56 棺桶
「村長さんの家のなかに、こんなに大きな部屋があったんだね。看病するにはちょうどいいね。うさぎさんと狼耳のお姉さんが、働いてくれているねー。偉いねー。うんうん。彼女たちがここにいてくれて、本当に助かったねー」
「おじいちゃん! 僕、回復スープ作ったよ!」
「おお! そうかい! ありがとう。じゃあ、さ、ベッドで寝てる3人に飲ませてみてくれないか? 意識を取り戻してくれればいいんだけどねー。こんなにボロボロにやられているんだけど、何があったかさっぱり分からないんだよね」
「うん! 任せてよ! じゃ、勇者のお兄ちゃんからね!」
「ゴクゴク・・・うーん! うーん! ぐぅーぐぅー」
「うーん、飲むには飲んだけど効果ないか。あっ、ちょっとHP見てみるよ! おお! 554まで回復しているよ! そっかー、効果はあったけど、ビカムは最大HPがすでに2億3000万まで伸びてるからねー! これくらいじゃダメだね!」
「お兄ちゃん起きないね。残念。じゃ、ま、そういうことで、次は犬耳のお姫様ね!」
「ゴクゴク、ペロペロ・・・・すーすーすー」
「お、かなり効果があったみたいだね! 寝息が健やかになっているね。君は、なかなか優秀なコックなんだね! 偉い、偉いよ! これで犬耳姫は、ゆっくり休めばなんとかなりそうだね!」
「へへへ! 僕、お姉ちゃんを守るコックだから頑張っているんだー!」
「うんうん。お姉ちゃん思いのいい子なんだね! じゃ、次は、吸血姫様に飲ませてあげて」
「うん!」
「ゴクゴク、ちゅーちゅー。・・・わ、妾を、英雄の、ほこらにある、か、棺桶に・・・」
「えっ! 吸血姫様を棺桶に、棺桶に入れればいいんですね? そういうことですよね?」
「そ、そうじゃ、は、早く・・・すーすーすー」
「分かりました! 少し待っていてください。今、持ってきます! ほら、バカ天使! 英雄のほこらにピューーーと行って、吸血姫様の棺桶を持って、さっさと戻って来い! 言われる前に行動するのが、部下の仕事だよ!!!」
「なんだすか、このじじいは! 生意気言ってるだすよ!」
「そうだよな! 自分で行って来いよな!」
「えっほ、えっほ! 神様ぁー! 英雄のほこらから、棺桶、持ってきましたよー!」
「おおおおお!!! 凄い! なんて偉いうさぎさんなんだ!! これだよねー。本当に、どっかのバカどもとは大違いだよな! 優秀なバニーたちがいたら、バカ天使たちは、もういらないね! 御払い箱だね!」
「なんかムカつくだす! いつか見てろだす!」
「そうだよな! 誰のおかげで、ここまで来れたと思ってんだよな!」
「あーーー。少なくてもお前らのおかげではないね! 自分勝手で邪魔しかしてないからさ・・・まっ、いいや。そんなことより、そーっと吸血姫様を棺桶に入れるよ。重症なんだから、ゆっくりと動かすんだよ!」
「これって、このまま、あの世行きなんじゃないだすか?」
「そうだよなー! 棺桶に入るのはあの世に行く時だよなー」
「うるさい! お前らみたいなアホには分からないんだよ! いいからさっさと寝かせるぞ! よしっ! これで蓋を閉めろ!」
「まあ、仕方ないから、やるだすけど!」
「そうだな、バカミサマの言う通りだからな! バタン! 閉めまし・・・」
「ガバッ!! よしっ、復活じゃ! ドカッ! バキッ!」
「痛たたたたた・・・。ゾンビだ、ババアゾンビにやられただす!」
「痛たたたたた・・・。お化け棺桶だ! こっちにも吸血お化けが出た!」
「・・・そこの、おんしら!! 妾が気を失っているときに好き勝手言って、やりたい放題してくれたのー。全部ネタは上がっているからのー。お礼に、いっぺん地獄を見せてやらないとな! 出でよ! け・・」
「ちょ、ちょっと待ったー!! 待ってください。吸血姫様!!! バカ天使はあとで煮るなり、焼くなり、お好きにして構いませんけど・・・今は、まずはビカムを助けないといけないんです!」
「おお、ゴミ虫か! そういえば、そうじゃったのー。それで、ビカム殿は無事なのか? どこにおるのじゃ!」
「ここ、ここです! 吸血姫様! ここで死んだように寝てて、HPがあと554しかないんです。どうすればいいんでしょう? それと何であんなことになったんですか? 何があったんですか? って、途中から聞いてねーし!!!」
「うん? そこにいるのはバカ犬か! こいつもやられたのー! フフッ。コイツは寝てる間に、駿河問いの刑にしてやるかの。クックック!! おっ、そうじゃ! 出でよ眷属! そこのバカ天使どもを駿河問いの刑にせよ!」
「えーーーーーーーーー! ぎゃーーーーー! やめてくれだす! それはないだす! なんでうちらに矛先が・・・死霊騎士が、スケルトンが、縛ってくるだす! 逃げられないだす! ぎゃーーーー!」
「そ、そんなーーー! ぎゃーーーーーーーー! なんで俺もなんだよ! 吸血姫様の悪口を言ったり、悪戯したのは、運んだバカサキエルだけだろ! 俺は関係ねーよ! 縛れらるーーー! ぎゃーーーー!」
「ふん! バカどもが! 妾が何も知らないとでも思っておったか! 愚か者どもめが! 眷属どもよ! 手加減は無用じゃ! とことんやってやるのじゃ! なんなら死んでも構わんぞ!」
「ぎゃーーーーーーーーーーー! 助けてくれだす! 許してくれだす! ほんの出来心だっただす! 回さないでくれだす!」
「ぎゃーーーーーーーーーーー! なんで俺まで! 俺は無実だ! とばっちりだよ! やめろーーー、血が、血が噴き出るー!」
「あーーぁ。あいつ吸血姫様を運ぶときに何かやったんだね! 駿河問いの刑にされてるよ! まあ、バカ天使は自業自得だし、仕方がないよね! でもさ、今はそんな場合じゃないんだけどなー。激怒した吸血姫様は止まらないよね!」
「「「ひぃーー。ひぃーー。吸血姫様、怖い、怖い! 食べられる!」」」
「なに、この人怖い! いーい! お姉ちゃんの傍を離れたらダメよ!」
「うん! でも、この人、そんなに悪い人なの?」
「フフッ! うさぎたちや狼姉弟には感謝してるからのー。妾は受けた恩を仇で返すようなことはせんから、安心するがいい。バカ天使は、生意気言って、悪戯しおったから、軽ーーい、お仕置きをしているだけじゃ!」
「「「えっ、えっ! 助かった! 助かった! 良かったー!」」」
「ほら、お姉ちゃん、この人は悪い人じゃないよ」
「そうみたいね。でも、逆らっちゃダメよ!」
「坊主は良く分かっておるのー! うんうん。偉いのー!」
「さすがに吸血姫様も、命の恩人に何かすることはないね! でも、駿河問いの刑が軽ーいお仕置きかーー。やっぱ怖いね!! って、そんなことはどうでもいいんだけどさー、神様は途中から無視されてるから、誰も聞いてないや」




