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焼け跡から続く光  作者: 不津倉 パン子
前編 動き出す運命

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8/9

亜人の現状

翌朝。


リコリスは柔らかな布の感触の中で目を開けた。


「……あれ?どうしてベッドで……?」


その温もりが、昨夜の血と叫びを思い出させて胸の奥がきしむ。


昨夜はクロウの看病をしながら椅子に座って眠ったはずだ。状況が飲み込めず瞬きを繰り返していると、突然ドアが激しく叩かれた。


「あの人外を連れて、さっさと村を出て行ってくれ!!」


怒気を含んだ声。


リコリスは返す言葉を見つけられず、分かったと震える声で答えるしかなかった。


村を出る準備をしながら胸が痛んだ。亜人差別が根強い世界だとは知っていたが、クロウと旅をして初めてその重さに直面した。自分がどれほど無知だったか思い知らされる。


村を出る前、リコリスは村人達に向かって叫んだ。


「クロウさんは奴隷なんかじゃありません!私の大切な人です!!」


村人たちは驚き、軽蔑するような目をした。


「ならさっさと出ていけ!二度と村に入るなよ!」


「そんなの、こっちから願い下げです!」


もう二度と、正しさのふりをした残酷さに黙って従うつもりはなかった。


リコリスはハッキリと言い切ってやった。これだけは絶対に言ってやろうと思っていたのだから。


追われるように村の外へ出ると、

ランスが当然のように隣に立っていた。


「……なぜお前までついてくるんだ?」


とクロウは眉をひそめる。


「だって、僕の仲間はこんな村には来ないし……

それに、ひどくないですか?今朝、村の人が魔物の被害で困ってるって言うから、クロウさんが倒してあげたんですよ。そしたらお礼もなしに追い出すなんて!!」


ランスはぷりぷり怒っているが、

クロウは興味なさそうにしている。


「どうでもいい。それより、次はどこへ向かう?」


「どうでもいいわけないじゃないですか!!」


リコリスは思わず声をあげた。


「どうでもいいなんて言わないでくださいよ…私は大切な人にあんな酷い事されて悲しかったです……」


リコリスは自分の手をギュッと握り、声を震わせた。


「……お前、何かされたのか?内容によっては村に戻って皆殺しにしてくる。」


「クロウさんの事ですよっ!」


「俺…?俺、なにか変な事されてたのか……?」


本当に分からない、という顔だった。


クロウが不思議そうにしているのが辛い。この仕打ちは彼にとってごく当たり前のことだと、それを示しているような気がしたからだ。


「この先の村に行きましょう!次こそ僕の仲間がいるはずです!」


場をおさめようとランスが次の目的地を提案する。

その目的地にリコリスは胸が高鳴った。


「あの……その村には、私の祖父母も住んでいて。

少しだけ顔を見せたいんです。いいですか?」


クロウは無表情のまま、ゆっくりとうなずく。

ランスは明るく笑って答えた。


「じゃあ決まりだね!!」


3人は村へと歩き出す。リコリスはクロウの体調を気にして歩調を落とし、ランスは道端の花を摘んでリコリスに渡し場を和ませる。


一方、クロウはいつもどおり無口だが、危険を察知する鋭い視線で周囲を守ってくれていた。

 


ーーーーー


道中、一人の少女が倒れているのが見えた。


「だ、大丈夫ですか?!」


リコリスが走り寄ると、ランスが驚いた声を上げる。


「リミィ!?なんでここに!」


手当てをしてしばらくすると、リミィはうっすらと目を開けた。


話を聞けばランスを探して滞在先の村を飛び出したものの、迷子になって倒れてしまったらしい。


「この先の村に仲間がいるんだよね!? 早く行こうよ!」


ランスはすでに走り出しそうな勢いで喜んでいた。


「……クソ、ガキが増えた。……なんで俺がガキの世話をしなきゃなんねぇんだ……」


クロウは頭を抱える。


「いいじゃないですか。賑やかで楽しいですよ?」


リコリスが笑うと、クロウはそっぽを向いた。しかしその歩調は、いつの間にかリミィに合わせ、彼女が転ばない速さになっていた。その不器用な優しさが、リコリスの胸を温かくする。


ーーー


村に着くと、行商人らしき4人組の姿があった。


「おーい、みんなー!」


ランスが駆け寄っていく。


「この人たちが僕の家族、行商ギルド『紅』です!」


ギルド長のベニと名乗る男は、丁寧に頭を下げてくる。


「ランスを助けてくださりありがとうございます。 

よろしければ、お礼をさせてください。」


ベニはクロウにコートを差し出した。クロウはそれを羽織り、フードを深くかぶって獣耳を隠す。


「苦しくないですか?」


とリコリスが小声で聞くと、クロウはわずかに口元を緩めた。


「別に。大きさは悪くない。」


それ以上の感想を口にしないのが、

彼なりの距離の取り方だった。


「違いますよ、心がですよ。」


「お前の家族に会うんだろ?こうしておかないと会う前にまた村を追い出されるぞ。」


クロウは差別を当たり前のように捉えている。

リコリスにとってこれほど苦しいことはなかった。



ーーー


夜。


ギルドの面々と共に囲む夕食は、温かく賑やかだった。

 

ベニはランスのことを本当の弟のように大切に思っており、リミィはランスにぴったり寄り添って離れない。クロウは静かに、しかし確かに仲間たちを見守っていた。


——こんな時間が、

いつまでも続くわけがないことを、

誰よりも彼自身が分かっているかのように。


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