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12 NPCの村

 「さぁ、来たよー、着いたねー。安心、安全、安らぎのNPCの村。ここなら変なスイッチも入らないし、大丈夫だよね!! やったね! やっとお姫様の情報収集できるね!」


 「何、それ?」


 「あーー、ビカム君、知らないのかー。まあ、そうかもね! ノンプレイヤーキャラっていってね、ひとつの言葉しかしゃべらないから。ね、ね、ね、ね! 安心でしょ! 神様は、特に安心だよ!!」


 「ふーん、つまんねぇー」


 「つまんなくないからね! これが勇者の進む道、ビカム君のお仕事だから。こうして苦労して、情報集めしないとダメだからね。今までは、遊びすぎたり、猫耳すぎたり、聖母すぎたり、大変だったよね! なんちゃってね!」


 「くだらねー。寝ていいよね」


 「ダメ、ダメ、ダメだよ。寝るのはなしね。それに、つまらなくないって、そんなことないって、おもしろいから! ほら、ほら見てて、触るとしゃべるよ!」


 「こんにちは、コッテ村へ、ようこそ!」


 「ほらほら、これこれ。このお姉さん、これしかしゃべらないから! あとは足踏みしてるだけ! これがNPCだからね! ね、おもしろいでしょ。よーく覚えておいてね。誰かが、お姫様情報を教えてくれるからね!」


 「キャッ! ポワン♡」


 「ちょっと、ちょっと、なにしてんの!!! こらっビカム!!! スカートまくりなんて、今どき、子どもでもやらないよ!! そんな勇者いないよ。しかもNPC驚かせて!! ってなに、このNPC、ポワン♡とか、なしでしょ?」


 「うん、尻尾なかったよ!」


 「そうだねー。あるわけないよねー。そのお姉さん猫耳でも犬耳でもないよねー。普通の人だよね。それにしても、NPCまで落とそうとする『恋のキューピット』半端ないね! 凄すぎだね! もう危ないから中に入るよ!」


 「尻尾ないしなー」


 「もう、尻尾はいいの! さっさと来なさい!! じゃ、この家に入って家の人に聞いてみようか! ね、なんかドキドキするでしょ!! 冒険だねー、男の子だねー ってちょっと、勝手にずかずか入って、何してんのかな-。おーい!!」


 「もぐもぐ、おいしいっ!」


 「シチュー食べてるねー。ほんとおいしそうに食べてるねー。神様もお腹ぺこぺこだし、もらっちゃおうかなー。いいよねー。少しくらい。神様、あれ以来1日1食だしね」


 「へー、ダイエットしてるんだ! おいしいよ! もぐもぐ」


 「ダイエット? それはちょーーーっと違うかなー。ダイエットする必要はないんだよねー。でもねー、いろいろあってねー。まあ原因は全部ビカムっていうぐうたら勇者のせいなんだけどね」


 「えーーひどいね!! そのビカムって野郎!! もぐもぐ」


 「そそそ、ひどいんだよ、って、おまえじゃ!!! なーにバックレてくれちゃってるのかなー!! そんで、そんな話なんて、どうでもいいって顔して、バクバク食って、しょーもな!!」


 「あーーー、パワハラ野郎だ!! もぐもぐ」


 「パワハラじゃないよ。そんなことしてません! 神様は理想の上司だからね!うんうん。いつもみんなに尊敬されて、感謝されているから! それに野郎って何、ね、ね、ね、ね、ね!」


 「ひどいね! マタハラ野郎だったんだ! もぐもぐ」


 「おーい。それ意味分かって言ってんのかなー。お前がいうな! 略して『おまいう』だよー、微妙に意味違うけど。ほんと君には、それを言える立場も、資格も、性別も、まるでないからね!!」


 「あーー、おいしかった!!」


 「完食したねー。普通は、神様もどうぞ、とか、少し残ってますよ、とかだと思うんだけどねーーー。鍋、カランっていうほど、何も残ってないね!」


 「じゃ、ま、そういうことで。お昼寝だねー」


 「ほんと、自由奔放ちゃんだねー、君は!! ってあれ、なんか鍋の底が焦げていてなんか文字が! なになに、『お姫様は、この先の洞窟に囚われている』って、なに、これー! なんで鍋の底にこんな重要なメッセージが??」


 「働いたねー、僕! じゃお休みー」


 「全然といっていいほど働いてないけどね。シチュー食いまくっただけだからね。それでも、なーんか知らんけど、物語が進んでいくんだねー! 神様ちょっとびっくりだよ!」


 「さすが、勇者ビカム!!」


 「出たねー、自画自賛!! 本当にそう思っているのかどうか知らないけど、まあ、お腹いっぱいで、少しはやる気が出てきたのかな? それなら、いいことだねー」


 「あとは任せた、ビカムの子よ」


 「あーー全然違った。違うほうにやる気いっちゃってたよ! だからね、それはなしって言ったでしょ。そういのはないから、君が魔王を倒すんだよ。いいね! じゃ、遊んでないで、ほら、行くよ!!!」


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