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38 玉藻御前

 「ビカム君! 注意するんだよ! 絶対に近くに敵がいるからね! でもいったいどこにいるんだろうな? あっ、あの木! あの木から尻尾が出てる! ギャハハ! やっぱバカだねー、この敵も! 体隠して、尻尾隠さずだってさ!」


 「木耳娘はいらないなー!」


 「なに言ってんの? 大バカなの? そういうことじゃねーよ! 木に耳なんてないし、娘もいねーよ!! もうさ、いいから、ちょっと、あの尻尾を掴んで放り投げてきてくれない? ポイッて、するだけでいいからさ!」


 「うーん。どっしよかなー!」


 「いやいやいや! どっしよかなー、じゃなくてさ。ちょっと働くだけだよ! もうさ、ほーんのちょっとだけだから。ね! ね! ビカム君が、それをやれば本性を出すしかなくなるしね! あっ、新しい娘が出てくるかもよ?」


 「えっ! そうなの? じゃ、やる! ギュ! えい!!」


 「ぎゃーーーーーーーーー!!」


 「おおおーーー! 勢い良く飛んでいったねー! さすがビカムだねー! 木ごと空の彼方へ飛ばしちゃったよ! って、えーーー美人さんだ! 美人さんが出てきた! 何、何、あれ、でも、なんか驚いてるような感じだね・・・」


 「ほんとだ! 娘が出て来た! 神様すごいね!」


 「いやーーーまあ、ちょっと違うんだけどねー! ま、いっか! そうだよ、神様はすごいんだから。でも、あの人何者だろうね。あんな綺麗な美人さん見たことないよ! ビカム君、美人さんに何してるのか、ちょっと聞いてみて!」


 「一緒にお風呂入る?」


 「えっ! ・・・・・・・」


 「確保ーーーー! ビカム君、残念! おまわりさんに捕まっちゃった! ダメダメ。そんな、『美人に風呂を強要した件』みたいなのは通報されるよ。美人さんも絶句したまま顔が引き攣るよ! やっぱビカム君はエロすぎるね!」


 「でも、狐の仲間だよ!!」


 「えーーーーーーーーーーーーーー!! そうなの? ほんとに? 何、何でビカム君は知ってるの? こんな美人さんが敵なの? なんかいやだなー。神様ちょっと残念だなー。こんな古風な美人さんは、なかなかいないよ」


 「やっぱ変態じじいだ! キモッ!」


 「あーーーもう、今のなしね。神様ちょっと失言したよ! ごめん、ごめん! そうだよね、敵なら気にせずに倒しちゃおうね! うんうん! それでこそ、勇者の大冒険だよね! さっ、やっちゃって、いいよ!」


 「くそっ! ばれてしまっては、仕方がないのー! バカ勇者とその一味よ! よーも、妾の手下を、いてこましてくれたのー!!」


 「あっ、ほんとに狐だ!」


 「てめー、バカビカム! 適当に言ってやがったな。なんなんだよ! でも、なんか知らんけど、当たってるし! もう訳分からなくなるよ! ・・・さて、気を取り直して戦うよ。まあ、楽勝だろうけどね! フハハハだよーん!」


 「フッフッフッフ! 愚か者どもめが。妾は、あと2回変身を残しておるのじゃ!! それでは、冥途の土産に教えてやろう! 百尾の狐・玉藻様の最終形態、真の姿をな! それーーー!! 第二形態に移行じゃ!」


 「コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン!コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン!」


 「何、何、何? 神様が、変身とかを突っ込む前に、狐がいっぱい出てきてどんどん合体してくよ! 丸まって、尻尾がどんどん増えていくよ! ビカム君大変、大変だよ! 敵が大きくなってるよ、やばいね! 早く戦いに備えてね!」


 「ぐぅーぐぅーぐぅー」


 「って、寝てるしーー!!! 何なんだよ、こいつ! コンコンの声だけでもダメなの?? 特殊技能すぎるよ! 大の字で寝るなー! って、えーーーー、玉藻のやつ、もう5メートル以上になってるよ、デカすぎるよ!」


 「どうだ思い知ったか! 魔王様直属の妾たちの技『スーパー百狐』まで、あと少しだ! 念仏でも唱えて待っているのだな! フハハハハハハハ!! それー!! 最終形態に移行じゃー!!!」


 「コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン!コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン! コン!」


 「ぐぅーぐぅーぐぅー、ぐぅーぐぅーぐぅー」


 「何、何、本当にもっとデカくなるの? 怪獣じゃん! そんなのと戦うの? やばいねー! バカは連続3行以上で、さらに夢のなかだし。どうすんだよ、これ! あっ、天使たちは! って、あいつらじゃ無理だね! 参ったね」


 「フハハハハハハ! これが妾の最終形態!! 百尾の狐・玉藻御前様だ! 魔王様に仇名すバカどもめ!! 妾の足の裏と百尾台風で、朽ち果てるがいい! ドーン! ドーン! ビュー! ドーン! ドーン! ビュー!」


 「うわー! ビカム君、マジやばいよ! 10メートルは軽く超えてるよ! 強敵・現るだよ! どうしよう! ビカム君、起きて、朝だよー。本当は朝じゃないけど、狐怪獣タマモゴンが出たよ! 大変だよ!」


 「うーん、まだ無理だよー! コンコンうるさいし!」


 「ぎゃーーー! そうじゃないんだよ! 早く起きろよなー! なんなんだよ! こんな肝心なときに、戦わずに寝てる勇者って! やめてくれよな! あいつは魔王の腹心みたいなんだからさー! 一発やってやらないとダメだよ!」


 「誰がタマモゴンだ!! どこまでもふざけたバカどもが!! この玉藻御前様をバカにした罪は死をもってしか償えんな!! 蹴散らしてくれるわ! ビューーー! ドカーーン! ビューーー! ドカーーン!」


 「まずい、まずいよ! タマモゴン、あちこち蹴りまくって、風を起して全部吹っ飛ばしてるよ! 神様、ビカムを抱えて逃げ回るだけで精いっぱいだよ! いつか捕まるよ! って、誰も聞いてないか、って、どうすんだよ!」


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