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第133話 光竜剣スフェーンファイア

4コマ劇場 アイオライト_493・・・・・2011/02/22

 シリーズ3

  タイトル「光竜剣スフェーンファイア」


★ 1コマ ★

 オービメント洞窟の最下層・・・祭壇に置かれたドラゴンの卵を護るように現われた三体のガーディアン。その討伐レベルは70を超えるという。すなわち、最下層まで到達したメンバーでガーディアンに対抗できるのは、ユークレースのユークナイトNo.3のジェムシリカ、ヒーラーでレベル1だがアウインの勇者であるパロットクリソベリル、そして、ルチルクォーツ王国の現国王でもあり時空能力を有するフローライトの三人だけであった。

 時空能力により時間停止させたフローラが他のメンバーたちを祭壇から安全な場所まで遠ざける。その素早い判断により、他のメンバーが戦いに巻き込まれるのは回避されたようだ。

 これで心置きなく戦える・・・。パロットは、三体のうち二体をシリカとフローラに任せて、自らは目の前に立ち尽くすガーディアンAと向かい合った。


「よしっ・・・。それじゃあ、さっさと片付けますか~・・・」


 仮にもドラゴンの卵を護っているガーディアンである。何者が設置したかは分からないものの、間違いなく一筋縄ではいかないだろう。パロットは自身に気合を込めながら――聖剣クリソベリルを抜刀した。

 カポッ!

 なにやら、予想していなかった音にパロットは唖然としてしまう。しかも、抜刀した手応え・・・というより、聖剣の重さがまるで感じられない。いったい何事だろうか・・・。手元を確認したパロットは、聖剣クリソベリルの状態を確認して、数分前に何があったのかを思い出した。


「って、そういえばクリソベリル砕けたままだったーーーーー!」

『あぁ~、一人頼りない人がいるーーーーー!!』


 間髪を容れずにドラゴンの卵からつっこみが入る。パロットの戦いを見てもいないくせに、なんとも失礼な卵である。・・・が、剣を失って戦闘力が半減している現状では反論することも出来ない。まずは、聖剣クリソベリルの代わりとなる剣を何とかしなければならない。クリソベリルが砕けるとは思ってもいなかったパロットは、美咲から修行用に渡されていた銅の剣を王都へ置いてきてしまったことに後悔した。

 そんなパロットの戸惑いにいち早く気づいたのはスファレライトであった。スファレは、自らの剣を取り出し、ガーディアンAの繰り出す巨大剣の一撃を辛うじてかわすパロットに向けて投げつけた。


「パロット、これを使って!」

「スファレ、済まない・・・って、こいつはシンセティック・ソード改じゃねぇかぁあああーーーーー!」

「で、でも――今はこれしか持っていないし・・・」


 そう、柄だけの形状をしていて戦闘となれば刃が出現する携帯に便利な大剣。クリエイト能力を持つある意味マッドサイエンティスト・・・シンセティックの創造せし恐怖の魔剣――それがシンセティック・ソード改である。

 その攻撃力は凄まじく、一振りすれば前方百メートルほどを地面ごと消し飛ばせるほどの威力があった。つまり剣とは名ばかりの広範囲の大量破壊兵器・・・。この様な閉鎖された空間では全く役に立たない強力武器であるのだ。

 ちなみに創造主であるシンセティック的には、シンセティック・ソード改の攻撃力はヒノキの棒ほどしか無いらしい・・・。


「パロットさん、下がってください! シンセティック・カノン・・・ロックオン!」

「ちょっ、ロードライトも何やってるんだーーーーー!」


 後方で同じく大量破壊兵器シンセティック・カノンを構えるロードライトにパロットは悲鳴を上げる。シンセティックの名の付く武器は、ほぼ例外無く超危険な代物・・・。しかも、シンセティック・カノンは、あの忘却の迷宮に巣くう古の巨大魔蟲をも粉々に吹き飛ばす威力がある。こちらの方も、シンセティック的にはただの麻酔弾らしいのだが・・・。

 わかってはいたことだが、パロットは改めて他のメンバーがこの戦闘に役立たないことを痛感する。パロットを含めて三人だけで、三体のガーディアンを何とかしなければならないようだ。


★ 2コマ ★

 襲い来るガーディアンAは、身の丈が人の数倍はあろうかというほどの巨大さで、まるで伝承にある魔族が纏っているような不気味な形状の騎士鎧であった。だが、何者かが纏っているわけではなく、騎士鎧の関節部分からは炎のような光が漏れている。おそらく三体のガーディアンは、何らかの法術によって動いているのだろう。

 そのことは、パロットにとっても有り難いことであった。人が纏っていないのであれば全力を出せる。戦闘能力が未知数なフローラは別にして、パロットとシリカ・・・二人のユークナイトにしてみれば、討伐レベル70程度の相手など楽勝であった。まともな武器さえ手にしていれば・・・。


『ぐぉおおおおお!』

「ちっ、武器・・・何か武器は無いか!」


 ガーディアンAの凄まじい攻撃を軽やかに交わしながら、パロットは武器になりそうなものを探す。この程度の攻撃をかわすのは何でもないが・・・このままではガーディアンAを倒すことなど永遠に適わないだろう。法術で動いているため耐性があるのか、パロットの光属性の精霊術は全く効かなかったからだ。

 それは、武器での・・・打撃による攻撃が必要となることを意味している。やはり、武器となる何かが必要なのだ。


「シリカさん! 何か予備の武器があったら貸して・・・えっ!」

『うごぉおおお!』

「ううっ!」


 その光景にパロットは己の目を疑った。純粋な強さからすればパロットの数倍はあろうかというシリカがガーディアンBの攻撃をまともに喰らい弾き飛ばされていたからだ。


「し、シリカさん!」


 パロットは、ガーディアンAの攻撃を素早く交わしてシリカの元へ駆け寄る。そして、シリカの様子に気づき全てを理解した。


「げほっ、ごほっ・・・」


 大量の血を吐き出すシリカ・・・。決してガーディアンBの攻撃を受けて傷ついたわけではない。五年前に受けた古の巨大魔蟲の毒素がシリカの身体を蝕んでいるのだ。

 先程まで平然としていたというのに、どうして急に病状が悪化してしまったのだろうか。美咲から預けられたぬいぐるみもどき・・・かっぱのか~くんをちゃんと抱えながら戦っていたというのに――


「もしかして・・・。シリカさん、戦闘をすれば病状が進行する・・・とか?」

「さぁ~て、なんのことかしら・・・」


 誤魔化すよう視線を逸らすシリカに、パロットは自分の予想が正しかったことを悟った。よくよく考えてみれば、その予兆は以前からあったかもしれない。再会してから今まで、シリカは一度も自らが戦おうとしなかったからだ。

 五年前のシリカは、どちらかといえば前線に立って仲間を引っ張るような戦闘スタイルであった。他の者に戦いを任せて自らは傍観している今とは正反対なのである。それは、頼りない自分たちを成長させるため・・・。パロットはそう考えていたのだが、どうやらそうではなかったようであった。


「ちっ、こんな状態のシリカさんをフローラの護衛に付けるなんて・・・、シトリンさんは何を考えているんだ!」


 ユークレースのギルドマスターに悪態を吐きながら、パロットは俯くシリカの背中を支えるように抱きしめる。なぜか、シリカの顔色は真っ赤に染まっていた。


★ 3コマ ★

 パロットとシリカが戦場から一時離脱したことで、三体のガーディアンの目標はフローラへと集中していた。

 時空能力を有するフローラの戦い方は、数秒間時間を停止させて安全圏へと避難・・・そこから攻撃を仕掛けるといったものである。傍目から見ていると、フローラが瞬間移動を駆使しながら、ガーディアンを翻弄しているようであった。

 しかし、フローラの力でガーディアンの鎧を砕くことは適わないようで、結局はただ逃げ回っているだけ・・・。時空力が尽きれば捉えられてしまうのは目に見えて明らかであろう。

 さすがに、戦闘することで病状の悪化するシリカをこれ以上戦わせるわけにはいかない。つまりは、三体のガーディアンをパロット一人で倒さなければならないというわけだ。

 やはり聖剣クリソベリルに代わる武器が必要である。戦闘不能となったシリカの長剣を借りることも考えられた。だが、低レベル者の武器ならともかく、彼女の長剣はシリカ専用にカスタマイズされたものであり――他者が扱うとバランス自体が崩れてしまう恐れもある。自らの剣を失った上、シリカの武器をもおかしくする訳にはいかないだろう。

 こうなれば、一か八かシンセティック・ソード改を使ってみようか・・・。パロットがそう決めかねていると、不甲斐無い戦いに痺れを切らしたドラゴンの卵が突然叫んだ。


『いったい何をやってるのよ! その鎧に勝てないんだったら、さっさとこの場から離れなさいって!』


 ドラゴンの卵が言うように、パロットたちがこの場から去れば、ガーディアンが追いかけてくることはないかもしれない。ガーディアンの活動目的は、ほぼ間違いなく冒険者からドラゴンの卵を護ることであると考えられたからだ。

 現に三体のガーディアンは、祭壇から一定距離を開けたパロットたちには攻撃してこない。祭壇から一番近いフローラへ向けて集中的に攻撃を仕掛けていた。

 時空能力の多用からか、フローラの表情には疲れの様子が浮かんでいる。無理もない・・・。討伐レベル70のガーディアンを三体も同時に相手しているのだから。

 様々な状況を考慮した上で、パロットは一つの判断を下した。


「フローラ・・・下がれ!」


 それを聞いたフローラは、反論することもなくパロットたちの下へと引き下がる。フローラも今の状況を打破する方法が思い浮かばなかったのだろう。

 想像通り、三体のガーディアンは祭壇を護るように立ち尽くしている。祭壇――ドラゴンの卵に近づかない限り、襲い掛かってくることはなさそうだ。


『そう、それで良いの・・・。わたしのことなんて忘れて、あなたたちは帰りなさい・・・』


 寂しそうに呟かれた口調をパロットは聞き逃さなかった。


「嫌だね・・・。おまえはオレたちが持ち帰る」

『はぁ~? あんた、何言ってるのよ! そんなこと、出来るわけ・・・』

「卵は卵らしく、少し黙ってろ!」

『ななっ!』


 先程まで、現われたガーディアンとバカ正直に戦っていたが――ドラゴンの卵から離れることで相手は動かなくなることが判明した。そのことで、パロットの心に幾分かの余裕が生まれる。三体のガーディアンをじっくり観察し、冷静になって考えを纏め・・・通路に避難している他のメンバーに視線を向けた。


「え~っと・・・、借りる武器・・・無い?」


 その瞬間、避難していたメンバー全員が見事にずっこけた。


「て、てめぇ、まだそんなこと言ってるのかーーーーー!」


 無駄に大声で叫ぶエルバイト。こいつは全く役に立たない。


「わたしのシンセティック・ソード改を貸してあげたでしょ!」


 涙目で叫ぶスファレライト。確かに最後の手段としては有効かも知れないが、自らの命も危険に晒されそうなのでシンセティック・ソード改は使いたくない。


「じゃ、じゃあ~、もう一度・・・聖剣クリソベリルを試してみる?」


 聖剣クリソベリルの主となったフォスフォフィライト。欠片を吸収して真のクリソベリルとなった聖剣はフォスフィ以外を主として認めていないらしく、こともあろうに触れようとしたらパロットに電撃を喰らわせた。もう一度試すのはさすがに遠慮したい。


「う~ん、シンセティック・カノンなら・・・」

「却下!」


 間髪入れずに拒否するパロットに、ロードライトは気落ちして項垂れた。

 目論見は見事に全滅・・・これからは予備の武器も携帯しておくことにしようと、パロットは今更ながら心に誓うのだった。


★ 4コマ ★

 微妙に口の悪いドラゴンの卵を回収するのはもちろん、三体のガーディアンをこのままにしておくわけにはいかない。目標レベル23のオービメント洞窟に討伐レベル70の敵が存在しては、レベルの低い冒険者が訪れでもしたら太刀打ちできないからだ。

 三体のガーディアンは、なんとしても倒さなければならない。改めて覚悟を決めたパロットは刀身が砕けて柄だけになった聖剣クリソベリルを握りしめる。すると、パロットの気質を感じ取ったかのように・・・聖剣の鍔に光が宿る。それは、虹色に輝く煌めきで、まるで炎が灯ったようであった。


「な、なんだ・・・これ! クリソベリルの形が変わった?」

『えっ、ちょっ、何よその棒。わたしの力が――吸い取られてる!』


 その言葉を証明するかのように、変形したクリソベリルの柄とドラゴンの卵の間には何らかの繋がりが感じられた。

 直感とでもいうのだろうか・・・パロットは砕けた聖剣とドラゴンの卵が引き合っているように思えた。パロットは、ガーディアンたちの間を縫うように駆け、ドラゴンの卵が浮かぶ祭壇まで辿り着く。そして、聖剣クリソベリルの柄を祭壇にかざした瞬間、その変化は始まった。

 ドクッ!

 聖剣クリソベリルの柄が生体の心臓のように脈動する。それと連動するかのようにドラゴンの卵が大きく振動し始めた。

 その威力は凄まじく、空気を伝わる衝撃波によって三体のガーディアンが祭壇の近くから弾き飛ばされる。それとは真逆に、パロットは祭壇へと引き寄せられた。

 無意識のうちに、パロットは聖剣クリソベリルの柄を祭壇から立ち昇る火柱へと近づける。その途端、火柱に浮かんでいたドラゴンの卵が消えてしまった。いや、ドラゴンの卵は消えてしまったわけではない。聖剣クリソベリルの鍔に吸収されてしまったようだ。パロットは、そのことを本能的に理解していた。


「う~ん、なんでこうなったのか分からないが・・・とにかくお前の力を貸してくれないか?」


 ガーディアンが迫ってくるのを横目で見ながら、パロットは手に構える柄へ語りかける。普通に考えれば剣が喋るわけないのだが――ドラゴンの卵を吸収したことによって、その一般的な常識は通用しなくなっていた。


『これって、竜族の力を具現化する道具――のようね。なんとなく理解できる・・・』


 迫り来る巨大剣の斬激を交わし続けながらパロットは静かな口調で問いかける。


「詳しい話は後にして、まずはこいつらを倒さないと・・・。それで、あんたの名前は何ていうんだ? まさか、名無しってわけじゃないんだろ?」

『・・・・・・・』

「あ~、答える気は無さそうだな~。じゃあ、お前のことはこれから卵竜へっぽこ太郎と・・・」

『誰がへっぽこかーーーーー! あぁ~もぉ~しょうがない。その騎士鎧を倒すことに強力してあげる』

「そうか、よろしくな~、へっぽこ太郎♪」

『だ~か~ら~、わたしはスフェーン・・・光竜スフェーンっていうの!』

「スフェーンか・・・、良い名だ」


 それを聞いたスフェーンは、急に黙り込んでしまう。剣の鍔に取り込まれ表情までは分からないが――おそらく照れていることだろう。そんな様子にパロットは微笑みを浮かべる・・・。そして、聖剣の柄を斜め上に掲げ、ビュッと一気に振り下ろした。

 閃光が走り――場に光が溢れ出した。

 パロットの手には、聖剣クリソベリルとは別の・・・燃えさかる炎のように煌めきを放つ刀身の大剣が握られていた。


「光竜スフェーンの精霊力を具現化して誕生した剣・・・。まるで炎が宿っているかのような輝き――名付けて光竜剣スフェーンファイア!」

『なぁ~に、かっこつけてるんだか・・・』


 光竜剣からスフェーンの呆れた声が聞こえてくる。

 後に、パロットクリソベリルの代名詞とされる光竜剣スフェーンファイアが誕生した瞬間であった。



★ コメント ★

 セリフだけで表現するのは無理だったのでこんな感じになりました。(笑)

 でも、次回からは文字だけ4コマに戻ります♪(爆)

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