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勇者36番  作者: ハムリンゴ
第一幕:急に呼ばれて、困ってしまう件について。
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01) たぶん、召喚されたのね。

「次の電車に乗らないと拙い!頑張れオイラ!」


 チョット寝過ごした、昨晩のオンラインゲームが祟ったな。

 ボス戦で大詰めを迎えたとこで中断はできなかった。抜けたら寝付きも悪いだろうし。

 オイラはキーパーソンでは無いので、居なくなっても支障は無かっただろうけど。


 だが、それは今日の遅刻の言い訳に出来ない。独り言は発するが……

 通い慣れた線路沿いの道を周囲に注意して自転車でひた走る。

 いつもなら乗っているはずの電車が、時間通りにオイラを追い抜いていく。

 次の電車に乗り遅れたら、確実にアウトだ。


 ふと、視界の先にチラチラと何かが“見えた”

 いつもの偏頭痛の予兆かと思いきや、進行方向30メートル先に光るマンホールが出現した。

 直感的にヤバイと感じたのでハンドルを切り、そのマンホールを避ける。

 避けた先でまた、光るマンホールが現れた。


「あらよっと!」


 自分で言うのも何だが、華麗なハンドルさばきで2つ目のマンホールを避けると、目の前に3つ目の垂直に立った光るマンホールがあった。

(マンホールじゃないじゃん……)


「あぶっ!」


 そして、オイラは光るマンホールに突っ込んだ。ブレーキを掛けても制動感が全く無く、その気持ち悪い感触に慄く。

 さらに全方向真っ白な空間にビビリながらも、自転車からは落ちていない。

 もしかすると壁に衝突して死んだのかも知れないとも思った。

 いや、何か違うな。ハンドルを握る感触と自転車のスピードはまだ体感できている。

 やはり死んだらこうなるのか?違和感半端無いな……


『ようこそ!アストってええええぇぇぇっ!?』


 数秒は走っていた真っ白世界の中、急に女性の声と同時に悲鳴が聞こえたので、思わずブレーキを握り込むが、止まる感覚は全くなかった。

 そのままのスピードで滑るように突っ走っていた。

 声の主を轢いたり巻き込んだような感覚も無かったが、大丈夫だったのだろうか?


 急に真っ白な世界から解放され、慌ててブレーキを掛ける。大丈夫だ、今度は止まれる!

 ザザッと勢いよく急停止を決めようとしたが、その試みは失敗に終わった。

 “何か”を轢いて止まったのだ。

 今、自転車から落ちて地面にヘタリこんでいるオイラが居る。


「痛てぇ……」


 かなり痛いがそれを堪えて起き上がり、何を轢いたのか周りを見て確認する。人だったらヤバイぞ?


 ゴッ!


「あだっ!?」


 頭の上に分厚い本が落ちてきた。もちろんオイラの物じゃない。

 やばいな、自分のではない本が降ってきたって事は、轢いたのは人間って事だよな?

 前方を見ると無骨な灰色煉瓦がビッチリと組まれた壁があり、自転車が転がっていて人は居ない。

 あれ?ココ何処だ?通い慣れた道にこんな場所は無いハズだぞ?と考えてたら背後で大きな声がした。


「殿下!大丈夫ですか!?御気を確かにっ!」

(は?何アレ?何の邪教徒?)


 黒い邪教徒風のフード付き貫頭衣を着た人が駆け寄って来た。

 しかし、黒邪教徒の向かう先はオイラではなく隣で倒れているオッサンだ。うん、確かにオッサンだ。よし、無事……には見えない。

 殿下と呼ばれたオッサンの格好は、黄色い縁の青い前掛けに真っ白な全身タイツ、赤いブーツに無駄に大きな襟巻き、緑色のマント。


(それ、何かの罰ゲームか?)


 罰ゲームオッサンは、駆け寄る邪教徒をブンブンと片手で制しながら、ヨロヨロと産まれたての子鹿のように立ち上がる。

 あらためて態勢を整えビシッと立ち上がり……


「わ、我は大丈夫だぁ!それより今しゃっ!?」

(あ、噛んだ?噛んだよこの人。しかも、凄いキンキン声じゃないか。)


 あ!そういえば轢いたんだ。とりあえず謝らないと不誠実な人間として見られてしまう。


「あの、大丈夫ですか?お怪我はありませんか?」

「イヤイヤイヤぁ、大丈夫だぁ。全くもって問題無いぞぉ。衛兵ぃ!ソコの者を検分に連れていけぇ。番号札は何処だぁ?」


 そう言うと何やら変な記号の付いた板を近くの邪教徒から手渡され、チラリと目を落としてその板をオイラに渡す。


「よぉうこそぉ36番よぉ、我は大丈夫だぁ。全くもって大丈夫だぁ!」


 変な決めポーズ?を取ったキンキン罰ゲームオッサンは、続けて不自然に首をひねり自らの左肩を見る。

 おぉ?左腕がプランプランしてるんだけど?脱臼してるんじゃね?


「あわわわわ、我の腕がぁ!?」

「殿下!御気を確かに!」

「今、治療を行いますから!」


 色の違う白い邪教徒が走り寄ってブツブツと何やら呟きだした。

 呟き終わると、ポワーンと手が光りだした。その手をキンキン罰ゲームオッサンの肩に添える。

 そうだ、手当ての語源はアレだったな、患部に〈手を当てる〉と。何故に手が光ってるのかは解らんが。

 続いて白邪教徒はキンキン罰ゲームオッサンを仰向きに寝かせ、片足を脇に入れて腕を思いっきり引っ張りって捻る。

 何気なく楽しそうな顔で“殿下”を足蹴にしているような気がする。

 なーんて思ってると、茶色いマッチョの邪教徒2人にオイラは両脇をガッチリ固められて引き摺られて行く。


「痛い痛い!自分で歩けるって、歩けるってばさ!」


 むさ苦しい茶マッチョ邪教徒の腕を振り解き、パンパンと膝を払って立ち上がる。

(っと…ココどこよ?)

 ようやく、オツムが回りだしたオイラは周囲を見回す。

 足元は煉瓦、壁も煉瓦、天井は一枚岩盤か?

 変な格好のオッサンに、邪教徒な怪しい人、変な防具をつけた人も居る。

 隣の部屋に促されて行くと、オイラと同じ様に板を持った人達がひとクラス分ほど居る。

 板持ちの人は質素なワンピース姿で、ここは病院か何処かの収容所かもしれない。そうすると、この板は整理券?

(あ!そうだ、ヤバイ。学校に連絡しないとダメじゃん、完全に遅刻だよ。)

 ポケットから携帯を取り出しメニューを開き、通話ボタンを押す。


「あれ?圏外……か?」

「ここ、電波が届かない場所らしいよ。地下かな?衛星回線の電話もダメなんだってさ。」


 話しかけてきた女の子の言う通り、携帯のパネルにはしっかりと“圏外”と表示されている。こりゃ今日は無断欠席扱いだな。

 仕方ない、今日は諦めて休みという事でこのイベントに付き合うとしますか……んで、結局何のイベントなんだか。


「それでは、今から順番に退出していただく前に腕輪を装着してくださぁい」


 なにやら急に明るい声がして、そっちを見るとフードを取った可愛らしいお姉さんが腕輪を手に持ち、ブンブンと振り回している。

 邪教徒の配る腕輪?を受け取り、そして皆と同じように自分の腕に装着する。フリーパスか何かかな?


「結局、ココってなんなんだよっ!」


 何やら大きな声で喚く人が出た。騒いだところで良い方向に流れるわけが無いのに。

 喚いた男性は、数秒もしないうちに茶マッチョ邪教徒によって別室へ強制連行されていった。素晴らしい程に対応が速いな、おい。

 それを見て装着をためらっていた人達も、渋々装着したようだ。

 っていうか、結局何のイベントだよ?


「装着したようですね~。それでは、最初に言っておくことがありますぅ~。罰!」


 全身に強烈な痛みが走った。思わず膝を付いた。

 同時に周囲から複数の悲鳴や呻き、叫び声が響く。


「と、いうわけでぇ。逆らうと何度でも言いますよぉ~。罰!」


 また全身に激痛が走る。何が起こったか解らなかったが、お姉さんの発するキーワードで激痛が走る事と腕輪が原因であるだけは、直ぐに理解できた。

 悲鳴と共に怒号が飛び交う。


「逆らいましたね?罰!」


 また、激痛が走る。そのまま倒れこむ人もいた。

 みんな何が起きたか理解したようで、部屋の中は怒声は無く呻き声だけになる。

 なんとなく理解できた、騙されたようだ。ただ、腕輪なのに全身が痛むなんてオカシイ気がするが……


「みなさ~ん!一旦部屋に戻ってお食事をして頂いて、その後に行事があるので参加していただきますぅ~」


 お姉さんは軽い口調で続ける。


「部屋までの案内とお世話は、担当の人が居ますので指示に従ってくださ~い」


 邪教徒の中のオバチャンがオイラへ手招きをするので、素直に付いて行き案内された部屋に入る。

 椅子に座ったオイラを見て、食事とベッド、トイレ等の設備の単純な説明をし、思い出した様に囁く。


「そうだ、理解できているか?私もお前が気に食わなければ、こうなるよ……罰」

「ぐっ!」


 オイラは身体を突き抜けるような衝撃に堪えられず、椅子から転げ落ちる。

 オバチャンはニヤニヤと楽しそうに、這い蹲ったオイラを見下ろす。


「ちっ、暴れるんじゃないよ……罰」

「っ…!」


 もう、転げ落ちる様な場所もなく、その場で蹲る。


「よし、良い子だ。食べて待て」


 偉そうな邪教徒オバチャンは部屋を出て、ドアを閉めた。トドメにガチャリと外側から鍵を掛けて。

(あぁ、どーすんだこれ……詰んだのかオイラの人生。)


 んで、結局はテーブルの食事を摂って待つだけしかなかった。

はじめまして、よろしくお願いします。

この物語は作者の性格上、思いついたように更新するでしょう。

さらに、勝手に改稿や編集などもやらかします。

どうぞお気を付けてお読みくださいませ。

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