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勇者36番  作者: ハムリンゴ
第三幕:捨てられても、頑張ろうと思う件について。
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40) 追われたら、逃げるのね。

 昨日、アイロさんを見捨てて宿屋に戻った次の朝、オイラはアイロさんと“再開”した。


「もう一度聞く、俺を見捨てて行ったな……?」


「見捨てるだなんて、とんでもない。宿屋の手配を忘れてましたので、手続きに行っただけですよ。」

「その割には、戻って来なかったよなぁ?」


「実は迷子になりまして。」

「嘘言え、道一本の直線じゃねぇか。」


「あ、はい。ごめんなさい……面倒事に巻き込まれたくなかったので逃げました。」

「その見上げた根性を迷宮に向けて見ないか?」


「何度も言うように、目立つのが嫌いなんですよ……」

「あぁ、その理由はギルドのオッサンに聞いてきた。安心しろ、漏らしたりしねぇ。」


「じゃ、そういうことで。」

「待てい!“そういう事”じゃねぇだろうが!?」


「これから、朝御飯を摂りに行きたいんですよ?」

「なんだ、奢るから着いてこい。」


 また、ご飯に釣られるオイラなのでしたぁ……


「で、予定はあるのか?」

「えぇ、一度商都に向かいます。」


「商都か、良い事ないぞ?」

「でも、約束をしておりまして。」


「そうか、約束なら仕方がないな。」


 意外とアッサリ引いてくれたが、絶対裏があるに違いない。何とか逃げないと、面倒なフラグを乱立されそうだ。


「そうだ、商都までなら護衛のクエストがあるんじゃねぇか?移動もできるし一石二鳥だぞ?」

「なるほど、移動する手段ですか。ソコまでは考えていませんでした。」


 奢りの朝食後、冒険者ギルドへ向かった。

 しかし、駆け出し冒険者に他人を守るなんて期待はされていない。

 護衛のクエストは上位ランクの仕事だったようだ……


「なるほど、Fランクに護衛なんて到底無謀ですよねぇ……」

「なんだ?腕は俺が保証するから、無理矢理乗り込めよ?」


「また……昨日と同じイベントでも発生させる気ですか?」

「あ、う……そ、そうだな。しかし、わざわざ運賃払ってまで移動するのか。」


「移動手段に困ることはありませんし。」

「あぁ、そうだったな。お前の移動手段は、ありゃ反則だよなぁ。」


 そういえば、アイロさんには“跳躍”を見られていたんだっけ。


「しかし、俺にはあの移動速度について行けないぞ?」

「え?アイロさんも商都に用事があるんですか?」


「あ?何言ってんだ?お前に着いていけば楽しそうじゃねぇか?」

「えぇ?アイロさんの用事は無いんですか!?」


「暇だし。」

「暇って……」


「そうか、暇を持て余しておるのか?じゃったら良いクエストがあるぞ?受けてみぬか?」


 アイロさんの肩越しに緑色のとんがり帽子が生えてきて、続けて細身の骨っぽい手がアイロさんの肩をガッチリ掴んだ。


「ほげっ!?ま、待て!急に?俺は、商都に、用事が……」

「ならば仕方が無い、ギルド長の権限を使って目の前の暇そうな冒険者に強制招集を掛けるかのぁ。」


「あ、いや、は……腹が!腹が痛ぇ!俺、帰るわ!」

「そうか、それでは向こうで休むが良い。ついでにじっくり話でもしようかの?」


 何故か昨日と同じ光景を見た気がする。

 アイロさんは、いつの間にか隣に立っていた緑のギルド長に魔法で拘束され、拷問部屋……保健室まで連行されていった。


「何かあったら、ギルドで伝言を頼めるからっ!チェックしておけよ!」

「は~い、お達者で~。」


 アイロさんの別れの言葉だった。


「商都でも冒険者ギルドの登録が必要でしょうか?」

「大丈夫ですよ?国内ならどこでも、その認識票で通用します。」


 受付のお姉さんに何か不思議そうな顔をされてしまったが、妙な質問だっただろうか?


「それと、伝言の方法を教えて下さい。」

「それなら、この紙に宛先と伝言文を書いて提出して下さいませ。」


 伝言は全国一律料金で発信でき、どこの冒険者ギルドでも伝言を受け取る事が出来るそうだ。

 受付のお姉さんに“アイロさんへ、僕を探さないで下さい”という内容の伝言文を渡した。しかし、後で直接渡せるからと料金は発生しなかった、ラッキー!


 ついでに商都までの移動方法を訪ねてみた。

 徒歩、駅馬車、護衛、商隊などの方法があるそうだ。メジャーなのは駅馬車らしい。


「御存知でしたら、申し訳ないのですが……訪問クエストはお済みでしょうか?」

「訪問クエスト?」


 受付のお姉さんが、オイラに訪問クエストを勧めてきた。解らないので聴いてみる。

 各街にある冒険者ギルドを訪問するだけでクエスト達成となり、報酬が出るとの事。

 冒険者を国内に循環させるための取り組みで、全て巡るとギルド加入時の手続き料金を少々上回るらしい。

 ただし、各拠点につき一度という制限が当然付いているが。


「訪問するだけで、クエスト消化って……」

「色々巡って戴いて、自分に合った街を探すのも楽しいですよ?」


「なるほどねぇ、しかし取り敢えずは商都です。」

「そうですか、お気を付けて行ってらっしゃいませ。」


 冒険者ギルドから出て、街の外へと移動する。ちょっとした喧騒もなんだか落ち着かない。やっぱ静かな森でしょ?

 商都方面の門から出ると、今度はスラム街っぽい道を通過する。イベントは発生しなかった。いや、しないほうが良い。


「結局、小柄ちゃんに会えないままだったなぁ……」


 20分程で街道沿いの森が見えてきて市街を振り返り、呟いてみた。

 会いに行って驚かれたり捕まったりするのが面倒っていえば、面倒なんだけどなぁ……

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