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断罪の旅人  作者: 玖月 瑠羽
一章 シャトゥルートゥ集落
14/90

13話 真実

どうも、なんとか書き上げましたw

次話の展開を考えつつ、頑張るかな(汗


2016年6月14日(火):誤字があったため修正(【年齢】が二つ入っていたので、一つ消しました)

 旅館の一室である『常闇の間』に、少年たちを寝かせながら今後の事を考えていた。部屋の作りとしては、俺が寝ていた部屋と同じ作りである。まぁ、隣の部屋なので何かあればすぐにでも駆けつけることができる。さて、今この部屋にいるのは二人の患者を除いて、俺とボルトにティエさん、それにミーアとホムホムの計五人である。今は患者である二人を囲むように座っており、ボルト側にジュデッカ君を、俺側には名の知らぬ少女を寝かしている。俺の隣にいるミーアは、何をするわけでもなくジッと少女を見つめており、ボルトの右隣にいるホムホムは、先ほどから魘されているジュデッカ君のおでこへと濡れタオルを乗せている。濡れタオルを取り替えた回数は四回目であるが、何か毒でも飲まされているのか、一向に目が覚める気配はない。そして、ボルトの左隣にいるティエさんは、先ほどからステータス画面を確認している。そう言えば、この世界のステータスについて説明を受けたことを思い出し、俺もステータス画面を開くことにした。この世界でのステータス画面を開くには、心の中で「オープン」と唱えるだけで簡単に開けるらしい。そして、このステータス画面は誰も見ることができないらしい。一応のぞき見することのできるスキルがあるらしいが、レベル差によって見ることができないらしい。


【Name】イスズ・ミココロ

【年 齢】15歳

【性 別】男性

【種 族】現人神

【職 業】闘拳士

【レベル】???

【H P】???

【M P】???

【称 号】断罪の旅人

【履 歴】道具のダンジョン300年 制覇

     シャトゥルートゥ集落 再建担当者


 他に体力なども確認したかったのだが、どうやらこれ以外には出てこないようだ。装備品についても書かれていないようなので、これ以上は何もないだろうと結論づけた。それにしても称号に「断罪の旅人」と出るあたり、この世界の神は俺に喧嘩を売っているようだ。今度、神界にお忍び旅行がてら説教をする必要があるらしい。第一、断罪の旅人とは俺の通り名であって、間違っても称号ではない。何を血迷って称号に書いたのか、問い詰めても良いはずだ。だが、そんな事をしたからと言って、称号が消えるとは思えないので諦めることにした。


「はぁ、ほっとこ」


 心の中で「クローズ」と呟き、ステータス画面を閉じてから竜仙のことを思い出す。本来ならすぐにでもこの場所に来るはずだったのだが、どうも話し合いが長引いているようで「もう少しで話し合いが終わる」と部下から報告を受けている。どうも、ギルド施設の配置箇所などで話がもめているらしい。なんでも当初ギルド施設を建設する場所なのだが、日差しの関係上どうしても立てるわけには行かないらし。一日中ずっと日陰に覆われている墓地など、恐ろしいとしか言い様がない。なので、ギルド施設の建設場所をちゃんと話し合う必要があり、現時刻まで長引いいているわけだ。まぁ、もうそろそろ夕方になるので、奴隷達にもご飯の配給などをしなければならない。


「それにしても、本当に彼が盗賊なのでしょうかねぇ。こんなにもまだ若いのに、盗賊なのか疑問だ」


 ボルトはジッとジュデッカ君を見つめていた。傷口が完全に言えているとは言え、精神面でのダメージを考えれば、今は絶対安静にしておかなければならない。だが、ホムホムから「ドラゴンの巣にて卵を割ったのが彼だ」と聞き、この集落に起きた惨劇に関与している事は確実だ。なので、ジュデッカ君の目が覚めたら話を聞かなければならない。


「さぁ、俺には解からない。ただ、今は情報が必要だ。彼が目を覚まさない限り、真相にはたどり着けない。それに、ジュデッカ君の隣で眠っている彼女の情報も必要だ」


「確かに、御館様の言う通りですわな。今はシータ様とベラーダが、元の世界に戻って資料作成をしていますし、ホムホムの回復魔法で怪我は治っても目が覚める気配がない。もう時間からして夕方になりますが、このまま彼らを此処に置いて食べに行くわけにも行かないですし。取り敢えず、夕食はここで頂くとしましょう」


「私もイスズ様に賛成です。イスズ様、私に何か出来ることがありましたら、いつでもご命令を」


 何故か、ダンジョンを出てミーアと話を終えてから、俺のことを様付けで呼ぶようになった。俺としては「さん」付けの方が良いのだが、様付けで定着してしまっていた。もう諦めたと言えば良いのだろうか、もうティエさんが呼びやすいように呼んでもらう事にした。これ以上、俺が何を言っても聞かなそうだし、何故か俺に対して憧れの目で見ているのだ。そんな相手に何を言っても意味がない。

 さて、ボルトはその場で立ち上がると、壁に取り付けられているボタンを押した。これは、呼び出しボタンと言い、フロントにいる業務員を呼び出す物である。このボタンを押せば、フロントに備え付けられている『客室番号表』のランプが点灯するのだ。まぁ、分かりやすく言えば、病院のナースコールみたいな物だと思ってもらえれば良い。さて、ボルトが呼び出しボタンを押したので、しばらくすれば従業員が来るだろう。ボルトが席に戻ってから、三人に対して今後の事について話しかけることにした。


「ミーアとティエ、ホムホム。話したいことがある、聞いてくれるな」


「イスズ様? なんでしょうか」


「パパが読んでいた手紙が関係しているホム?」


 三人とも俺の方へと体の向きを変えた。何を話すのか興味があるらしく、微笑みながらジッと俺の言葉を待つ姿っていた。なので、俺はこの集落を四年ほど待機しないといけない事を説明する。また、四年間の間はミーアたちの指導を行なうことや、最後の卒業試験として『試練のダンジョン』を作り、それに挑戦してもらうことを説明した。最初は驚いていたが、最後まで話を聞き納得したのか黙って頷いた。俺は全てを伝え終えると、当然だが質問が来た。質問の内容はダンジョンについての質問が多かった。だが、まだ作成もしていなかったので、詳しくい説明を行なうことはできないと伝えた。

 さて、あらかた質問に答え終えると、どこからか視線を感じ取った。それは、頭上からこの部屋を監視しているような感じなのだが、何故かジッと俺だけを見つめているような気がした。誰が俺を観ているのか分かっているため、何も言わずにその場で指を鳴らした。すると、ガラスがひび割れるような音が聞こえるとともに、何やら楽しそうな笑い声がこの室内に響き渡る。いきなりの現象にミーアたちは驚き、ボルトは「またか」と呆れ口調で溜息を吐きつつ、先ほどまで座っていた席に戻った。


「どうせ、見ているのだろ。いい加減出てこいよ、嬢ちゃん」


「あらあら、ダーリンにはバレバレのようね。良いわ、貴方たちの前に姿を見せるとしましょう」


 背後から抱きつかれたような感触があるのだが、振り返るのも面倒なのでこのまま話しかけようとした。だが、嬢ちゃんは嬉しそうに微笑む声が耳元に囁くように聞こえ、一瞬だが鳥肌が立った。昔、甘い誘惑に誘われて子どもが一人できてしまったが、嬢ちゃんにどことなく顔立ちが似ており、目元は俺そっくりで――と、いかんいかん。これ以上語るべきではない。さて、そんな嬢ちゃんが首筋を舐めてきた。


「ふふふ。ダーリンの味、久しぶりだわ」


「嬢ちゃん、俺の首筋を舐めに来たわけじゃないだろう。何しに来たんだ」


「あら? これも、私の愛情表現の一つよ? そのついでに、その子に用があっただけよ」


嬢ちゃんは右人差し指を眠っている少女へと指さすと、俺の耳を甘噛みして来た。人前でやるべき行動ではないのだが、それに便乗してかミーアが俺の手を握りながら頬を膨らませていた。この状況を見てボルトが苦笑している中、ようやく嬢ちゃんの口が離れるとようやく話を始める気になったようで、寝ている少女に向けて話しかける。


「いつまで寝ているフリをしているのかしら? 私とダーリン、それにボルトは、貴方が寝たフリをしている事くらい分かっているわよ」


「――――」


「そう。貴方がそのつもりなら、そこの少年の命を頂くだけよ」


 そう言うと、先ほどまで背中に抱きついていた嬢ちゃんが少年の前に突如現れ、右手に持っている五寸釘をジュデッカの心臓へと向けた。左手にはオルハリコン製のトンカチを持っており、今にも心臓を打ち抜こうとトンカチを振り上げると、ようやく観念したのか少女は目を開くと嬢ちゃんを睨みつけながらため息を吐いた。


「――っ!? はぁ、仕方がないわね」


「あら、目が覚めたのね? おはよう」


「寝たふりに気づいていたくせに、よく言うわね」


 苦虫を噛み潰すかのような表情をしてから体を起こすと、俺へと顔を向けながら微笑みながら頭を下げた。


「貴方が旅人ね。そこにいる青年、私たちの命を救ってくれてありがとう。この対価は必ず支払うから安心して良いわ。私の名前は『キャティ・ランド・ファルティシア』よ。義盗賊『アルテシア』のお頭『アラド・ランド・ファルティシア』の娘よ。私のことはキャティと呼んでくれて構わないわ」


「キャティさんだな。俺の名は御心 五十鈴だ。五十鈴と呼んでくれ」


 俺の自己紹介を終えてから、嬢ちゃん以外が自己紹介を始める。その光景を見つめていると、先ほどまでボルト側に居たはずの嬢ちゃんの姿が消えていることに気がついた。まぁ、嬢ちゃんのことは大体理解しているので、ミーアの方へと顔を向けるとミーアの隣に座っていた。取り敢えず、何かするわけでもなさそうなのでキャティさんについて聞くことにした。


「キャティさん。先ほど言っていた、義盗賊とはどう言ったモノなのでしょうか? それと、この集落が何故ドラゴンたちに襲われることになったのか。ちゃんと説明をしてもらいたい。そして――まぁ、分かっているだろ」


「えぇ、これのことでしょ」


 キャティさんは右手を俺の方へと向けると、何もないところから銀色の正方形の欠片を出現させた。その欠片には何かの絵が掘られており、それが絵の一部であることは見ればすぐに解かる。その欠片を俺に見せながら、キャティさんは話し始めた。


「これは、三ヶ月前にある少女から貰ったものよ。この欠片を手にしてから、私の人生が変わってしまったわ。お父様が率いるアルテシアは、人の命は決して奪わない。奪うのは真実だけ。裏組織と繋がっている貴族に対する証拠品を回収し、国王に渡すのが私たちの仕事なの。でも、この欠片を貰った時から、少しずつお父様がおかしくなっていた。そして、私とジュデッカ君は逃げ出したの。もう義盗賊ではない、盗賊団に成り下がってしまったわ。だから、私たちは逃げてきたの。そして、この集落へと来たの」


 キャティさんの真剣な表情で語るのを聞き、俺は嘘をついていないのか探ってみたのだが、どうやら嘘は一言もついていないようだ。だが、何かを隠していることは明白だった。何故なら、ある一点を話した瞬間だが左眉が少し上がったのだ。その一点とは「奪う」だ。


「なるほどな。で、本当は何があった」


「本当にあったこと? なんのことかしら、さっきのが全てよ」


 本当に分かりやすい子である。キャティさんが『全て』と言う単語を言った瞬間、また左眉が少し上がったのだ。可愛らしいと言うか、分かりやすいと言うか。まぁ、キャティさん自身が気づいていないのなら仕方がない。ここはあえて踏み込んで行くべきだろう。真実を知るために、俺はキャティさんを睨みつけながら言い放つ。


「君は嘘をつくのが下手だな。君自身が気づいていないようだから、あえて教えてあげよう。君は『奪う』と発した瞬間、左眉が上がるのだ」


「な、なんのことよ!! 左眉が上がるからって、嘘をついているとは限らないわ!! 第一、私が嘘をついて何の得があるというの!! 私は、本当のことしか言っていないわ」


 どうやら、まだ本当のことを話さないようだ。だから、俺はキャティさんに対して説明することにした。種族関係なく、誰もが嘘や隠し事をすると出る『癖』と言うものを説明する。


「種族関係なく、嘘や隠し事をするときに必ず癖と言うものが現れる。君は、先ほど『嘘をついていない』と言ったな。だが、君は『嘘をついていない』と言って、また左眉が上がった。何故だと思う? 答えは簡単だ。君は嘘をつく度に、忘れたいことを思い出してしまい、それを隠そうとしたが顔に出てしまったのだろう。つまり、先ほど『奪う』と言う言葉に、何か嫌な記憶があると言うことだ。ここからは予想だが、君の父がおかしくなった事で何かを奪ってしまったのではないだろうか。その結果が、この集落を滅ぼした事と関係している」


「――、ハァ。えぇ、その通りよ。イスズさんの言う通り、お父様は決して侵してはならない罪を犯したわ。部下であり、妻である私のお母様を、その手で殺したのよ。あの時から、一気に変わってしまったわ。それに、シャトゥルートゥ集落が襲われたのは、ジュデッカ君にやらせた事が原因よ。彼は、お父様を信じていた。だって、命を救ってくれた恩人だからね。でも、お母様を殺すのを見て、お父様がおかしくなっていることに彼も気がついた。その一つに、ドラゴンの卵を壊す事も含まれていました。それを知った彼は、ドラゴンの卵を守る為に避難させたの。だけど、失敗してしまったのよ」


 俯きながら語るキャティさんに、嘘を言っているようには感じ取れなかった。顔を俯いたとしても、生き物の体は面白いものである。嘘を付けば、それに応じて何かしらの反応が出てしまう。だから、キャティさんが嘘を付けばすぐに解かる。嘘や隠し事は何一つしていないようなので、ホムホムが俺を見つめているのを確認し、黙って頷くとホムホムはキャティさんに対して伝えた。


「うん、それは知っているよ。僕がちゃんと皆に話したからね。でも、何故この集落を滅ぼす必要があったのか、是非とも教えてくれないかな? 何か、理由があるのでしょ」


「えぇ、理由はあるわ。元々、シャトゥルートゥ集落は鉱石の輸出を行なっているの。特に良質な鉄鉱石の約七割をバルト王国に輸出しているの。つまり、シャトゥルートゥ集落を滅ぼせば、王国が傾くでしょ。それが狙いだったみたい。それに――」


 最後の言葉だけ何故か口篭っていた。何か言いたくはない事でもあるかのように、なんと言うのか『本当に分かりやすい子』だなと思ってしまった。まぁ、何を言ったのかは大体予想がつく。


「それに、戦争を起こさせようとしている。だろうか」


「!?」


 驚きのあまり顔を上げ、俺の方へと顔を向けた。どうやら当たったようだが、大体こう言ったのは予想がつく。他国が仕掛けたと言う偽装をし、わざと戦争を起こらせる。それが、キャティさんのお父さんが起こそうとしていることだろう。だが、現在の集落を見れば解かる通り、もう八割は復興――いや、開拓したとでも言うべきだろうか。まぁ、以前の集落の二倍は復興した。防衛レベルも「俺ら水準」で言えば『低レベル』程は出来た。ただ、この世界で言えば『上レベル?』と言うべきだろうか。そのくらいのレベルが出来上がっている。


「さて、それで俺たちに何をして欲しいんだ。そのために、この集落に来たのだろ?」


「――欲しいの」


 キャティさんは俺の顔を見て、何かを伝えようとした。だが、己のプライドのせいなのか最初の言葉が聞き取れなかった。いや、この場合は言葉に出すことができなかったと言うべきだろうか。プライドがあることは別に構わないのだが、こう言った重要なところで言えないのはどうしたものかと。


「で? 何が欲しいのかな」


「――けて、欲しいの」


 なんと言っているの分かっているのだが、あえてもう一度問いただす事にした。今は、プライドなど必要ない。キャティさんが望む事を、今その口で俺たちに伝えれば良いのだ。ここにいるボルトと俺がいれば、十分あれば救出だろうが討伐だろうが、なんでも出来るのだ。今、この部屋の外にシータとベラーダが、廊下の方には竜仙の気配があった。


『旦那。ご命令があれば、いつでも出られるぜ』


『創造主。いつでも良いですよ』


『御館様ぁ。いつでも、出られるんですよぉ』


 脳内に聞こえた彼らの声に、どう反応すれば良いのか困ってしまった。そんな中、ボルトはキャティさんへと強めの口調で言う。


「で、何をして欲しいのか。ちゃんと、その口で説明しろ。内容次第では、助けてやっても構わないんだからよ」


「っ!? 助けて、欲しいのよ!! お父様に捕まっている彼女たちを」


「それは、どう言うことなのか。御館様にも分かりやすく説明しろ」


 いつの間にかボルトがしきっている。いや、ここはボルトに任せた方が、話がスムーズに進むだろう。ならば、俺が仕切る必要は全くない。詳しい内容が聞けるだけではなく、楽ができて一石二鳥である。隊長としてはどうなのか疑問にはなるが、ここはあえて何も言わないことにしよう。


「私が彼を連れて逃げる時に、女性冒険者やどこかの集落の女性や子どもたちが牢屋の中に入れられているのを見たわ。あのままだと、奴隷として売り飛ばされるか愛玩用にされるか解からない。同じ女性として、彼女たちを助けたい。でも、今の私にはその力はない。だから、この欠片をあげる代わりに、彼女たちを助けて」


 真剣な表情で俺を見つめるキャティさんに、嘘を言っている気配が全くなかった。どうやら、これがキャティさんの本音なのようだ。ならば、それに応えるのが俺の使命だろう。部下たちはいつでも行動可能らしいし、後は俺の一言ですべてが始まるわけだ。


「盗賊弾のアジトのある場所は、どこにある」


「このコラライ山脈の下にあるシャララ森林のところに、元ダンジョンだった洞窟があるけれど、そこにアジトを構えているのよ」


 キャティさんからの情報には嘘がないようで、その目は救いを求めている目だと解かった。まぁ、目を見れば嘘をついているかどうかはすぐに解かる。だが、最後に念の為に確認しなくてはならないことがある。


「最後に、君の部下を俺たちは殺すことになるかもしれない。そして、君の父親も同様だ。それでも、良いのだな」


「――えぇ、構わないわ。お母様を殺してから、お父様は変わられてしまった。それに、私たちを守る為に、当時のお母様の部下やお父様についていた部下が守ってくれました。でも、彼らはお父様の新しい部下たちに殺されてしまった。もう、あの人はお父様ではないわ。皆の無念を晴らすためにも、どうか、お願い致します」


 決心がついたらしく、真っ直ぐな目で俺を見つめている。後悔などもうないのだろう。ならば、俺もキャティさんの願いに答えるのみだ。外と廊下にいる二竜皇へと向けて、俺は命令を下すために叫ぶ。


「聞いたな!! 竜仙、シータ」


 いきなり叫んだことにボルトと嬢ちゃん以外が驚くのだが、そんな事を気にしている暇などない。キャティさんとの交渉は成立したわけだ。ならば、これ以上時間をかける必要など無い。救うべき命を守る為に、やるべきことを全て行うまでだ。


「旦那、いつでも行けるぜ」


「創造主、何なりとご命令を」


 外と廊下から聞こえる二人の声のせいで皆が驚くのだが、そんな事を気にする必要はない。今は時間厳守である。ならば、すぐにでも行動するべきだ。


「竜仙は集落にいるゴブリンどもを集め、シータはゲートを開く準備をしろ!!」


「「御意」」


 その言葉を最後に、竜仙たちの気配が消えた。どうやら、作業に入ったようだ。ならば、次に出す命令は決まっている。ただ、このコンビに任せて本当に問題は無いのかが疑問である。だが、ここはあえて我慢し、このコンビに任せるべきだろう。


「ボルト、ベラーダ!!」


「「ッハ!! 御館様、ご命令を」」


「ボルト、お前は盗賊団アジトを壊滅させろ。ベラーダは、救出した者たちの回収だ」


「「御意」」


 命令を受け、ボルトは指を鳴らす。すると、ボルトはこの場所から一瞬にして消えた。もう驚くのにも疲れたようで、ただ呆然としている皆に対し嬢ちゃんは嬉しそうに笑いながら語り始める。


「さぁ、貴方の願いは成就する。でも、貴方たちを守った部下たちが生きている可能性があるわ。間違えて襲われることも踏まえて、貴方の部下の名前を全てダーリンに伝えておきなさい。あと、報酬としてはその欠片をダーリンに渡してくれれば良いわ。さてと、私ももう一つの仕事を終わらせてから帰らせてもらうわね。ティエさん、ミーアちゃん、貴方たちに伝えておきたいことがあるの」


「「はい、なんですか」」


 なんと同じタイミングで返事するとは思わなかった。だが、先ほどの件もあり警戒をしているミーアを見て楽しそうに微笑む嬢ちゃん。そんな姿を見て、何を企んでいるのか解らないが警戒しなければならない気がした。何か俺の人生に関わるような重要な何かが起こりそうな予感がするのだ。そんな中、嬢ちゃんは嬉しそうに微笑みながら、衝撃的な一言を告げた。


「二人とも、五十鈴の妻になる気はないかしら?」


 ここでする話じゃないと思うのだが、やはりその言葉が飛んできた。先ほどの緊張感が、一瞬にして消えたような気がする。まぁ、その話は置いておくとしてだ。今思えば、嬢ちゃんが妻になってから、二人目から十一人目までのスパンがかなり短かった気がする。そう考えると、嬢ちゃんの行動力には恐れ入ってしまう。


「いや、嬢ちゃん。何を言っているんだ? もう、これ以上増やす必要がない気がするのだが」


「何を言っているのかしら? 貴方の場合、最低でも十五人は妻が必要なのよ? それにライラから、ミーアちゃんやティエちゃんのことを聞いてね。さっきまで二人のことを見ていたのよ。私としては二人が望むのなら、是非とも十二人目と十三人目として迎え入れたいと思っているわ」


「はぁ、なるほど。俺の心配をしてくれるのは嬉しいが、皆が納得しているのなら別に構わない。ほら、増えすぎた妻たちが嫉妬で殺し合いを始めるとか、同僚の旅人が言っていたからさ。その心配を危惧していたわけであって」


「ふふふ、あれは嘘よ。第一、旅人の妻になった時点で、それくらいの覚悟を持たなくてはならない。それに、私と同様に皆が旅人のことを理解しているわ。それに、ダーリンのような存在を増やす事も考えると、致し方なしってところね。それに皆、貴方が選んだ人なら構わないとか言っているし、問題はないわよ。取り敢えず、急ぎじゃないから考えておいてね。私としては、ライラからの推薦だったし、皆も気に入ってくれたから、いつでもウェルカムよ」


 嬉しそうに笑う嬢ちゃんを見ながら、ミーアとティエさんを見つめると何故か頬を赤く染めながら「ど、どうしようかなぁ」と呟いている。読心術を極めた俺に隙など存在しないが、俯かれた状態では効力を発揮しない。まぁ、そんな事は置いといてだ。なんだか、頬を赤く染めながら考えている二人を見て、嬢ちゃんは微笑みながら立ち上がり最後に一言を言ってから指を鳴らした。


「必ず、会いに行くわ。じゃ、私は高みの見物をしているかしらね。じゃね、ダーリン」


 そう言うと、嬢ちゃんは何事もなかったかのように、指を鳴らしてその場から消えた。いや、これは『この世界から退場した』と言った方がしっくりくるだろう。だが、今『高みの見物』と言ったように聞こえたが、気のせいだったのだろうか。いや、気のせいにしておきたい。


「まぁ、嬢ちゃんの件については、また後日としてだ。取り敢えず、嬢ちゃんが言っていた通り、君の部下についての情報が欲しい。俺の部下は優秀だから、生け捕りにしてくるだろう。だから、安心してくれて構わない」


「…………。分かったわ」


 目の前で殺された仲間の名前を聞くわけで、仲間のことを思い出す度に救えなかったことへの罪悪感に心が潰れそうになっているのだろうか。とても悲しそうで、それでいて苦しそうな表情をしているキャティさんを見て、何かを言うわけでもなく立ち上がる。これから忙しくなるのだ。キャティさんの願いである『盗賊団に囚われた者たちの救出』と、これは個人的なことだが『情報収集』も含めて、今回の仕事をやってもらう必要がある。


(ボルトには、頑張ってもらわなきゃな。ゴブリン集団が遅いに来れば、証拠隠滅を図る可能性はほぼゼロに等しい。さて、どんな情報が出てくるのか。この集落に関する情報なら、何が何でも欲しいところだ)


 久しぶりにやる気が出てきたのだが、ボルトの部隊が今回の討伐部隊として出ることに若干ではあるが不安がある。なんせ、ボルトの部隊は「解体屋」が集結して作られた部隊だ。つまり、職業病で壁やドアなどを破壊して行き、俺の欲しい情報ごと抹消しないかが心配なのだ。取り敢えず、ボルトに任せて問題はないだろうと思いつつ、今回の獲物である盗賊団に対して哀れみを感じてしまった。この世界でのゴブリンがどの地位にいるのか疑問だが、俺の部下が育てたゴブリンの方が強いだろう。その中でも『別格』がいるのだが、羽目をはずさなければ問題はないだろう。その別格を育てた俺が言うのもなんだが、あの子のことだから盗賊団を『生け捕り』にして来るだろう。間違えてもボロ雑巾の再起不能まで追い込むような馬鹿なことはしないはずだ。


「はぁ、何事もなく終われば良いのだが」


 部屋の出入り口前まで歩きながら呟き、玄関の扉へと手をかけたところでキャティさんに言うべきことがあった事を思い出した。これは、ちゃんと伝えておかなくてはならない。なので、キャティさんのいる方向へと体の向きを変えて言う。


「ようこそ、シャトゥルートゥ集落へ。キャティさん、そこで眠っているジュデッカ君。君たちを歓迎しよう」


 その言葉を伝え終えてから、ホムホムたちにキャティさんたちの監視を頼み、部下たちの待つ広場へと向けて歩き始める。これから起こる出来事は、あまりミーアたちには見せたくないのだ。これから始める盗賊団アジトへの襲撃は、間違いなく一方的な戦いになる。はたから見れば『弱いものイジメ』であり、この世界で言うなれば『一方的な虐殺』である。


「さぁて、これからが大変そうだな。副隊長からは『狂い神の件は一時中断』と言っていたが、今回は問題ないだろう」


 そんなことを呟きながら、集落の広場へと向かうのだった。


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