1話「天職」
死のうと思います。
もうこの世界に生きる価値などありません。
生きるのが、とてもつらいのです。
嫌なのです。
これ以上、わざわざアウェーに出向き、自分を貶めたくありません。
純粋に私を愛してくれた皆さん、ありがとうございました。ごめんなさい。さようなら。
――――死んでしまうの?――――
誰ですか、違法侵入者ですか?
邪魔をされたくないのです。
――――この世は楽しいのよ、きっと――――
楽しくないから、生きるのをやめたいのです。
お願いですからどこかへ行ってくれませんか。
――――もったいない……。あなたの不の力、向いているのだけれど――――
何をほざいているのです?
もう、死んでも構いませんか。
――――待って待って、あなたに天職があるの。聞いてもらえないかしら――――
お仕事ですか?
ふざけないでください、私まだ14ですよ。アルバイトもできないです。
――――あら、こっちは年齢で職が左右されるのね、不便ですこと。でもね、今から紹介する職は、何歳でもイケルものよ。少女に限るのだけれどね――――
ああ、お水ですね?
いやです、穢したくありません。
――――おみず? まあいいわ。きっと、今を忘れられるわ――――
それは無理ですね。
いくら忘れようとしても思い出してしまいますから。
――――そうね、あなたを取り巻く悪夢よりも、果てしなく強くなるわ――――
強くなる、の?
あいつらを、殺せるほどに?
――――人間なら、イチコロで殺せるほどの力を得ることができるわね――――
……わかりました、その仕事、やりましょう。
――――あら、本当? 嬉しいわ、人員不足で困っていたの――――
長続きしないような仕事なのですね。
――――物理的にも、精神的にも強い娘なら、永遠にいけるわね――――
そうなのですか。
……やはり私には向いていないかもしれないのでは?
――――それに加えて、強い憎しみを持つ娘も、とても強くなるわ――――
憎しみ、ですか。
そうですね。私の憎しみは誰よりも強いものかもしれないです。
やります、やりますよ。
――――契約成立、ね。早速今夜からお仕事よ。お家で待っていて頂戴――――
今、私が話していた声は、いったい何者なの?