06) タイミングも重要なのね。
(ん?ああ?なんだっ!?)
目が覚めると凄いことになっていた。
体中に御札や包帯、画鋲が仕込まれている。
画鋲ってことは小柄ちゃんの仕業か?
(まぁ、この画鋲は痛くないから良いんだけどな)
見た目がアレなだけで、血も出てないし。
床を見ると糸クズやハジけた本で埋め尽くされている。
「解呪しま~す、さん・に・いち・はい!」
「はいっ」
んぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱん!
聞いたことのある効果音が前より激しく鳴り響く。
あれ?小柄ちゃん以外の声は大柄サン??
また後日会いましょうって言ってたと思うんだが……
「それにしても、失敗上げって凄いですね」
「でしょー?これで成功したら、もっと凄いと思うのよさ?」
何やら楽しそうな会話になってるな……
「ちょっと、魔道具にお金が掛かるのが難点ですけどね」
「でも、効果は大きいよねー?」
そう言いながらオイラから貼り付けたモノを手早く取り除き、次の準備に取り掛かっている。
ぺたぺた、ぷすぷすっ、まきまき。
「解呪しま~す、さん・に・いち・はい!」
「はいっ」
ぱっぱぱぱぱぱぱぱぱぱん!
「準備した魔道具がなくなりましたね」
「あれ、もう無くなっちゃった?」
どうやら、作業は終わったようだ。
今度は大柄サンがオイラに光った手でペタペタ触れる。
「穴だらけにしてしまいましたけど、これで大丈夫です」
「それは、どうもありがとうございました。感謝感激です」
そうオイラが答えると、大柄サンはちょっと驚いたが悲鳴を上げることはしなかった。
「起きられていましたか、声を掛けても目を覚まされないので許可無くやりました」
「はい」
大柄サンはペコリと頭を下げるが、前回の小柄ちゃんは有無を言わさずやってきたよな……
結局、何やってたんだろうね?こんなにゴミだらけにして。
「ステータスプレートに表示されていた呪いを解こうとしておりました」
「ほほう、それで首尾はどうでした?」
「ええ、全敗でした。流石は古龍の呪いですね」
「でも、良いレベル上げにはなったよね?それに気付いた私って凄いよね?」
小柄ちゃんがまたもや無い胸をエッヘンと張り出す。
「そうですね、流石は我が国屈指の魔術師様ですわ」
「でしょでしょ!?私って凄い?もっと褒めて!」
大柄サンは小柄ちゃんを褒めちぎった後、それでは失礼します……と部屋を出て行った。
「失敗しても熟練度が上がる呪いって凄いよね、凄いと思わない?」
自分の見つけた成果に浮き足立ってる小柄ちゃん。
大事なことヒトツ忘れてやしないだろうか?
「頑張って、全部片付けろよ?」
「あっ!もしかして逃げられちゃった!?」
「その通り」
「いやあぁぁぁ!」
気を失いそうになるレベルの大声量で怪音波を発しながら項垂れる。
落ち着きを取り戻すのに数分掛かると、小柄ちゃんは小さな袋にどんどんゴミを入れていく。
ホコリは窓とドアを開けて風を入れて追い出した。
その仕草を見ながらオイラは確信を得て質問する。
「なぁ、魔法ってホントにあるのか?」
一瞬、意味が解らなかったのか小柄ちゃんは首を傾げオイラを見る。
「キミだって魔道書持ってるじゃない。何言ってんのよ?」
また、小柄ちゃんとの会話が噛み合っていない。
質問を変えようとすると、小柄ちゃんが先に動く。
「ほら、これ……キミのでしょ?」
テーブルの上からアノ本をオイラへと手渡す。
「この魔道書は大事にしなさいよ?かなりレアな素材で出来てるんだから?」
「これ、魔道書なのか?開かないんだけど??」
「だったら、外装なりバンドで工夫してみるといいんじゃない?」
「工夫して何ができるんだ?」
「キミ……魔道士でしょ?」
「はい?いやいやいや……学生だけど?」
またもや、話が食い違ってます。会話が成立していませんよ?