第343話 物語とは関係・・・あります! 『小説版プロローグ』編
時代を遡ること五千年前、人の住む世界――人間界が消滅した。
消滅した原因については諸説あるが……中でも有力なのは神々の戦いに巻き込まれて滅んだという説であろう。
それが真実であるのか、今となっては知るものも少ない。だが、唯一はっきりしたことがあった。現在の世界が人間界の消滅と同時に誕生していたということだ。
精霊界第四聖界クリスタル……。かつて滅亡の危機に瀕した人間界の代替として、精霊神クリスタルによって創造された新たな聖界である。
人間界を追われた人間族にとって、第四聖界クリスタルは第二の故郷となった。
また、第四聖界クリスタルには、人間族の他にも数多くの精霊族が移り住んで来た。
二つの種族は、姿こそ似通っているものの、それ以外があまりにも違いすぎた。
寿命はもちろんのこと、身体能力や物事に対する考え方……。一番の違いは、人間族が種族的には精霊族より魔族に近いということであろう。
精霊族と魔族は古より戦いを繰り広げてきた宿敵同士である。そのため、魔族に近しい種族である人間族も、精霊族には受け入れられないと考えられていた。
しかし、二つの種族は、永きに渡る年月を経て、分かち交わり合うことになる。
そして現在……。第四聖界クリスタルには、純粋な人間族は殆ど存在せず――代わりに精霊族の特徴を併せ持つ新たな種族『精人族』が数多く暮らしていた。
第四聖界クリスタルには、大小合わせて七つの大陸がある。そのうち一番小さなクリストバライト大陸のほぼ中央に、ルチルクォーツという王国があった。
広い国土の周りを山脈に囲まれ、四大属性の精霊たちによって加護を受けているという……他に類を見ない恵まれた国である。だが、そんな加護の影響からか、ルチルクォーツ王国は一つの問題を抱えていた。
便宜上、魔物と呼称されている野生動物たちが――強すぎる精霊力の影響を受けて独自に進化……。他の国の魔物とは比べられないほど凶暴化してしまっているのだ。
魔物たちは縄張り意識も強く、また、精人族を獲物とする凶悪な魔獣も数多い。並みの精人族では相手にすらならなかった。
ルチルクォーツ王国では、そんな魔物らの脅威から身を護るため……全国民を一ヶ所に集め、比較的安全な地に城塞を築いて暮らし始めた。
そうして発展してきたのが王都ルチルクォーツである。
王都の人口が増えるたびに城塞は拡張され、今では約三百平方キロメートルもの広さとなっていた。しかし、長年行われていた急場凌ぎの方法では、もはや限界を迎えようとしていた。
広大な国土を持つというのに、生活できる場所は限られている。近年までは、安心して暮らせる地を求めて、他国へ戦争を仕掛けていた負の歴史があったほどだ。
それらも国王の代替によって収まりをみせたが……人口増加の問題が解決したわけではなかった。
そこで、現国王フローライト・S・ルチルクォーツ十三世は一つの国策を発表した。それが魔物討伐を念頭に置いた冒険者の管理・育成・保護であった。
聞こえは良いが――冒険者とは、命の危険を伴うにもかかわらず、生活の安定しない不憫な職業である。
数多の伝説に憧れて冒険者となったものの、魔物の脅威によって外界へ出ることも叶わず、平和な王都の中で燻ぶるしかない。当然、冒険者として成長を望めるはずもなく、なんの役にも立たない……王都の厄介者として扱われることが多かった。
そんな冒険者が国によって一括管理されることになった。
王室認定冒険者ライセンスの発行、実力を数値化するためのレベル制導入、様々な依頼を優先的に受けられるクエストの提供。生活面においても、物資購入額の割引、一部納税の免除など、何かと優遇されるようになっていた。
そのため、新規で冒険者になりたいという者が後を絶えず、結果的にはその選定に苦労することになる。ルチルクォーツ王国では、年二回ほど認定試験を行い、新規冒険者の数を制限している。それでも、国策が発表されてから僅か三年間で、冒険者の数は二十倍以上に膨れ上がっていた。
冒険者に期待されている役割はただ二つ――
一つは、精人族の脅威となる進化した魔物を討伐すること。そしてもう一つ、未開の国土を隅々まで探索し、魔物の影響が少ない……第二の都市が開拓できる安全な土地を見つけ出すことであった。
★ コメント ★
新しく書き始めた小説版「最強の勇者はヒーラーでレベル1」のプロローグです。日曜日ぐらいから少しずつ書いていました。ドラクエ10をやりながら・・・(爆)
この先、1話以降は別タイトル(小説版)での更新を予定しております。では、どうしてこちらにプロローグだけアップしたかというと・・・予定していた4コマがアップできなかったからです(すみません)