49) 講義を受けるのね。
溜め込んでいた討伐部位を不用意に納品した事で、ギルドランクがCまで3つも飛び級してしまった……
しかし、中身が超初心者なオイラは思い切って講習に参加してみた。
オイラは今、冒険者ギルドの2階に上がり初心者講習に来ている。
そして、講習の受付で認識票を確認された時、二度見された。
「ずっとソロで活動してたんだ、でも最近は限界を感じてね……パーティを組む参考にしたいんだ。」
苦しい言い訳をしながら講義室に入る。
なんだか久し振りに教室に入って講義を受ける気がする。半年前は普通の光景だったのになぁ。
講義の内容的は難しいものではなく、一時間目はダンジョン内でのマナーだった。
基本的に前の世界であったオンラインRPGと、かなり被っていた。
横殴りや戦利品の横領、無理な行軍に無謀な挑戦をしないとか禁止事項の説明。
消耗予定の残り4割程度で帰還する等の死なないための10ヶ条など。
受講は任意参加ということで、周りは真面目に講義を聞いている。
真面目過ぎて怖いくらいだ。
二時間目は職種によって分けられた。
オイラの認識票にはまだ職種が未記入で“無職”だったので基本的な講座となった。
戦闘時の立ち回りなどをテーブル上に配置された駒によって説明された。
後方からの攻撃射線に入らないとか、逆に前衛の動きと敵の動きを予測するなどなど。
「まぁ、馴れてくれば身体が覚えるさ。」
講師がサラッと言ったが、馴れるまでに死なない事が重要なんだろうな……
「ねぇ、登録してどれくらい?」
二時間目の後は昼休憩らしく、オイラは講義室で暇を持て余していたら、急に後ろから声を掛けられた。
「えっと10日くらいかなぁ?」
「やった!私より新人だよ~!」
なんだかテンションの高い娘が目の前の席に座り込んできた。
「私も職種が決められないんだよねー」
「特技とか無いのですか?」
「えっとね、職判でシーフしか出なかったのよ。でも、シーフって何だかお荷物っぽいから嫌なんだよね~」
「宝箱から得られるモノって、高額な魔道具が多いじゃないですか。」
「うん、そうなんだけどね。やっぱり後ろでコソコソってイメージがあるんだよね。」
「感の良いシーフが居ると生存率がかなり上がると思うんだけど?」
「あれ?私が感知スキル持ちって解った?」
「いや、知らないですよ。今、自分で曝露しただけですよ。」
「ありゃ、しまった!スキルは隠すのが基本って習ったのに……」
「ええ、大丈夫ですよ。他言しませんから。」
「むう……いい人ね。名前はなんていうの?私はミューっていうの。」
「オイラはナナシノ、宜しく。」
「ナナシノって……超怪しい格好よね?」
「ほほう、その怪しい人物に話し掛けるとは何故に?」
「そりゃあ、“感知”のおかげよ?ナナシノは、見た目より中身の危険は感じられなかったし。」
そう、講義中もオイラの隣に座ろうとする者は居なかった。
幽霊のような灰色ローブにスッポリ覆われて、顔を完全に隠す仮面なんかつけているからなぁ。
仮面なら講義中に寝ていても、絶対に解らないだろう。寝てないけど。
そして、そんな怪しい幽霊の前に座り込んでいる娘は……ミューと名乗った獣人だ。
猫目で猫耳、基本は人間で頭のパーツの一部が猫だった。隠れている部分は解らないけどね。
手は普通の人……ちょっと爪が尖ってるくらい。
毛の生え方も普通の人っぽい。黒毛ロングで後ろで無造作に縛っているだけ。
「ん?どしたの?急に固まっちゃって。」
「いや、綺麗な髪の色だなぁと思ってさ。」
「うよ!?急に何言い出すのっ!?」
「あぁ、ごめん。あまり見ないからね……黒髪。オイラの髪もそんな感じ。」
オイラは少しローブを捲って髪の色を見せた。ちょっと猫娘さんの目つきが鋭く変化した。
「そっか、なるほどね。うんうん、解るよ。」
「ん?何を勝手に解釈してるんだか……」
「ううん、大丈夫!黒髪同士で仲良くしようじゃありませんか。」
「え?なに?何故にそんな連帯感を醸し出す?」
「あ、そうだ!ナナシノの職判は何が出たの?」
「職判?」
急に話をとんでもない方向に変えたな?さっきもチラッと言ってたが、そもそも“職判”ってナニよ?
「あれ?まだ受けてないの??迷ってるから無職者講習を受けたんじゃないの?」
「迷うも何も、職判ってのが解らん。」
「んじゃ、講習が終わったら受けに行こうよ!ね?」
なにやら変なフラグが立ってしまった気がするが、断る理由もなく受けてしまった。
昼休憩も終わり、最後の講習時間となった。
レベルアップについての説明だった……
生き物との魂の交差、つまり試合や殺し合い等の相手との交流の粘度によって得られるのが経験値になる。
一番多く経験値を得られるのが、相手を殺すという行為らしい。
死ぬと魂が拡散するらしく、殺した相手がいる場合はそこに集中的に流れ込むと。
経験値はハッキリとした数字で表記されるものではないが、レベルは魔道具を使うと数値で顕れる。
レベルが上がるとクラスアップや称号が得られ、何かと都合の良い待遇を受けられるという事だ。
「ナナシノー!一緒に行こうよー!!」
ミューは授業が終わるとダッシュで扉の前まで走り、オイラに向かってむっちゃ手を振ってやがる……周囲の目もオイラに向かってるぞ。目立つじゃないか、やめるんだ。
「んもう、のんびり屋さんなんだから。ほらこっちよ。」
ミューはローブに隠れたオイラの腕を掴めず、裾を引っ張る感じで講義室を連れ出した。
“職判”はギルド一階の隅にある立板で仕切られた銀行のATMのような場所だった。
そこにはステータスプレートと占い板?あとはジョブプレートが並んでいた。
ここで、ステータスオープンというと3つのプレートが同時展開するらしい。
なるほど、以前ここで誰かが「ステータスオープン」と言うとオイラの仮面にも情報が流れ込んできたわけだ。
前置きはどうでもいいか。取り敢えずオイラが就ける職業を調べないとな。なんだろな~?
「ステータスオープン」
パシししン。
ジョブプレートに就けると判断された職業が羅列される。ステータスは仮面に表示されているよりも情報量が少ないようだ。
就ける職業って、流石に魔法使い系が多いな……あいうえお順では無いので読むのが面倒になってきた。
っと、なにやら後ろが騒がしいな?
何故か取り囲まれていた……オイラが何かした?




