45 狼姉弟
「さあ、あのエロ勇者も、そろそろくたばったころだね。二度と復活できないように、一緒に埋めに行こうね!」
「うん! お姉ちゃん! 僕たち上手くやったよね! これで魔王城のメイドになれるね!」
「うーんとね。それは、ちょーーと違うよ・・・メイドじゃないんだよねー、側室なんだけどなー。・・・まあ、でも、まだ、そんなことは知らなくていいね。一緒に贅沢三昧しようね!」
「うん! 僕は魔王城で、お姉ちゃんを守る格好いいコックになるよ!」
「うーんとね。それも、ちょーーと違うけど・・・まあ、いっか! うんうん、楽しい日々が待ってるからね! って、何、あれ? ヤバイね! 何だろう、あの変なやつらは? ほら、こっち、こっちに隠れて!」
「あーーー、あれ、いじわるじじいとその一味だ」
「あっ! くそっ! あの変態、ぴんぴんしてるじゃない! くそっ! くそっ! あんなにサービスして、あんなに毒キノコを食べさせたのに・・・・。うっ、うっ、くそっ・・・」
「お姉ちゃん、泣かないで! 僕が守るから。また鍋作るよ!」
「・・・うん、そうだね。ありがとう。いい子だね。でも、いったん家に戻ろうね」
「じゃあさ、僕が時間を稼ぐよ! お姉ちゃんはさ、敵を倒す準備して!」
「そう? ひとりで大丈夫?」
「うん! 任せてよ! あんなやつらなんでもないよ!」
「・・・そう・・それじゃ、お願いね! でも、危なくなったらすぐに逃げるんだよ。お姉ちゃんは、いったん、家に戻って布団に隠れるからね」
「うん、分かった。僕、頑張るよ!」
「それにしてもさー、あの、とんでもない少年は、どこに行ったんだろうね。とにかくこの周辺を探さないとね! きっとその辺にいて、また狙ってくるだろうね。勇者を狙う敵には、きっちりと、お仕置きをしてやらないとね」
「どうでもいいだすよ」
「そうだよな。ガキなんて用事ないよな」
「うんうん。ガキはいらねーな」
「ほんとにさー。なんなんだろうね・・・こいつら! それデジャブだよ。もう一回、同じ流れにするつもりなの? って、あっ、あんなところに家があるよ。しかも、何、何、羊がいる牧場まであるじゃん! 何なのあそこ?」
「オオカミだーー! オオカミが出たーー!! 羊が食べられちゃうよー」
「メーーーーー!」
「なっ! 狼耳娘が出ただすか! よしっ! サキエルちゃんの出番だすな!」
「うん? メーーって、羊耳姫なのか?」
「どこ、どこ! ぱふぱふお姉さん、どこ?」
「ギャハハハハハ! ひっかってやんの! 嘘だよーん!! こいつらバカだ!」
「なんだガキだすか! あっち行けだす!」
「くだらねー! ガキに用はねーよ」
「けっ! ガキはクサエルと一緒にお漏らしでもしてろ!」
「キィーーーーー。また、ビカムがふざけたこと言っただす! うちに助けられたのを忘れただすな! 恩知らずだす! もう決闘しかないだす! この笑い茸を食わせてやるだす!」
「オオカミだーー! 今度こそオオカミが出たーー!! 今度こそ羊が食べられちゃうよー」
「メーーーー、メーーーー」
「待ってましただす! ビカム助かっただすな!」
「ようやく、俺の時代が来たかー! 羊耳娘でも狼耳娘でも、どんとこいだ!」
「ぱふぱふ、ぱくぱくだね!!」
「ギャハハハハハ! まーた、ひっかってやんの! こいつら本物のバカだ! アホの変態3バカトリオだ! ギャハハハハハ!」
「はいはーい。もういいね。いっぱいお遊戯したねー! バカなのは知ってるから。アホなのも知っているし、変態なのも分かってるから。うんうん。このバカどもは何度でもひっかるよ。そんなの知ってるから、そこのオオカミ少年!」
「ちっ! じじいめ! もっと遊びたかったのに、邪魔が入ったか。仕方がない、逃げろーーー!!」
「あっ! こらっ! オオカミ少年のやつ、家の中に逃げやがった! これは、あの家の中で罠を張ってるのかなー? でも、きっと魔王の手先だろうし、慎重に、迅速に、的確に、やっつけてやらないといけないよね!」
「逃げたガキなんて、どうでもいいだす!」
「そうだな、ガキに興味はねーな」
「お遊戯なら、クサエルが逝けばいいと思うよ!」
「キィーーー・・・」
「はい! ストップ! 同じ展開を繰り返すんじゃねーよ! 物語が進まなくなるだろう! 神様はお前らみたいに暇じゃないんだよ! さっさと物語を進めるからね! さっさと来い! 来ないと駿河問いの刑にするからな」
「ちっ! 卑怯だすな! このじじい!」
「ほんとだよな! パワハラ太郎、改め、脅迫じじいだな!」
「じゃ、ま、そういうことで。いってらっしゃーい!」
「こらっ! ビカムも行くんだよ! 前はひっかかる真似だけしたけどさ、同じ手に何度もひっかかる神様じゃないよ! お前らとは違うんだよ! それにさー、君も行かなくていいのかなー! 中には、狼耳娘が寝てるかもよー??」
「あっ! よしっ! 邪魔な天使どもは置いて行く!」
「ふざけるなだす! お前こそ、ここでキノコでも食ってろだす」
「そうだよ! 天使が行かないと、物語は進まないんだよ!」
「・・・・ほんと、バカどもは単純だよね、っていうか、このレベルはありえないよね。ね! ね! ・・・まあ、いいや! それじゃ、中に入るよ。慎重にね、慎重に行くんだよ! ドアを開けたら、襲ってくるかもしれないからね!」
「バッン! お姉さーん! ビカムが来たよー!」
「あっ、ビカム、抜け駆けすんなだす! ピューー! 天使ちゃんが看病しに来ただすよ」
「ピューー! 幸せの天使ちゃんだよー! 人工呼吸は俺におまかせですよーー!」
「あっ、こらっ!! バカども!! なんだそれは!? 敵のアジトにどんだけバカな入り方してんだよ! 何なんだよ! こんなやつら見たことねーよ! こいつら、物語の様式美を破壊しまくってるよ!」
「うるさいっ! じじいは、大人しく待ってろ!」
「そうだす! うるさいだす!」
「だな、そこにいなさい!」
「あーぁ、行っちゃったよ! 3バカ揃って行っちゃったよ! 罠に嵌りに行っちゃったよ! ちゃった、ちゃったの、『みなと舞鶴ちゃったまつり』だよ。なんちってだよ! って、誰も聞いてないか」




