第549話 物語とは関係ありません28 『 タイトル未定のプロローグ 』編
4コマ劇場 アイオライト_906・・・・・2015/09/02
シリーズ4
タイトル「物語とは関係ありません28 『 タイトル未定のプロローグ 』編」
プロローグ
まずは空を見上げてみよう。
今が昼なら青空、夜なら星空が広がっている。
もちろん一面雲で覆われている場合も考えられるが――とにかく空には何が見えるかを確認してほしい。
自然物では『鳥』『太陽』『月』『星(惑星や恒星)』、人工物なら『飛行機』『ヘリコプター』『飛行船』『ドローン』、条件が揃えば『国際宇宙ステーション(ISS)』が見えるはずである。
逆にいえばその程度しか見ることはできない。
軌道上にある約1万3千にも及ぶ『人工衛星』や、無数に乱れ飛ぶ『スペースデブリ(宇宙ゴミ)』のほとんどはその存在すら確認できないのだ。
当然、肉眼で見えないだけで各国の宇宙センターなどでは監視されている。
しかし、そんな監視も及ばない、たとえばステルス機能を搭載した『宇宙船』なら……現在の人類が確認できなくてもなんら不思議はなかった。
そんなわけで、地球の静止軌道上に直径100メートルほどの大型宇宙船があった。
ステルス機能によって周りの空間に溶け込んでいる、いわゆる未確認飛行物体『UFO』である。
宇宙船というからには中に人が乗っているはず……いや、この場合は宇宙人というべきだろうか。
だが、この宇宙船には生命体は存在していない。存在しているのは、宇宙船の全システムを統括している人工知能『ファンシー』だけであった。
ファンシーはサイバースペース(電脳空間)において地球上に存在する『仔猫』の姿をしていた。
元々は5歳ほどの少女の姿をしていたが、情報収集の際に見つけた仔猫を気に入って現在の姿となった。ファンシー曰く、この方が何かと都合がよいそうだ。
ちなみに、ファンシーの目的は、地球の情報を収集すること――
一昔前なら、小型のUFOを飛ばして地球人と接触。エイリアンアブダクション(宇宙人による誘拐)を行い、インプラント(体内に異物を埋め込む)処理後、記憶を消して元の場所に戻す。などという面倒な情報収集をしていたが、今はそのようなことをする必要もなくなっていた。
人工衛星を介して地球のネットワークに侵入する。ここ数年で急激に厖大化したビッグデータを解析すれば、どんな情報でも入手することができたからだ。
とはいっても、暇を持て余し、どこぞの有名人のスキャンダルをチェックしているわけではない。ファンシーは、各国の軍事機密やリアルタイムでの戦闘状況、大がかりな犯罪計画や無差別テロ行為などを監視していた。
そのような監視をして、いったい何の意味があるのだろうか。
答えは簡単――情報を解析し、地球侵略するために有効な手段を事前にシミュレートしているのだ。
いや、宇宙人における地球侵略は既に始まっていると言えるかもしれない。
ネット上でまことしやかに語られているのが戦場におけるUFOの襲来である。兵士と宇宙人との大規模な戦闘があったとも噂されていた。
ビッグデータの集計にも『宇宙人』を意味する単語の数が増加の一途をたどっている。
結論から言うと、それらはまったくのデタラメではなかった。実際にファンシーも戦地へUFOや宇宙人を送り込んでいたからだ。
現状における地球上の兵器がファンシーたちの脅威になり得るかどうか。過去数百回にわたって試してみたが、いずれも地球人の総崩れに終わっていた。
未知なる敵を前に混乱するもの理解できるがもう少し頑張ってほしいものである。このままではファンシーの想定した計画に支障をきたすおそれも出てくる。
そこで、ファンシーはある作戦を実行することにした。
それは、このUFOの主、つまりファンシーのマスターにも内緒にしている作戦である。
「侵略者もいるんだから、それを阻止する正義のヒーローが現れても不思議じゃないよね?」
何事にもバランスは必要である。地球人が侵略者に対抗できないのであれば、ファンシーが用意すればよいだけのこと。
幸いにも、ファンシーには当てがあった。
かつてエイリアンアブダクション(宇宙人による誘拐)によってこの宇宙船に招き入れ、現在でも監視対象となっている存在――
あの少年であれば、期待通りの働きをしてくれるに違いない。
多少ベタではあるが、少年の周りで事件を起こし、正義のヒーローにならざるを得ない状況に追い込む。
ビッグデータの解析による未来予測では、少年の暮らす地方都市で無差別テロが発生する可能性が高いらしい。この未来予測を利用すれば、ファンシーのマスターに疑われることなく、少年を正義のヒーローに仕立てあげることができるはずだ。
そうと決まれば話は早かった。
まずは、マスターに未来予測を報告する。これで無差別テロを阻止するため、現場に宇宙人を向かわせることができるだろう。
そこから先は時間との勝負である。
少年と接触し、なんとか信頼を得る。宇宙人侵略の危機を知らせて精神的に追い込み、正義のヒーローになる覚悟を決めさせる。まさに完璧な作戦ではないか。
ほんの少し、少年を騙しているようではあるが気にすまい。
なぜなら正義のヒーローは、『自分の意志とは関係なく巻き込まれて誕生するもの』なのだから。
「……あ、それはヒーローじゃなく……魔法少女か?」
ここにきて、第二の選択肢が発生する。
はたして、少年がさせられるのは『正義のヒーロー』なのか、あるいは『魔法少女』か――
全ての命運は、宇宙船の人工知能『ファンシー』が握っていた。
★ コメント ★
え~、どうでしょう? ← なにが!?(笑)
今回は珍しく、先にいろんな設定を考えてから書き始めました。
ちなみに、マスターと少年の名前が決まらないかぎり続きは書けません(爆) ← 名前を考えるのが一番難しいです