25 港町
「港に来たねー!! なーんか知らないけどお姫様救うだけで大変な目にあったよねー。もう二度と帰ってきたくないね、この国は! 次だよね。海だよね! ワクワクの大冒険だよね! どう? どう? 大海原に出発だよ!」
「お船だー! ウサ耳船長いるかな?」
「そうだねー。船だね! これから冒険だね。ワクワクだよねー。でも、ちょーっと違うかな。ウサ耳の船長はいないなー。残念だけど、それはないなー。船長さんは、海の男だから! もっとイカツイ海の男だからね!」
「ラビットキャプテン!」
「だから、何それ? 何言ってんの? 船長はね、アイパッチしてたり、フック型のかぎ爪してたりね。そういう人だから。ラビットキャプテンはいないからね。そんなの出さないよ! もう、いいでしょ! バニーは吸血姫だけで十分だね!」
「キャプテンラビット!」
「バカだねー。もう、バカすぎるね! 本当にバカすぎるね! やっぱりミジンコだったねー。ほら、船員さんが来たから、って、ち、ちょっと! なんでバニーガール? 何してんの、それ? 嫌だよ! ハーレム船とか、やめてよね!」
「勇者様、キャプテン・ラビットのうさぎ船にようこそ!」
「おいおいおい。なに、とんでも船、出してきてんの? それ違うでしょ! ねぇ、ねぇ。あんたもバカなの? いい加減にしてくんないかなー。ちゃんと生き方を考えようね。ウサギは海にいないから、野山駆け回っててくんないかなー」
「やっぱ、いたねー。神様の負けだね!」
「いやいや、勝ちとか負けとかじゃなくてさー。うさぎ船って弱そうだよ。すぐ沈みそうだよ! ダメだよね! そんなおもちゃの船みたいな名前のやつには乗れないよねー。ねっ! それくらいは分かるよね! ね! 違う船を探そうね!」
「負けたから悔しいんだー。神様って、小っさ!」
「なーんか誤解しているね! そういうことじゃないんだけどなー。ぜんぜん違うよねー。うーん、とにかくダメ! うさぎさんの船には乗りません、乗れません、それでは大海原は乗り切れません! 以上! 反論は許しません!」
「えいっ! えいっ!」
「おいおい。今度は何しだしたの? それ何? 何のつもりですかー!って、えーーーーー! 何、何、港にいる男の人が、みんな凍ってるよ! ブリザードドラゴンでも呼んだの? こらこら、とりあえずやめようね、それ! 危険だから!」
「えいっ! えいっ!」
「まーだやってるよ! って、どんどん凍ってる人増えてるよ! ・・・あちゃーーそれスキル『男はいらね』かー。それかー。あたたたた。これはまいったね。って、封印の村もお前の仕業かー!! とんでもない真犯人がいたよ!!」
「これで、うさぎ船だね!」
「お前なーー、ふざけんなよな! アイパッチの船長さん凍ってるよ! どうすんの? 船の選択肢をうさぎ船しかなくすって、無茶苦茶なことしてくれるね! それに凍った人たちはどうすんの? ねぇ、ねぇ、君、傷害罪で逮捕だね」
「おおお、ラビットミニスカポリス!」
「もう、それ突っ込めない。無理。・・・とりあえず、スキル『男はいらね』の効果を確認するよ。なになに『ちょっと凍るだけだからへーきへーき! なんともないから、すぐ戻るから!』って、このマニュアルもふざけてんのかーー!」
「わーい、うさぎ船だ!」
「本当に君は、どこまでも、どこまでも、とんでもないね! って、今までひとつも成長してなかったってこと? ちょっと、ついでにレベルを見てみるよ! って、えーーーー、MAX+MAX+48って、なに、なに! これなんなの?」
「神様の愚かさをよそに、日に日に成長していくビカムであった」
「おいおいおい! なに小説風に語ってくれちゃってるの? それセリフじゃねーよ。しかも神様を愚かとか平気で言ってくれちゃってるし!! うさぎ船で、わーいとか言って喜んでいるやつは、成長してねーよ、衰退だよ、幼児化だよね!」
「そろそろ、行くよー! みんなー、うさぎ船に集まれーー!」
「はーい! はーい! 行きまーす!」
「・・・・・・ねぇ、ねぇ! こんな船に乗っていいのかな? これ勇者の大冒険じゃないよね? どーーー考えても違うよね。でも、もう神様、疲れたよ! これ以上は抵抗できないね! みんな、ごめんなさいだよ!」
「神様、置いていっちゃうよー!」
「はいはい、行きますよ! 行けばいいんでしょ! なんか、ビカム君が元気に神様を呼ぶなんてさー、はーーぁだよ。でも、神様もお仕事だから、本当は嫌だけど、頑張るよ! じゃ、ま、そういうことで、ほら、行くよ!!!」




