04 王様
「おお、勇者よ、よくぞ、まいられた」
「神様正解! すごいね」
「いや、いや、いや、そういうこと、ここで言っちゃダメでしょ。正解とか。ほらー王様の眉間に青筋立っちゃってるよ。ここは、嘘でもいいから『はっ! 陛下のご尊顔を~』とかいう場面でしょ」
「神様って嘘つきなんだ」
「だからー、そういうことじゃなくてね。神様は嘘つかないし、オオカミ少年じゃないからね。さらっと、とんでもない毒吐かないでくれるかなー。この国での神様の地位が、地に落ちちゃうから」
「また、くだらないこと言ってる」
「言わしているの君だからね。それにどこの部分、ねぇ、ねぇ、どこが、くだらないって言ってるのかなー。オオカミ少年の部分以外だったら、困るよね」
「じゃ、ま、そういうことで」
「でたねー。言うと思ったよ。神様は何でも知ってるからねー。ほら、王様呆れちゃってるよ。困るんだよねー。いちおう神様にも、段取りってものがあるんだし。ちゃんと前向いてね」
「勇者よ、この伝説の剣エクスカリバーを授けよう! そして囚われの姫を助けてくれ!!」
「ほらー、王様も空気呼んで、一気に物語進めてくれたよ。王様すごいね、偉いね、お姫様が囚われてるって、助けないとね。もう神様、この国に力を分けちゃおうかなーってくらい、感動してるよ」
「やったじゃん、これが働くってことか!」
「おぉぉ、って、違うよ!! 君が急に元気に言ったから騙されそうになっちゃったよ。違うからね。なに、満足して、達成感に浸ってるのかなー。それ、全然、働くことじゃないから。まだ、何もしてないからね」
「じゃ、ま、そういうことで、あとはよろしく」
「ち、ちょっと、待って、待って、ダメだよ、よろしくされないから。剣ももらってないし、お礼も言ってないのに、どうして帰ろうとするかな。君がもらわないとダメなんだよ。ほら、行ってきて」
「えーー、神様って嘘つきで、ケチなんだ」
「またまた、何を言っちゃってるのかなー。さきより毒増やして、即死しちゃうよ、それ。致死量超えてるから!」
「そこな兵よ、この剣を勇者に授けよ!」
「ほらー、君がもたもたしてるから、王様が気を利かせて、向うから持ってきてくれるって。勇者は、エクスカリバーを手に入れた! みたいな、音楽が聞こえてくるでしょ。やったね。神様、王様の心遣いに泣けてきたよ」
「ふぁ、嘘つきでケチで泣き虫なの?」
「さらに毒増やしてきたね。大量殺人になっちゃうよ。そりゃ勇者だから、相手が魔族とか魔物ならそれでもいいけどね、君のは相手が神様だから。それに、一部の単語しか聞いてないでしょ、君は」
「殺人までするの? びっくり!」
「なにを驚いているのかなー。それと、『まで』ってのが気になるね。誰が殺人とかするのかなー。驚いた顔が新鮮とか、そういうレベルじゃないね。王様も頭抱えちゃったよ。まいったねー」
「じゃ、ま、そういうこで。いっぱいしゃべったなー」
「いや、いや、いや、しゃべってるのほとんど神様だから、君、1行以上しゃべってないよ。それも連続で毒を吐いてただけだよね。おもにというか、全部、神様に向けてブーブーブーって」
「もう、休憩時間だよね?」
「また話し、ずれたねー。ここは会社でもバイト先でもないから休憩時間なんてないよ。それにどうして、最後の最後まで、王様の前でそんな発想になるかなー。『必ずや姫をお救い申し上げます』とかキメる場面でしょ」
「ブラックじゃん」
「そうだね。黒いね。って、普通はさー、ブラック企業には天罰を与えるのが、神様の仕事なんだけど、君をみてると、そのお仕事、忘れちゃいそうだよ」
「じゃ、ま、そういうことで、寝ていいよね?」
「ダメーーーーダメだからね。ここで寝ちゃダメ! ここは『冒険に出発だ、オー』でしょ。それに、お姫様を助けないとね。ほら、行くよ!!!」