02 異世界
「新居浜君、起きて、朝だよー。本当は朝じゃないけど、セントラルワールドに着いたよーー」
「あれっ? ここどこ?」
「いや、だから言ってるでしょ。セントラルワールドだって。ほら、あそこに立派な建物があるでしょ。あれが王宮だから。まずは王様のところに行くよ。それと新居浜君じゃまずいので、名前決めないとね」
「え、だめなの?」
「だめだめ、ここには、ここのルールがあるからね。なにがいいかなー、新居浜透だからニート、それでいいかい?」
「いやに決まってるじゃん。働きたくないけど、ニートじゃないし」
「あれっ、なんか怒った? 新鮮だね、君の怒った顔、はじめて見たよ。うーん、でもニートはだめかー。じゃあ、ハートは?」
「いやっだ、そんな恋愛物みたいなの」
「わがままだねー。なら、ニーハートはどう? なんかいいかも? って感じでしょ? どう? どう?」
「神様って、適当なの?」
「いやいや、違う、違うよ。新居浜君なんか誤解してるね。神様は、名前なんてつけたことないから。どういうのがいいのか分からないんだよ」
「え、神様は名前ないの?」
「もちろんあるよ、ミスター・ゴッドってのが」
「やっぱ、適当じゃん」
「あれ、あれー、そうじゃないんだけどなー。困ったね、これは。じゃあ、自分で好きな名前ある?」
「うーん、ビカム・ノベリストでいいや」
「そうかい、それでいいなら、そうしよう。よし、じゃあ、君は今日からビカムだね。新居浜って名前は、捨てないとダメだからね」
「じゃ、ま、そういうことで、お休みなさい」
「いや、いや、今日の仕事は終わりだー、いっぱい働いたわ、みたいなの、やめてくれないかな? 今、まだ、名前、考えただけだよ。これからなんだからね」
「え、まだ仕事するの? 神様、変わってくれるって言ったじゃん」
「うん、言った、言ったよー、言ったねー。覚えているよ。でも、もう少し歩こうね。ここで寝たら、それこそ、ダメ人間になっちゃうよ」
「え、いいよ、それで」
「ダメーーーーー。ぜんぜん良くないよ、それ! それにさ、ここ道だよ、ほらあの上のほうの宮殿に行って、王様に挨拶しないとね。勇者よ、よくぞまいったっとか言ってくれるから。ほらやったーでしょ! ひゅーひゅー、カッコいい!」
「なに、それゲーム?」
「そそ、もう、それでいいや。ゲーム、ゲーム。ゲームならやるよね?」
「まあ、たまにやるけど」
「うんうん、じゃ、ま、そういうことで、って、君の口癖が移っちゃったよ。そういうことじゃなくて、行くよ。ちゃんと歩いてね」
「面倒だなぁー」
「しょうがないなー、じゃあ、神様、女の子に化けちゃうから、見てて」
「うわっ、あんた誰?」
「うふふふ。さあ、行きましょ、ビカムさん。ボン、キュ、ボンのナイスバディのわたくしを、お城までエスコートしてくれませんか? 神様ってのはナイショだよ。今はミス・ゴッドだからね」
「キモッ!!! ないわー。爺さんのTSとか絶対ないわー」
「なに、それ!!! なんで、こんなときだけ、勢いあるの?! もうやめるよTSは。神様、根こそぎ自信、持ってかれたから」
「そう、じゃ、ま、そういうことで。お休みーー」
「だから、お休みじゃなくて、ほら、行くよ!!!」