俺のカントリー。
「――ここは…」
突然現れたパッとしない顔の男子高校生が――否、引きこもりが戸惑いを隠せていない。
普段は冷静というか、根暗というか…
そんな京人の元に揃った足音が複数――
「貴様!リザニア帝国の首都、ザイキでは剣を持ってはいけないはずだろう!」
いかにもがっちりとした体つきの巨漢――日本だったら、ボディービルダーをやってそうな体格の男が近づいて怒鳴る。
「ちょっと待ってください!俺は何も――」
そんな男を1人の少女が止めた。
――その少女の名は、アリア・フォン・リザニア。
紅蓮のような赤髪を揺らし、まっすぐに京人を見つめる彼女は、帝国第三皇女にして、“戦火の姫君”と恐れられる存在だった。
夜間スーパーで特売のもやしを抱えていただけの人生。友達ゼロ、彼女ゼロ、学校もほとんど行っていない。そんな神林京人にとって、異世界などゲームやアニメの中だけの話だった。
だが――。
「その剣……“命剣メイムイ”を、なぜあなたが持っているの?」
兵士たちに囲まれ、冷たい石牢へ押し込まれた京人は、自分でも理解できないまま異世界の運命へ巻き込まれていく。
命剣メイムイ。持ち主の“命”を代償に、絶大な力を引き出す禁断の剣。
本来なら、選ばれし英雄しか扱えないはずだった。
しかし京人には戦う理由がない。人を救う覚悟も、世界を変える意思もない。ただ静かに、誰にも関わらず生きてきただけだ。
それでもアリアは言う。
「お願い。力を貸して。この国は、もう長くないの」
帝国内部で広がる反乱。 隣国との戦争。 そして、世界の裏側で暗躍する“魔人教団”。
やがて京人は知ることになる。自分がこの世界へ召喚された理由。命剣メイムイに秘められた真実。そして――アリアが背負う、あまりにも残酷な運命を。
そして――アリアが言う。
「今日からあなたは、帝国のために戦い、帝国のために死んでください。つまり、この国の――国民になってください。」
これは、もやしを買って帰るだけだった引きこもり高校生が、異世界で初めて「誰かのために生きたい」と願うまでの軌跡。




