ハートシャドウデス刑務所
「死ぬ寸前の締め付けが最高だったぜ」
反省の色が全くない事を法廷で口にするのは、幼女連続強姦殺人の被疑者、大熊六郎だった。
判決は、死刑だったが、抗議も、控訴もなかった。
六郎自身、長い懲役より死んだ方がましと公言していた。
そんな態度を被害者遺族が許せる訳がなかった。
警視庁。
「『鬼畜に安楽な死を与える訳にはいかない。この世で味わえる最高の苦痛の中、死に行くこそ相応しい』これが、今回のハートのカードに書かれていた内容です」
賢一の報告にターゲットがはっきり解ってしまった捜査員達は、複雑な顔をする。
それでも謙治が告げる。
「どんな奴であっても、司法の手による死刑以外を認める訳にはいかない。我々は、この殺人を防がなければいけない」
乗り気にならない捜査員の中、源三が立ち上がり。
「考え方を変えよう。死んでもかまわない奴が囮になったと思えばいい。刑務所だったら、奴を確実に捕まえられる筈だ」
警察官としては、問題がある発言であったが、その場を一番納得させた。
苦笑しながらも謙治が続ける。
「今度こそ奴を逮捕するのだ」
こうして、動き出した警察だったが、依頼人の捜索で問題が出た。
「ですから、私が依頼しました!」
「いえ、あたしこそ本当の依頼人です!」
被害者遺族の多くが依頼人として名乗りあげたのだ。
「だから、本当に依頼人でしたら死神のカードを見せて下さい」
賢一がそう言うと即座に拒否される。
「約定を違えられない!」
大きく溜め息を吐く警察だった。
刑務所。
ハートシャドウデスの殺人予告に警備が厳重になるなか、業者の人間が食材を搬入していく。
業者の人間は、厳しくチェックされ、搬入される食材の段ボールも一つ一つ運ばれた。
こうする事で侵入を防ごうとした。
搬入が終わり、運びこまれた段ボールは、食糧庫につまれていた。
その中の一つ、ジャガイモの箱から心が出てきた。
「チェックが甘いな」
持ってきた袋を広げ、ジャガイモを詰め込み、監視の死角をぬって移動する。
深夜に到着した六郎の監獄の周りは、警備員が居たが、心は、眠気を促す、常人には、聴こえない音を出す。
暫くすると警備員が居眠りをする。
「ガキを犯させろ! どうせ死刑なんだ、一匹増えたくらいかまわないだろう?」
ふざけた事を本気で言う六郎の声が聞こえて来る。
心が警備員から鍵を無断借用し、中に入る。
「上玉じゃないか! 死ぬまで楽しませて貰うぜ!」
襲い掛かる六郎。
心は、触れられる直前に一歩下がり、鍼を取り出して六郎の頭に深々と突き刺した。
「何をしやがる!」
騒ぐ六郎に心が持ってきた生のジャガイモを投げ渡す。
「生で食えるか!」
苛立つ六郎だったが、お腹を押さえて、戸惑う。
「何だよ、この空腹は!」
心が笑顔で告げる。
「脳の空腹中枢を狂わしたから永遠に空腹から逃れられないよ」
質問した六郎は、極限の飢餓から生ジャガイモを貪り始めた。
腹が妊婦の様に脹らみ、今にもはち切れんばかりだが、六郎は、手を止められない。
裂けかねない状態での激痛が六郎を襲う。
「もう食べたくない……」
頭では、限界を理解しているのに三大欲求の一つ、食欲を無理矢理解放された六郎に手を止める術は、無かったのだ。
そのまま、のどまでジャガイモを詰めこみ窒息し、激痛と飢餓の中、絶命する。
心の中学校。
「インターネットで、強姦殺人の犯人の死亡シーンが出回ってるって」
奏歌の言葉に心が首を傾げる。
「ヒット数がとんでもないけど、人が苦しんで死ぬ所を見て何が楽しいのかな?」
「心は、解らなくて良いの」
奏歌が言葉に心が聞き返す。
「そんな物なの?」
「心みたいな、真人間には、絶対に解らないし、解る様になる必要も無いの!」
断言する奏歌であった。
死は、平等って言いますが、そんな事は、ありませんよねって感じの話です。
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