような気がした。彼女は間違いなく私の忘れている――いや、私の『失った記憶』を持っているのだ。そして、私にそれを返すには、模擬戦と言う形で戦う必要があったのだろう。だから、こうしてヒットアンドアウェイを繰り返している。それを理解したからか、今まで迷っていた感情が消えていた。


「あら、どうやら覚悟が決まったようね。私の攻撃を防ぐ一方だったけど、ようやく攻めに転じるのね」


「うん、決めたよ。だから、貴方の知っている事、すべてを教えて!!」


 覚悟を決め、ロストメモリーを構え直す。それに答えるかのように彼女も構え直すと、彼女は真剣な表情になった。記憶が戻りかけているおかげか、彼女の戦闘スタイルが段々と分かって来た。シリンダーに魔弾を装填しハンマーを引く。魔弾を何発放つか考えつつも、彼女からの攻撃に備えた。一撃一撃が重いため、全部の攻撃を防いでも私の体力が削られているのには変わりない。まずは息を整え、この戦闘の勝利条件を考える。


(彼女は、私の記憶を取り戻すと言う理由のために攻撃をしている。それも、全ての攻撃はロストメモリーに集中している。まるで、ロストメモリーを壊そうとしているみた――ん?)


 そこで、何か違和感に気が付いた。何故、彼女はロストメモリーだけを集中して狙うのだろうか。まるで武器破壊を目的に攻撃しているように見える。でも、それだけではないような気もする。もう少し様子を見るべきだと判断し、彼女の攻撃を全て防ぐことにした。体への負担を最小限に抑えるためにも、時には私から攻めることを忘れずに戦う。これで良いはずである。


「そう、それで良いわ。今の貴方にできることを、必死にやりなさい。フフフ。それにしても、その目つき、本当に懐かしいわ。ようやく、昔のように楽しめるわね。ぁ、まだ思い出せていなかったわね。フフフ、そうね。今の貴方なら、すぐに思い出すわよ。きっとね」


 彼女は嬉しそうに笑うと後方へ下がり、もう一度武器を構え直した。彼女は攻撃のパターンは大体ではあるが分かってきた。でも、それに対応するほどの速さを持ち合わせていない。だからこそ、防御の姿勢と攻めの姿勢を交互に、タイミングよく行なわなければならない。タイミングが少しでもズレれば攻撃は当たらず、彼女の怒涛の攻撃を防ぎ続けることになり、無駄な疲労ダメージを受け続けることになる。それも、彼女の攻撃の重みをこれ以上受けると、私の疲労がすぐに限界に達してしまうかもしれない。だからこそ、彼女の攻撃の一瞬を見極めなくてはならない。


「さて、休憩はこの辺にして、そろそろ続きを始めましょうか」


 その言葉を告げると、彼女は手に握るガンブレードを私に向けると引き金を二回引いた。ただ、先ほどまで聞いていた引き金の音の中でも、かなり重い重音がここら一体に響き渡る。ただ『引き金を引いた』だけだと言うのに、彼女の体からは灰色のオーラを纏わせる。オーラのせいではないと思うのだが、急に空気が重くなったような気がした。でも、恐怖と言うものはなかった。怖いと言うよりも、懐かしいような気持に駆られていた。


「乱絶化。これは、カウントダウンの上位版の技よ。貴方が師匠に教わった技の一つであり、最も得意とする技の一つよ。どう、思い出したかしら? まだ思い出せていないのなら、もう少し戦う必要があるけど」


「そう、ね。確かに、まだ思い出せていないけど――」


 私は彼女の元へと走り出す。一方的ではあったが、なんだか彼女とこうして戦っているのが楽しいと言うか、凄く懐かしくて楽しくて、とても嬉しい気持ちなのだ。だから、いつの間にか手に握っているロストメモリーに力が入り、引き金を二度引いた。火属性と風属性の弾丸を発動させ、二属性の複合技を放つ準備を整えた。真紅のように紅く燃える炎を刀身に纏わせ、それ以上炎が広がらないように緑色の風が刀身と炎を包む。その状態で、ロストメモリーを彼女へと斬り上げる。だが、彼女は容易に私の斬撃を手に握っていたガンブレードで受け止めた。この技は、リューちゃんから教わった技の一つ『風炎斬』である。この技は『斬り上げる』と『斬り下ろす』によって技に違いがある。斬り下ろす方では、火炎の刃を相手へと放つことができる。だが、連続攻撃にはあまり向かない。だが、斬り上げる方は違い『火炎を剣に纏わせ続ける』ことが出来るのだ。そして、この技の一番の利点は――


「爆破!!」


 私の声に合わせ、刀身に纏わせていた炎が爆発した。爆発の衝撃で彼女は吹き飛ぶが、私にはかすり傷一つない状態でその場で立っている。これは爆発の衝撃を彼女に与えると同時に、私には炎を包んでいた風魔法による『風の盾』を体に纏わせる。これが斬り上げによる風炎斬の利点である。だが、彼女は怪我一つなく、嬉しそうに笑いながら引き金を四回も引いた。


「なるほどね。流石に、この技を使ってくると思っていなかったわ。見た目は『包炎斬』に見えたけど、まさかの『風炎斬』の方だったとはね。フフフ、楽しくなって来たじゃない。それでこそ、貴方よ。さぁ、どんどん打ち込んできなさい」


 私もすぐに五回ほど引き金を引き次の攻撃に備える。あの攻撃を受けても無傷なのに驚きはしたが、徐々に忘れていた記憶を思い出してきた。そのおかげか、この武器の正しい使い方が頭の中に映像として移りだされる。それも、彼女が今使った『乱絶化』のやり方が頭の中に流れているのだ。だが、先ほどから『まだやらない方が良いわ』と声の主が告げているのだ。


「ふぅん。やっぱり、貴方が手助けしているのね。ミント、私たちは三人で一人の人格。あの日から、私たちはこの世界でミーアだけを見守る存在になった。私はミーアをずっと見守って来たけど、貴方はずっとミーアの中で眠っていたはずよ。その貴方が、今さら何をしようとしているのかしら。折角、彼女の記憶を取り戻そうとしているのに、邪魔をしているように見えるのだけど」


 どうやら彼女にも声が聞こえているらしい。だが、ミントとは一体誰なのだろうか。彼女は確か『三人で一人の人格』と言っていた。それに彼女は私に向けて言うのだが、何故私に向けて言うのか気になったのだが、すぐにその理由が判明した。


「あら、何か勘違いしているようね。これでも、私は貴方のお手伝いをしているのよ。それに、私はミーアの心を守るために、ずっと彼女の中にいた。貴方は外部から、私は内部から彼女の記憶を取り戻すきっかけを与える。そして、完全に記憶が戻ったとき私は彼女と一つに戻る。それが私の選んだ選択よ、アルテシア」


 私の意識とは関係なく勝手に口が動いた。一体何が起こっているのか戸惑う私に対して、アルテシアと呼ばれた彼女は眉間に皺を寄せながら私の事を見ていた。今気が付いたことなのだが、体が動かないのだ。声も出ないし、体も動かないってどう言う事なのだろうか。本当に訳の分からない状況が続いて気が滅入ってしまう。だが、そんな私の気持ちなど無視するかのように、私の体を操ているであろう声の主がアルテシアに語り掛ける。


「それに、貴方も本当はミーアの中で眠っていたじゃない? 元々は貴方も私も、ミーアの一部だったはずなのに、ミーアの体から離れて今は貴方は外にいる。そんな貴方が、こうして表舞台に立っていられるのも、ミーアが力を取り戻していると言う証拠。それに、私がミーアの記憶を思い出せるように、必死に記憶の欠片を繋げ合わせているおかげで、貴方は表舞台に立っていられるのよ? 逆に感謝してほしいくらいよ」


「そうね。貴方の言う通りよ、ミント。そして、サラリと私の名前も明かすなんて、相変わらず変わっていないわね。まぁ、良いわ。ミーアの体を借りて喋れるようになったと言うことは、そろそろと言う事ね」


「えぇ、その通りよ。彼女の記憶の扉にかけていた錠前は、今完全に解かれたわ。後は、貴方の手にある記憶をミーアに返せばすべてが終わるわ。私が所持していた記憶の欠片も、ちゃんと元に戻し終えた。これで、ようやく私は一つに戻れるわ。本当に、この日が迎えられて嬉しいわ。あら、私もそろそろ限界のようね。長話しをしちゃったけど、ミーアと話せないのが残念だわ。でも、また夢で逢えるから良いかな。ふふ、じゃあ後は任せたわよ――アルテシア」


 そう告げると、私の体はようやく自由になった。だが、それと同時に忘れていた事を思い出した。それはとても衝撃なことであり、それが真実だとは信じられなかった。何故なら、私がイスズ様と同じ存在だったのだ。つまり、私が『旅人』と呼ばれる存在だったと言う事だ。正確に言えば、私が三百年前にこの世界を無月隊長とあの『化け物』と戦っていた事を思い出した。


「えぇ、さようなら――。そして、ようやく思い出したのね。長い長い年月を経て、貴方はずっと眠っていた。貴方が完全に目覚めたのなら、もうすぐと言うところかしら。私としての時間も残り僅かね。後は、私の持つ最後の欠片を貴方に返せば終わりよ。でも、この記憶は今のままじゃ返せない。分かるわよね、貴方なら」


 アルテシアはシリンダーへ向けて魔力を注ぐと、さらに引き金を何回も引いた。凄まじい爆発音とともに、私の記憶もその衝撃で呼び起こされていく。先ほどまで私の身体を乗っ取っていた人の声も聞こえなくなり、どうやら完全に私と同化したようだ。そのおかげで全てとは言わないが、私の中にある数多くの疑問が少しずつ解けてきた。この世界に舞い降りたことや、あの時の戦いの事も思い出せた。だが、ある一つの記憶だけが思い出せない。


「まだ完全に戻っていないと言うのに、記憶の整理する速さが異常ね。魔術師だからと言うのもありそうだけど――いえ、そう言えば『記憶』だけの整理なら貴方が一番だったわね」


「えぇ、そうね。まったく、私が眠っている間に『貴方たち』が私を構成している記憶を解体するなんて。そんな暴挙をするとは思ってもいなかったわよ。はぁ、でも感謝するわ。私が三百年もの間、あの『ダンジョン』で眠っていたのに彼らが見つけてくれた。そして、娘として私を育ててくれた。彼らには感謝してもしたりないわ」


 私の断片である『アルテシア』へと向けて、微笑みながら笑う。そんな私の姿を見て、彼女はとても嬉しそうにガンブレードを構え直した。今さら気が付いたのだが、彼女の手に握られているガンブレードの刀身が黄金色に輝いていた。どうやら、アルテシアが先ほど何発も引き金を引いたことで、魔法弾が上手い具合に混ざり合い黄金色に輝いているようだ。これはアルテシアにしかできない事で、幾多の属性を操りつつも、お互いの良いところを残した状態で混ざり合わせる。それが当時の私もとい、アルテシアの強みである。


「あら、もう戻ったの?」


「えぇ、完全ではないけどね。さてと、では始めましょうか。さっさとこの場所からおさらばして、一刀の――今は五十鈴だったわね。彼の元に戻らなきゃ。まずは、大好きのハグから五十鈴の匂いを嗅ぎながら幸せを噛みしめなきゃね」


「そうね。今思えば、内気で寂しがりだった貴方が、今じゃ五十鈴の妻になった。それに、気が付けば内気だった性格も治っているし。記憶を失って良かったのかもしれないわね。まぁ、私たちが記憶を解体したのがいけないのだけどね。さてと、一様忠告はしておくわよ。今はミーアとして五十鈴のそばにいないといけないわ。お嬢様は気が付いていると思うけど、まだ五十鈴は気が付いていないはずよ。この世界の狂い神を倒すためにも、今はまだ狂い神に認識されるわけにはいかないわ。だから、ばれないようにね?」


「えぇ、分かっているわ。さてと、そろそろ始めないと時間がないんでしょ?」


 アルテシアは「その通りね」と言うと、ガンブレードを構え直しゆっくりと目を瞑る。そして、深く深呼吸をすると、ゆっくりと目を開いた。どうやら、もう手加減はしないようだ。彼女の体を覆っていた灰色のオーラがより濃くなっている。どうやら本気になったようだ。私もそれに答えるようにロストメモリーを構え直し、シリンダーに別の魔弾を装填する。これから始まるのは、始祖様との契約を思い出すための模擬戦。記憶が戻ったら、五十鈴はどんな顔をするのだろうかと思うと、つい笑みが零れてしまう。でも、その前に私がやらなければならない事を終わらせなければならない。


「さぁ、覚悟は出来ているわよね。ミーア」


「えぇ、出来ているわ。アルテシア」


 そして、私たちの本当の意味での戦いは始まりを告げた。

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