05) 確認は重要なのね。
「どういうことですかっ!?」
「どういう事でしょう?」
小柄ちゃんと大柄サンはプレートに視線を落としたまま言い合う。
何の事だかサッパリ解らない、誰かオイラに説明してくれ。
そんなオイラを大柄サンが気付いて、話し出す。
「えっとですね、呪いの所為でステータスダウンはともかく……」
「ステータスダウン?」
言い辛そうにしている大柄サンに説明の続きを要求する。
「通常の召喚者には絶対備わっているはずの……」
「はずの?」
言わない方が良いのでは無いか?という状況が途切れた言葉で理解できた。
「気にしないから言ってくれ」
いや、内心は凄く気になって仕方ないんだが……
シャレにならん呪いってヤツか?
「少なくとも3つ、多い場合は8つ程度のスキルと……」
ゴクリと次の言葉を待つ。
「特性がヒトツもありません」
「それだけ?」
思っていたより問題無いレベルの告知に呆れてしまった。
スキルとか特性って何の話だ?スキル……資格か??
資格なら簿記やら英検、危険物程度なら持ってるぞ。役に立った記憶は無いがな。
しかし、そういうのって自己申告制じゃないのか?自分で書き出さないとダメだろ。
「あと、一次クラスレベルの限界を超えています。職業欄も空白ですし、年齢も見た目と全く違うものですね。」
「見た目は関係無いだろ?」
即座に突っ込む。老け顔ってか?自覚はあるからそれ以上言うな。
「まぁ、そうですが……失礼しました」
大柄サンは素直に謝るが、話題の種であるプレートが気になりだした。
「ちょっと見て良いか?」
プレートの仕組みは解らないが確かにオイラの名前があり、他に文字と数字が並んでいる。
通信簿だ、アレに似ている。だが、オール1ってなんじゃこりゃ?
そして、プレートの一番下にある文字に気付いた。
たった一文字……
“呪”
「こわっ!」
思わず叫んでしまった。
一文字だけポツンと、周囲に憚ることなく堂々と……なんてホラーですか。
「故障じゃないの?」
「故障でしょうか?」
小柄大柄コンビはプレートの性能に疑問を持ちだした。
「ステータスオープン」
それとなく小柄ちゃんがプレートに触れて呟いた。
パシンと鳴る音と共にプレートの表記が変わる。なかなか凄い技術だな。
「あれー?故障じゃないよ?お~、私のスキルが上がってるよ?」
「んー、故障じゃないなら……もう一度やってみるかな」
「はいはい、ステータスオープン……ね」
しっかり空気を読んだオイラはプレートに触れて呟く。
音と共に再度表示されたプレートの文字列は、さっき見た内容と寸分違わず。
やっぱり一番下の「呪」って文字が威圧感を醸し出している。
「仕方ないわね、このまま報告することにしましょう」
大柄サンはプレートの表示を紙に素早く書き留め、バインダーに挟み込む。
「それでは、本日の検査は終わりますね。また数日後に会いましょう」
後ろ手に手をヒラヒラさせて大柄サンが出て行くと、ガタイ君が再登場する。
「あの、さっきみたいな背負子は勘弁して下さい。それと抱き上げられるのもイヤっす……」
オイラが真剣にお願いすると……
軽く方を竦めたガタイ君はオイラを小脇に抱え、歩き出す。
なんていうか、その……米袋の様な扱いってどんな感じなのでしょうか?
まぁ、下向きになっていたのですれ違う人の足しか見えず視線は気にならなかった。もうヤダ……
いつもの小部屋に戻ってきたオイラは、ベッドの上で時間を掛けて食事を取った。
なんとか身体を制御して、動作を小さく体力を使わない様に頑張って食べた。
頑張るって、体力を使いそうな言葉だよな。自重しよう、うん。
ふと、ベッドの隅にある本に気がついた。
サイズ的にはA4くらいか、表紙に飾り気もなく背表紙も普通だ。
(そういえば、ずっと傍に置いてあったな。キンキン罰ゲームオッサンの本じゃないのか?)
何気なく開こうとしたが、強い力で拒まれる。全く開かない訳じゃなさそうだ。
開こうとするとググッと踏ん張っている感じで堪えている。
オイラと本は、数分程度力比べをしたが、結局のところ開かなかった。
(本にさえ勝てない腕力かよ……)
流石にイラっと着たので、ベッドから本を追い出した。
ボフン!
落ちた本は着地と同時に跳ね上がり、オイラに向かって飛んできた……
そして目の前が真っ白になり、またオイラは意識を失った。