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ハートシャドウデス登場

 都内のラブホテで警官が現場検証を行っていた。

 男の死体が出たのだ。

 死因は、腹上死、通常なら事故の線で捜査される事件だが、今回は、早々に殺人事件と確定した。

 それも容疑者は、現場にいた女性では、ない。

 警視庁の捜査一課の刑事、桜井源三サクライゲンゾウの被害者の服のポケットから出てきた大鎌が描かれたカードを持つ手に力が入る。

「ハートシャドウデスの野郎!」

 それを見た若い刑事、梅田賢一ウメダケンイチが制しする。

「源三さん、それは、証拠物件なのですから乱暴に扱わないで下さい」

 源三が怒鳴り返す。

「解ってる! それより、あの女は、どうだ?」

 賢一が答える。

「男とは、初対面で、自分でもどうしてこうなったのか解って無いようです。まず奴では、ないでしょう」

 舌打ちする源三。

「とにかく、少しでも奴に繋がる情報を集めろ。殺人代行なんてふざけた商売をこれ以上続けさせるかよ!」

「はい!」

 賢一も精力的に動く。



 都内にある私立女子校の中等部の教室。

「今朝も出たそうだよ、ハートシャドウデス」

「本当?」

「本当! 今度は、腹上死だって」

「凄い! 依頼人の望んだ殺し方を実行する殺人代行者、ハートシャドウデス。まるで、悪人を倒すダークヒーローだよね?」

 そんな会話に気の強そうな少女、桜井奏歌ソウカが立ち上がり怒鳴る。

「人殺しがヒーローなわけないでしょ!」

 一気に静かになる教室。

 席につく奏歌に横で奏歌の宿題を写していた、小柄の少女、志野上心シノカミココロが言う。

「事件のせいで、朝早くから父親が呼び出され寝不足だからって当たらない」

 奏歌は、頬を膨らませて言う。

「だって変でしょ? 犯罪者がヒーロー扱いされるなんて」

 心は、気にした様子も見せず宿題を写しながら答える。

「時代劇だからって、殺し屋を主役にしたドラマが流行る世の中、諦めな」

 不満そうな顔をする奏歌。

「心もそう思うの?」

「人殺しが出来る人間は、狂った化け物だよ」

 心の即答に奏歌が満足するのであった。



 警視庁の会議室。

「先ほど、死神のカードを持った依頼者が自首をしてきました」

 賢一の報告に課長の竹中謙治タケナカケンジがハートのカードを手に持ち言う。

「これで三枚のカードが揃った。今回の事件がハートシャドウデスの仕業であることが確定したな」

 並べられた三枚のカードが一枚のハートの影から浮き出た大鎌を持つ死神の絵になる。

 そして、ハートのカードが捲られる。

「動機が書かれたハートのカードが事前に警察へ送られ」

 次の大鎌のカードが捲られる。

「犯行現場に殺害方法が書かれた大鎌のカードが置かれ」

 最後に死神のカードが捲られる。

「依頼人が殺害対象の名前が入った死神のカードを持って自首をする。事件は、実行者不在のまま、裁判が行われて解決とされてしまう」

 淡々と語っていた謙治だったが、机を叩く。

「こんな警察を馬鹿にした殺人代行者を放置出来るか!」

 刑事たちは、全員、同様の気持ちだった。

「奴を、ハートシャドウデスを一刻も早く捕まえろ!」

「はい!」

 一斉に動き出す刑事たち。

 その中の一組、源三と賢一がハートシャドウデスの過去の事件資料をチェックする。

「ハートシャドウデスが現れたのは、一年ほど前、一回の依頼を三百万で受け、前金は、二百万、殺しの確認後、後金百万は、福祉団体に寄付させています」

 賢一のまとめに源三が苛立つ。

「寄付なんかで殺人が許されると思ってやがるのか!」

 賢一は、肩を竦める。

「相手の考えは不明ですが依頼人との接触機会は、前金の受け渡しの時にカードに依頼内容を書かせる一回のみです」

 鋭い目付きで源三が確認する。

「今回の依頼人は、どこで接触した?」

 賢一が資料を確認しながらいう。

「近所の喫茶店です」

 源三が立ち上がる。

「まずは、そこから当たるぞ」

「はい!」

 賢一も返事し、移動を始める。



 喫茶店、フォーチュンで心がパフェを食べていた。

「あちきとしては、中学生をラブホテルに待機、死亡確認させるのは、青少年保護条例的に問題があると思うよ」

 それに対し隣に座るシスター、リリスが心の太股をいやらしいてつきで擦りながら言う。

「私としては、一緒にいって、心ちゃんの未成熟な体を堪能したかったわ」

 顔を赤くする心。

「仕事中は、駄目」

 リリスは、スカートの中に手をいれる。

「だったら今なら良いのね」

「見られたら恥ずかしいよ」

 俯く心を楽しそうに観察するリリスだったが、真剣な顔になって一枚のカードを渡す。

「ターゲットは、金融会社の社長、詳しい情報は、何時も通りの方法で」

 心は、そのカード、大鎌が書かれたカードをポケットにしまう。

 その時、ドアが開き、源三と賢一が入ってくる。

「奏歌のお父さん!」

 心の声に源三が答える。

「君は、娘の友達の志野上さんだったよね? そちらの人は?」

 リリスが立ち上がり、頭を下げる。

「お噂は、心ちゃんから聞いています。心の保護者のシスターリリスです。何時も心ちゃんがお世話になっております」

 それを聞いて源三も頭を下げる。

「こちらこそ、確か、志野上さんのご両親のお知り合いという話でしたよね?」

 リリスが頷く。

「はい。両親を事故で亡くした心ちゃんを引き取って育てています」

 沈痛な表情をする源三に心が尋ねる。

「ここに来たのは、ハートシャドウデスの調査?」

 驚く賢一。

「どうしてそれを?」

「だって、今朝、奏歌がその件で起こされたって騒いでいたもん」

 心の答えに源三が眉を寄せる。

「事件の事は、あまりしゃべるなといってあったんだがな」

 リリスが心配そうな顔をして尋ねる。

「まさか、ここにその殺人者が来ていたんですか?」

 賢一が戸惑う。

「気になりますか?」

 リリスが頷く。

「当然です。ここには、心ちゃんがよく来ているのです。もしもその殺人者と何かあったらと思うと……」

 憂うリリスの肩を掴み源三が言う。

「安心して下さい。人道に外れた殺人者など、直に警察が捕まえます」

 それを聞いて心が言う。

「あちき、宿題があるから、先に帰るね!」

 さっさと引き上げる心。

 そして、リリスが尋ねる。

「それで、ここでは、何をしに来たのですか?」

「奴がここで依頼人と接触した可能性が高いので、その調査です」

 答える賢一を源三が睨む。

「一般人に何を話しているんだ?」

 賢一が慌てる。

「今の事は、どうか内密に」

 リリスが頷く。

「解っています。ところで、警察では、ハートシャドウデスの事は、どう考えてるのですか?」

 賢一が難しい顔をして言う。

「事件の度に異なる殺人方法、警察では、ハートシャドウデスは、特定の個人でなく、組織の名前では、無いかとも言われています」

 それに対して源三が言う。

「違う。奴は、一人だ。俺の刑事のカンがそう言っている」

「刑事のカンって、実際問題、殺人に個人のクセが見られない。まるで機械の様な殺人形式だっていわれていますよ」

 賢一の反論に源三が答える。

「だからこそだ。そんな殺人機械みたいな奴が何人も居ると思うか?」

 賢一が怯む。

「それでしたら、独りだとしたら、相手は、どんな奴なんですか?」

 源三が真剣な顔で言う。

「下手をすれば何百人も人を機械的に殺し続けた殺人人形。人を殺す時に、表情一つ変えない恐ろしい男だ」

 それを聞いてリリスが驚く。

「男だって解っているんですか?」

 賢一が頷く。

「はい。起こした殺人の中には、どう考えても女性には、無理な物が多数ありますからね。屈強な男の犯行です」

「なるほど。注意します」

 リリスの言葉に源三が名刺を差し出す。

「もしも怪しい奴を見つけたら、ご連絡をお願いします」

「頼りにしています」

 名刺を受け取るリリス。

 その時、賢一の携帯がなり出る。

「何だって、ハートのカードが送られてきたって!」



 その夜、金融会社の社長室。

 その前では、意識を失った男達が倒れている。

「待ってくれ! 何で、俺が殺されないといけないんだ!」

 デブの金貸し社長が必死に命乞いをする。

 それに対して、ロープを持った心が言う。

「依頼があったから。貴方に嵌められて首を括った男性の奥さんから、貴方を首吊って殺してくれってね」

 金貸し社長は、顔を引き攣らせて言う。

「金か? 金だったら幾らでも払うから、見逃してくれ!」

 手近にあった札束を差し出す金貸し社長に心が笑顔で答える。

「ごめん、あちき、ただ人殺しをしたいだけの狂った化け物だから、交渉は、無理」

 投擲されたロープが金貸し社長の首に引っかかる。

 無駄に豪華な照明にロープをかけ、引っ張る心。

 体重差が二倍以上有る筈の金貸し社長が心の細腕であっさり持ち上がっていく。

 必死にもがく金貸し社長。

「ど、どこ……」

「どこにそんな力があるかって? 普通は、体を護る為に全力は、出せないように出来てるんだけど、あちきは、その限界を脳内麻薬分泌してなくしてるの」

 心がそう説明するが金貸し社長は、顔を真青にして聞いていない。

 そんな金貸し社長が苦しむさまを見ながら心が説明を続ける。

「あちきが生まれた家は、代々暗殺を生業にしてきたの。あちきも物心つく前から人殺しをしてた。でもね、このご時勢、仕事が激減したの。そしたら我慢できなくなってお父さんもお母さんも殺しちゃった。その後、リリスさんが来て、今のお仕事を紹介してくれたの。本当に助かってるんだから」

 笑顔のまま金貸し社長が死亡した事を確認する心。

「仕事終了」

 心は、カードを置いて、事務所を出て行く。

「早く帰って、宿題やら無いと、奏歌もそう何度も写させてくれないもんね」

 人を殺した直後なのに明日の宿題の心配をする心であった。



 翌日の教室、不機嫌そうに入ってくる奏歌に心が手を合わせる。

「奏歌、お願い、最後の問題だけ、写させて」

「一番難しい奴じゃない、出来なかったの?」

 奏歌の言葉に心が涙目で言う。

「色々用事があったの! お願いだから!」

 溜め息を吐きながら奏歌が言う。

「最後の問題だけだよ。今朝もお父さんが呼び出されて睡眠不足」

 不機嫌そうに席に着く奏歌に心が何気ない様子で一言。

「それは、御免なさい」

「そう思うなら、ちゃんと宿題してきなさい」

 心の謝罪の意味を勘違いした奏歌に対して心が頷く。

「うん、次は、絶対にやってくるよ」

 こうして、ハートシャドウデス、志野上心の日常は、過ぎていくのであった。

 正義とか、なんとか無しの単なる殺人代行サービスのお話。

 ちなみにリリスは、心をてなづける為に性的な事までしています。


 とりあえずシリーズ物で、全九本ですが、人気が無ければ続きは、転載しないと思います。

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