05 武器屋
「ほら、ここ、ここ。男の子なら、目を輝かして、喜んじゃう武器屋さんだよ。やったぁでしょ。少しは元気でてきたよね」
「え、何すんの?」
「何するって、これから冒険するんだから、防具を揃えないとね。どう、どう、この鉄の鎧とか鉄兜なんて、いいんじゃない?」
「あっちのオリハルコンがいいな」
「あーー、目ざとく見つけたねー。なんでこんなときだけ、そっち見るかなー。神様びっくりだよ。恐れ入りましただよ。でもね、それはダメなんだなー。冒険者の決まりがあってね。いきなりのいい装備は、ブブーってブザー鳴っちゃうね」
「ふわぁーー、じゃ、いいやオリハルコンで」
「なんで、そうなるのかなー、神様の言うこと聞こえてる? 君から肯定の言葉を聞くのは嬉しいけどさ。そうじゃないでしょ。ね、ブブーってブザー鳴るって言ったでしょ、オリハルコンは」
「神様って、貧乏なの? ちゃんと働かないと!」
「ないわー、それはないわー。君には言われたくないねー、それだけは。今も、それこそ、額に汗して、背中にだらだら油汗出てるよ。神様は働き者だよ」
「でも、オリハルコン買えないじゃん。やっぱ貧乏なんだ」
「いや、いや、いや、なんか誤解してるなー。買えないんじゃなくて、買わないんだよ。うん、うん。そそそ、それ、それだから」
「ごまかしてる?」
「あれれー、なんかとてつもなく失礼だね。そんなことあるわけないじゃないか。じゃ、ね、もう、それ買おう! オリハルコンの防具、買っちゃうおうね。君が勇者だもんね。でも、夕飯は抜きだからね」
「はー、疲れた」
「疲れたのは神様だよ。もう、あちこち変な汗だらけだよ。君は、何もしてないでしょ? まいったね、これは。本当にお茶目さんなんだから。でも夕飯はいらないんだね」
「今日も、いっぱい頑張ったし、どこで寝るの?」
「だからさー、まだ、防具、買っただけだよ。まだまだ、お天道さんも真上で働いているのに。『もう寝るの?!』って言われちゃうよ。そりゃ、夕飯抜きだから、寝たい気持ちも分かるけどさ」
「へー、お昼寝しないんだ、神様?」
「なんで、お昼寝すること前提で、話が進んでるのかなー。するよ、神様もう400年も生きてるから、爺さんだからね。お昼寝大好きだよ。でも、まだ、ダメ。まだ、寝ないよ。ギルドに行って冒険者登録してこないとね」
「じゃ、ま、そういうことで。行ってらっしゃーい」
「はぁーい、行ってきまーす。って違うでしょ!! 自然な流れだったから騙されそうになっちゃったよ。君が登録しないと意味がないんだから。ほら、行くよ!!!」