04) パワーアップしたのね。
「身体強化魔法ですよ、かなり強力な」
小柄ちゃんはオイラから画鋲を抜いた後、えっへんと胸を張る。
胸を張っても全然変わらないとか、そのへんは黙って置いておこう。
「先生、まだ身体が重いんですが?」
「ほえ?なんで??」
「イヤ、だからオイラに聞かれても……」
「すっごく強力な身体強化魔法なんだよ?」
「だから、強力と言われても……知らんがな」
「こう、ほら……もう素手でベッドを叩き割るくらいできそうじゃない?」
何度も疑問符をオイラにぶつけるな、こっちは何言ってるかサッパリわからんのよ?
声は出せるようになったが身体の方は全然ダメだ、動かない。ヤブ医者じゃないのか?
っていうか、小柄ちゃんは医者か?
などという疑問符責めをしても仕方がない。話ができるまで回復したのは事実だ。
「で、オイラに何をして何が起こってるのかが全く以て解らんのだが?」
小柄ちゃんは首を傾げてオイラを見る。
こっちを見られても答えになってないのだが。
「あら、自覚なし?呪われたみたいなのよさ?」
「誰が?」
「キミ?」
「オイラ?」
「そうよ?」
うん、何か意思の疎通ができていないな。何言ってんのかサッパリサッパリだよ。
よし、内容を変えて聞いてみるか。
「何故にオイラが呪わるような状況になったか解らんのだが?」
「古龍の死に際の呪詛に直撃したの。覚えてない?」
また質問を質問で返されたぞ。こりゃダメかもしれん。
龍とか魔法とか呪詛とか……邪教関連か?
あるいは、オイラみたいな一般ピーポーには知られていない事実ってヤツかあるのか?
無理矢理に考えを纏めようとしたオイラに追い打ちが掛かる。
「それにしても、私が得意とする解呪魔法を弾くなんて素晴らしい呪詛ね。流石に古龍……亜神は凄いわ」
えっと、えーっと。
理解出来そうにない単語が出ましたよ?ここ、試験にでも出るんだろうか?って感じですよ?
「と、いうわけで私が解呪担当となったワケよ。解った?」
「あぁ、すまん。全然理解出来てない」
「どうして?」
「知らんよ?」
アレだな、とりあえず会話ができるようにしてくれたのは事実だな。
「まぁ、声がシッカリ出せるようになったのは有難い。本当に助かった」
「あ、いえいえ……どういたしまして。別に礼を言ってもらうために……」
小柄ちゃん、正面切って礼を言うと口篭った。可愛いな、デレたか?
「と、とりあえず意識が回復したのなら調査の続きをしないとね?」
「また、解らんまま話を進めるのか」
そういって小柄ちゃんは再度ドアから廊下へ顔を出して叫んでいる。
間もなく、先ほどのガタイ君が入ってくる。背中に何か背負って……
「よっこいせ……っと」
オイラは今、ガタイ君に背負子という薪を運ぶ道具で運ばれている。
普段より高い目線で不思議感一杯で楽しいが、周囲の目が痛すぎる。
そして、そんな見世物パンダ体験が小部屋に入ることで終了する。
「よっこらしょ」
ガタイ君はオイラを丁寧に椅子に降ろし、力技でテーブルへ向けた。
まるで赤子の様だ……こうなったら、バブーとか言ってやろうか。
「さて、昨日はお疲れ様でした。呪いが気になりますが検分させていただきますね」
小柄ちゃんとは対照的な大柄な修道女さんがオイラを見つめる。
テーブルの上にはパーティ編成で見た感じの金属プレートが置いてある。
「これはステータスプレートと言って、触れた人の個人情報が確認出来る魔道具です」
「?」
「説明するより、実際に触れていただく方が解り易いと思うので使ってみましょう」
大柄サンはオイラの手を取り、プレートの上にそっと置いた。
「さ、恥ずかしがらずにステータスオープンと仰って下さい」
「はい?」
「騙されたと思って言ってみて下さい」
「騙された?」
「いえいえ、ステータスオープンと言うんですよ?」
「す、ステータスオープン?」
言うなり、パシンと小気味の良い音がした。
「そうそう、それで貴方の情報がこのプレートに表記されます」
プレートから手を逸らすと、大柄サンが覗き込む。
「えっと……」
言葉に詰まった大柄サン、沈黙が続いたのを不審に思ったのか小柄ちゃんがプレートを覗き込む。
プレートの文字列をザッと読んだ感想は……
「ほえぇぇぇぇぇ!?」
怪音波を含む驚嘆の声がオイラの耳元で炸裂した。
耐えた、今回は意識を手放していないぞ。