07) 講義を受けるのね。
「あぁ、そっか……なるほどね?」
小柄ちゃん?一人で納得しないでください。オイラにも分けてくださいよ?
「キミ、召喚者だったんだね。スッカリ忘れてたよ?」
「召喚者?」
「そう、順を追って詳しく説明するとね……キミはこの国の魔導機関によって異世界から召喚されたのよさ?」
短い!しかも順を追ってと言いながら一言で終わってる!?
あ、続きがあるみたいね。
「あぁ、そういえば呪いを受けたあと寝込んでたから、説明を受けてなかったのねキミ……納得?」
小柄ちゃん?また疑問形で完結しないで下さい。オイラだけ置いてけぼりです……
「ここ数年でこの国の周辺にたくさんの迷宮が出現したの。その対策として勇者の力が必要になって異世界の人たちを召喚したってワケなのよ?」
「迷宮って……なに?異世界って??」
ここから、小柄ちゃんの授業が始まった。
迷宮というのは生命的な活動をする建造物で、また必要悪的な存在ということを知らされた。
地面からいきなり迷宮の入口が出現して定着し、迷宮内では魔物が出現し倒すとアイテムが得られるという。
その迷宮から産出される物資は国を豊かにする反面、迷宮から飛び出した魔物は国を疲弊させる。
バランスが取れているうちは良いが、暴走した迷宮は災厄レベルの魔物を排出して沈静化には国を揚げた事業になると……
というわけで、複数出現した迷宮が同時に暴走して対応出来なくなる前に、勇者を召喚して迷宮対策に充てる計画が三国間で再度発案された。
再度発案というのは前例があって、50年ほど前に暴走した迷宮に対して各国が一人ずつ勇者を召喚して沈静化させたという。
「……というわけ、解った?」
「まぁ、元の世界に送り返せよ?って事だけは理解できた」
首を傾け、困った顔をする小柄ちゃん。
オイラ……何か地雷でも踏んだか?
「えっと、基本的にソレは無いよ?」
「何故に?召喚できるなら送還できるんじゃないのか?」
さっきと反対方向に首を傾け、さらに困った顔をする。
何か……無茶でも言ってるのかオイラ?
「こっちに来る時に契約を結んだと思うんだけど……ゲートで?」
「ゲートで?と言われてもサッパリ解らんのですよ?」
「召喚者からの情報では、召喚される際にゲートと呼ばれる小部屋で小一時間悶々としてコッチに来るという話」
「小部屋なんて入ってないぞ?」
小部屋なんてあったか?しかも悶々って何だ?と思い浸る暇もなく続く。
「その時にコッチの世界についての説明やレアスキルとかレア特性とか取得出来るのよさ?」
「そんなの、全く知らん。説明も受けてないぞ?」
「あれ?そなの??もしかしてスキルとか特性が無かったのも召喚者のレアケース?」
また、小柄ちゃんの授業(2時限目)が始まる。
会話にあったように、召喚や転生する時にはゲートと呼ばれる小部屋で召喚や転生についての説明が案内人、或いは現地の神により行われる。
その時に、転出先の世界へ持ち込める特技や能力、条件などが設定できるそうだ。
拒否権も備えてあり、拒否の際にはゲート内での記憶を消去して元の世界に戻されるらしい。
なので、召喚に応じた勇者達は望んでコチラに来るので、戻る魔法陣は研究すらされていないとの事だそうだ。
だとすれば、到着早々暴れてたヤツは何だったんだろうか。
「……というわけ、解った?」
「拒否権以外のところは理解できた」
「キミ……召喚拒否したかったの?」
「いや……拒むもなにも、案内人とか拒否権や条件の設定も知らんぞ?」
「あれ~?ゲートで居眠りでもして追い出されちゃったとか?」
「覚えてるのはオッサン轢いたくらいだわ」
「あぁ、あの話ねぇ……ぷっ!」
小柄ちゃんは口に手を当て、俯いて笑いを堪えている。
少し間を置き、気を取り直して続ける。
「まぁ、ゲートを通らず直接コッチに来たのなら、スキル無しってのも解るのよさ?」
「スキルは無いが、呪いはある」
「まぁ、上手ね!」
「冗談じゃない!」
「でも、その呪いのおかげで私達の解呪スキルが上がったのよ?ありがとね?」
「いえいえ、どういたしまして……ってオイラ何もしとらんがな」
小柄ちゃんの授業(3時限目)
曰く、スキルは使えば使うほど熟練度が上がる。
オイラが受けた呪いはかなり困ったモノで、失敗しても熟練度が上がる難易度らしい。
それに気付いて来てみると、気持ちよさそうに寝ていたので起こすのも可哀想だと思い、強行手段に至ったと。
また、解呪用の魔道具は高価な品物なのだが、スキル上げのコストを考えれば元は十分に取れるんだとさ。
「というわけでぇ、動けない当分の間は“私達”の解呪スキル上げに付き合ってね?」
「報酬は出るんだろうな?」
「あら、上手ね?」
「冗談じゃ無いぞ?」
という訳で、オイラは訳の解らん儀式に生贄として一般公開された(笑)
冗談ではなく、本当に生贄のようだった……
一応、報酬として貰ったのは、お供え物から魔道具など。金銭も多少手に入った。
しかし、貯まる物品は換金できるワケでも無く、食い物以外は部屋の隅へ無造作に置かれていく。
特に多かったのが魔法陣が描かれた紙(羊皮紙)だった。
見ただけでは全く解らない為に、内容を聞いてリスト化しておいた。それでも、結構な種類の魔法陣が揃った。
その中でお気に入りの魔道具を見つけた。“浄化”の魔法陣が織り込まれた布だ。
上に乗り、足で魔法陣を踏むだけで身体が綺麗になる便利グッズだ。
身体から汚れ物質が剥がれ落ちるので床掃除が大変だが、コレから得られる風呂上りみたいなサッパリ感は素晴らしい。
欠点といえば、服のままだと服の内側に汚れが貼り付くので脱がないとダメなとこか。
その欠点なんだが……
浄化中に吶喊してきた小柄ちゃんに全裸を見られ、数分後にマトモな使い方を教わるのであった……
「はい、これ着て使ってね……ソレは洗えば済むのよさ?」
柔らかい貫頭衣を一着、投げ渡された。