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夢が語りかけてくる

作者: ホミー

「んあ?」

 

 無意識に間抜けな声を出しながら、健人は目覚めた。


 健人は時間を確認しようと、スマートフォンの画面を開く。画面の光が眩しかったため、思わず目を瞑ってしまったが、かろうじて薄目で画面を見ることができた。時刻は午前2時ちょうどを指していた。

 辺りはまだ真っ暗で、ほとんど何も見えない。携帯ゲーム機の充電中を意味する光が見えるくらいである。


 まだ2時か。二度寝できるじゃん。健人は時間を確認した後、もう一回寝ようとスマートフォンを無造作に放り出し、寝返りを打った。その時、健人は目が覚める前まで夢を見ていたことを思い出す。

 そういえばさっき何か変な夢を見ていたような・・・。どんな夢だったっけ。確か大学時代同じ学科の理沙ちゃん、同じサークルの麻理恵ちゃんと加奈ちゃん、バイト仲間の美樹ちゃん、高校時代好きだった亜美ちゃんがいたっけ。みんなきれいな子ばっかやな。そんで男は俺一人だったはず。


 健人は何とか登場人物を思い出すことはできたが、肝心の内容が思い出せない。しかし、この登場人物から察するに、楽しい夢に違いないと健人は確信していた。


 もう一度夢の続きが見れますように、もう一度夢の続きが見れますように。と心の中で何度も唱えながら、健人はまた眠りに落ちた。


 健人は運よく、先ほどの続きと思われる夢の中に入ることができた。美女に囲まれながら談笑をしている。場所は何故か健人が通っていた中学校の敷地内のようだ。

 美女と肩を組んだり、得意のギターを披露しては「すごーい!健人君ギター上手!」と夢の中とは知らずに幸せな時間を過ごしていた。そんな幸せな時間を満喫しているうちに、何故か健人の母親がでてきた。執拗に何かを言ってくる。

 あーもうめんどくさいなあ。今いいとこなんだよ。健人は夢の中で母親に毒づきながらハーレムを楽しむ。


 何か言っている母親を無視し続けていると、途端に情景が変わり、何故か今住んでいる一人暮らしのアパートの前にワープしていた。夢の中の健人はそんなことを気にせず美女たちに夢中だったが、いきなり美女全員が姿をくらました。残っているのは健人と母親のみ。


 「・・・覚ましなさい!いい加減・・・覚ましなさい!」段々、母親が何を言っているのか聞こえてきた。どうやら同じセリフを繰り返しているらしい。


 そして、母親のセリフが耳元で言われているかのように突然ボリュームが上がった。

 「いい加減夢見るの諦めて目を覚ましなさい!」

 母親のセリフ後、突然ガシャーンと大きな音が響き渡った。


 「うわあ!」健人は思わず叫びながら我に返る。


 外はすっかり明るくなっており、カーテンの隙間から日の光が射していた。

 健人は時間を確認しようとしたが、それよりも先にあることに気づく。何故か立ち上がっているのだ。そして床には真っ二つに折れたギターが横たわっていた。


 何が起きたんだ?とりあえず一旦落ち着こうと健人がゆっくりと辺りを見回していた時、急にアラームが鳴った。

 アラームが鳴る前に目が覚めたんだな。と健人は思いながらスマートフォンを開くと、そこには前日に設定した、アラーム時に表示されるメッセージが書いてあった。


 『就活:T社面接』


 ああそうか。今日面接だった。そういや昨日までにミュージシャンとして結果が出せなかったら真面目に働くって親と約束してたっけ。どうりであんな変な夢見るわけだ。いい加減夢ばかり見るなってことか。健人は今回見た夢の内容を理解した。


 そしてこの真っ二つになったギターも多分俺がやったんだろうなと健人は思った。その証拠に両の手の平から軽く血が出ており、何か所も赤くなっている。初めてだけどこれが夢遊病てやつだろうと解釈した。


 まあ、いい機会だしこれをきっかけにミュージシャンになる夢は諦められるなと、プラス方向に結論付けた。

 それにしても美女に囲まれたいい夢だったなあと、夢の内容を思い出している内に、ある疑問が思い浮かんだ。

 

 ということは、ハーレムを作るという夢も無理だから諦めろってことか。

 健人は一人虚しく、壊れたギターの破片を拾い集めた。

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